電力・エネルギー業界の経験をスキルシートで伝える書き方|事業区分・領域・連携先の示し方
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
電力業界の経験をスキルシートで伝えるには、どの事業者側の仕事か(小売・送配電・発電)、担当した領域、扱った計画やデータ、連携先、制度の期限の5つをそろえて書きます。「電力会社向けシステム開発」とだけ書くと、読み手は小売の料金なのか、送配電のデータなのか、制御系なのかを判断できません。
一方で、電力業界の経験には、お客さまの電気の使用に関する情報や、設備とネットワークの構成など、書いてはいけない情報が多く含まれます。この記事では、伝わる書き方と、書かない線の引き方をあわせて紹介します。スキルシートの全体の構成はスキルシートの書き方の記事をご覧ください。
電力業界の案件で読み手が知りたいこと
電力業界の案件のスキルシートを読むのは、発注側のシステム部門や、元請けのPM・リーダーであることが多く、読み手自身が業界の仕組みを知っています。そのため、次の点をシートから読み取ろうとします。
- 小売・送配電・発電のどの事業者側の経験か
- 料金・顧客、託送・メーターデータ、需給管理・市場対応、制御系のどの領域か
- どの計画やデータを扱い、広域機関や他の事業者とどうつないだか
- 制度の開始日のような動かせない期限の中で働いた経験があるか
4つの領域の中身は電力業界のIT案件の記事で整理しています。シートでは、この領域の言葉を使って自分の位置を示すと、読み手と認識をそろえやすくなります。
プロジェクト欄に足したい5つの項目
基本の型(期間・概要・役割・体制・担当工程・技術)に、電力業界では次の項目を足します。
| 項目 | 書き方のポイント | 例 |
|---|---|---|
| 事業者の区分 | 小売・送配電・発電のどれか。社名は書かない | 小売電気事業者 |
| 領域 | 4つの領域のどれか | 料金計算・請求 |
| 扱った計画・データ | 制度上の名前で書く | 30分電力量、確定使用量、需要調達計画 |
| 連携先 | 種類で書く。システムの内部の名前は書かない | 一般送配電事業者からのデータ受領、広域機関への計画提出 |
| 制度の期限 | 何の制度対応で、期限がどう決まっていたか | 規格の改定日に合わせた改修 |
事業者の区分を書くのは、電気事業法で事業の種類が分けられていて、区分によって業務と情報の扱いが大きく違うからです。たとえば電気事業法第2条では、小売電気事業、一般送配電事業、発電事業などが別々に定義されています。区分と領域の2つがあるだけで、読み手は経験の中身をかなり想像できます。業務知識の中身は電力業界の業務知識の記事で解説しています。
制度上の名前で書く
計画やデータは、社内の呼び方ではなく、制度上の名前で書きます。広域機関の資料では、小売電気事業者が出す計画は「需要調達計画」、送配電事業者から提供されるデータは「30分電力量」「確定使用量」と呼ばれています。社内の略語で書くと、別の会社の読み手には伝わりません。
記入例(架空)
期間:(例)約1年半。うち自分の参画は基本設計から稼働後3か月まで
概要:(例)小売電気事業者における料金計算システムの改修
事業者の区分・領域:小売電気事業者。料金計算・請求
扱ったデータ:一般送配電事業者から受け取る30分電力量と確定使用量
連携先:一般送配電事業者からのデータの受領(事業者間の共通規格に沿った連携)
役割:データ受領と料金計算のバッチの設計リーダー。メンバー4名
主な担当:月の途中の契約の変更と計器の取替があった場合の計算の規則を、業務部門と決めた。データの遅れを検知して再計算する仕組みを設計した
制度の期限:規格の改定日に合わせた切り替え。リハーサルを複数回実施
技術:(例)Java、Oracle Database、ジョブ管理ツール
これは項目の埋め方を示すための架空の例です。実際の経験に置き換えて書いてください。
「主な担当」には例外の扱いを書く
電力業界のシステムで経験の深さが表れるのは、例外の扱いです。
| 書き方 | 例 |
|---|---|
| 伝わりにくい | 料金計算システムの設計を担当 |
| 伝わりやすい | (例)30分電力量に欠けがあった場合の補い方と、確定使用量が届いた後の再計算の規則を設計し、業務部門と合意した |
データの欠けや遅れ、契約の切替、月の途中の変更、計画と実績のずれなどをシステムでどう扱ったかは、実際に関わった人でないと書けません。数字を書く場合は、取引先の規模や事業の状況が分かるほど細かくせず、自分の対応の範囲が伝わる程度にとどめます。
役割ごとの書き分け
PMやPMOとして関わった場合は、制度改正対応で何を取りまとめたかを書きます。たとえば「制度の資料をもとに影響するシステムと処理を洗い出し、関係する部門の対応の進み具合を管理した」のように、影響の洗い出しと進捗の管理の両方が伝わる書き方にします。役割ごとの書き方はPMのスキルシートの記事とPMOのスキルシートの記事が参考になります。
データ基盤や需要予測の経験は、データの粒度(30分単位など)、量の規模感、処理の時間の制約を書くと伝わります。データ系の経験の書き方はデータエンジニアのスキルシートの記事で詳しく扱っています。
書かないことの線を引く
電力業界の経験で特に注意したいのは、お客さまの電気の使用に関する情報と、設備・ネットワークに関する情報です。一般的なスキルシートで避ける社名や案件名に加えて、次のような情報は書きません。
| 書かない情報 | 代わりの書き方 |
|---|---|
| 特定のお客さまや地点の使用量、契約の中身 | 「需要地点ごとの30分電力量を扱う処理」 |
| 託送の業務で知った他の事業者の情報 | 書かない |
| 発電所・変電所の設備の構成、系統の構成 | 「発電設備の運転監視システム」程度 |
| 制御系のネットワーク構成、セキュリティ対策の具体的な中身 | 「制御系と情報系の境界の設計」 |
| 取引先の需要や販売の規模、市場での取引の中身 | 「需要予測の基盤を構築」 |
電気事業法第23条は、一般送配電事業者が託送の業務で知った他の電気供給事業者や電気の使用者の情報を、目的外に使ったり提供したりすることを禁じています。送配電の会社で働いた経験があっても、そこで見た情報はシートに書いてよい情報ではありません。
また、経済安全保障推進法は、電気事業を含む基幹インフラの事業者が重要な設備を導入したり、その維持管理を委託したりするときの届出と審査を定めています。対象の設備に関わった場合は、設備の中身や構成に触れず、「どんな役割で、何を担当したか」にとどめます。ルールの概要は電力業界の規制の記事で解説しています。
組み合わせで特定されないようにする
電力業界は事業者の数が限られる領域もあり、地域や規模、システムの特徴を組み合わせると、社名を書かなくても会社が分かることがあります。たとえば「◯◯地方の一般送配電事業者」と書くだけで、ほぼ特定されてしまいます。区分は書いても、地域や規模の書き方は大きなくくりにします。ぼかし方の型はスキルシートと守秘義務の記事、契約上の秘密の範囲は秘密保持契約の記事で整理しています。
面談で口頭で伝えるときのコツ
面談では、シートに書いた1つのプロジェクトについて、「どの事業者側の、どの領域で、どのデータや計画を扱い、どんな例外をどう処理したか」を2〜3分で話せるように準備しておきます。設備の構成やお客さまの情報を聞かれた場合は、「取引先の情報にあたるため、仕組みの説明にとどめます」と断ってかまいません。線を引いて話せること自体が、情報管理への意識として受け止められます。
面談でよく聞かれる質問への準備は面談の質問の記事をご覧ください。
よくある質問
送配電の会社での経験は、小売の案件でも評価されますか?
評価されることはあります。30分電力量や確定使用量がどう作られ、どのタイミングで届くかを知っていることは、小売の料金計算や需給管理の設計で役に立ちます。ただし、送配電の業務で知った他の事業者やお客さまの情報は、別の会社の案件で使ってはいけません。経験として書くのは、仕組みと自分の役割にとどめます。
電力業界の経験が短い場合は、どう書けばよいですか?
期間が短くても、事業者の区分、領域、扱ったデータを書けば、何に触れたかは伝わります。あわせて、ほかの業界での料金計算やデータ処理の経験を、電力の領域とどう重なるかが分かるように並べると、読み手が判断しやすくなります。
制御系の経験は、どこまで具体的に書いてよいですか?
担当した工程、役割、使った技術の種類、情報系との境界で何を設計したかまでは書けることが多いです。設備の機種や台数、ネットワークの構成、セキュリティ対策の具体的な中身は書きません。取引先から書いてよい範囲を示されている場合は、それに従ってください。
参考にした公的情報・資料
- 電気事業法(e-Gov法令検索)
- 小売電気事業を開始する方の手続き(スタートアップガイド)Ver.1.5(電力広域的運営推進機関)
- 30分電力量・確定使用量・発電30分電力量(電力広域的運営推進機関)
- 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(e-Gov法令検索)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。