ブロックチェーンエンジニアのフリーランスの将来性とキャリアの広げ方
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
ブロックチェーンエンジニアのフリーランスの仕事は、基盤の技術が定期的に更新され、国内の制度も見直しが続くなかで、求められる中身が変わり続けていると考えられます。Ethereumは年単位でアップグレードを重ね、Solidityは数か月おきに新しい版を出し、国内では暗号資産の規制を金融商品取引法へ移す法律が2026年7月に成立しました。
こうした変化は、案件の数の増減よりも、仕事の進め方と求められる知識の変化として表れやすい部分です。この記事では、公式に確かめられる動向を土台に、仕事の変わり方と経験に応じた広げ方を整理します。投資や価格の見通しは扱いません。
公式の情報から見た技術の変わり方
Ethereumのアップグレード
ethereum.orgのロードマップのページ(2026年10月27日更新)では、これまでのアップグレードと今後の予定が示されています。
| 名称 | 時期 | 状況(2026年10月時点) |
|---|---|---|
| Pectra | 2025年5月7日 | 稼働中 |
| Fusaka | 2025年12月3日 | 稼働中 |
| Glamsterdam | 2026年第4四半期 | 開発中 |
| Hegotá | 2027年 | 開発中(範囲は未確定と注記) |
Pectraでは通常のアカウントにコントラクトの機能を持たせる仕組みが加わり、Fusakaではデータの扱いを効率化する仕組みなどが入ったと説明されています。ページでは、ロードマップの内容は今後変わりうるとも書かれています。アップグレードのたびに、ウォレットの作り方や手数料の前提が変わることがあり、既存のサービスの見直しが仕事になります。
Solidityの定期的なリリース
Solidityの公式ブログでは、0.8.36(2026年7月9日)、0.8.37(2026年9月10日)、0.8.38(2026年10月22日)と、数か月おきに新しい版が公開されています。公式ドキュメントでは、公開するときは最新の公式リリースを使うべきで、セキュリティの修正は原則として最新版にだけ入ると説明されています。
| 公式に示されていること | 現場の仕事への影響 |
|---|---|
| 基盤のアップグレードが続く | 既存のコントラクトや周辺サービスを見直す仕事が生まれる |
| 言語は数か月おきに新しい版が出る | 版を上げる計画と、変更点を読み解く力が要る |
| ロードマップは変わりうる | 予定に頼りすぎず、公式の発表を追って判断する |
国内の制度の見直し
資金決済法から金融商品取引法へ
金融庁の国会提出法案のページによると、「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」は2026年4月10日に提出され、同年7月15日に成立しました。金融庁が公表した法律案の概要では、暗号資産取引に係る規制を資金決済法から金融商品取引法に移し、暗号資産を有価証券とは別の金融商品と位置付けるとされています。
一方、e-Gov法令検索で2026年10月時点の資金決済に関する法律を見ると、暗号資産の定義(第2条第14項)や暗号資産交換業の登録(第63条の2)の規定は残っています。移管の部分がいつ施行されるかは、金融庁の公表で確かめてください。
電子決済手段と仲介業
金融庁の暗号資産に関するページでは、2023年6月1日に電子決済手段等取引業などの制度が始まり、2026年6月1日には、交換業者などの委託を受けて媒介だけを行う「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」の制度が始まったと示されています。
制度の見直しが続くと、事業者の側では、業務の流れや記録の残し方、利用者への説明の仕組みを変える開発が生まれやすくなります。こうした案件では、法令の判断は発注側の法務やコンプライアンスの担当が行い、エンジニアには要件を正しく実装し、記録と説明の仕組みを整えることが求められます。金融系の現場のルールは証券業界の規制とセキュリティのルールやクレジットカード・決済業界の規制とセキュリティのルールも参考になります。
ブロックチェーンの仕事はどう変わっていくか
企業の業務に溶け込む方向
Hyperledger Fabricの公式ドキュメントでは、参加者が識別される許可型の基盤であることや、独自の暗号資産を必要としないことが説明されています。企業の業務では、こうした基盤を使い、記録の共有や改ざんの検知を既存のシステムの一部として組み込む形が考えられます。この方向では、チェーンの技術より、業務の設計と既存システムとの連携の力が問われます。
道具の進歩と、人が担う判断
生成AIなどの支援で、コントラクトやテストの下書きは作りやすくなっていくと考えられます。ただし、権限の分け方、アップグレードの方式、どこまで検証すれば公開してよいかは、コードの見た目だけでは判断しにくい部分です。道具が進んでも、この判断を説明できる人は求められ続けると考えられます。道具を使えるかどうかは発注元の方針によるため、案件ごとに確かめてください。
変化を追う手間そのものが仕事になる
基盤のアップグレード、言語の版、国内の制度と、ブロックチェーンの周りでは見直しの対象が重なります。どの変更が自分たちのサービスに関係し、いつまでに何を直すべきかを整理して、チームに説明できる人は、どの領域でも重宝されやすくなります。公式の告知や法令の改正を一次の情報で確かめる習慣は、それ自体が長く仕事を任される材料になります。
選択肢を広げる3つの方向
1. セキュリティと監査の側へ
コントラクトの点検、検証の仕組みづくり、事故の調査に広げる方向です。開発で積んだ知識をそのまま生かしやすく、Web開発のセキュリティにも通じます。セキュリティエンジニアの将来性も参考になります。
2. 業務と制度の側へ
金融や流通などの業務を理解し、制度の変化を要件に落とす役割です。法務や業務部門と開発の間をつなげると、上流の工程に関わりやすくなります。上流への入り方は上流工程の記事で扱っています。
3. 周辺のWeb開発と運用の側へ
チェーンのデータを扱うバックエンド、ウォレット連携、監視と障害対応を担う方向です。チェーン以外の案件にも経験を生かしやすく、仕事の選択肢を保ちやすくなります。
経験の段階ごとの広げ方
他の分野からチェーンに移ってきた段階
土台の経験とチェーンでの経験を分けて整理し、チェーンで何を解いたかを一つ説明できるようにします。進め方はブロックチェーンエンジニアがフリーランスになるにはで解説しています。
本番で運用してきた段階
アップグレードや言語の版の更新に合わせて仕組みを見直した経験、監査の指摘に対応した経験は、保守を任せられる材料になります。上の3つの方向のどれを次の軸にするかを決める段階です。
方針を決めてきた段階
チェーンを使うかどうかの判断、権限と鍵の管理の方針、監査の進め方、メンバーの育成を担ってきた経験は、技術の方針を決める役割につながります。40代の働き方は40代のフリーランスの記事で扱っています。
よくある質問
制度の見直しで、ブロックチェーンの案件は増えますか?
制度の見直しは、事業者の仕組みを変える開発につながることがありますが、案件がどれだけ増えるかを示す公的な資料はありません。案件の数は領域や時期によって変わるため、チェーンの経験を土台の分野の経験と組み合わせて示せるようにしておくことが現実的な備えになります。
技術の更新はどの程度追いかければよいですか?
すべてを追う必要はありません。関わっているチェーンのアップグレードの告知と、使っている言語のリリースの告知で変わった点を確かめ、手元のプロジェクトへの影響を判断できる状態を保つことが基本です。
40代・50代からブロックチェーンに軸を移すのは遅いですか?
一概には言えません。金融系の業務システムやセキュリティの経験が長い方は、業務と制度をつなぐ役割や、検証と監査の役割で経験を生かせる場面があります。チェーンの経験の長さより、既存の仕組みの課題をどう解いてきたかが問われやすいためです。
参考にした公的情報・資料
- Ethereum roadmap(ethereum.org)
- Solidity Release Announcements(Solidity Blog)
- 暗号資産関係(金融庁)
- 国会提出法案等(金融庁)
- 金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案の概要(金融庁)
- 資金決済に関する法律(e-Gov法令検索)
- Introduction(Hyperledger Fabric Documentation)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。