電子帳簿保存法|フリーランスが対応することは電子取引データの保存
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
フリーランスが電子帳簿保存法で対応しなければならないのは、「電子取引データの保存」です。メールやWebサイトで受け取った、または送った請求書・領収書・契約書などのデータは、紙に印刷して終わりにせず、データのまま保存します。
前々年の売上高が5,000万円以下なら、改ざんを防ぐ措置(事務処理規程でも可)をとり、税務調査でデータの提出を求められたときに応じられるようにしておけば、検索機能の要件は不要です。帳簿や紙の書類を電子で保存する制度は、希望する人だけが使うものです。この記事では、国税庁の資料をもとに、やることを整理します(2026年10月時点)。
電子帳簿保存法の3つの制度
国税庁は、帳簿や請求書などを紙ではなく電子データで保存する制度を、次の3つに分けて説明しています。
| 制度 | 内容 | 対応 |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 会計ソフトなどで作った帳簿や決算書を、データのまま保存する | 希望者のみ |
| スキャナ保存 | 紙で受け取った領収書や請求書を、スキャンして保存する | 希望者のみ |
| 電子取引データ保存 | データで受け取った・送った取引の書類を、データのまま保存する | 法人・個人事業者は対応が必要 |
つまり、紙で受け取った領収書は紙のまま保存してかまいません。対応が必要になるのは、最初からデータでやり取りしたものです。
保存が必要な電子取引データ
国税庁によると、保存が必要なのは、書面でやり取りしていれば保存が必要だった書類(注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書など)にあたる電子データです。受け取ったものだけでなく、自分が送ったものも対象です。
フリーランスのエンジニアやコンサルなら、次のようなデータが当てはまります。
- 取引先に送った請求書のPDF(メール添付・請求書の送付サービスなど)
- 電子契約で結んだ業務委託契約書・個別契約書
- メールで受け取った見積書・発注書
- クラウドサービスやサーバーの利用料の請求書・領収書(管理画面からダウンロードするもの)
- ネット通販で買った機器や書籍の領収書
保存する範囲は、紙で保存していたときと変わりません。これまで印刷して保存していたものを、データのまま残すと考えるとわかりやすくなります。
保存のルールは3つ
国税庁は、電子取引データの原則的な保存のルールを次の3つにまとめています。
- 改ざん防止のための措置をとる
- 保存したデータを確認するためのディスプレイやプリンタなどを備え付ける
- 「日付・金額・取引先」の3つで検索できるようにする
1. 改ざん防止は「事務処理規程」でも満たせる
改ざん防止の措置は、次のいずれかです。
- タイムスタンプが付いたデータを受け取る
- 受け取ったデータにタイムスタンプを付ける
- 訂正・削除の履歴が残る(または訂正・削除できない)システムでやり取り・保存する
- 改ざん防止のための事務処理規程を作り、そのとおりに運用し、備え付ける
専用のシステムを入れなくても、事務処理規程を作って守れば満たせます。国税庁のホームページに規程のサンプルが載っているため、個人事業者向けのものを自分の名前に置き換えて使うのが手軽です。
2. ディスプレイやプリンタの備え付け
業務で使うパソコンとディスプレイがあれば、通常は満たしています。保存したデータをすぐに画面に表示し、必要なら印刷できる状態にしておきます。
3. 検索の要件は売上5,000万円以下なら不要にできる
国税庁によると、基準期間(2年前)の売上高が5,000万円以下の人は、税務調査などの際に電子取引データの「ダウンロードの求め」に応じられるようにしていれば、検索の要件を満たす必要はありません。多くのフリーランスはこれに当てはまります。
それでも、後から探しやすいように整理しておくと便利です。国税庁は、検索の要件を簡単に満たす方法として、次の2つを示しています。
- 表計算ソフトで索引簿(連番・日付・金額・取引先・書類の種類の一覧)を作る
- ファイル名を「日付_金額_取引先」の規則で付け、特定のフォルダにまとめる
たとえば「20261031_550000_取引先名_請求書.pdf」のように名前を付け、年ごとのフォルダに入れておく方法です。
一人で回せる保存の手順
フリーランスが最小限の手間で対応するなら、次の手順が現実的です。
- 事務処理規程を作り、保存しておく(国税庁のサンプルを使う)
- 「電子取引」用のフォルダを年ごとに作る
- 受け取った・送った請求書や領収書のデータを、そのフォルダに保存する
- ファイル名を「日付_金額_取引先」の規則で付ける
- メールの本文に金額などが書かれているだけの取引は、そのメールをPDFなどで保存する
- 保存したデータは消さない・上書きしない
会計ソフトや請求書のサービスにデータを保存している場合も、そのサービスが訂正・削除の履歴を残すかどうか、解約したときにデータを取り出せるかを確かめておきましょう。帳簿の付け方は会計ソフトの選び方の記事で解説しています。
準備が間に合わない場合の猶予措置
原則のルールに対応できていない場合でも、次の2つを満たせば、電子取引データを保存しておくだけでよいとされています。
- ルールどおりに保存できなかったことに、所轄税務署長が「相当の理由」があると認める場合(事前の申請は不要)
- 税務調査などの際に、電子取引データのダウンロードの求めと、データを印刷した書面の提示・提出の求めに、それぞれ応じられるようにしている場合
国税庁は、人手不足・システム整備の資金不足・整備が間に合わないといった理由も「相当の理由」として認められるとしています。ただし、データを消さずに保存しておくことが前提です。
優良な電子帳簿とデジタルシームレス保存の優遇
希望者だけが使う制度ですが、一定の要件を満たすと税制上の優遇を受けられます。国税庁のリーフレット(令和8年6月)によると、主な内容は次のとおりです。
| 優遇 | 条件の概要 |
|---|---|
| 過少申告加算税の5%軽減 | 仕訳帳・総勘定元帳などを「優良な電子帳簿」として保存する(原則10%が5%に) |
| 重加算税の10%加重の適用除外 | 電子取引データを、国税庁長官が定める基準に合うシステムで送受信・保存する(令和9年1月1日以後に法定申告期限が来る国税から) |
| 青色申告特別控除75万円 | 優良な電子帳簿かデジタルシームレス保存のどちらかを満たし、電子申告する(令和9年分から) |
優良な電子帳簿には、訂正・削除・追加の履歴が残ること、帳簿どうしの関連が確認できること、日付・金額・取引先で検索できることが求められます。どれも、あらかじめ届出書を出す必要があり、その年分の法定申告期限までに提出します。たとえば令和8年分から優遇を受けるなら、令和9年3月15日までです。
75万円の控除の詳しい条件は青色申告の記事で解説しています。
よくある質問
紙で受け取った領収書もスキャンしなければいけませんか?
スキャンする必要はありません。スキャナ保存は希望する人だけが使う制度です。紙で受け取った領収書や請求書は、これまでどおり紙のまま保存できます。スキャンして紙を捨てたい場合は、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。
電子取引データを印刷して保存すれば十分ですか?
印刷するだけでは足りません。データが原本なので、元のデータを消さずに保存する必要があります。猶予措置を使う場合も、データの保存に加えて、印刷した書面を提示・提出できるようにしておくことが求められます。
保存するデータはどのくらいの期間残せばよいですか?
紙で保存する場合と同じ期間です。青色申告をしている人なら、帳簿や書類は原則7年間で、請求書・見積書・納品書・送り状などは5年間でよいとされています。消費税の課税事業者は、インボイスの保存期間も関係します。期間の数え方は、税理士・税務署にご相談ください。
参考にした公的情報・資料
- 一定の要件を満たせば税制上の優遇措置が受けられます(国税庁・令和8年6月)
- 電子取引データを適切に保存できていますか?(国税庁・令和6年11月)
- 令和6年1月からの電子取引データの保存方法(国税庁・令和5年12月)
- No.2070 青色申告制度(国税庁)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。