RPAエンジニアのフリーランス案件で求められるスキルと経験|可視化・例外処理・運用管理
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
RPAエンジニアのフリーランス案件では、シナリオを作る力に加えて、業務を可視化して自動化の対象を選ぶ力、想定外のデータや操作先の不調に備える例外処理の力、止まったときに戻せる運用の力、ロボットを台帳とルールで管理する力が見られます。製品の操作に詳しいことは前提で、その上で「本番で動き続けるか」を左右する設計ができるかが問われます。
この記事では、案件で問われるスキルを6つの分野に分け、経験の段階ごとに何ができると評価されやすいかを整理します。
スキルは6つの分野で整理すると伝わりやすい
| 分野 | 中身 | 特に問われる案件 |
|---|---|---|
| 業務の可視化と対象の選定 | 業務の流れを書き出し、自動化の範囲と効果を見積もる | 導入初期、業務の見直しを含む案件 |
| シナリオの設計 | 部品化、命名、変数とデータの扱い | 開発の案件全般 |
| 操作先への理解 | 画面の要素の捉え方、待ち方、表計算ソフトやWebの扱い | 業務システムを操作する案件 |
| 例外とやり直しの設計 | 想定外のデータ、停止・遅延、途中で止まったときのやり直し | 無人で動かす案件、データを書き換える案件 |
| 運用と保守 | 監視、ログ、復旧の手順、操作先の変更への追従 | 運用保守の案件 |
| 管理の仕組み | 台帳、開発のルール、リリースの判定、権限と認証情報 | 全社の推進や管理の案件 |
総務省の「自治体におけるRPA導入ガイドブック」(令和7年7月)も、導入の進め方(業務の選定、可視化、シナリオの作成とテスト)と、運用の進め方(体制、ルール、検証と維持管理)を分けて説明しています。案件の募集も、どちらの段階かで求めるスキルが変わります。
業務の可視化と対象の選定
RPAは、与えられた入力とシナリオのとおりに動くもので、人のようにその場で判断したり、迷ったら指示を仰いだりはできない、とガイドブックは説明しています。そのため、判断が要らない部分、または判断の条件をすべて書き出せる部分だけを切り出す作業が欠かせません。
- 手順の聞き取り:手順書にない「いつもこうしている」という判断を聞き出す
- 流れの図示:入力・処理・出力と、人が確かめている箇所を図にする
- 範囲の決定:ロボットに任せる部分と、人に残す部分を分ける
- 効果の見積もり:ロボットの準備や結果の確認にかかる時間も含めて見込む
ガイドブックは、1件あたりの処理時間では人より速いとは限らず、RPAが力を発揮するのは同じ処理を何件も繰り返すときだとしています。件数が少ない業務を自動化しない、と提案できることも、この分野の力に含まれます。
シナリオの設計と操作先への理解
部品化と命名
ガイドブックは、シナリオを複数に分け、繰り返し使う処理を部品として呼び出せるようにすること、処理や変数の名前を分かりやすくして作成者以外でも中身が分かるようにすることを勧めています。ログインやファイルの受け渡しなど、共通の処理を部品にしておくと、操作先の変更があったときに直す箇所を1か所にできます。
画面の捉え方と待ち方
画面を操作するロボットは、ボタンや入力欄をどう特定するかで安定性が大きく変わります。画面の位置や画像で捉えると、表示の大きさや配置が少し変わっただけで動かなくなることがあります。製品が用意している要素の特定方法の違いを理解し、操作先ごとに安定する方法を選べることが求められます。
あわせて、画面の表示を待つ処理も重要です。決まった秒数だけ待つ作りは、操作先が遅い日に失敗し、速い日には無駄な待ち時間が生まれます。
画面を通さない方法も選べる
表計算ソフトのファイルやCSVを直接読み書きできる場面や、操作先がデータの受け渡しの仕組みを用意している場面では、画面を操作しないほうが安定します。VBAエンジニアのスキルやPythonエンジニアのスキルで扱っている力を持っていると、手段を比べて選べるようになります。
例外とやり直しの設計
本番で止まらないロボットを作るうえで、最も差がつく分野です。ガイドブックは、想定外の入力データや、業務システムやWebサイトの停止・遅延に備えた例外処理を作ること、その際は無理に処理を続けず、職員の判断を入れるなどの安全策をとることを勧めています。
設計で考えておきたいのは次の点です。
- 入力の確かめ:処理の前に、データの形や件数が想定どおりかを確かめる
- 書き換えの前の確かめ:業務システムのデータを更新する前に、画面の表示が想定どおりかを確かめ、外れていたら止めるか飛ばす
- やり直しの設計:途中で止まったとき、処理済みの分を記録しておき、二重に登録しない形で続きから動かせるようにする
- 人への引き渡し:ロボットが処理しなかった分を一覧にし、担当者が確かめられるようにする
特に3つ目は、無人で動かすロボットで問われます。止まった場所が分からないまま最初から動かし直すと、同じデータを二重に登録するおそれがあります。
運用と保守
ガイドブックは、シナリオに不具合がなくても、操作先の業務システムの画面や処理、帳票やデータの仕様が変われば、その時点からロボットは意図どおりに動かなくなるとしています。運用の段階では、次の力が問われます。
- ログの設計:どこまで正しく動いたかを後から確かめられるよう、処理の記録を残す
- 検知と連絡:停止や誤作動に気づく方法と、誰に知らせるかを決める
- 復旧の手順:再実行の手順と、手作業に戻すときの手順を文書にする
- 変更への追従:操作先のシステムの改修予定を把握し、影響を受けるロボットを洗い出す
変更への追従は、ロボットの台帳があるかどうかで負担が大きく変わります。次の管理の分野とつながる力です。
管理の仕組み
担当者の異動などで管理されなくなったロボットは「野良ロボット」と呼ばれ、ガイドブックはセキュリティ上のリスクにもなりかねないとしています。全社の推進や管理の案件では、次のような仕組みを作る力が見られます。
- 台帳:ロボットごとの対象業務、自動化の範囲、動作環境、操作先のシステム、管理者と担当者を一元管理する
- 開発のルール:命名や変数の扱い、文書化、開発用の環境とテスト用のデータの使用を決める
- リリースの判定:着手、本番環境でのテスト、運用の開始のそれぞれで、確かめる項目と承認者を決める
- 権限と認証情報:ロボットの実行を制限し、認証情報を暗号化して保存する
ガイドブックの開発のルールの例には、ロボットの動作を動画で残すことや、手作業で代わりに行う手順を文書にすることも挙がっています。こうした文書の残し方は設計書・手順書を残す習慣も参考になります。
経験の段階ごとに求められること
| 段階 | できると評価されやすいこと |
|---|---|
| 開発を担える | 決まった手順を、部品化と例外処理を含めてシナリオにできる。テストの観点を書き出せる |
| 業務とつなげられる | 業務の担当者から手順を聞き取り、範囲と効果を見積もれる。運用の手順書まで作れる |
| 運用を任せられる | 無人で動かすロボットの監視・やり直し・変更への追従を設計できる |
| 全社を管理できる | 台帳、開発のルール、リリースの判定、教育の仕組みを作り、社内の担当者に引き継げる |
どの段階でも、周辺の技術として、文字を読み取る仕組み(AI-OCR)との組み合わせや、生成AIで文章を分類・要約する処理との組み合わせを経験していると、検討される案件が広がります。ガイドブックも、AI-OCRとRPAを組み合わせて、紙の申請書の内容をデータにし、システムに入力する一連の作業を効率化する使い方を紹介しています。生成AIの側の力は生成AIエンジニアのスキルの記事で扱っています。
資格とスキルシートでの伝え方
資格がなくても参画できる案件は多くあります。ITの基礎を示すならITパスポートや基本情報技術者の記事も参考になります。資格は知識の範囲を伝える材料で、面談では実務で担った分野と判断の理由のほうが詳しく聞かれます。
スキルシートでは、6つの分野のどれを担ったかを書き分けると、読み手が自分の案件に合うかを判断しやすくなります。書き方はRPAエンジニアのスキルシートの書き方をご覧ください。
よくある質問
どのRPA製品を覚えればよいですか?
案件によって使う製品は違うため、1つを深く使い、ほかの製品との考え方の違いを説明できるようにしておくのがおすすめです。部品化や例外処理、台帳での管理の考え方は製品が変わっても共通し、面談でもその理解が問われます。
業務の知識はどの程度必要ですか?
経理や人事など、特定の業務の知識があると、聞き取りが速く進み、手順書にない判断にも気づきやすくなります。ただ、すべての業務に詳しい必要はなく、初めての業務を聞き取って図にする力のほうが広く求められます。
生成AIの経験がないと、今後の案件で不利になりますか?
すぐに不利になるとは限りません。ただ、文書の読み取りや分類などでAIと組み合わせる案件は増えつつあります。RPAの側で例外処理と人への引き渡しを設計できる力は、AIと組み合わせるときにも土台になります。今後の動きはRPAエンジニアの将来性の記事で扱っています。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。