会社員からフリーランスになる手順|退職前にやっておくこと
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
会社員からフリーランスになるときは、退職前に「生活資金」「会社員のうちに済ませたい契約」「最初の案件の見通し」を整え、退職後に健康保険・年金・税金の手続きを期限内に済ませるのが基本の順番です。
退職の手続きそのものは難しくありません。損をしやすいのは、会社員の信用があるうちにしかできないことを後回しにしたり、退職後の切り替えの期限を過ぎたりするケースです。この記事では、退職の半年前から独立後1か月までを時系列で整理します。
独立までの流れを時系列で見る
まず全体像です。時期は目安で、案件の決まり方や会社の規則によって前後します。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 退職の3〜6か月前 | 生活資金の確認、独立後の働き方(稼働日数・リモート・希望金額)の整理、就業規則の確認 |
| 退職の2〜3か月前 | クレジットカード・ローンなど会社員の信用で済ませたい契約、スキルシートの作成、案件の情報収集 |
| 退職の1〜2か月前 | 退職の申し出、引き継ぎの計画、最初の案件の面談・参画日の調整 |
| 退職日まで | 引き継ぎ、有給休暇の消化、会社から受け取る書類の確認 |
| 退職後すぐ(14〜20日以内) | 健康保険の切り替え、国民年金の手続き |
| 開業後 | 開業届・青色申告承認申請書の提出、事業用口座の準備 |
退職の3〜6か月前:お金と働き方を決める
生活資金は「入金までの期間」で考える
フリーランスの報酬は、働いた月の翌月以降に支払われるのが一般的です。参画した月の報酬が口座に入るまで、1〜2か月ほど収入がない期間ができることがあります。さらに、独立1年目は住民税や国民健康保険料が前年の会社員時代の所得をもとに計算されるため、収入が少ない時期に負担が重く感じやすい点にも注意が必要です。
案件が途切れたときや、参画まで時間がかかったときに備えて、数か月分の生活費と、税金・保険料の支払いに充てるお金を分けて確保しておくと安心です。
独立後の働き方の条件を言葉にする
案件を探す前に、次の条件を決めておくと話が早く進みます。
- 週何日、1日何時間くらい稼働したいか
- リモート中心か、出社してもよいか(通える範囲はどこまでか)
- 希望する報酬の下限
- 得意な領域と、次に経験したい領域
希望の報酬額は、会社員の年収をそのまま月で割るのではなく、税金・社会保険料・経費・案件がない期間も含めて考えます。単価の決まり方はフリーランスの単価の仕組みで整理しています。
就業規則で確認したい3つの項目
- 退職の申し出の期限:「退職の1か月前までに申し出る」などの定め
- 競業避止・副業の規定:退職後に同業の仕事を受けることを制限する定めがないか
- 退職金・持株会などの扱い:退職日によって受け取り額が変わるものがないか
法律上は、期間の定めのない雇用であれば、解約の申し入れから2週間で雇用は終了するとされています(民法627条1項)。ただし、実務では引き継ぎの時間も必要です。就業規則の期限を目安に、余裕を持って伝える方が、退職後の関係も良好に保ちやすくなります。
退職の2〜3か月前:会社員のうちに済ませること
クレジットカード・ローン・賃貸の契約
クレジットカードの申し込み、住宅ローン、賃貸住宅の契約などの審査では、勤務先や勤続年数、安定した収入が見られることがあります。独立直後は事業の実績がないため、会社員のときより審査で不利になる場合があります。必要なものは在職中に検討しておくと安心です。具体的には独立前に済ませておく準備で詳しく解説しています。
スキルシートと案件探しの準備
フリーランスの案件は、参画の1〜2か月前に募集されるものが多い傾向があります。退職日が決まってから探し始めると、空白期間ができやすくなります。スキルシート(職務経歴を案件向けにまとめたもの)を早めに作り、どの時期から参画できるかを伝えられる状態にしておきます。
退職の1〜2か月前:申し出と引き継ぎ
退職の伝え方
退職の意思は、まず直属の上司に口頭で伝え、その後、会社の手続きに沿って退職届を出すのが一般的です。退職理由は「独立して業務委託で働くため」と簡潔に伝えれば十分です。今の会社と業務委託で仕事をする可能性があるなら、この時点で相談してみる方法もあります。
最初の案件の参画日を決める
最初の案件の参画日は、退職日と有給休暇の消化を考えて決めます。退職日より前に別の会社の業務を始めると、就業規則の副業規定に触れることがあります。参画日は退職日の翌日以降にしておくと、トラブルを避けやすくなります。
退職日までに会社から受け取るもの
退職後の手続きに使う書類は、退職日の前後に会社から受け取ります。受け取る予定のものと時期を、人事の担当者に確認しておきます。
| 書類 | 主な使い道 |
|---|---|
| 源泉徴収票 | 退職した年の確定申告 |
| 健康保険資格喪失の証明 | 国民健康保険への加入手続き |
| 離職票 | 雇用保険(失業給付)の手続き、国民年金の手続きで求められることがある |
| 年金の基礎年金番号が分かる書類 | 国民年金の手続き |
健康保険証を返却する場合は、退職日の翌日以降に使わないよう注意します。
退職後すぐ:健康保険と年金の切り替え
会社を辞めると、翌日から会社の健康保険と厚生年金の資格を失います。フリーランスとして働き始める場合は、自分で切り替えの手続きをします。
健康保険は3つから選ぶ
| 選択肢 | 手続きの期限 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 国民健康保険 | 資格を得てから14日以内(市区町村) | 他の健康保険に入らない人 |
| 任意継続 | 資格を失った日(退職日の翌日)から20日以内 | 退職日までに継続して2か月以上の被保険者期間がある |
| 家族の扶養に入る | 家族の勤務先を通じて手続き | 収入などの条件を満たす場合 |
任意継続は最長2年間で、保険料は在職中の本人負担分の2倍が目安になります(上限あり)。国民健康保険料は前年の所得や市区町村によって変わるため、両方の金額を比べてから選びます。比べ方は任意継続と国民健康保険のどちらを選ぶかで解説しています。
国民年金への切り替えは14日以内
厚生年金から国民年金の第1号被保険者に切り替える手続きは、退職日の翌日から14日以内に、住所地の市区町村役場で行います(日本年金機構の案内)。配偶者の扶養に入る場合は第3号被保険者の手続きになります。退職後の手続きの全体は退職後の手続きの記事にまとめています。
開業後:開業届と青色申告の申請
事業を始めたら、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を提出します。2026年10月時点の国税庁の案内では、事業を始めた年分の確定申告期限までに提出するとされています。
青色申告を最初の年から使いたい場合は、別に「所得税の青色申告承認申請書」が必要です。1月16日以降に開業した場合、開業日から2か月以内が期限です。開業届と一緒に出しておくと、期限を逃しにくくなります。書き方は開業届の出し方で解説しています。
よくある質問
退職してから案件を探しても間に合いますか?
間に合う場合もありますが、空白期間ができやすくなります。案件は参画の1〜2か月前に募集されることが多いため、退職日が見えてきた段階で情報収集や面談を始めておくと、退職後すぐに参画しやすくなります。在職中に面談を受ける場合は、勤務時間外に設定するなど今の会社に配慮しましょう。
退職の申し出は何か月前にすればよいですか?
民法では、期間の定めのない雇用は申し入れから2週間で終了するとされています。ただし、多くの会社は就業規則で「1か月前まで」などの期限を決めています。引き継ぎの期間も考えて、就業規則の期限より早めに伝えるのが現実的です。
開業届を出すと失業給付は受け取れませんか?
雇用保険の基本手当(失業給付)は、就職しようとする積極的な意思と能力がありながら、職業に就けない「失業の状態」にある人が対象です。事業を始めて働いている間は、この状態にあたらないと判断されるのが一般的です。なお、離職後に事業を始めた人が事業を行っている期間を、一定の要件のもとで最大3年間、受給期間に算入しない特例があります。開業と失業給付・再就職手当の関係は失業保険の記事で整理しています。個別の扱いは、住所地のハローワークでご確認ください。
参考にした公的情報・資料
- 民法 第627条(e-Gov法令検索)
- 国民年金に加入するための手続き(日本年金機構)
- 任意継続(全国健康保険協会)
- 国民健康保険の加入・脱退について(厚生労働省)
- 個人事業の開業・廃業等届出書の提出手続(国税庁)
- 所得税の青色申告承認申請手続(国税庁)
- 基本手当について(ハローワークインターネットサービス)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。