財務・経理コンサルタントのフリーランスの将来性とキャリアの広げ方
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
財務・経理コンサルタントの仕事は、開示と会計の制度が変わるたびに、決算の手順や社内の仕組みを組み直す必要が生まれるため、テーマを変えながら続いていく分野です。2026年10月時点でも、半期報告書への移行、内部統制の基準の改訂、サステナビリティ情報の開示の義務化、新しいリース会計基準と、手順の見直しを伴う変化が重なっています。
一方で、定型の作業は自動化が進み、「締めを手伝う人」の仕事は形を変えつつあります。この記事では、公式に公表されている動向を確かめたうえで、仕事の変わり方と、経験の段階に応じた広げ方を整理します。
公式に公表されている主な動向(2026年10月時点)
| 動向 | 公表されている内容 | 財務・経理の仕事への影響 |
|---|---|---|
| 四半期報告書の廃止と半期報告書 | 金融商品取引法の改正で四半期報告書の制度が廃止され、上場会社は半期報告書を提出する形になった。関係する規定は2024年4月1日に施行予定と金融庁が公表 | 四半期の開示の体制と、半期の開示の手順の見直し |
| 内部統制の基準の改訂 | 企業会計審議会が2023年4月に改訂の意見書を公表。2024年4月1日以後に開始する事業年度の評価と監査から適用 | 評価範囲の考え方の見直し、不正のリスクやITの委託業務への対応 |
| サステナビリティ情報の開示 | 2026年2月公表の開示府令の改正で、東京証券取引所プライム市場の会社のうち平均時価総額1兆円以上の会社に、サステナビリティ開示基準に沿った開示が求められることになった。3兆円以上の会社は2027年3月31日以後、それ以外の対象会社は2028年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書から | 非財務の数字を集める手順と統制づくり、財務の開示との日程の調整 |
| 新しいリース会計基準 | 企業会計基準委員会が2024年9月に企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」などを公表 | 契約の洗い出し、資産と負債の計上の手順、固定資産や支払の管理との連携 |
いずれも、内容は金融庁と企業会計基準委員会の公表資料で確かめたものです。適用の時期や経過措置は会社の決算期や規模で変わるため、個別の会社の対応は、基準の本文と監査人との協議でご確認ください。
税の制度の側でも、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応で、請求書の受け取りや証憑の保存の仕組みを見直す会社が続いています。制度の中身は電子帳簿保存法の記事とインボイス制度の基本で解説しています。
制度の変化が生む仕事
非財務の数字を「締める」仕組みづくり
サステナビリティ情報の開示では、温室効果ガスの排出量や人的資本の指標など、経理部の外で集められてきた数字を、有価証券報告書の日程にあわせて集め、確かめる仕組みが必要になります。数字を集める手順、締めの日程、確認と承認の流れは、財務の決算で培った考え方がそのまま生きる分野です。対象となる会社は時価総額で段階的に定められているため、まず大きな会社から体制づくりが進むと考えられます。
内部統制の「数」から「要所」へ
改訂後の内部統制の基準では、評価範囲を決めるときに、例示されている数値の目安を機械的に当てはめず、財務報告への影響の大きさを考えることが求められています。統制の文書を毎年同じ形で更新する仕事より、どこにリスクがあり、どこに統制を置くかを考え直す仕事の比重が高まっていくと考えられます。
会計基準の変更への対応
新しいリース会計基準のように、会計処理が変わる基準が公表されると、契約の情報を集める手順、計上の方法、システムとの連携を決め直す必要が出てきます。会計の論点を整理し、経理の手順に落とし込む役割は、システムの設定を担う人とは別に求められます。システム側の動向はSAP FI/COコンサルの将来性の記事で扱っています。
開示の日程の組み直し
四半期報告書の制度が廃止され、上場会社が提出する書類は半期報告書になりました。金融庁の公表資料では、施行日以後に開始する四半期会計期間については四半期報告書の提出が不要になり、半期報告書は施行日以後に開始する事業年度から提出するとされています。開示の書類が変わると、締めの日程、監査人のレビューの時期、社内の承認の流れも見直しの対象になります。
さらに、サステナビリティ情報の開示が加わる会社では、財務の数字と非財務の数字を同じ有価証券報告書に載せるため、両方の締めの日程をそろえる必要が出てきます。開示の日程全体を見渡し、どの数字をいつまでに確定させるかを組み立てる仕事は、決算早期化の経験と直接つながる分野です。
自動化が進む中で残る仕事
請求書の受け取りの電子化、仕訳の自動作成、照合の自動化などが進むと、締めの作業の量は減っていきます。そのとき、財務・経理コンサルに残るのは次のような仕事です。
- 例外の扱いを決める:自動で処理できない取引を見つけ、その扱いの手順を決める
- 仕組みが正しく動いているかを確かめる:自動化した処理に統制をどう組み込むか、監査人にどう説明するかを設計する
- 数字の意味を経営に伝える:管理会計の指標を選び、経営層の判断に使える形に整える
作業を自動化する道具の使い方を覚えることも役立ちますが、それ以上に、「どの作業を自動化し、どこに人の判断を残すか」を決められる人が求められます。働き方全体への影響はAIで仕事はどう変わるかの記事でも解説しています。
経験の段階に応じた広げ方
締めの実務が中心の方
まずは、今の得意な分野で「仕組みを変えた経験」を一つ作ることをおすすめします。締めの手順の見直しや、手作業の照合の自動化など、小さな改善でも、改善を任せられる人として見てもらうきっかけになります。そのうえで、連結や管理会計など、隣の分野に一つ広げると、応募できる案件の幅が広がります。
改善の設計を担ってきた方
制度の変化に合わせたテーマを一つ加えると、案件の幅が広がります。サステナビリティ情報の開示の体制づくり、新しいリース会計基準への対応、内部統制の評価範囲の見直しなどは、決算の手順を設計してきた経験と相性のよいテーマです。
全体の推進役を担ってきた方
グループ全体の締め方の統一や、買収した会社の取り込み、会計システムの入れ替えと決算の見直しを同時に進める案件など、複数の分野をまたぐ仕事が視野に入ります。買収後の統合の進め方はM&A・PMIコンサルタントの将来性の記事も参考になります。
監査法人から来た方
監査の側で見てきた論点や内部統制の評価の経験は、制度の変化に対応する会社の側で生かせます。会社の側では、監査人に説明する資料をどう作り、どの順番で締めるかを自分で決める立場になります。会社の側で手順を回した経験を一つ作っておくと、改善の設計を任される案件にも応募しやすくなります。
システムの側から来た方
会計システムの経験がある方は、システムの設定より前の、「どう締め、どう統制するか」を決める工程に関わる経験を足すと、財務・経理コンサルとしての幅が広がります。業務コンサル全体の広げ方は業務コンサルタントの将来性の記事で扱っています。
よくある質問
自動化が進むと財務・経理コンサルの仕事は減りますか?
締めの作業そのものは減っていくと考えられますが、自動化の範囲を決める仕事、例外の扱いを決める仕事、統制を組み込む仕事は残ります。作業を担う立場から、仕組みを決める立場へ移る準備をしておくことをおすすめします。
サステナビリティ情報の開示は、財務・経理の経験で対応できますか?
数字を集めて確かめる手順や、開示の日程の管理は、財務の決算と考え方が近い仕事です。ただ、温室効果ガスの算定の方法などは、別の専門知識が必要になります。財務の経験を土台に、必要な知識を足していく形が現実的です。
年齢が上がっても続けられる分野ですか?
会計の論点を判断した経験や、監査人との協議の経験は、年数とともに積み上がります。最新の制度への理解を保ち続けることが前提ですが、経験を生かしやすい分野です。40代・50代での働き方は、財務・経理コンサルタントの年齢の記事で扱います。
参考にした公的情報・資料
- 「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」等の公布及びパブリックコメントの結果について(金融庁・2026年2月20日)
- 令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等の公表について(金融庁・2023年12月8日)
- 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準の改訂について(意見書)(企業会計審議会・金融庁)
- 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表(企業会計基準委員会)
- 電子帳簿等保存制度特設サイト(国税庁)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。