公共・官公庁業界の経験をスキルシートで伝える書き方|発注者の区分・立場・工程の示し方
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
公共・官公庁の経験をスキルシートで伝えるときは、案件ごとに発注者の区分と規模、発注者側を支援したのか受注した側か、調達や工程のどの段階に関わったか、扱った事務と作業環境の4点をそろえて書きます。「官公庁案件の経験あり」だけでは、読み手は任せられる範囲を判断できないからです。
この記事では、公共の経験に固有の書き方を、架空の記入例とあわせて紹介します。スキルシート全体の構成はスキルシートの書き方の基本、案件の種類は公共のIT案件の記事、調達や工程レビューの意味は業務知識の記事で解説しています。
公共の経験は4つの項目をそろえて書く
| 項目 | 書く内容 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 発注者の区分と規模 | 府省・独立行政法人・都道府県・市区町村の別と、規模の目安 | 「中核市規模の市」「府省の情報システム部門」 |
| 立場 | 発注者側の支援か、受注した事業者側か | 「府省のPJMOを支援するプロジェクト管理支援事業者の一員」 |
| 段階 | 調達・要件定義・設計開発・移行・運用のどこか | 「調達仕様書の作成支援から意見招請への対応まで」 |
| 事務と環境 | 対象の行政事務、利用したクラウドやネットワークの環境 | 「住民記録・税務の標準準拠システムへの移行」 |
発注者の区分を書くのは、区分によって前提になるルールが違うからです。国の府省や独立行政法人の案件では、デジタル庁のガイドラインや政府統一基準群が前提になり、自治体の案件では、標準化の取り組みや総務省のガイドラインを参考にした各自治体のポリシーが前提になります。規模も、関わる部署や事業者の数、移行するデータの量の目安になるため、読み手が案件の難しさを想像しやすくなります。区分と規模は、社名を出さなくても書ける情報です。
民間の案件では「業界と業務」で足りることが多いのですが、公共の案件では立場と段階の情報が特に重く見られます。理由は次の章で説明します。
立場と段階を書き分ける理由
発注者側の支援と、受注側の作業は求められる力が違う
公共の案件には、発注者の側に立ってプロジェクトを管理・支援する立場と、調達で受注した事業者として設計・開発・運用を担う立場があります。前者では、ガイドラインに沿った計画づくり、事業者の成果物の確認、調達の手続きへの対応が中心です。後者では、契約した範囲の成果物を期限までに作り、発注者のレビューに応えることが中心になります。
同じ「PMO」でも、府省のPMO体制に加わる支援と、受注した開発チームの中のPMOとでは、見ている範囲が違います。どちらの立場だったかを書くと、読み手が次の案件との相性を判断しやすくなります。PMOの書き方の基本はPMOのスキルシートの記事をご覧ください。
段階を書くと、次に関われる案件が見えやすい
デジタル庁のDS-100では、調達仕様書の作成に直接関与した事業者や、プロジェクト管理支援事業者に入札制限が定められています。そのため、どのシステムのどの段階に、どの立場で関わったかは、次の案件を考えるうえでの材料にもなります。スキルシートでは、関わった段階を具体的に書いておくと、案件の提案時に話が早く進みます。
工程の言葉は、ガイドラインの用語にそろえると誤解がありません。たとえば「第一次工程レビュー(要件定義書の作成終了前)への対応」「意見招請の質疑対応」のように書くと、公共の案件に慣れた読み手には段階が一目で伝わります。
自治体標準化とガバメントクラウドの経験の書き方
標準化の経験は「事務・移行の範囲・関係者」を書く
自治体の標準化では、対象が20の事務に分かれています。どの事務の、どの範囲の移行に関わったかを書きます。
- 対象の事務:「住民記録、印鑑登録、戸籍の附票」「国民健康保険、介護保険」のように、標準化の事務の名前で書く
- 移行の範囲:データ移行、業務の見直し、テスト、切り替えのどれを担当したか
- 関係者の数:同時に移行した事務の数、調整した事業者の数などを、目安として書く
- 時期:移行の時期を書く。特定移行支援システムとして2026年度以降に移行する案件に関わった場合は、その旨も書いてよい
ガバメントクラウドの経験は、環境と役割を分けて書く
ガバメントクラウドの経験は、使ったクラウドサービスの名前に加えて、何を担当したかを書きます。環境の設計・構築、移行、運用、費用の管理のどれか、またそれが府省のシステムか自治体の標準準拠システムかを分けると、伝わりやすくなります。クラウドの技術そのものの書き方は、職種別のスキルシートの記事を参考にしてください。
作業環境の経験も、決まりの範囲で書ける
自治体の案件では、総務省のガイドラインにもとづく「三層の対策」のように、ネットワークが分けられた環境で作業することがあります。こうした環境での作業経験は、公共の案件で求められることがあるため、「マイナンバー利用事務系の環境での作業経験あり」のように、一般的な言葉で書くことができます。環境の詳しい構成や、接続先・設定の内容は書きません。ルールの中身は規制とセキュリティの記事で扱います。
架空の記入例
以下は書き方を示すための架空の例です。
案件A(2025年4月〜2026年3月)
- 発注者:中核市規模の市(受注した事業者のチームに参画)
- 立場:移行チームのPMO
- 対象:住民記録・印鑑登録・戸籍の附票・税務の標準準拠システムへの移行
- 担当:移行計画と進捗の管理、データ移行の検証計画の作成、市の担当課・複数の事業者との定例会議の運営、切り替え当日の手順書の作成
- 環境:ネットワークが分けられた庁内の環境で作業
案件B(2024年7月〜2025年3月)
- 発注者:府省の情報システム部門(プロジェクト管理支援事業者のチームに参画)
- 立場:PJMOの支援
- 担当:プロジェクト計画書の作成支援、RFIの説明書の作成支援、第一次工程レビューに向けた自己点検の取りまとめ、意見招請の質疑の整理
- 成果:要件定義書と調達仕様書の案を、予定した時期にレビューへ出せる状態に整えた
このように、案件ごとに立場と段階を分けると、読み手が「どの案件なら任せられるか」を判断しやすくなります。成果の欄には、数字を作らずに、何をどの時期までに整えたかを事実で書きます。
書かないほうがよい情報
発注者や受注した事業者の名前が外部に知られている案件でも、スキルシートに書いてよいかどうかは別の問題です。次の情報は書かないでください。
- 発注者の具体的な名称(「中核市規模の市」「府省」のように区分と規模に置き換える)
- 入札前の予定価格や、公表前の調達の内容、評価の内容
- システムの構成、ネットワークの接続先、セキュリティ設定の詳細
- 住民の個人情報にかかわる件数の内訳や、取り扱った情報の中身
- 取引先の資料をそのまま写した内容
件数や規模は、「数十万件規模」のように幅で示すか、公表されている範囲にとどめます。どこまで書いてよいかの考え方はスキルシートと守秘義務の記事で詳しく解説しています。
よくある質問
発注者の名前が公表されている案件でも、伏せたほうがよいですか?
伏せておくことをおすすめします。発注者や受注した事業者の名前が分かる状態でも、自分の関わり方や作業の内容まで公表されているわけではありません。区分と規模に置き換えても、立場と段階を書けば経験は十分に伝わります。
民間の案件と公共の案件が混ざっている場合、どう並べればよいですか?
時系列で並べるのが基本です。そのうえで、応募する案件が公共分野なら、職務要約の部分で公共の経験の期間と主な立場をまとめて書くと、読み手が見つけやすくなります。全体の構成はスキルシートの書き方の基本をご覧ください。
面談では、公共の経験について何を聞かれますか?
立場と段階に加えて、年度末の納期や工程レビューにどう対応したか、関係者の多い会議をどう進めたかを聞かれることがあります。面談でよく聞かれる質問への準備は面談の質問の記事で解説しています。
参考にした公的情報・資料
- DS-100 デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン(デジタル庁)
- 地方公共団体情報システムの標準化(デジタル庁)
- 地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン 令和8年度 概要資料(総務省)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。