準委任契約と請負契約の違い|フリーランスが知っておくべきこと
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
準委任契約は「決められた業務を行うこと」に、請負契約は「仕事を完成させること」に報酬が支払われる契約です。どちらも「業務委託契約」と呼ばれますが、負う責任、報酬を受け取れる条件、途中で契約をやめるときの扱いが違います。
フリーランスのエンジニアやコンサルが受ける案件は、月単位で稼働し、作業時間で精算する準委任が多い傾向があります。ただし、契約書の名前ではなく中身で判断されるため、何を約束しているのかを条文で確かめることが大切です。
準委任と請負は「何に対して報酬が出るか」が違う
民法では、請負は「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払う」契約とされています(民法632条)。報酬の対象は、完成した成果物です。
一方、委任は法律行為を任せる契約で(民法643条)、法律行為以外の事務を任せる場合を準委任と呼び、委任のルールが準用されます(民法656条)。システムの設計・開発支援、PMO、コンサルティングといった業務は、この準委任にあたるのが一般的です。準委任では、業務を行うこと自体が約束の中身になります。
| 比べる点 | 準委任契約 | 請負契約 |
|---|---|---|
| 約束すること | 決められた業務を行う | 仕事を完成させる |
| 報酬の対象 | 業務を行ったこと(時間・期間) | 完成した成果物 |
| 主な責任 | 善良な管理者の注意をもって業務を行う義務 | 契約内容に合った成果物を引き渡す義務 |
| 成果が出なかったとき | 注意義務を果たしていれば、原則として報酬を受け取れる | 完成しなければ、原則として報酬を受け取れない |
| フリーランス案件での例 | 月額で稼働するSES型の開発支援、PMO、コンサル | 機能やシステムの受託開発、Webサイト制作の一括受注 |
準委任で負う責任は「善管注意義務」
準委任では、受任者(業務を受けた側)は「善良な管理者の注意」をもって業務を行う義務を負います(民法644条)。その職業の人として通常求められる水準の注意を払い、誠実に業務を行う義務です。
たとえばPMOとして参画した場合、プロジェクトの成功そのものを約束しているわけではありません。進捗管理や課題管理を、専門家として期待される水準で行うことが求められます。そのため、成果が出なかったことだけを理由に報酬が支払われない、ということは原則としてありません。
ただし、明らかな手抜きや、専門家なら当然確認することを怠った結果として損害が出た場合は、注意義務違反として責任を問われることがあります。
成果に対して報酬が出る準委任もある
2020年4月に施行された改正民法では、委任の報酬について2つの型が整理されました。
- 履行割合型:業務を行った割合に応じて報酬を受け取る(民法648条)
- 成果完成型:業務の結果として成果が得られたときに報酬を受け取る(民法648条の2)
成果完成型の準委任は、成果物の引き渡しと同時に報酬を支払う形になり、請負に近い面があります。それでも、仕事の完成そのものを約束する請負とは区別されます。契約書に「成果物」「検収」といった言葉が出てくる準委任の場合は、どちらの型かを確かめておくと安心です。
請負で負う責任は「完成」と「契約不適合責任」
請負では、仕事を完成させて引き渡す義務を負います。引き渡した成果物が種類・品質・数量について契約の内容に合わない場合、注文者は修補などの追完、報酬の減額、損害賠償、契約の解除を求めることができます(民法559条により売買の規定を準用)。これを契約不適合責任と呼びます。
注文者が不適合を知ってから1年以内に通知しないと、原則としてこれらの請求はできなくなります(民法637条)。ただし、契約で期間や範囲を変えていることも多いため、契約書の「契約不適合責任」「瑕疵担保」の条項は必ずご確認ください。
報酬の受け取り方の違い
準委任:稼働時間や期間に応じて受け取る
フリーランスの準委任案件では、「月額◯万円、精算幅140〜180時間」のように、月額と稼働時間の幅を決める形がよく使われます。実際の稼働時間が幅の上限を超えれば超過分が支払われ、下限を下回れば控除される仕組みです。精算の計算方法は案件によって違うため、精算幅の記事もあわせてご覧ください。
準委任では、契約期間の途中で業務が終わったり、契約が終了したりした場合でも、すでに行った業務の割合に応じて報酬を請求できます(民法648条3項)。
請負:完成・引き渡しのあとに受け取る
請負の報酬は、原則として仕事の目的物の引き渡しと同時に支払われます(民法633条)。開発が長期にわたる案件では、工程ごとに分けて契約したり、中間金を設定したりすることもあります。完成までに想定外の作業が増えても、契約で追加報酬を決めていなければ請求が難しくなる点に注意が必要です。
途中で契約をやめるときの扱い
準委任は、原則としていつでも解除できる
委任(準委任を含む)は、各当事者がいつでも解除できるとされています(民法651条1項)。ただし、相手方に不利な時期に解除した場合などは、やむを得ない事由がない限り、損害を賠償しなければなりません(同条2項)。
実務では、契約書で「1か月前までに通知する」のように予告期間を決めていることが一般的です。また、2024年11月に施行されたフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、6か月以上の業務委託を発注者が中途解除したり、更新しなかったりする場合、原則として少なくとも30日前までに予告することが求められています。詳しくはフリーランス新法の中途解除の記事で解説しています。
請負は、完成前なら注文者が解除できる
請負では、仕事が完成する前であれば、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できます(民法641条)。また、完成前に契約が解除された場合でも、すでに行った仕事の結果のうち、可分な部分で注文者が利益を受けるときは、その割合に応じて報酬を請求できます(民法634条)。
フリーランス案件で多いのは準委任
フリーランスのエンジニア・ITコンサル・PM/PMOの案件は、プロジェクトに参画して月単位で稼働する準委任が中心です。理由は大きく2つあります。
- 仕様が途中で変わりやすい:システム開発やコンサルティングは、進めながら要件が固まることが多く、最初に完成形を決めにくい
- チームの一員として動く:既存のプロジェクトチームに加わり、会議への参加や他のメンバーとの連携が前提になる
一方、範囲がはっきりした開発(特定の機能の実装、Webサイト制作など)は、請負で受けることもあります。同じ人でも案件ごとに契約形態が変わるため、案件のご案内を受けた段階で契約形態を確認しておきましょう。
「準委任なのに指揮命令される」場合の注意点
準委任でも請負でも、業務を受けた側は自分の判断で業務を進めるのが前提です。発注者がフリーランスに対して、労働者のように直接細かく指揮命令し、勤務時間や場所を管理している場合は、契約の名前が業務委託でも実態として問題になることがあります。
厚生労働省は、労働者派遣と請負(業務委託)の区分について、契約の形式ではなく実態で判断するという考え方を示しています(「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」)。偽装請負の考え方や、フリーランスとして気をつけることは偽装請負の記事で詳しく解説しています。
契約書で確認したい5つのポイント
準委任か請負かにかかわらず、参画前に次の点を確認しておくと、トラブルを防ぎやすくなります。
- 契約形態:準委任か請負か。準委任なら履行割合型か成果完成型か
- 業務の範囲:何をするのか、何はしないのか。成果物の定義はあるか
- 報酬と精算方法:月額、精算幅、超過・控除の計算方法、支払期日
- 責任の範囲:契約不適合責任の期間、損害賠償の上限
- 解除の条件:予告期間、途中解除のときの報酬の扱い
ほかにチェックしたい条項は業務委託契約書のチェックポイントにまとめています。個別の契約の判断に迷う場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。
よくある質問
SES契約は準委任と請負のどちらですか?
SES(システムエンジニアリングサービス)と呼ばれる契約は、エンジニアの技術的な業務の提供を約束する準委任契約として結ばれることが一般的です。ただし、契約書の名前ではなく中身で判断されるため、成果物の完成を約束する条項がないかを確認してください。
準委任契約で成果物を求められることはありますか?
あります。2020年4月施行の改正民法で、成果が得られたときに報酬を支払う「成果完成型」の準委任が明記されました。ドキュメントやレポートの納品を条件にする準委任もあるため、報酬の支払条件と検収の有無を契約書で確認しておくと安心です。
請負で受けた案件が完成しなかった場合、報酬はもらえませんか?
原則として、仕事を完成させて引き渡さないと報酬は請求できません。ただし、注文者の責めに帰することができない事由で完成できなくなった場合や、完成前に契約が解除された場合は、すでに行った仕事のうち注文者が利益を受ける部分について、その割合に応じて報酬を請求できます(民法634条)。具体的な事案は専門家にご相談ください。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。