開業届の出し方|フリーランスが出すタイミングと書き方
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
開業届(正式名は「個人事業の開業・廃業等届出書」)は、フリーランスとして事業を始めたときに、納税地を所轄する税務署へ出す届出です。2026年10月時点の所得税法229条と国税庁の手続き案内では、事業を始めた日の属する年分の確定申告期限までに提出することとされています。
ただし、初年度から青色申告を使いたい場合は、開業から2か月以内(1月16日以降に開業した場合)に「青色申告承認申請書」を出す必要があります。開業届と一緒に、開業したらすぐに出しておくのが、期限を逃さない一番簡単な方法です。
開業届を出す人と出すタイミング
対象は「事業所得などを生む事業を始めた人」
所得税法229条は、国内で新たに不動産所得・事業所得・山林所得を生む事業を始めた人や、事務所などを設けたり移転・廃止したりした人に、届出を求めています。業務委託契約で継続して報酬を受け取るフリーランスのエンジニアやコンサルは、事業所得として申告するのが一般的なため、多くの場合は対象になります。
会社員の副業で業務委託を受ける場合は、規模や継続性によって事業所得か雑所得かの判断が分かれます。判断に迷う場合は、税務署や税理士にご相談ください。
提出期限の考え方
| 届出・申請 | 期限(2026年10月時点) | 根拠 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 事業を始めた日の属する年分の確定申告期限まで | 所得税法229条 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 1月15日までの開業:その年の3月15日まで/1月16日以降の開業:開業日から2か月以内 | 所得税法144条 |
期限が土日・祝日などにあたる場合は、その翌日が期限になります。
解説記事によっては「開業から1か月以内」と書かれていることがありますが、2026年10月時点の国税庁の案内では、上記のとおり確定申告期限までとされています。制度は変わることがあるため、提出前に国税庁の手続きのページで最新の内容をご確認ください。
「開業日」はいつにするか
開業日は、事業を始めた日です。会社を辞めてフリーランスになる場合は、退職日の翌日や、最初の案件の契約開始日を開業日にするのが分かりやすい方法です。
開業日より前にかかった準備の費用(パソコンや書籍の購入など)も、事業のために使ったものであれば開業費などとして経費にできる場合があります。領収書は開業前から残しておきましょう。
開業届と一緒に出したい書類
青色申告承認申請書
青色申告は、決められた帳簿を付けることを条件に、青色申告特別控除などの特典を受けられる申告方法です。承認を受けるには、期限までに「所得税の青色申告承認申請書」を出す必要があります。
期限を過ぎると、その年は白色申告になります。翌年から青色申告にしたい場合は、翌年の3月15日までに申請します。控除の内容や帳簿の付け方は青色申告の記事で解説しています。
必要に応じて出す書類
| 書類 | 出す場面 |
|---|---|
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 生計を一にする家族に給与を払う場合 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 人を雇って給与を払う場合 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 給与を払う人が少なく、源泉所得税の納付をまとめたい場合 |
一人で業務委託の仕事をするフリーランスの場合、開業届と青色申告承認申請書の2つで足りることが多いです。
開業届の書き方
開業届は国税庁のホームページからダウンロードできるほか、e-Taxで作成して送ることもできます。主な記入欄は次のとおりです。
| 記入欄 | 書く内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 納税地 | 住所地(自宅)など | 自宅以外の事務所を納税地にすることもできる |
| 氏名・生年月日・個人番号 | 本人の情報 | マイナンバーを書く場合は本人確認書類が必要 |
| 職業 | 「ITエンジニア」「ITコンサルタント」など | 仕事の内容が伝わる言葉で書く |
| 屋号 | 事業の名前(任意) | 付けない場合は空欄でよい |
| 届出の区分 | 「開業」に丸を付ける | 新しく事業を始める場合 |
| 所得の種類 | 「事業(農業)所得」 | 業務委託の報酬は通常こちら |
| 開業・廃業等日 | 事業を始めた日 | 退職日の翌日、最初の契約開始日など |
| 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無 | 青色申告承認申請書を出すなら「有」 | 一緒に出す場合 |
| 事業の概要 | 具体的な業務内容 | 例:「システム開発・ITコンサルティングの受託」 |
| 給与等の支払の状況 | 人を雇わないなら空欄 | 家族に給与を払う場合は記入 |
職業と事業の概要の書き方
職業と事業の概要は、仕事の内容が分かるように具体的に書きます。たとえば「Webシステムの設計・開発の受託」「業務システム導入のプロジェクト管理支援」のように書くと、どんな事業かが伝わります。
屋号は付けなくてもよい
屋号は任意です。付けると、請求書や事業用口座の名義に使えます。あとから変えることもできますが、口座名義などの変更の手間がかかります。決め方は屋号の記事で解説しています。
提出方法は3つ
国税庁の案内では、次のいずれかの方法で提出できます。
- e-Taxで送信する:マイナンバーカードなどで電子申告します。本人確認書類の添付は不要です
- 郵送する:納税地を所轄する税務署へ送ります。控えに受付印がほしい場合は、控えと返信用封筒を同封します
- 税務署の窓口に持参する:受付時間は税務署によって異なるため、事前に確認してから行きます
書面で出し、マイナンバーを書く場合は、本人確認書類(マイナンバーカードの写しなど)を添付します。民間の会計ソフトの中には、質問に答えると開業届を作成できるものもあります。
開業届を出したあとにやること
開業届を出したら、次の準備も進めます。
- 事業用の口座とクレジットカードを分ける:経費の管理と帳簿付けが楽になります(事業用口座の記事)
- 帳簿を付け始める:青色申告をするなら、開業日からの取引を記録します
- 請求書の形式を決める:インボイス登録をするかどうかも、取引先と相談して決めます
事務所の移転や廃業のときも同じ届出書を使う
開業届と同じ「個人事業の開業・廃業等届出書」は、事務所を設けたり移転したりしたとき、事業をやめたときにも使います。所得税法229条でも、開業だけでなく、事務所などの設置・移転・廃止が届出の対象とされています。
たとえば、フリーランスとして数年働いたあとに会社員に戻る場合や、法人化して個人事業をやめる場合は、「廃業」に丸を付けて提出します。法人化を考えるタイミングは法人化の記事で整理しています。
書き始める前に決めておく5つのこと
記入欄で迷わないよう、次の5つを先に決めておくと、スムーズに書き進められます。
- 開業日:退職日の翌日か、最初の案件の契約開始日か
- 納税地:自宅の住所でよいか
- 屋号:付けるか、付けるならどんな名前か
- 職業と事業の概要:仕事の内容をどう書くか
- 青色申告にするか:するなら承認申請書も同時に用意する
退職と同時に開業する場合は、健康保険と年金の切り替えも並行して必要です。手続きの期限は退職後の手続きの記事にまとめています。
よくある質問
開業届を出し忘れたらどうなりますか?
所得税法では提出が求められているため、気づいた時点で早めに提出しましょう。開業届を出していないと、事業用口座の開設などで事業の実態を示しにくくなることがあります。また、青色申告承認申請書を期限内に出していないと、その年は青色申告の特典を受けられません。
副業で業務委託を受けている会社員も開業届は必要ですか?
副業の収入が事業所得にあたる場合は、提出の対象になります。継続して一定の規模で行っているかどうかなどによって、事業所得か雑所得かの判断が分かれます。判断に迷う場合は、税務署や税理士にご相談ください。
開業届を出すと失業給付は受け取れなくなりますか?
雇用保険の基本手当(失業給付)は、就職しようとする積極的な意思と能力がありながら、職業に就けない「失業の状態」にある人が対象です。事業を始めて働いている間は、この状態にあたらないと判断されるのが一般的です。離職後に事業を始めた人向けに、受給期間を延ばす特例もあります。個別の扱いは住所地のハローワークでご確認ください。
参考にした公的情報・資料
- 個人事業の開業・廃業等届出書の提出手続(国税庁)
- 所得税法 第229条(e-Gov法令検索)
- 所得税の青色申告承認申請手続(国税庁)
- 基本手当について(ハローワークインターネットサービス)
- No.2090 新たに事業を始めたときの届出など(国税庁)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。