トップ › お役立ち記事 › 正社員との比較・転職
正社員との比較・転職正社員に戻るときの年収交渉|希望額の決め方・伝える時期・書面での確認
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
正社員に戻るときの年収交渉では、フリーランス時代の売上ではなく、入社後に担う役割と、同じ前提に直した比較を根拠にします。希望額は「これを下回ると暮らしが成り立たない下限」「業務委託を続けた場合と同等の水準」「役割に見合うと考える目標」の3つで持っておくと、提示額への答え方を決めやすくなります。
交渉の山場は、内定が出て条件が書面で示される前後です。金額だけでなく、等級や賞与の扱い、仕事の範囲、働き方など、年収の中身と前提をあわせて確かめます。この記事では、年収がどう決まるか、希望額の決め方、伝える時期と伝え方、書面で確かめることを整理します(2026年10月時点)。
正社員の年収はどう決まるか
交渉の前に、相手がどんな仕組みで金額を決めているかを知っておくと、話がかみ合います。会社によって違いますが、一般的には次の要素で決まります。
| 要素 | 中身 | 交渉との関係 |
|---|---|---|
| 等級・役職 | 社内の格付け。等級ごとに給与の幅が決まっていることが多い | どの等級に入るかで、交渉できる幅が変わる |
| 基本給 | 月々の固定の給与 | 賞与や退職金の計算の基礎になることがある |
| 賞与 | 業績や評価に応じて支給 | 年収の提示に含まれているか、見込みかを確かめる |
| 手当・残業代 | 役職手当、固定残業代など | 年収に残業代が含まれているかで、実際の額が変わる |
中途採用では、等級の幅の中で、前職の年収や経験をもとに金額を決める会社が多い傾向があります。ここでつまずきやすいのが、フリーランスには「前職の年収」にあたる数字がそのままでは存在しない点です。
フリーランスがつまずきやすい3つの点
1. 売上を「前職の年収」として伝えてしまう
業務委託の報酬の合計は、会社員の年収とは中身が違います。経費、国民健康保険料や国民年金の保険料、案件が途切れた期間の影響が含まれていない一方、会社員の年収には会社が負担する社会保険料や有給休暇が表れません。売上をそのまま伝えると、高すぎる希望と受け取られたり、逆に自分で条件を下げてしまったりします。
同じ前提にそろえる手順は年収と単価の比べ方の記事、手取りの違いは手取りの違いの記事で解説しています。この記事では、その結果をどう交渉に使うかに絞ります。
2. 金額だけを見て、等級を見ない
提示額が希望に近くても、低い等級で採用されると、入社後の昇給や昇格の起点が下がります。反対に、金額が少し下がっても、等級が役割に見合っていれば、入社後の評価で取り戻せる余地があります。提示を受けたら、金額と一緒に、どの等級・役職での採用かを確かめます。
3. 交渉の材料が「希望」だけになっている
「これくらい欲しい」だけでは、採用側は社内で説明できません。採用側が等級や金額を見直すには、社内の承認を通す理由が必要です。役割と経験の結び付き、任せられる範囲の広さなど、相手が社内で説明に使える材料を渡すことが交渉の中心になります。
希望額は3つの数字で持つ
交渉の前に、次の3つの数字を自分で決めておきます。
- 下限:これを下回ると暮らしが成り立たない、または受けない水準。住居費や家族の状況、ローンなどから逆算します
- 同等の水準:業務委託を続けた場合の実際の所得を、会社員の年収と同じ前提に直した水準。比べ方は前の記事のとおりです
- 目標:担う役割と経験から、妥当と考える水準。求人の想定年収の幅や、同じ等級の位置づけを参考にします
採用側に伝えるのは、主に目標と、その根拠です。下限は自分の判断の線として持っておき、提示額がそれを下回るときに、受けるか、ほかの条件で補えるかを考える基準にします。
業務委託の報酬は案件によって大きく変わり、正社員の年収も会社や職種によって大きく違うため、一般的な相場の数字に当てはめるより、自分の所得の実績と、応募先の求人に書かれた想定年収の幅をもとに考える方が、話が具体的になります。
伝える時期と伝え方
応募時と面接中
応募の段階で希望年収を書く欄がある場合は、目標の数字を、根拠を一言添えて書きます。「現年収」の欄には、売上ではなく、前提をそろえた考え方を添えるか、面接で説明する旨を書いておくと誤解を防げます。
面接の途中で年収を聞かれた場合は、金額を言い切るより、「◯◯の役割をお任せいただけるなら、◯◯程度を希望します。前提をそろえた計算の考え方もご説明できます」のように、役割とセットで伝えます。面接での経験の話し方は転職面接での話し方の記事で扱っています。
内定後のすり合わせ
本格的な交渉は、内定が出て条件が示された段階で行うのが一般的です。採用側が「この人を採りたい」と決めた後なので、等級や金額の見直しを社内で検討してもらいやすくなります。伝えるときは、次の順にすると角が立ちにくくなります。
- 内定へのお礼と、入社に前向きであることを先に伝える
- 提示のどの部分を見直してほしいかを、一つか二つに絞る
- 見直してほしい理由を、役割と経験の結び付きで説明する
- 金額が難しい場合に、ほかの条件で調整できるかを尋ねる
転職エージェントを通して応募している場合は、直接ではなく担当者を通じて伝えるのが通常です。
金額以外に話し合える条件
年収の金額に余地がない場合でも、次のような条件は話し合える場合があります。
| 条件 | 確かめること |
|---|---|
| 等級・役職 | 役割に見合う等級か。入社後の見直しの時期 |
| 入社後の評価の時期 | 最初の評価・昇給がいつか |
| 入社時期 | 今の業務委託契約の終了時期と合うか |
| 働き方 | リモートの頻度、勤務時間の柔軟さ |
| 副業 | 業務委託の仕事を続けられるか、続ける場合の手続き |
提示額が下限を下回ったとき
見直しを相談しても提示額が自分の下限を下回る場合は、次のように考えを整理します。
- 下限を下回る理由が、等級の判断にあるのか、会社の給与の水準そのものにあるのかを尋ねる
- 入社後の評価で取り戻せる見込みがあるか、最初の評価の時期と基準を確かめる
- 金額以外の条件(働き方、副業、仕事の範囲)で、下回る分を受け入れられるかを考える
- それでも合わない場合は、業務委託を続ける選択肢と並べて判断する
下限は、交渉の場で相手に伝える数字というより、自分が判断を誤らないための線です。提示を受けた勢いで承諾せず、持ち帰って比べる時間をもらいましょう。
条件は書面で確かめる
労働基準法第15条は、使用者は労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定めています。同じ条文は、明示された労働条件が事実と違う場合、労働者は即時に労働契約を解除できるとも定めています。
厚生労働省は、2024年4月から労働条件明示のルールが変わったことを案内しています。リーフレットによると、全ての労働契約の締結時に、雇い入れ直後の就業場所・業務の内容に加えて、その変更の範囲の明示が必要になりました。変更の範囲は、将来の配置転換などで変わり得る就業場所・業務の範囲を指します。
正社員に戻る人にとって、変更の範囲は年収と同じくらい大切な項目です。業務委託では契約で仕事の範囲が決まっていましたが、正社員では会社の方針で担当や勤務地が変わることがあります。提示を受けたら、次の点を書面で確かめます。
- 年収の内訳(基本給、賞与の見込み、手当、残業代の扱い)
- 等級・役職と、試用期間の有無・長さ、試用期間中の条件
- 就業場所と業務の内容、それぞれの変更の範囲
- 労働時間、休日、リモートの扱い
書面の内容が交渉で合意したことと違う場合は、入社の承諾を伝える前に確かめます。条件の解釈で迷う場合や、入社後に示された条件と実際が違う場合は、都道府県労働局や労働基準監督署、専門家にご相談ください。
よくある質問
正社員に戻ると、年収はフリーランスのときより下がりますか?
金額の見え方は下がることがありますが、会社が負担する社会保険料や有給休暇などを含めて比べると、差は見た目より小さくなることがあります。どちらが有利かは、業務委託の実際の所得や応募先の条件によって大きく変わるため、同じ前提にそろえて比べることが大切です。
年収交渉をすると、内定が取り消されることはありますか?
役割と根拠を示して見直しを相談すること自体は、一般的なやりとりです。ただし、根拠のない大幅な引き上げを求めたり、強い言い方で条件を迫ったりすると、印象を損ねることがあります。見直してほしい点を絞り、入社に前向きな姿勢を伝えたうえで相談しましょう。
フリーランス時代の確定申告書を提出するよう求められたら?
収入の確認のために求められることがあります。提出する場合は、申告書の売上と所得の違い、経費や保険料を自分で負担していたことを説明できるようにしておくと、金額の誤解を防げます。提出の範囲や個人情報の扱いに不安がある場合は、何の確認に使うのかを先に尋ねてください。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。