上下割と中間割の違い|精算方式で報酬はどう変わる?計算例で比較
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
上下割と中間割は、精算幅を外れたときの1時間あたりの金額(超過単価・控除単価)の決め方の違いです。上下割は超過分を「月額÷上限時間」、控除分を「月額÷下限時間」で計算し、中間割はどちらも「月額÷上限と下限の中間の時間」で計算します。
同じ月額・同じ稼働時間でも、精算幅を外れた月は、中間割の方がフリーランスの受け取る報酬が多くなりやすい形です。この記事では仮の数字で差を計算し、契約で確かめる点を整理します。精算幅そのものの仕組みは精算幅の記事で解説しています。
二つの方式の計算式
| 方式 | 超過単価 | 控除単価 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 上下割 | 月額÷上限時間 | 月額÷下限時間 | 超過は安く、控除は高く計算される |
| 中間割 | 月額÷中間の時間 | 月額÷中間の時間 | 超過と控除が同じ単価になる |
中間の時間は、上限と下限を足して2で割った時間です。精算幅140〜180時間なら160時間になります。
上下割では、超過するときは大きな数(上限)で割るため単価が低くなり、控除するときは小さな数(下限)で割るため単価が高くなります。精算幅を外れたとき、どちらの方向でもフリーランスにとって不利な方に働く形です。
仮の数字で計算する
ここからは、計算方法を説明するための仮の例です。実際の月額や精算幅は案件によって大きく変わります。
- 月額:60万円(仮の例)
- 精算幅:140〜180時間(仮の例)
- 単価の1円未満は切り捨てる契約と仮定
超過単価と控除単価
| 方式 | 超過単価 | 控除単価 |
|---|---|---|
| 上下割 | 60万円÷180時間=3,333円 | 60万円÷140時間=4,285円 |
| 中間割 | 60万円÷160時間=3,750円 | 60万円÷160時間=3,750円 |
超過単価は中間割の方が417円高く、控除単価は中間割の方が535円低くなります。
稼働時間ごとの報酬
| その月の稼働時間 | 上下割 | 中間割 | 差(中間割-上下割) |
|---|---|---|---|
| 120時間(20時間不足) | 514,300円 | 525,000円 | 10,700円 |
| 130時間(10時間不足) | 557,150円 | 562,500円 | 5,350円 |
| 140〜180時間 | 600,000円 | 600,000円 | 0円 |
| 190時間(10時間超過) | 633,330円 | 637,500円 | 4,170円 |
| 200時間(20時間超過) | 666,660円 | 675,000円 | 8,340円 |
精算幅の中に収まっている月は、どちらの方式でも月額どおりです。差が出るのは幅を外れた月だけで、外れる時間が長いほど差は大きくなります。この仮の例では、不足側の方が差が大きく出ています。
2か月を平均すると
上下割の性質が分かりやすいのが、稼働が上下にぶれた場合です。仮の例で、1か月目が130時間、2か月目が190時間だったとします。2か月の平均は160時間で、ちょうど中間です。
| 方式 | 1か月目(130時間) | 2か月目(190時間) | 2か月の合計 |
|---|---|---|---|
| 上下割 | 557,150円 | 633,330円 | 1,190,480円 |
| 中間割 | 562,500円 | 637,500円 | 1,200,000円 |
中間割では、平均が中間の時間ならちょうど月額2か月分になります。上下割では、平均が同じでも、控除が大きく超過が小さいため、合計が月額2か月分を下回ります。
精算幅の上限が高い場合
精算幅の広さによっても、方式の影響は変わります。同じ月額60万円で、精算幅が140〜200時間の仮の例を考えます。
| 方式 | 超過単価 | 控除単価 |
|---|---|---|
| 上下割 | 60万円÷200時間=3,000円 | 60万円÷140時間=4,285円 |
| 中間割 | 60万円÷170時間=3,529円 | 60万円÷170時間=3,529円 |
140〜180時間の例と比べると、上限が上がった分だけ、190時間稼働しても超過は付かず、月額どおりの60万円になります。さらに上限を超えたときの超過単価も下がります。上下割では、超過単価と控除単価の差も広がります。精算幅の上限が高い案件では、方式とあわせて「実際にどのくらい稼働しそうか」を確かめておくことが大切です。
方式以外に報酬を左右する取り決め
精算方式が同じでも、次の取り決めによって報酬は変わります。
超過単価・控除単価を金額で決めている契約
計算式ではなく、「超過単価◯円、控除単価◯円」のように金額を直接書いている契約もあります。その場合は、月額を上限・下限・中間の時間で割った金額と比べると、どの方式に近いかが分かります。
端数の処理と時間の単位
単価を10円単位や100円単位で切り捨てる、稼働時間を15分・30分・1時間の単位で数える、といった取り決めでも金額は変わります。たとえば仮の例で超過が10時間40分だった場合、30分単位なら10.5時間、1時間単位なら10時間として計算されます。小さな差でも、毎月続くと積み重なります。
下限の調整
祝日が多い月や、発注元の休業日がある月に、下限を日割りで調整する取り決めがある案件もあります。調整があれば、休みの多い月に控除される心配が減ります。上下割の案件では特に、この取り決めの有無が影響します。
どちらの方式になるかは誰が決めるのか
精算方式は、多くの場合、発注元の社内ルールや、発注元と間に入る会社との契約で決まっています。フリーランスとの契約は、その条件をもとに作られることが多いため、方式だけを個別に変えるのは難しい場合があります。
ただし、案件によっては相談できることもあります。相談するときは、方式の変更そのものより、次のような形で話を進める方がまとまりやすい傾向があります。
- 精算幅を、実際の稼働の見込みに合わせて設定し直してもらう
- 祝日の多い月の下限を調整してもらう
- 更新の時期に、月額の見直しとあわせて相談する
単価の見直しの進め方は単価交渉の記事で整理しています。
契約前に確かめておきたい項目
精算の条件は、参画してから気づくと変えにくいため、契約前に次の点を確認します。
- 精算幅:上限と下限の時間
- 精算方式:上下割・中間割・精算なしのどれか
- 単価の書き方:計算式か、金額か
- 端数の処理:単価と時間の端数の扱い
- 下限の調整:祝日や休業日の多い月の扱い
- 稼働時間の定義:休憩・移動・会議外の作業の扱い
2024年11月施行のフリーランス法では、発注事業者は業務を委託したら直ちに、報酬の額などの取引条件を書面またはメールなどで明示することとされています。精算の計算方法は報酬の額にかかわる条件なので、契約書や発注書に書かれているかを確認しておきましょう。契約書全体の見方は契約書のチェックポイントにまとめています。
よくある質問
上下割と中間割、どちらが多い方式ですか?
公的な統計はなく、発注元や案件によって違います。同じ発注元でも、案件ごとに方式が違うこともあります。案件を比べるときは、方式を担当者や契約書で確かめてください。
精算幅の中で働いていれば、方式は気にしなくてよいですか?
幅の中に収まっている月は、どちらの方式でも月額どおりなので影響はありません。ただし、祝日の多い月や、繁忙期に稼働が増える案件では、幅を外れる月が出やすくなります。参画前に、その案件で稼働が上下しやすい時期があるかを聞いておくと安心です。
精算なしの契約と比べると、どちらがよいですか?
精算なしは、稼働が少ない月も控除されない一方、どれだけ稼働しても超過分は加算されません。稼働が増えやすい案件では精算ありの方が、稼働が安定していて少なめの案件では精算なしの方が、受け取る金額の面で有利になりやすい傾向があります。想定の稼働時間を面談で確かめたうえで判断しましょう。