SAP Basisエンジニアのスキルシートの書き方|面談で評価される実績の見せ方
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
SAP Basisエンジニアのスキルシートは、扱ってきたSAP製品・データベース・OS・基盤の組み合わせを一覧で示し、プロジェクトごとの作業は「どんな条件で」「計画と判断まで担ったか」を書き分けるのが基本です。Basisの案件は環境の組み合わせで募集されることが多く、作業の名前を並べるだけでは、読み手は自分の案件の環境で任せられるかを判断できません。
作業の種類による棚卸しはSAP Basisエンジニアがフリーランスになるには、層ごとに求められる技術はSAP Basisエンジニアのスキルの記事で扱っています。この記事では、それをシートの上でどう見せるかを解説します。
環境の組み合わせは一覧にして先頭に置く
Basisの読み手が最初に確かめるのは、案件の環境と同じ組み合わせを扱ったことがあるかです。プロジェクト欄にばらばらに書かれていると、読み手は全部を読んで組み合わせを拾い出さなければなりません。スキル一覧の中に、環境の組み合わせの表を作っておくと判断が早くなります。
記入例(架空):
| SAP製品・版 | データベース | OS | 基盤 | 経験 |
|---|---|---|---|---|
| S/4HANA | SAP HANA | Linux | パブリッククラウド | 構築・移行・運用(2年) |
| ECC | Oracle | Linux | 自社のデータセンター | 運用・更新(4年) |
| ECC | SQL Server | Windows | 仮想化基盤 | 運用(1年) |
| 周辺の製品 | — | — | — | 帳票・連携の基盤の運用(1年) |
「経験」の列には、年数とあわせて、構築・運用・更新・移行のどれを担ったかを書きます。同じ組み合わせでも、運用だけの経験と、構築から担った経験では、任せられる範囲が違うためです。
要約は「得意な層」と「得意な局面」で書く
要約の欄は、環境の一覧とは別に、自分がどこで力を出せるかを3〜5行で書く場所です。Basisの場合は、得意な層(OS・データベースに強いのか、SAPのアプリケーション層に強いのか)と、得意な局面(構築、運用、更新、移行のどれか)を入れると、読み手は案件と結び付けやすくなります。
例(架空):
- SAPの基盤の運用・更新に6年従事。直近2年はS/4HANAへの移行の基盤作業を担当
- SAP HANAのバックアップと監視の設計、移行のリハーサルと手順書の作成が得意
- Linuxとクラウドの基盤の構築経験があり、基盤ベンダーとの調整も担当
プロジェクト欄は「作業の条件」を書く
Basisの作業は、どのプロジェクトでも「インストール」「更新」「システムのコピー」など同じ名前になります。違いが出るのは、その作業をどんな条件の中で行ったかです。プロジェクト欄には、作業の名前に加えて次の条件を書きます。
| 条件 | 書き方の例 | 読み手が判断すること |
|---|---|---|
| システムの構成 | 開発・検証・本番の3環境、本番は冗長構成 | 規模と難しさ |
| システムの数 | 担当したSAPシステムが複数 | 並行して管理できるか |
| 停止時間の枠 | 週末の決まった時間内での作業 | 時間の制約の中で進められるか |
| 並行するプロジェクト | 追加開発のプロジェクトと移送の調整あり | 調整の経験があるか |
| 自分の関わり方 | 計画・手順書の作成から実施まで/実施のみ | 計画を任せられるか |
特に大切なのが最後の「関わり方」です。手順書を自分で作り、所要時間を見積もり、切り戻しの条件を決めたのか、それとも決まった手順に沿って実施したのか。どちらも大事な経験ですが、読み手が任せる範囲は大きく変わります。
停止時間は「計画」と「実績」で書く
更新や移行の作業は、業務を止められる時間が決まっています。この時間をどう守ったかは、Basisの経験で最も伝えたい部分の一つです。
シートには、次の順に書くと伝わりやすくなります。
- 停止時間の枠:業務側から与えられた時間の大きさ
- リハーサル:検証環境で何回試し、何を変えたか
- 本番の結果:枠の中で終わったか、想定外のことが起きたか、そのときどう判断したか
具体的な時刻や日付は書かなくてかまいません。「週末の停止枠の中で完了」「リハーサルで判明したデータ量の偏りに合わせて、作業の順番を入れ替えた」のように、判断が伝わる書き方を心がけます。
記入例(架空)
次は、書き方の型を示すための例です。業種と規模はぼかしてあり、実在のプロジェクトではありません。
期間:20XX年6月〜翌年9月(1年4か月)
環境:ECC(Oracle・Linux・自社のデータセンター)からS/4HANA(SAP HANA・Linux・パブリッククラウド)へ
業種・概要:流通業(中堅規模)の基幹システムの移行
立場:基盤チーム3名のうち、移行作業のリーダー
担当工程:移行方式の検討への参加、前提の版への更新、リハーサル、本番の移行、稼働後の監視
担当内容:移行のリハーサルを検証環境で複数回実施し、所要時間の見積もりと手順書を作成。大きなテーブルの移し方を見直し、停止時間の短縮案を作成。本番当日の進めるか戻すかの判断基準を、業務側と事前に合意
工夫・成果:本番の移行を週末の停止枠の中で完了。稼働後は性能の監視の項目を見直し、バッチの遅延を早めに見つけられるようにした
実際に書くときは、ご自身の経験に置き換えてください。
運用の経験を「成果」として書く
運用・保守の経験は、毎日の監視やジョブの管理が中心のため、成果の欄が空になりがちです。しかし、運用の中で自分が変えたことは、成果として書けます。
- 監視の見直し:見るべき項目を整理し、障害の兆しを早めに見つけられるようにした
- 手順書の整備:システムのコピーや更新の手順書を作り直し、担当者が変わっても同じ手順で進められるようにした
- 自動化:起動・停止や定期的な確認をスクリプトにして、手作業を減らした
- 障害の切り分け:性能の問題や障害の原因を、OS・データベース・SAPのどの層かまで絞り、再発を防ぐ対策をまとめた
障害の件数や時刻などの細かい数字は、守秘義務に触れることがあるため、「月末のバッチの遅延の原因を調べ、設定を見直した」のように、内容で伝える書き方が無難です。書いてよい範囲はスキルシートと守秘義務の記事をご覧ください。
担当範囲の境目を書いておく
Basisの仕事は、どこまでを担当するかがプロジェクトごとに違います。権限の設計、ネットワーク、クラウドの基盤、データベースの管理などは、別の担当やベンダーが持つこともあります。シートでは、自分の担当と、他の担当に任せていた部分の境目を書いておくと、読み手は参画後の役割を思い描けます。
例(架空):「SAPの基盤の構築・運用を担当。クラウドのネットワークと仮想マシンの構築は基盤ベンダーが担当し、要件の取りまとめと受け入れの確認を担った」
クラウドの基盤まで自分で構築した経験がある場合は、使ったサービスの種類と構成を書くと、クラウドの案件にも広げやすくなります。クラウド側の書き方はAWSエンジニアのスキルシートの記事やAzureエンジニアのスキルシートの記事も参考になります。
基本情報に夜間・休日の対応を書く
Basisの案件では、更新や移行の当日、障害の対応などで、夜間や休日の作業が発生することがあります。基本情報の欄に、夜間・休日の作業やオンコールの対応をどこまで受けられるかを書いておくと、条件の合わない案件の提案を避けやすくなります。対応できる頻度や、事前の調整が必要かどうかも、あわせて書いておくとよいでしょう。
よくある質問
インフラエンジニアの経験が長く、SAPの経験は短いです。どう書けばよいですか?
環境の一覧では、SAPの経験とインフラの経験を分けて書きます。そのうえで、OS・データベース・クラウドの経験は、Basisの下の層の知識として強みになるため、スキル一覧にくわしく書いておきましょう。SAPの経験が短い場合は、担当した作業の範囲を正直に書くことが大切です。
英語の力はどう書けばよいですか?
「英語可」とだけ書くより、SAPの技術文書を読む、SAPのサポートへの問い合わせを書く、海外の担当者と会議をする、のように、使った場面で書くと伝わります。会議で話す経験がない場合は、読み書きまでと書いておくと、面談で食い違いが起きません。
権限の設計の経験は、Basisのシートに書いてよいですか?
書いてかまいません。ユーザーの管理や権限の付与、監査への対応に関わった場合は、Basisの作業とは別の行にして、どこまで担当したかを書きます。権限の設計を専門の担当が持っていたプロジェクトでは、自分が担った範囲(付与の作業のみ、設計まで、など)を書き分けておくと誤解を防げます。