財務・経理コンサルタントのフリーランス案件の仕事内容|案件の種類と働き方
公開 2026-11-04 監修:株式会社エージェントベスト
財務・経理コンサルタントのフリーランス案件の仕事は、会社の締め方を理解し、決められた期限までに数字を確定させる手順を整え、必要なら作り直すことです。ただし、締めそのものを支えるのか、締め方を変えるのか、経営の数字の見せ方を変えるのかで、1日の過ごし方も、向き合う相手も、手元に残る成果物も大きく変わります。
この記事では、財務・経理の案件を5つの種類に分け、それぞれの1日と1か月の流れ、関わる相手、成果物を整理します。求められる力は財務・経理コンサルタントのスキルの記事、報酬の決まり方は報酬の記事で扱っているので、ここでは「参画したら実際に何をしているか」に絞ります。
仕事の中身は「締めの暦」と「変える範囲」で決まる
財務・経理の案件は、同じ「経理コンサル」の募集でも働き方がかなり違います。違いを生むのは主に次の2つです。
- 締めの暦との距離:月次・半期・年度の締めの最中に手を動かすのか、締めの外側で手順を設計するのか
- 変える範囲:今の手順のまま回すのか、手順を変えるのか、指標や組織のあり方まで変えるのか
この2つを掛け合わせると、フリーランスの財務・経理の案件はおおむね次の5種類に分けられます。
| 案件の種類 | 主な相手 | 時間を多く使う仕事 |
|---|---|---|
| 決算・開示の支援 | 経理部の担当者と課長、監査人 | 締めの作業、残高の確認、監査人への資料づくり |
| 決算早期化・経理業務改革 | 経理部長、各部門の担当者、子会社の経理 | 工程の洗い出し、待ち時間の特定、手順と日程の組み直し |
| 連結決算・グループの締め方の統一 | 親会社の連結担当、子会社の経理、監査人 | 連結パッケージの設計と回収、連結修正、日程の管理 |
| 管理会計・予算の仕組みづくり | 経営企画、経営層、事業部門 | 損益の切り口や配賦の設計、予算と実績の報告の流れづくり |
| 内部統制(J-SOX)の整備と評価の支援 | 内部監査、経理、業務部門、監査人 | 文書の整備、統制の運用の確認、不備の改善案づくり |
以下は典型的な例です。時間の配分は会社の規模や決算期で大きく変わるため、目安として読んでください。
決算・開示の支援の仕事
決算の担当者の退職や、子会社の増加、上場の準備などで、締めの手が足りなくなった会社に入る案件です。経理部の一員に近い形で動くことが多くなります。
1日・1か月の流れ(例)
締めの期間は、朝に締めの工程表で当日の作業を確かめ、担当する勘定の残高を確かめ、差異があれば原因を調べます。午後は課長や担当者と数字を確かめ合い、監査人から届いた質問への回答や資料をそろえます。
1か月の単位では、月初の数営業日が締め、その後が振り返りと翌月の準備という波になります。半期や年度の締めの時期は、開示の資料づくりと監査人の手続きが重なり、稼働が膨らみやすくなります。
成果物
締めの作業の結果そのもの(仕訳、残高の明細、差異の説明)、監査人への提出資料、開示の資料の下書き、引き継ぎ用の手順書などです。作業の結果が成果物になるため、手順書を残せるかどうかで、次の案件で話せる経験の厚みが変わります。
決算早期化・経理業務改革の仕事
締めにかかる日数を減らしたい、手作業を減らしたい、という会社の相談から始まる案件です。締めの作業を担うのではなく、締め方を変える側に立ちます。
1日・1か月の流れ(例)
最初の1〜2か月は現状の把握が中心です。経理部の担当者に、締めの何日目に何をしているか、何を待っているかを聞き、工程表にして所要日数を数えます。子会社や営業部門など、経理部の外から届く情報の遅れも洗い出します。
把握の後は、見積もりで先に計上する範囲、締め後の修正の扱い、承認の段階、報告の期限と様式などの見直し案をつくり、経理部長と合意します。そのうえで新しい手順を1回分の締めで試し、うまくいかなかった点を直します。締めの期間は担当者が忙しいため、ヒアリングや打ち合わせは締めの後に集め、締めの期間は観察と資料づくりに回すのが進めやすい組み立てです。
成果物
現状の工程表と所要日数の一覧、課題の整理、見直し後の手順と締めの日程、試した結果の報告、定着のための手順書などです。前後の日数や件数を比べられる形で残すことが、そのまま成果の説明になります。
連結決算・グループの締め方の統一の仕事
子会社の買収や設立で連結の範囲が広がった会社や、子会社ごとに締め方がばらばらな会社で、グループ全体の締めを整える案件です。
1日・1か月の流れ(例)
平常の月は、連結パッケージの項目の見直し、子会社への説明会の準備、勘定科目の対応表の整備などを進めます。締めの時期は、子会社からの報告の回収状況を確かめ、遅れている会社に連絡し、届いた数字で内部取引の消去や債権債務の相殺を進めます。在外子会社があれば、時差や現地の締めの日程も考えて動きます。
連結の範囲が変わる年度は、取得した会社の数字をいつから、どの形で取り込むかを、親会社の連結担当や監査人と詰める時間が増えます。買収後の統合全体の動き方はM&A・PMIコンサルタントの仕事内容が参考になります。
成果物
連結パッケージの様式と記入の手引き、グループの勘定科目の対応表、締めの日程表、連結修正の手順書、子会社向けの説明資料などです。親会社と子会社の両方が使う資料が多いのが特徴です。
管理会計・予算の仕組みづくりの仕事
経営層が判断に使う数字の切り口を見直す案件です。会計の正しさに加えて、経営層が何を知りたいかをくみ取ることが仕事の中心になります。
1日・1か月の流れ(例)
経営企画の担当者と、今の損益資料のどこが使われ、どこが使われていないかを確かめるところから始めます。事業部門の責任者に、知りたい数字や判断の場面を聞き、部門別・製品別などの切り口や、共通費の配賦の基準の案をつくります。配賦を変えると部門ごとの数字が動くため、変えたときの数字の動きを先に見せ、各部門の納得を取ることに多くの時間を使います。
1か月の単位では、月次の経営会議に合わせて資料の試作を出し、意見を受けて直す、という周期で進みます。予算の仕組みづくりを含む場合は、予算の編成の時期に稼働の山が来ます。
成果物
損益の切り口と配賦の基準の設計書、経営指標の定義、月次の報告資料のひな形、予算の編成と実績の報告の手順などです。読み手は経営層や事業部門の責任者で、経理部の外の人が多くなります。
内部統制(J-SOX)の整備と評価の支援の仕事
上場会社や上場を準備している会社で、財務報告に関わる内部統制の文書を整え、運用を確かめる案件です。
1日・1か月の流れ(例)
整備の時期は、業務部門の担当者に業務の流れを聞き、業務記述書・フローチャート・リスクと統制の対応表を更新します。運用の評価の時期は、決められた手順で統制が実際に行われたかを、証跡を見て確かめます。不備が見つかれば原因を整理し、改善案を業務部門と一緒に詰めます。
年間を通すと、整備は期の前半、運用の評価は期の後半、監査人との協議は期末前後という流れが一般的です。システムの権限や変更管理などのIT統制は、IT監査の専門分野と重なるため、どこまで担うかを最初に確かめておくと進めやすくなります。IT統制側の仕事はIT監査・内部統制コンサルの仕事内容で扱っています。
成果物
業務記述書、フローチャート、リスクと統制の対応表、評価の手順と結果の記録、不備の一覧と改善の計画などです。監査人の確認を経て初めて使えるものになるため、監査人の指摘への対応も仕事の一部になります。
会計システムの導入が重なる案件
上の5種類のどれかに、会計システムの入れ替えが重なることもあります。その場合、財務・経理コンサルは「この仕訳はどこで生まれ、どこで集計され、どの資料に出るか」を業務側から決める役になり、勘定科目やコードの体系、承認の流れ、締めの手順をシステムに合わせて設計します。システムの設定そのものを担う役割はSAP FI/COコンサルの仕事内容で扱っています。
関わる相手と、その相手に出すもの
財務・経理コンサルの1日は、誰に何を渡すかで組み立てられています。
| 相手 | 出すもの | 頻度の目安 |
|---|---|---|
| 経理部長・財務責任者 | 進み具合、判断が必要な論点、見直し案 | 週次、節目ごと |
| 経理部の担当者 | 作業の手順、締めの工程表、確認事項 | 毎日〜週次 |
| 子会社・事業部門 | 報告の期限と様式、記入の手引き、説明 | 締めの前後、随時 |
| 監査人 | 会計処理の根拠、統制の資料、質問への回答 | 締めの時期、協議の場 |
| 経営層 | 管理会計の資料、指標の変更案 | 月次の会議 |
監査人とのやりとりでは、最終的な判断は会社と監査人が行います。フリーランスの役割は、論点を整理し、会計基準にあたった根拠をそろえて、会社が判断しやすい形にすることです。
働く場所は、締めの期間や監査人への対応では出社を求められやすく、設計や文書の整備はリモートで進めやすい傾向があります。詳しくは財務・経理コンサルタントのリモート案件の記事をご覧ください。
よくある質問
財務・経理コンサルは、自分で仕訳を切ることもありますか?
決算・開示の支援の案件では、担当する勘定の仕訳や残高の確認を自分で行うことがよくあります。決算早期化や管理会計の案件では、作業より設計が中心になります。どこまで手を動かす想定かは、参画前に確かめておくと、稼働の見込みとのずれを防げます。
決算期が違う会社の案件では、忙しい時期も変わりますか?
変わります。締めの期間や開示の時期は会社の決算期によって決まるため、3月決算と12月決算の会社では繁忙の時期がずれます。複数の案件を組み合わせる場合は、それぞれの決算期と締めの日程を先に確かめておきましょう。
参画して最初の1か月は何をすることが多いですか?
会社の勘定科目と締めの工程表、関係者と承認の流れ、監査人とのやりとりの経緯を把握することから始めるのが一般的です。初月の進め方は財務・経理コンサルタントの参画初月にやることで解説します。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。