SAP FI/COコンサルのフリーランス案件の仕事内容|案件の種類別の1日・1か月の流れ
公開 2026-11-04 監修:株式会社エージェントベスト
SAP FI/COコンサルのフリーランス案件の仕事は、経理部門の業務を聞き取り、会計の要件をSAPの設定に置き換え、数字が合うことを確かめて、経理の人が使える状態にすることの繰り返しです。ただし、新規導入なのか、S/4HANAへの移行なのか、グループ会社への展開なのか、稼働後の保守なのかで、1日の時間の使い方も、向き合う相手も、手元に残る成果物も大きく変わります。
この記事では、FI/COの案件を5つの種類に分け、それぞれの1日と1か月の流れ、関わる相手、成果物を整理します。報酬の決まり方はFI/COの報酬の記事、求められるスキルはFI/COのスキルの記事で扱っているので、ここでは「参画したら実際に何をしているか」に絞ります。
仕事の中身は「案件の種類」と「会計の暦」で決まる
FI/COの案件は、募集の文面が「FI/COコンサル募集」と似ていても、参画してみると働き方がまったく違うことがあります。違いを生むのは、主に次の2つです。
- 案件の種類:新しく入れるのか、旧環境から移すのか、すでに動いている仕組みを広げたり支えたりするのか
- 会計の暦:月次決算、四半期決算、年度決算、期首の切替など、経理部門の予定に仕事の山が引っ張られる
この2つを掛け合わせると、フリーランスのFI/CO案件はおおむね次の5種類に分けられます。
| 案件の種類 | 主な相手 | 時間を多く使う仕事 |
|---|---|---|
| 新規導入・再構築 | 経理部門、経営企画、他モジュールの担当、PM | 要件の聞き取り、標準機能との照らし合わせ、設定、テスト |
| S/4HANAへの移行 | 現行の保守担当、経理部門、Basis・ABAPの担当 | 現行設定の読み解き、変換後の確認、データ移行の照合 |
| グループ会社・海外拠点への展開 | 本社の会計方針の責任者、各社の経理担当、現地のベンダー | テンプレートの適用、各社固有の要件の整理、合意づくり |
| 運用保守・決算支援 | 経理の担当者、保守チーム、監査対応の担当 | 問い合わせの切り分け、決算期の見守り、小さな設定変更 |
| 制度・会計基準への対応 | 経理部門の責任者、税務・監査の担当、開発チーム | 影響の読み解き、設定とデータの流れの変更、テスト |
以下では、それぞれの1日と1か月の流れを、典型的な例として紹介します。時間の配分は案件ごとに違うため、目安として読んでください。
新規導入・再構築の案件
1日の流れ(例)
午前は、経理部門との要件定義の会議が入ることが多くなります。勘定科目の体系、原価センタや利益センタの切り方、承認の流れなどを聞き取り、標準の機能でどこまで実現できるかをその場で考えながら話します。午後は、聞き取った内容を設計書に落とし込み、開発環境で設定を進めます。夕方は、SDやMMの担当と、仕訳の発生する場面や勘定の決め方をすり合わせる時間に使われます。
自分でコードを書くことはほとんどなく、業務の言葉を設定に翻訳し、翻訳の結果を経理の人に確かめてもらうのが中心です。
1か月の流れ(例)
- 要件定義の時期:週に数回の経理部門との会議と、その記録・課題の整理で1日が埋まる。Fit to Standard(標準機能に業務を合わせる検討)では、標準で足りない部分をどう補うかの判断が集まる
- 設計・設定の時期:会議は減り、設定と設計書の作成に時間を使う。他モジュールの担当との連携の確認が週に1〜2回入る
- テストの時期:単体テスト、統合テストの順に進む。統合テストでは、販売や購買から流れてくる仕訳が想定どおりかを、他チームと一緒に追う
- 本番切替の前後:開始残高の移行と照合、稼働直後の最初の月次決算の立ち会いで、出社や時間外の稼働が増えやすい
成果物
業務要件の一覧、Fit to Standardの結果(標準で対応・設定で対応・アドオンで対応の区分)、設定仕様書、勘定科目や原価センタの一覧、テストシナリオと結果、移行の照合結果、経理部門向けの操作手順などです。読み手は経理部門と開発チームの両方なので、同じ内容を会計の言葉と設定の言葉の両方で書くことが多くなります。
S/4HANAへの移行の案件
1日の流れ(例)
午前は、現行の環境の設定やアドオンの一覧を読み、S/4HANAでどう扱われるかを分類する作業に使われます。午後は、変換後の環境で、ユニバーサルジャーナルへの統合など仕組みの変わった部分が業務に影響しないかを確かめます。BasisやABAPの担当との打ち合わせも頻繁で、変換の手順とデータの照合方法を一緒に詰めていきます。
新規導入と違い、「今どう動いているか」を読み解く時間が長くなります。現行の設定を作った人がすでにいないことも多く、設定の意図を推測しながら進める場面もあります。
1か月の流れ(例)
- 現行調査の時期:設定、アドオン、帳票、インターフェースの棚卸し。使われていないものを見つけて整理する
- 変換の検証の時期:検証環境で変換を試し、残高や明細が合っているかを勘定ごとに照合する
- テスト・リハーサルの時期:本番と同じ手順で移行のリハーサルを行い、所要時間と不一致の有無を記録する
- 本番移行の前後:切替の週末に照合作業が集中し、稼働直後の決算で問い合わせを受ける
成果物
現行設定の棚卸し表、アドオンの扱いの判定(残す・捨てる・作り直す)、変換後の差異の一覧と対処、移行リハーサルの記録、残高照合の結果、経理部門への変更点の説明資料などです。移行の案件全体の働き方はS/4HANA移行の仕事内容の記事で解説しています。
グループ会社・海外拠点への展開の案件
1日・1か月の流れ(例)
本社で入れた仕組みを、子会社や海外拠点に広げる案件です。1日の中では、本社の会計方針の責任者との方針の確認と、展開先の経理担当からの要望の聞き取りが交互に入ります。海外拠点が対象なら、時差に合わせて会議が朝や夜に入ることもあり、英語での会議や資料の読み書きが日常になります。
1か月の単位では、テンプレート(共通の設定)を展開先に適用し、各社固有の税制や商習慣による違いを一覧にして、どこまで認めるかを本社と展開先の間で合意する流れが繰り返されます。勘定科目や原価の計算方法をそろえるほど連結の作業は軽くなりますが、各社の事情との折り合いが要るため、会計の理屈で落としどころを示すことに時間を使います。
成果物
テンプレートの適用範囲の一覧、各社固有の要件と判断の記録、会社コードや通貨・税の設定、各社向けのテストシナリオ、展開先の経理部門向けの説明資料などです。
運用保守・決算支援の案件
1日の流れ(例)
午前は、前日に届いた問い合わせの確認から始まります。「支払の処理でエラーが出た」「配賦の結果が想定と違う」「残高が合わない」といった相談を、設定の問題か、入力の問題か、他モジュール側の問題かに切り分けます。午後は、小さな設定変更や、改善の要望の整理、移送の依頼とその記録に使われます。経理の担当者と直接やり取りする時間が長く、会計の言葉で短く説明できるかが1日の効率を左右します。
1か月の流れ(例)
- 月初:月次決算の期間。締めの処理に関わる問い合わせが集中し、即応が求められる。配賦や減価償却の実行結果の確認に立ち会うこともある
- 月の半ば:問い合わせは落ち着き、改善や小さな改修、設定変更の作業を進める
- 月末:翌月初の締めに向けて、変更した設定の影響を見直し、経理部門と予定を確かめる
- 四半期末・年度末:決算の期間が長くなり、監査対応の資料づくりや、年次処理の見守りが加わる
成果物
問い合わせの対応記録、設定変更の履歴と移送の記録、改修の仕様、決算期の手順書や確認表、監査への説明資料などです。保守の経験をスキルシートでどう見せるかはFI/COのスキルシートの記事で解説しています。
制度・会計基準への対応の案件
税制や会計基準の変更、インボイス制度や電子帳簿保存法のような制度への対応、組織の再編に伴う変更など、会計の側の動きに合わせて仕組みを変える案件です。期間や回数を区切って関わる形が多く、週2〜3日の稼働で成り立つこともあります。
1日の中では、変更の内容を会計の言葉で読み解き、SAPのどの設定とどのデータの流れに影響するかを整理する時間が中心です。1か月の単位では、影響の調査、対応方針の決定、設定の変更、テスト、経理部門への説明の順に進みます。適用の時期が決まっているため、締め切りから逆算した計画が欠かせません。
成果物は、影響の調査結果、対応方針の比較、変更の仕様、テストの結果、経理部門向けの運用の変更点の説明などです。制度の内容そのものは、税理士や監査人の判断が要る部分が多いため、確認の相手を早めに決めておきます。
どの案件にも共通する仕事
種類が違っても、次の仕事はほぼすべてのFI/CO案件にあります。
- 会計の言葉と設定の言葉の往復:経理部門には「どの帳簿のどの数字に影響するか」で、開発チームには設定の項目で説明する
- 数字の照合:テストでも移行でも、借方・貸方、勘定ごとの残高が合っていることを示す
- 他モジュールとのつなぎ目の確認:販売・購買・生産から流れてくる仕訳の発生する場面と勘定の決め方をそろえる
- 変更の記録:どの設定を、どの理由で、いつ変えたかを一覧にし、移送と結びつける。監査の場面で説明の根拠になる
フリーランスならではの仕事として、自分の稼働の記録と報告もあります。月の稼働時間に幅を決めて精算する契約が多く、決算期や切替の前後に増えた時間を日々つけておく必要があります。精算の仕組みは精算幅の記事をご覧ください。
関わる相手と、その相手に出すもの
FI/COコンサルの1日は、誰に何を渡すかで組み立てられています。相手ごとに整理すると、次のようになります。
| 相手 | FI/COコンサルが出すもの | 頻度の目安 |
|---|---|---|
| 経理部門の責任者 | 要件の整理、標準で足りない部分の選択肢、決算への影響 | 週次、節目ごと |
| 経理の担当者 | 設定の結果の説明、操作手順、問い合わせへの回答 | 毎日〜週次 |
| 他モジュール(SD・MM・PP)の担当 | 仕訳の発生する場面と勘定の決め方、統合テストの結果 | 週次、テスト期は毎日 |
| Basis・ABAPの担当 | 移送の依頼、アドオンの仕様、移行の手順 | 随時 |
| PM・リーダー | 進捗、課題、決めてほしい事項 | 週次 |
| 監査・内部統制の担当 | 権限の分け方、設定変更の記録、自動仕訳の根拠 | 節目ごと |
販売・購買側のコンサルの働き方はSAP SD/MMの仕事内容の記事、開発側はSAP ABAPの仕事内容の記事で解説しています。相手の仕事を知っておくと、つなぎ目の確認が早く進みます。
働く場所については、設定・設計書・テストはリモートで進めやすく、要件定義の会議、月次決算を通すユーザーテスト、本番切替の前後は出社を求められやすい傾向があります。詳しくはFI/COのリモート案件の記事をご覧ください。
よくある質問
FI/COコンサルは、会議と設定のどちらに時間を使うことが多いですか?
工程によって変わります。要件定義の時期は経理部門との会議とその記録、設計・設定の時期は設定と文書の作成、テストの時期は他チームとの照合に時間を使います。保守の案件では、問い合わせの切り分けと経理の担当者への説明が中心です。
FIとCOの両方を一人で担当するのが普通ですか?
案件によります。小さなチームではFIとCOを一人で担うことがあり、大きな導入ではFI-GL、FI-AA、CO-PCのように機能ごとに担当が分かれます。自分がどの機能を担うのか、他の機能とのつなぎ目は誰が見るのかを、参画前に確かめておくと役割のずれを防げます。
参画して最初の1か月は何をすることが多いですか?
現行の設定や設計書の読み込み、経理部門の決算の手順の把握、他モジュールの担当との顔合わせから始めるのが一般的です。保守の案件なら、問い合わせの履歴と直近の決算で起きたことを先に読みます。初月の進め方はFI/COの参画初月にやることで解説しています。