M&A・PMIコンサルタントのフリーランス案件の仕事内容|案件の種類と働き方
公開 2026-11-04 監修:株式会社エージェントベスト
フリーランスのM&A・PMIコンサルタントの仕事は、取引の前後で「調べる」「備える」「つなぐ」を担うことです。どの局面に入るかで、1日の時間の使い方も、向き合う相手も、残す成果物も大きく変わります。短期で報告書をまとめる調査の仕事もあれば、年単位で統合の会議体を回し続ける仕事もあります。
この記事では、フリーランスに多いPMIの案件を5つの種類に分け、それぞれの1日と1か月の流れ、関わる相手、成果物を整理します。独立に必要な経験はM&A・PMIコンサルタントがフリーランスになるには、求められるスキルはM&A・PMIコンサルタントのスキルの記事で扱っているので、ここでは「参画したら実際に何をしているか」に絞ります。
仕事の中身は「局面」と「担う領域」で決まる
PMIの案件は、取引の進み方に合わせて仕事が切り替わります。違いを生むのは次の2つです。
- 局面:契約の前の調査か、クロージング(取引の実行日)に向けた準備か、統合後の実行か
- 担う領域:統合の全体を回すのか、IT・業務・会計など一つの領域を担うのか
この2つを掛け合わせると、フリーランスの案件はおおむね次の5種類に分けられます。
| 案件の種類 | 主な相手 | 時間を多く使う仕事 |
|---|---|---|
| ITデューデリジェンス | 買い手の担当者、財務や法務の専門家、対象会社の窓口 | 開示資料の読み込み、質問の作成、リスクと費用の整理 |
| Day1の準備 | 両社の情報システム・経理・人事の担当者 | 止めてはいけない業務の洗い出し、切り替えの段取り |
| IMO(統合推進の事務局)の運営 | 統合の責任者、各領域のリーダー、経営層 | 会議体の運営、課題と判断の管理、報告 |
| 領域ごとの統合の実行 | 領域の担当者、ベンダー、現場の部門 | 方針の具体化、移行の計画と実行の確認 |
| カーブアウトの支援 | 売り手と買い手の双方の担当者 | 一時的なサービス提供(TSA)の設計と、切り離しの計画 |
以下の流れは典型的な例です。時間の配分は案件と取引の状況で変わるため、目安として読んでください。
ITデューデリジェンスの仕事
1日の流れ(例)
午前は、データルーム(開示資料を置く場所)に追加された資料を読み、システムの構成、保守の契約、運用の体制を整理します。昼前後に買い手のチームと短い打ち合わせを持ち、財務や法務の専門家と気になる点を突き合わせます。午後は、対象会社への質問を作り、回答を読み、マネジメントへの聞き取りの場があれば同席します。夕方は、見つかったリスクを「統合の費用」「期間」「取引条件に影響するか」で分けて書き足していきます。
開示される情報には限りがあるため、分かったことと分からないことを分けて書くのが仕事の中心です。
期間の流れ(例)
数週間の短期が多く、1か月の中で次のように進みます。
- 最初の週:調査の範囲と観点を買い手と合わせ、最初の質問を出す
- 中盤:回答と追加資料を読み、聞き取りで確かめる。重いリスクは早めに速報する
- 最後の週:報告書をまとめ、買い手の意思決定の場で説明する
成果物
質問リスト、リスクの一覧、統合や切り離しにかかる費用と期間の見込み、報告書などです。報告書は取引の判断の材料になるため、読み手は経営層や財務の専門家です。
Day1の準備の仕事
1日・1か月の流れ(例)
クロージングの前後数か月にわたる仕事です。毎日は、領域ごとの担当者から準備の進み具合を集め、チェックリストを更新し、遅れている項目の打ち手を相談します。給与の支払い、受発注、請求、問い合わせの窓口、メールやアカウント、決裁の権限など、初日に止まると困るものを一つずつ潰していきます。
1か月の単位では、月初に残りの準備の量を見直し、中盤にリハーサルや切り替えの手順の確認を行い、クロージングが近づくと当日の体制と連絡の流れを固めます。クロージングの日付が動けば、計画もそれに合わせて引き直します。
成果物
Day1のチェックリスト、切り替えの手順書、当日の体制と連絡網、問題が起きたときの判断の流れ、従業員向けの案内の素案などです。
IMO(統合推進の事務局)の運営の仕事
1日の流れ(例)
朝は、各領域のリーダーから届いた進み具合と課題を集め、課題の一覧を更新します。午前中は領域ごとの定例会議に出て、遅れや領域をまたぐ論点を拾います。午後は、統合の責任者と判断が必要な事項を整理し、統合委員会などの会議資料を準備します。PMOの仕事に似ていますが、両社の温度差や従業員の受け止めを踏まえて、伝える順番まで設計する点が違います。
1か月の流れ(例)
- 月初:前月の進み具合を締め、100日計画などの計画との差を確かめる
- 毎週:領域のリーダーとの定例会議、責任者への報告
- 月の半ば:領域をまたぐ論点(組織の形、報告の流れ、システムの統合方針など)の判断材料をそろえる
- 月末:経営層が出る統合委員会で、全体の状況と判断が必要な事項を示す
成果物
統合計画、会議体の設計、課題と判断の記録、統合委員会の資料、社内向けの説明の資料などです。PMOとしての働き方はPMOがフリーランスになるにはも参考になります。
領域ごとの統合の実行の仕事
ITシステム、業務、会計など、一つの領域で統合を進める仕事です。フリーランスの人数が多いのは、IT領域のこの仕事です。
1日・1か月の流れ(例)
1日は、ベンダーや情報システム部門との打ち合わせ、移行計画の確認、現場の部門への聞き取りで埋まります。システムの統合方針(片方に寄せる、作り直す、当面は並行して接続する)が決まった後は、移行の段取りとデータの検証、利用者への説明の準備に時間を使います。
1か月の単位では、決算や繁忙期の予定と移行の時期を突き合わせ、IMOへの報告と、方針の変更が必要なときの判断材料づくりを繰り返します。
成果物
領域の統合方針と比較の資料、移行計画、データの照合と検証の記録、業務手順や権限の一覧の改訂案などです。
カーブアウトの支援の仕事
事業を切り出す取引で、切り出された事業が独り立ちするまでを支える仕事です。最初は、元の会社から一時的に受けるサービス(システムの利用、経理の代行など)の範囲と期間を決め、TSA(移行期間のサービス提供の取り決め)の中身に落とします。その後は、TSAの期間内に自前の仕組みへ移る計画を立て、進み具合を確かめます。
売り手と買い手の双方と話すことが多く、どちらの立場で参画しているかを常に意識する必要があります。成果物は、TSAの対象の一覧、切り離しの計画、移行の進み具合の報告などです。
どの案件にも共通する仕事
種類が違っても、次の仕事はほぼすべての案件にあります。
- 期限からの逆算:クロージングの日、TSAの終わり、決算の締めなど、動かせない期限から計画を組む
- 判断の材料づくり:事実・影響・選択肢をそろえ、誰が決めるかを明確にする
- 情報の扱い:誰がどの情報を見てよいかを確かめ、資料の置き場所と共有の範囲を守る
- 記録:決定の経緯を残し、後から加わる人や監査に耐えられるようにする
フリーランスならではの仕事として、自分の稼働の記録もあります。取引の山場で稼働が増えやすいため、精算の条件と合わせて日々つけておきましょう。精算の仕組みは精算幅の記事をご覧ください。働く場所の傾向はM&A・PMIコンサルタントのリモート案件の記事で扱っています。
よくある質問
PMIのフリーランスは、取引の交渉にも関わりますか?
フリーランスに出てくる案件では、価格や条件の交渉そのものより、調査や統合の準備と実行が中心です。デューデリジェンスで見つけたリスクが交渉の材料として使われることはありますが、交渉の場に立つかどうかは体制によって変わります。
短期のデューデリジェンスと長期の統合の実行は、どちらが多いですか?
案件の時期や取引の数によって変わります。短期の調査は期間が読みやすい一方で切れ目が出やすく、統合の実行は長く続く代わりに取引の進み方で開始や終了が動きます。どちらを中心にするかで、働き方と資金の計画も変わります。
参画して最初の1か月は何をすることが多いですか?
取引の形と期限、関係者と会議体、情報の扱いの決まりを把握することから始めるのが一般的です。初月の進め方はM&A・PMIコンサルタントの参画初月にやることで詳しく解説します。