不動産業界の経験をスキルシートで伝える書き方|事業の形・業務・工程をそろえる
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
不動産業界の経験をスキルシートで伝えるときは、事業の形、対象の業務と法令上の節目、システムの形、担当した工程の4点をそろえて書くのが基本です。「不動産会社の基幹システム開発」だけでは、売買か賃貸か、仲介か管理かが分からず、発注側は合う案件を判断できません。「賃貸管理会社の家賃管理、入金の消し込みからオーナー送金まで、パッケージ移行の要件定義を担当」まで書くと、経験の中身が伝わります。
同時に、不動産の経歴には、物件や取引、オーナーや入居者の情報など、書くと特定につながる情報が多く含まれます。この記事では、4点のそろえ方、書かない情報の線引き、記入例を紹介します。スキルシート全体の構成はスキルシートの基本、守秘義務の一般的な考え方はスキルシートに書いてよいこと・いけないことで扱っているので、ここでは不動産の経験に固有の書き方に絞ります。
要約の1行目で「事業の形」と「業務」を示す
スキルシートの冒頭の要約では、不動産の経験の軸を1行で示します。不動産の案件は、売買の仲介、賃貸の仲介、賃貸の管理、開発・分譲で使うシステムが大きく違うため、事業の形と業務を先に書くと、読み手がすぐに案件と照らし合わせられます。事業の形ごとの案件の違いは不動産のIT案件の記事で説明しています。
- 軸の事業と業務(例:賃貸管理会社の家賃・契約管理のシステム)
- 立場と工程(例:要件定義から受入テストまで、ベンダーとの調整を担当)
- ほかに対応できる業務や技術(例:仲介の顧客管理のCRM設定、帳票の電子化の経験あり)
複数の事業の形を経験している場合は、年数の長い順ではなく、次に入りたい案件に近い順に並べると、読み手が判断しやすくなります。
プロジェクト欄は4点をそろえる
プロジェクトごとの欄では、使用技術に加えて次の4点を書きます。
| 項目 | 書き方の例 | 避けたい書き方 |
|---|---|---|
| 事業の形と規模 | 「大手の賃貸管理会社」「地域の売買仲介会社」「不動産テックのスタートアップ」 | 会社名、ブランド名、本社の所在地 |
| 対象の業務と節目 | 「媒介契約の期限管理と売主への報告書」「重要事項説明書の作成」「家賃の入金の消し込み」 | 「不動産業務全般」 |
| システムの形 | 「賃貸管理パッケージの導入」「CRMの設定と拡張」「自社の物件検索サイト」 | 社内の通称、製品の構成の詳細 |
| 担当した工程 | 「現行業務の調査、要件定義、データ移行の検証」 | 「開発」だけ |
業務の欄は、宅地建物取引業法が決めている節目(媒介契約、重要事項の説明、契約締結時の書面)や、賃貸住宅管理業法が決めている管理の業務(建物の維持保全と、家賃などの金銭の管理)のどれに関わったかを入口にすると書きやすくなります。そのうえで「家賃の管理の中の、入金の消し込みと滞納の管理」のように、業務の単位を一段細かくすると深さが伝わります。業務ごとの流れは不動産の業務知識の記事で整理しています。
規模は「拠点・利用者・自分の範囲」で示す
不動産の案件では、システムを使う人が店舗や営業所に広がっていることが多く、規模は利用者や拠点の広がりで伝えると分かりやすくなります。
- 全体の広がりの目安(例:複数の店舗で使う仲介の基幹システム)
- 自分のチームの人数と、自分の立場(例:5名のチームで、契約まわりの要件定義を担当)
- 担当した範囲(例:申込みから契約、鍵の引渡しまでの画面と帳票)
管理戸数や取引件数、売上の実数、契約金額は書きません。規模は拠点や利用者の広がり、相対的な表現で十分に伝わります。
法令の手順をどう要件にしたかを書く
不動産の案件で評価されやすいのは、法令や業界のルールが決めた手順を、システムの流れに落とし込んだ経験です。書き忘れやすいので、意識して書きます。
- 専任媒介契約の有効期間と報告の頻度に合わせて、期限の通知と報告書の作成を組み込んだ
- 重要事項説明書等の電子での提供に合わせて、相手方の承諾の取得と記録の流れを設計した
- 物件の広告の掲載と取り下げの状態を、空室の状況と連動させた
書面の電子化は2022年5月18日に施行された改正で可能になったため、それ以降の電子契約やIT重説の対応の経験は、時期とあわせて書くと伝わりやすくなります。電子化の手順の中身は不動産の規制の記事で扱っています。
不動産の経歴で書かない情報
不動産の経歴は、物件や取引の情報が具体的であるほど、発注元や関係する人が特定されやすくなります。宅地建物取引業者には、業務上知った秘密を、正当な理由なく漏らしてはならない義務があります(宅地建物取引業法第45条)。外部の委託先として関わった人も、契約で同じ水準の秘密保持を求められているのが一般的です。
| 書かない情報 | 代わりの書き方 |
|---|---|
| 会社名、ブランド名、グループ名 | 事業の形と規模(「大手の賃貸管理会社」) |
| 物件名、所在地、開発中の案件の名前 | 「分譲マンションの販売管理」など業務の種類 |
| オーナーや入居者、買主・売主に関する情報 | 「オーナー向けの報告書の作成」など業務の種類 |
| 管理戸数、取引件数、売上、契約金額の実数 | 「複数の店舗」「大規模な移行」など相対的な表現 |
| 用地の仕入れや開発の計画など、公表前の情報 | 「用地情報の管理の仕組みづくり」 |
| 利用中の製品の構成、認証や権限の設計の詳細 | 「権限の設計と運用ルールの整理」 |
特に、用地の仕入れや開発の計画は、公表前に外に出ると取引に影響しかねない情報です。案件の中で見聞きしたとしても、経歴には業務の種類だけを書きます。
契約で秘密とされた範囲を書かないことが基準になります。参画した案件の業務委託契約や秘密保持契約で、経歴への記載について定めがある場合は、その定めに従ってください。
プロジェクト欄の記入例
以下は書き方を示すための例で、実在の案件や実績ではありません。
例1:賃貸管理システムの移行
期間:20XX年〜20XX年(1年3か月)
案件概要:中堅の賃貸管理会社の管理システムを、自社開発のシステムからパッケージに移行
規模・立場:複数の営業所で使うシステム。移行チーム5名(自分は要件定義とデータ移行の検証の担当)
対象の業務:入居者との契約管理、家賃の請求と入金の消し込み、オーナーへの送金と報告書
担当した工程:現行業務の調査、要件定義、移行データの検証、受入テストの支援
使用技術:SQL、パッケージの設定、帳票の設計
工夫・成果:現行の画面ごとに業務の例外(日割り、一部入金、解約時の精算)を洗い出し、パッケージの標準機能で足りない点を一覧にして、業務部門と運用での対応を決めた
例2:売買仲介の顧客管理(CRM)の拡張
期間:20XX年〜20XX年(10か月)
案件概要:地域の売買仲介会社で、顧客と物件の管理をCRMに集約
規模・立場:開発チーム4名(自分は設計と実装の担当)
対象の業務:査定の依頼の受付、媒介契約の管理、売主への業務の報告
担当した工程:基本設計、詳細設計、実装、結合テスト
使用技術:CRMの設定と拡張、API連携
工夫・成果:媒介契約の有効期間と報告の頻度を契約の種類ごとに持たせ、期限前の通知と報告書の下書きを自動で作る仕組みにした
例3:電子契約の導入
期間:20XX年(6か月)
案件概要:賃貸の仲介・管理を行う会社で、重要事項説明書と契約書の電子での提供を導入
規模・立場:プロジェクトのPMO(自分は業務の流れの設計と社内の調整の担当)
対象の業務:重要事項説明書・契約書の作成と提供、相手方の承諾の取得と記録
担当した工程:業務の流れの設計、サービスの選定支援、運用ルールの作成、店舗への展開
工夫・成果:承諾の取得から書面の提供までの手順を店舗向けの手順書にまとめ、紙と電子の手続きが混在する期間の運用を決めた
どの例も、会社名、物件、件数、金額は書いていません。それでも、事業の形、業務、工程、工夫が書かれていれば、どの案件に合うかは読み手に伝わります。
面談で深掘りされやすい点
スキルシートで書いた内容は、面談で深掘りされます。不動産の案件で聞かれやすいのは、次のような点です。面談全般の準備は面談でよく聞かれる質問の記事で扱っています。
- 担当した業務で、例外の扱い(日割りの計算、解約時の精算、契約の条件の変更)にどう対応したか
- 法令や業界のルールが決めた手順を、どこでどう要件にしたか
- 店舗や営業所の利用者に、どう新しい仕組みを使ってもらったか
- 繁忙期や月末の締めを避けて、どう切替やリリースの時期を決めたか
3つ目と4つ目は見落とされがちですが、現場が事務所の外に広がる不動産の案件では大事な問いです。利用者への展開や時期の調整の経験は、そのまま次の案件での安心材料になります。
よくある質問
会社名を書かないと、経験の大きさが伝わらないのではありませんか?
事業の形と規模、使う拠点や利用者の広がり、自分のチームの人数と範囲、担当した工程を書けば、経験の大きさは伝わります。発注側が知りたいのは会社名より、どの事業のどの業務を、どの立場で担ったかです。会社名は契約で秘密とされていることが多いため、書かないのが基本です。
不動産会社の社員として社内のシステムを担当していました。どう書けばよいですか?
社内の情報システムの担当でも、どの事業の形の、どの業務のシステムに関わったかを書けば、IT案件の経験として伝わります。ベンダーの選定や管理、業務部門との要件の調整、利用者への展開は、発注側の立場でしか得られない経験として評価されることがあります。担当した工程を具体的に書くことをおすすめします。
宅地建物取引士の資格はスキルシートに書いたほうがよいですか?
持っている場合は、資格の欄に書いてかまいません。ただ、資格だけで業務の経験は伝わらないため、プロジェクト欄で、重要事項説明書の作成や媒介契約の管理など、資格の知識を使った業務を具体的に書くと伝わります。業務の流れは不動産の業務知識の記事が参考になります。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。