Dynamics 365コンサルがフリーランスになるには|必要な経験と独立までの進め方
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
Dynamics 365コンサルとしてフリーランスになるには、ERP系(Finance・Supply Chain Managementなど)かCRM系(Sales・Customer Serviceなど)かの軸を決め、要件定義から本番稼働までの導入を少なくとも一通り経験し、標準機能と業務の差をどう判断したかを自分の言葉で説明できることが目安です。
Dynamics 365は領域ごとに必要な知識が大きく違うため、「Dynamics 365の経験があります」だけでは、どの案件に合う人なのかが伝わりません。独立の準備は、自分の軸と経験の範囲をはっきりさせることから始めます。
最初に決める「ERP系かCRM系か」
Dynamics 365の案件は、多くの場合、どちらかの領域を前提に募集されます。両方の経験がある方も、まず主軸をどちらに置くかを決めておくと、スキルシートも面談の準備も組み立てやすくなります。
| 領域 | 前提になる知識 | 独立前に持っておきたい経験 |
|---|---|---|
| ERP系(財務と運用) | 会計、販売・購買、在庫、生産などの業務知識 | 一つ以上のモジュールで、設定・移行・テストまで担った経験 |
| CRM系(顧客対応) | 営業、問い合わせ対応、現場作業の手配などの業務知識 | 利用部門の要望を聞き、データとセキュリティの設計に落とした経験 |
| 中小企業向けERP(Business Central) | 会計から販売・購買まで幅広い業務知識 | 少人数で導入を回し、利用者の立ち上げまで見た経験 |
ERP系とCRM系では、使う画面も設計の考え方も違います。たとえばERP系では法人や勘定科目、転記の設定が後から変えにくい部分になり、CRM系ではデータの持ち方と、誰がどのデータを見られるかの設計が後から変えにくい部分になります。製品の違いはDynamics 365コンサルのスキルの記事で詳しく整理しています。
独立の目安になる経験
導入を一通り経験している
フリーランスの案件は、決まった工程の担当として参画することが多い一方、前後の工程を知っていることが前提になります。要件定義、標準機能との差の分析(Fit&Gap)、設定、データ移行、テスト、本番切り替え、稼働後の立ち上げ支援を、一つのプロジェクトで通して見た経験は、どの工程で参画しても生きます。
自分が判断した場面を話せる
面談で見られるのは、作業量より判断の中身です。次のような場面を一つずつ書き出しておきましょう。
- 要望をそのまま開発せず、標準の機能に業務の進め方を合わせてもらった
- 開発が必要な部分を限り、理由を説明して合意を得た
- 移行データの不整合を見つけ、業務部門と直し方を決めた
- 本番切り替えの前に、続けるか延ばすかの判断材料をまとめた
更新の仕組みを経験している
Dynamics 365はクラウドで提供され、機能が定期的に更新されます。Finance and Operations系のアプリでは、Microsoftのサービス更新がまずユーザー受け入れテスト(UAT)の環境に適用され、その後に本番に適用される流れで、顧客は更新に合わせて業務の検証を行います(Microsoft Learn「1 つのバージョンのサービス更新の概要」、2026年10月時点)。更新のたびに業務への影響を確かめた経験は、稼働後の保守案件でよく問われます。
会社員のうちに積んでおきたいこと
独立の前に、次のような経験を意識して取りにいくと、参画できる案件の幅が広がります。
- 業務知識の裏づけ:ERP系なら会計や物流、CRM系なら営業やコールセンターの業務を、利用者の立場で説明できるようにする
- データ移行:旧システムのデータを整理し、マスタや残高を移した経験。ERP系では残高の照合、CRM系では顧客データの重複の整理が論点になる
- 連携:ERP系とCRM系、または外部のシステムとのデータの受け渡しを設計した経験
- 旧製品からの移行:Dynamics AXやDynamics CRMなど、以前の製品からの置き換えに関わった経験
- Power Platformとの組み合わせ:画面の追加や自動化をPower Platformで補った経験。ただし主軸はDynamics 365の業務アプリに置く
特にERP系では、業務知識がない状態での参画は難しくなります。経理や物流の部門にいた経験、簿記の学習なども、業務の理解を示す材料になります。
認定資格の位置づけ
Microsoftは、Dynamics 365 Finance、Supply Chain Management、Customer Serviceなどの機能コンサル向けや、Finance and Operations系の開発者向けの認定資格を設けています。案件によっては歓迎要件として見られますが、資格だけで参画できるわけではありません。資格は名称や試験の構成が見直されることがあり、取得後も12か月ごとの更新が必要なものがあります。取り方はスキルの記事の認定資格の項目をご覧ください。
独立までの進め方
1. 領域×モジュール×役割で棚卸しする
関わったプロジェクトごとに、業種、利用者の規模、領域(ERP系かCRM系か)、モジュール、自分の役割、担った工程、判断した点を書き出します。手元のメモでは細かく書き、スキルシートに移すときに社名や固有の情報を伏せて整えます。書き方はDynamics 365コンサルのスキルシートの記事で解説しています。
2. 希望する条件を決める
- 稼働日数(週5日か、週3〜4日か)
- 出社の頻度とリモートの希望
- 希望する報酬の下限
- 担う領域と役割、受けない作業(例:開発中心の案件は受けない)
報酬の決まり方はDynamics 365コンサルの報酬の記事、働き方の傾向はDynamics 365コンサルのリモート案件の記事をご覧ください。
3. 手続きとお金の準備
独立したら、事業を始めた年分の確定申告期限までに、税務署へ開業届を出すことになっています(国税庁 No.2090、2026年10月時点)。届出や退職の手順は開業届の出し方と会社員からフリーランスになる手順にまとめています。税務の判断に迷う場合は、税理士にご相談ください。
4. 最初の案件を選ぶ
最初の案件は、これまでの領域とモジュールに近いものを選ぶと立ち上がりが早くなります。選び方は独立後の最初の案件の記事で解説しています。
契約で確かめておきたいこと
Dynamics 365の案件は、月単位で稼働する準委任契約が多い一方、帳票や連携の開発をまとめて引き受ける形では請負契約になっていることもあります。どちらかで責任の範囲や検収の扱いが変わります。違いは準委任契約と請負契約の違いで解説しています。
フリーランス法では、発注側は業務を委託したとき、業務の内容、報酬の額、支払期日などを、書面またはメールなどで直ちに明示する必要があります。報酬の支払期日は、給付を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間で定めることとされています(公正取引委員会の案内による、2026年10月時点)。
よくある質問
導入の経験が一つだけでも独立できますか?
案件によっては参画できます。ただ、一つの導入だけだと、その会社のやり方を製品の標準と取り違えて説明してしまうことがあります。保守や追加開発で別の環境にも触れ、何が標準で何がその会社独自かを区別できるようにしておくと、面談で説明しやすくなります。
SAPやSalesforceの経験は生かせますか?
ERPやCRMの業務知識、移行やテストの進め方は生かせます。ただ、フリーランスの案件ではDynamics 365での実務経験を求められることが多くあります。比べ方の参考としてS/4HANAで独立するにはやSalesforceで独立するにはもご覧ください。
Business Centralの経験だけでも案件はありますか?
Business Centralを対象にした案件もあります。中小規模の企業向けの導入では、少人数で会計から販売・購買まで見ることが多いため、広い範囲を担った経験は強みになります。Finance・Supply Chain Managementの案件に広げたい場合は、扱うデータ量や法人の数が違う点を意識して経験を補うと、説明しやすくなります。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。