M&A・PMIコンサルタントを目指すには|他の職種からのキャリアチェンジ
公開 2026-11-04 監修:株式会社エージェントベスト
他の職種からM&A・PMIコンサルタントを目指すルートは一つではありません。ITコンサルやSIer、PMO、事業会社の経営企画や管理部門、会計や人事の専門職など、どこから来ても生かせる経験があります。共通して足りなくなりやすいのは、「二つの会社を一つにする場面で、期限に対して何かをやり切った経験」です。
そのため、フリーランスとしていきなり統合の責任者を目指すより、今の職種の専門性を一つの領域として持ち込み、IMOのメンバーや領域の担当から入って、統合の実行を一度やり切るのが現実的です。この記事では、出発点ごとに生かせる経験と足りない部分、その埋め方を整理します。独立の手順はM&A・PMIコンサルタントがフリーランスになるにはで扱っています。
PMIの仕事で求められることを先に押さえる
PMIは、買収や合併の後に、二つの会社の業務、システム、組織、管理の仕組みを一つにしていく仕事です。求められることは大きく三つに分けられます。
| 求められること | 中身 |
|---|---|
| 領域の専門性 | ITシステム、業務、人事・組織、会計など、どこか一つの領域で統合の方針を立て、実行できる |
| 統合の進め方 | Day1や移行の期限から逆算して計画を引き、課題と依存関係を管理する |
| 立場の違う人との調整 | 買い手と統合される側、経営層と現場の間で論点を整理し、決めてもらう |
キャリアチェンジでは、一つ目の「領域の専門性」を今の職種から持ち込み、二つ目と三つ目を統合の現場で身につける、という順番で考えると整理しやすくなります。分野ごとのスキルはM&A・PMIコンサルタントに求められるスキルで詳しく扱っています。
出発点ごとの生かせる経験と足りない部分
ITコンサル・SIer・情報システム部門から目指す
生かせる経験:基幹システムの導入や移行、インフラやアカウントの統合、データ移行の計画は、PMIのIT領域とITデューデリジェンスでそのまま使えます。フリーランスのPMI案件で人数が多いのはこの入り口です。
足りない部分:システムの話を、統合の費用や期間、事業への影響の言葉に置き換える経験です。「どちらのシステムに寄せるか」を技術の優劣ではなく、取引の目的や業務への影響から説明できるかが見られます。上流工程の経験の積み方は上流工程に関わるにはも参考になります。
PMOから目指す
生かせる経験:大規模なプロジェクトの進捗管理、会議体の運営、課題とリスクの管理は、統合推進の事務局(IMO)の仕事に近い部分があります。
足りない部分:PMIでは、両社の利害や従業員の不安を扱う場面が多く、課題を管理するだけでなく、論点を整理して決めてもらうところまで求められます。また、一つの領域の中身を語れないと、IMOのメンバー以上の役割が広がりにくくなります。PMOの経験の広げ方はPMOのキャリアチェンジの記事で扱っています。
事業会社の経営企画・M&A推進部門から目指す
生かせる経験:買い手の社内で、取引の検討や統合の推進に関わった経験は、社内の合意の取り方や統合後に現場で何が起きるかを知っている点で評価されます。
足りない部分:社内の一つの取引しか経験していない場合、他の会社の進め方に合わせられるかが見られます。また、経営企画の立場では領域の実行を他部門に任せていたことも多く、自分で手を動かした範囲を整理する必要があります。
会計・経理・人事などの管理部門から目指す
生かせる経験:決算の締めの統合、勘定科目や会計方針のすり合わせ、人事制度や給与の仕組みの統合は、PMIの中でも期限の厳しい領域です。グループ会社の管理や、会社の再編に伴う実務を経験していれば、そのまま強みになります。
足りない部分:統合全体の計画の中で、自分の領域が他の領域とどう依存しているか(会計の締めがシステムの切り替えに左右される、など)を見る経験です。
戦略コンサル・業務コンサルから目指す
生かせる経験:論点の整理、経営層への報告、業務の見直しの経験は、統合計画やシナジーの検討で生かせます。
足りない部分:計画を作った後、Day1や移行の期限に向けて実行を追いかける経験です。PMIでは、方針の美しさより、期限までに業務とシステムを止めずに切り替えられるかが問われます。
ITデューデリジェンスを入り口にする場合
IT出身の方は、統合の実行より先に、ITデューデリジェンスから入る道もあります。対象会社のシステム、運用体制、保守の契約、セキュリティを数週間で調べ、リスクと統合の費用を見積もる仕事です。短期の案件が多いため経験を重ねやすい一方、調査で終わる案件ばかりだと、統合の実行を任せられるかが伝わりにくくなります。デューデリジェンスで見つけた論点を、統合の計画や実行まで追いかけた経験を一度は持っておくと、任される範囲が広がります。
足りない部分を埋めるときの順番
- 領域を一つに決める:今の職種から持ち込める領域を一つ選び、PMIの中でその領域が何をするかを調べます
- 統合の流れを知る:デューデリジェンス、統合計画、Day1、統合の実行、統合後の見直しという流れと、それぞれで自分の領域に何が求められるかを押さえます
- 近い経験を今の職場で取りに行く:社内のシステム統合、グループ会社の管理の統一、組織の再編など、統合に近い仕事に手を挙げます
- IMOのメンバーや領域の担当として入る:最初の案件は、統合の責任者ではなく、領域の担当や事務局のメンバーとして入り、統合の実行を一度やり切ります
- 論点を決めてもらう経験を積む:二件目以降で、統合委員会への報告や、両社の論点の整理を担う範囲を広げます
資格を先に取るべきかは、領域によって変わります。資格の効き方はM&A・PMIコンサルタントに資格は必要かで整理しています。
面談で確かめられやすいこと
他の職種から来た方の面談では、次のような点を確かめられやすくなります。準備の仕方はM&A・PMIコンサルタントの面談でよく聞かれる質問で詳しく扱っています。
- 統合に近い経験の具体さ:システムの移行、組織の再編、グループの管理の統一などで、自分が何を担ったか
- 期限に対する動き方:動かせない期限に向けて、どう計画を引き、遅れにどう対応したか
- 立場の違う人との調整:意見が対立した部門や会社の間で、どう論点を整理したか
- 守秘の意識:取引の情報や株式売買の制約を理解しているか
スキルシートでは、統合に近い経験を、取引や会社を特定させない形で厚く書きます。書き方はM&A・PMIコンサルタントのスキルシートの記事をご覧ください。
年代によって選びやすいルート
20代後半〜30代は、領域の担当やIMOのメンバーとして入り、統合の実行を複数回経験するルートが選びやすい年代です。正社員のうちに統合に近い仕事を経験してから独立するほうが、選べる案件は広がります。
40代は、今の職種での専門性を一つの領域のリードとして持ち込むルートが現実的です。管理職の経験があれば、統合委員会への報告や他の領域との調整も任されやすくなります。
50代は、事業会社での経営や管理部門の経験を生かし、統合推進室の支援や統合後の点検役として関わる形も考えられます。年代ごとの役割は40代・50代のM&A・PMIコンサルタントの記事で扱っています。
よくある質問
M&Aの経験がまったくなくても、PMIの案件に入れますか?
システムの移行や組織の再編など、統合に近い経験があれば、領域の担当として入れる案件はあります。ただ、統合の全体を任される案件は難しいため、最初は範囲を絞って入り、統合の実行を一度やり切ることをおすすめします。
PMOから入って、どのくらいで領域のリードになれますか?
期間は人によって大きく変わります。IMOの運営を担いながら、一つの領域の論点整理や方針の提案に関わる機会を増やすことが近道です。何件の統合を経験したかより、どの領域で何を決めたかが問われます。
会計の専門職からPMIに移るとき、ITの知識はどこまで必要ですか?
会計の統合は、会計システムの切り替えと切り離せないため、システムの仕組みや移行の進め方を大まかに理解しておくと動きやすくなります。システムの設計まで担う必要はありませんが、IT領域の担当と依存関係を話し合える程度の理解は求められます。