不動産業界の案件で気をつけたい規制とセキュリティのルール|IT重説・電子書面・広告・個人情報
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
不動産の案件で押さえたいルールは、宅地建物取引業法の重要事項の説明と書面の電子化、テレビ会議などを使った重要事項の説明(IT重説)の要件、物件の広告の表示のルール、個人情報と業務上の秘密の扱いの4つです。どれも直接の宛先は不動産会社ですが、システムの要件や、外部の委託先として働く人の行動のルールに形を変えて届きます。
この記事では、2026年10月時点で、e-Gov法令検索、国土交通省、消費者庁、個人情報保護委員会などの公開ページから確かめた内容を整理します。条文や指針の解釈が必要な場面では、発注側の担当部門や専門家に確かめてください。業務の流れは不動産の業務知識の記事、案件の種類は不動産のIT案件の記事で扱います。
重要事項の説明と契約の書面:誰が、いつ、何をするか
宅地建物取引業法は、取引の要所で、宅地建物取引業者が書面を交付することを求めています。システムの要件に直結するのは次の3つです。
| 書面 | 条文 | 主な決まり |
|---|---|---|
| 媒介契約の書面 | 第34条の2 | 媒介契約を結んだら遅滞なく、記載事項を書いた書面を依頼者に交付する |
| 重要事項説明書 | 第35条 | 契約が成立するまでに、宅地建物取引士が書面を交付して説明する。説明の際は宅地建物取引士証を示し、書面には宅地建物取引士が記名する |
| 契約締結時の書面 | 第37条 | 契約が成立したら遅滞なく交付する。宅地建物取引業者は、宅地建物取引士に書面へ記名させる |
ポイントは、説明や記名を行うのが「宅地建物取引士」と決められていることです。システムでは、書類の作成者と、説明・記名を行う宅地建物取引士を区別して持つこと、誰がいつ説明・交付したかを記録することが要件になりやすくなります。
書面の電磁的方法による提供:2022年5月18日から
国土交通省によると、宅地建物取引業の書面の電子化を可能にする政省令の改正が2022年4月27日に公布され、5月18日に施行されました。重要事項説明書、契約締結時の書面、媒介契約締結時の書面を、紙に代えて電子書面で提供できるようになっています。
法律の側では、第35条第8項、第37条第4項・第5項、第34条の2第11項が、相手方(依頼者)の承諾を得て、政令の定めに従い電磁的方法で提供できること、その場合は書面を交付したものとみなされることを定めています。賃貸借の契約締結時の書面は、代理・媒介の場合に電磁的方法で提供できる規定です(第37条第5項)。
国土交通省の報道発表では、改正の主な内容として次の点が示されています。
- 提供の方法は、電子メール、Webページからのダウンロード、USBメモリ等の交付など
- 提供した書面は印刷できること、また電子署名等により改変されていないことを確認できること
- 電子で提供する前に、提供の方法やファイルの形式を示したうえで、相手方の承諾を得ること(承諾は電子メールやWebの回答フォーム、USBメモリ等の交付などで取得できる)
- 宅地建物取引士の押印を不要とすること
国土交通省は「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」を公開しており、2026年10月時点の最新は令和6年12月版(本体とFAQ)です。あわせて、要点をまとめたハンディガイドと、承諾の取得の一例(承諾取得例)も公開されています。
システムの要件に表れること
電子契約の案件では、次のような要件が出てきます。どこまでを必須とするかは、マニュアルと発注側の判断で決まるため、仕様は発注側に確かめてください。
- 承諾の取得と記録:電子で提供する前に承諾を得たことと、その内容を記録する
- 提供するファイルの形:印刷でき、改変されていないことを確認できる形式で提供する
- 紙との併存:承諾が得られない相手には紙で交付するため、両方の流れを持つ
- 宅地建物取引士の扱い:説明・記名を行う宅地建物取引士を記録する
業務委託契約そのものを電子契約で結ぶときの注意点は電子契約の記事で扱っています。ここでの話は、不動産会社が顧客に対して行う手続きの話です。
IT重説:本格運用の時期と要件
テレビ会議などを使った重要事項の説明(IT重説)は、国土交通省の発表によると、賃貸取引で2017年10月1日、売買取引で2021年3月30日から本格運用されています。一定の要件のもとで行うIT重説は、対面の説明と同様に扱われます。
国土交通省の「IT重説本格運用」のページでは、対面と同様に扱うための要件として、次の点が挙げられています。
- 宅地建物取引士と説明を受ける人が、図面等の書類と説明の内容を十分に理解できる程度に映像を見られ、双方の音声を十分に聞き取れる、双方向でやりとりできる環境で行うこと
- 重要事項説明書と添付書類を、説明を受ける人にあらかじめ送付しておくこと
- 説明を受ける人が書類を見ながら説明を受けられる状態にあること、映像と音声の状況を、説明の開始前に宅地建物取引士が確認すること
- 宅地建物取引士証を画面に示し、説明を受ける人が画面で視認できたことを確認すること
同ページは、これらを守らない場合は宅地建物取引業法の違反となる可能性があると注意を促しています。なお、同ページは2022年の書面の電子化の前から掲載されているものです。現在の手順は、上の令和6年12月版のマニュアルで確かめてください。
IT重説の仕組みを作る案件では、予約、事前の書類の送付、接続の確認、宅地建物取引士証の提示の記録など、要件を手順の順に並べて抜け漏れを確かめるのが基本です。
賃貸管理の書面も電子で提供できる
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律は、賃貸住宅管理業者に、管理受託契約を結ぶ前に、オーナー(賃貸人)へ書面を交付して説明することを求めています(第13条)。この書面も、オーナーの承諾を得て、政令の定めに従い電磁的方法で提供できます。賃貸管理システムで電子化を扱うときは、宅地建物取引業法とは別の法律の手続きである点に注意します。
広告の表示のルール
物件の広告に関わるルールは、ポータル連携や自社サイトの案件の要件に入ってきます。
宅地建物取引業法の広告の規定
宅地建物取引業法は、広告について次のような規定を置いています。
- 誇大広告等の禁止(第32条):物件の所在、規模、形質、利用の制限、環境、交通の利便、代金や借賃、支払方法、金銭の貸借のあっせんなどについて、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示をしてはならない
- 広告の開始時期の制限(第33条):造成や建築の工事の完了前は、開発許可や建築確認など政令で定める処分があった後でなければ、その物件の売買その他の業務に関する広告をしてはならない
分譲の物件の情報を扱うシステムでは、広告を始めてよい状態かどうかを管理する項目が要件になることがあります。
景品表示法にもとづく公正競争規約
消費者庁によると、公正競争規約は、景品表示法第36条にもとづき、事業者や事業者団体が表示や景品類について自主的に設定する業界のルールで、公正取引委員会と消費者庁長官が認定します。規約に参加している事業者が規約を守っていれば、景品表示法上問題とされないとされる一方、参加していない事業者には適用されません。
不動産には「不動産の表示に関する公正競争規約」があり、不動産公正取引協議会連合会のページでは、2022年9月1日に変更された規約と施行規則が掲載されています。物件の種類ごとに必要な表示事項を定めた別表や、「おとり広告」の規制の概要とインターネット広告の留意事項をまとめたガイドライン(2019年11月1日)も公開されています。
ポータル連携の案件では、物件の種類ごとに必須の項目、表示の書き方、成約や募集の終了に合わせた掲載の取り下げなどが要件になりやすい部分です。具体的な基準は、発注側が参照している規約と施行規則で確かめてください。
個人情報と業務上の秘密
不動産の取引では、買主や借主、オーナー、入居者の氏名、連絡先、勤務先、収入に関わる情報など、多くの個人情報を扱います。
個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、個人情報取扱事業者に、個人データの漏えい等を防ぐための安全管理措置を講じることを求め、取扱いを委託する場合は委託先を適切に監督することを求めています。監督の内容として、委託先の選定、安全管理措置などを盛り込んだ委託契約の締結、委託先での取扱状況の把握が挙げられ、再委託の場合も委託元が適切に確かめることが望ましいとされています。フリーランスは、発注側から見て監督される委託先の立場にあたることがあります。契約で確かめることは個人情報を扱う業務の契約の記事、事業者として自分が守ることは個人情報保護法の記事で扱っています。
データ活用の案件では、物件の情報も、所有者や居住者と結びつくと個人情報になりうる点に気をつけます。国土交通省の「不動産IDルールガイドライン」(2022年3月31日策定)も、内容の一つとして個人情報保護法との関係を取り上げています。
これとは別に、宅地建物取引業者には、正当な理由なく業務上知った秘密を漏らしてはならない義務があり、業務をやめた後も同じです(宅地建物取引業法第45条)。取引の条件や、公表前の用地の仕入れ・開発の計画などは、個人情報でなくても秘密として扱われます。
現場で気をつけたい5つの行動
規制の中身を踏まえて、不動産の案件でフリーランスが気をつけたい行動をまとめます。具体的な決まりは参画先の規程と契約が優先します。
- 本番のデータを手元に持ち出さない:顧客やオーナー、取引の情報を、許可された環境の外に出さない。テストには加工したデータを使う
- 法令の手順を勝手に省かない:承諾の取得や説明の記録など、法令の手順にあたる機能を、仕様の確認なしに簡略化しない
- 広告のデータの扱いを確かめる:掲載の開始や取り下げの条件、必須の表示項目を、自分の判断で決めない
- 公表前の情報を話さない:開発の計画や取引の条件を、社外や他の案件の場で話さない
- 異常はすぐに報告する:誤送信、誤掲載、権限の設定の誤りなどに気づいたら、決められた経路ですぐに伝える
万一情報を漏えいしてしまったときの対応は漏えい時の対応の記事、契約の秘密保持の条項は秘密保持契約の記事で整理しています。
よくある質問
IT重説の仕組みを作るとき、どの資料を見ればよいですか?
国土交通省の「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」が基本になります。2026年10月時点の最新は令和6年12月版で、本体とFAQが公開されています。発注側が独自の運用ルールを持っていることも多いため、マニュアルとあわせて参画先の規程を確かめてください。
電子で書面を提供するとき、承諾を取らずに送ってもよいですか?
宅地建物取引業法は、相手方の承諾を得たうえで電磁的方法で提供できると定めています。国土交通省の報道発表でも、提供の方法やファイルの形式を示したうえで、あらかじめ承諾を得ることが示されています。システムでは、承諾を得ていない相手に電子で送らない仕組みにするのが基本です。個別の扱いは発注側の担当部門に確かめてください。
物件の広告の表示のルールは、システムの側でどこまで対応すべきですか?
どこまでをシステムで制御し、どこからを運用で確かめるかは、発注側が決めることです。必須の表示項目のチェックや、掲載の開始・取り下げの管理をシステムで行う会社もあります。基準は不動産の表示に関する公正競争規約と施行規則にあるため、要件定義の段階で、発注側がどの基準を参照しているかを確かめておくと手戻りを減らせます。
参考にした公的情報・資料
- 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)
- 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(e-Gov法令検索)
- ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について(国土交通省)
- 不動産取引時の書面が電子書面で提供できるようになります(国土交通省 報道発表 令和4年4月27日)
- IT重説本格運用(平成29年度~)(国土交通省)
- 不動産の売買取引に係る「オンラインによる重要事項説明」(IT重説)の本格運用について(国土交通省 報道発表 令和3年3月30日)
- 平成29年10月1日より賃貸取引に係るIT重説の本格運用を開始(国土交通省 報道発表)
- 公正競争規約(消費者庁)
- 公正競争規約の紹介(不動産公正取引協議会連合会)
- 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(個人情報保護委員会)
- 不動産の共通コードとしての「不動産ID」のルールを整備(国土交通省 報道発表 令和4年3月31日)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。