M&A・PMIコンサルタントのスキルシートの書き方|面談で評価される実績の見せ方
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
M&A・PMIコンサルタントのスキルシートは、取引の名前の代わりに「取引の形・業界・規模の幅」を書き、関わった局面と担った領域、Day1や移行の期限に対して何をやり切ったかを書くと伝わります。案件を出す側は、取引の大きさより、「どの局面の、どの領域を、どこまで任せられるか」を見て判断するからです。
M&Aの経験は、取引の時期と業界を書くだけで、公表された情報と照らして会社が特定されることがあります。この記事では、特定させない書き方と、評価につながる書き方を、架空の記入例とあわせて紹介します。全体の構成はスキルシートの書き方の基本、求められるスキルはM&A・PMIコンサルタントのスキルの記事で解説しています。
取引は「形・業界・規模の幅」で書く
PMIのスキルシートで最初に書くのは、どんな取引だったかです。ただし、取引の名前や公表の時期は書きません。代わりに次の3つで表します。
| 項目 | 書き方の例(架空) | 避けたい書き方 |
|---|---|---|
| 取引の形 | 株式の取得による子会社化/事業の譲受け/グループ内の合併/事業の切り出し(カーブアウト) | 「〇〇社による△△社の買収」 |
| 業界 | 国内の製造業どうし/サービス業の買い手と、IT企業の対象会社 | 業界と製品名を組み合わせた細かい説明 |
| 規模の幅 | 対象会社の従業員は数百名規模/拠点は国内複数 | 正確な従業員数や拠点数 |
取引の形を書くと、読み手は統合の難しさをつかめます。たとえば、株式の取得で対象会社が子会社として残る場合と、合併で一つの会社になる場合では、システムや規程を統合する深さが違います。事業の切り出しでは、元の会社から一時的に受けるサービス(TSA)の設計と、そこからの切り離しが加わります。
期間は「約8か月」のように長さで書き、開始の年月は必要な場合だけにとどめます。公表済みの取引でも、時期と業界の組み合わせで特定されることがあるためです。考え方はスキルシートに書いてよいこと・いけないことで解説しています。
局面と領域を分けて書く
PMIの経験は、「どの局面に」「どの領域で」関わったかの組み合わせで評価されます。この2つを分けて書くと、読み手が自分の案件と照らし合わせやすくなります。
- 局面:ITデューデリジェンス/Day1の準備/100日の計画/統合の実行/TSAからの切り離し
- 領域:統合推進の事務局(IMO)/ITシステム/業務と規程/人事・組織/会計と管理/データの移行
- 立場:メンバー/領域のリード/全体の推進役
立場は、所属先の職位の名前より、役割の言葉で書きます。「マネージャー」と書くより、「IT領域のリードとして、統合方針の提案から移行の完了までを担当」と書くほうが、任せられる範囲が伝わります。
成果は「期限に対して何をやり切ったか」で書く
PMIの成果は、売上の伸びのような数字では表しにくいものです。統合の効果が出るのは何年も先で、自分の貢献を切り分けることも難しいからです。そこで、PMIらしい成果の書き方は、決まった期限に対して、何を止めずに、何を終わらせたかです。
- Day1に、給与の支払い、受発注、請求を止めずに切り替えた
- TSAの期限内に、会計と人事のシステムを買い手側の環境へ移した
- 統合後の最初の決算を、従来の日程で締めた
- 両社の規程を統合し、承認の権限を一本化した
ITデューデリジェンスの場合は、調べた観点と、その結果が取引や統合の計画にどう使われたかを書きます。「保守の期限が近いシステムを特定し、統合費用の見積もりに反映された」のように、判断へのつながりで示します。金額は書かず、「統合計画の前提として採用された」のように使われ方で書くと、守秘義務に触れずに伝わります。
記入例(架空):1件分の書き方
期間:約10か月
取引の形と業界:株式の取得による子会社化。国内の製造業の買い手と、同業の中堅の対象会社
局面:Day1の準備から統合の実行まで
立場と領域:IT領域のリード。買い手側のIT部門、対象会社の情報システム担当、外部のベンダーと調整
担当した内容:アカウントとメールの統合方針の提案と実行、会計システムの移行計画、移行のテストと切り替えの当日の指揮
やり切ったこと:Day1に業務を止めずにアカウントとメールを切り替えた。統合後の最初の決算に間に合うよう会計システムを移行した
うまくいかなかった点と対応:対象会社の旧システムの資料が少なく、移行の範囲が後から広がった。範囲の変更を統合委員会に上げ、移行の時期を一部見直した
これは書き方を示すための架空の例です。取引の形、業界、期間、担当の内容は、ご自身の経験に置き換えてください。うまくいかなかった点を書くと、面談で深掘りされたときに落ち着いて話せる材料になります。
複数の取引を経験している場合の束ね方
デューデリジェンスのように短い案件を多く経験している場合は、直近の数件を上の形でくわしく書き、それより前は局面と領域ごとに束ねると読みやすくなります。
架空の例:
- ITデューデリジェンス(5件):製造業、小売、サービス業。システムの構成、保守の期限、運用の体制、契約の調査と、統合費用の見積もりを担当
- Day1の準備(2件):アカウント、メール、ネットワークの切り替えの計画と当日の対応を担当
- IMOの運営(1件):統合委員会の運営と、領域をまたいだ課題の管理を担当
束ねることで、繰り返し担ってきた局面と領域が浮かび上がり、得意な範囲が伝わりやすくなります。
スキル欄には「統合で使った知識」を書く
スキル欄に製品名や手法の名前を並べるだけでは、PMIの経験としては伝わりにくくなります。統合のどの場面で使ったかを添えて書きます。
- システム:会計・人事・販売のシステムの移行や、アカウントとメールの統合で扱った製品の種類(「ERPの会計の仕組みの移行」など)
- 進め方:統合推進の事務局の運営、課題と判断の管理、移行のテストの計画
- 関連する知識:会計の締めと連結の手順、契約書の読み方(支配の変更の条項など)、個人データの扱いの基本
資格がある場合は、資格の名前だけでなく、統合のどの場面でその知識を使ったかを一言添えると、経験の裏付けとして読まれます。
出身ごとに足しておきたい記載
IT出身の方
システムの経験は、統合の文脈に置き直して書きます。「基幹システムの移行」だけでなく、「統合後の決算に間に合わせるための移行」のように、事業の期限とのつながりを書くと、PMIの経験として読まれます。
事業会社の統合推進室の出身の方
買い手の社員として関わった経験は、社内の合意の取り方を知っている点が強みです。統合委員会への報告や、対象会社の経営層との調整など、社外のコンサルタントでは担いにくい役割を書きましょう。
PMOの出身の方
PMIの経験が少ない場合は、PMOとしての経験のうち、複数の組織をまたいだもの、期限が動かせないものを前に出します。書き方はPMOのスキルシートの記事も参考になります。
よくある質問
公表済みの取引なら、名前を書いてもよいですか?
公表済みであっても、自分が関わったことまで公表されているわけではありません。秘密保持の約束によっては、関わった事実を明かすこと自体が問題になることがあります。取引の形と業界で書き、名前は書かないほうが安全です。
取引が途中で中止になった案件は書いてもよいですか?
書いてかまいません。ただし、中止になった取引は公表されていないことが多く、存在そのものが秘密にあたります。業界や時期をさらにぼかし、担当した局面と領域、調べた観点だけを書きましょう。
面談で取引の詳細を聞かれたらどう答えればよいですか?
守秘の義務があるため、会社が特定される情報は話せないことを伝え、取引の形、自分の担当、判断した場面を中心に答えます。守秘を守る姿勢は、M&Aの案件では評価される点でもあります。面談でよく聞かれる質問はM&A・PMIコンサルタントの面談の記事で扱います。