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正社員との比較・転職正社員の年収とフリーランスの単価の比べ方|年収に含まれないものを足して換算する
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
正社員の年収とフリーランスの月額単価を比べるときは、正社員の年収に「会社が別に負担しているもの」を足し、フリーランスの単価から「自分で負担するもの」を引いて、同じ前提にそろえてから比べます。月額を12倍して年収と並べるだけでは、フリーランスの方が高く見えやすくなります。
正社員の年収には、会社負担の社会保険料、有給休暇、仕事の切れ目がないことなどが表れていません。フリーランスの単価には、経費、案件のない期間、保険料の全額負担が含まれています。この記事では、仮の数字を使って、両方向の換算の手順を整理します。月額単価を時給や年間の売上に直す細かな手順は月額単価の換算の記事で扱っています。
年収と単価は「含まれているもの」が違う
| 比べる点 | 正社員の年収 | フリーランスの月額単価 |
|---|---|---|
| 社会保険料 | 本人負担分だけが年収から引かれる。同じ程度を会社も負担 | 国民健康保険・国民年金を全額自分で負担 |
| 休み | 年次有給休暇は休んでも給与が出る | 休んだ分は報酬が減ることが多い |
| 仕事の切れ目 | 雇用が続く限り給与が出る | 案件と案件の間は収入がない |
| 仕事の道具 | パソコンや研修は会社が用意することが多い | 自分で用意し、経費として払う |
| 賞与・退職金 | 会社の制度による | ない |
この違いを無視して「年収600万円」と「月額60万円」を並べても、条件の良し悪しは分かりません。
正社員の年収に表れないもの
会社負担の社会保険料
厚生年金保険の保険料は、標準報酬月額と標準賞与額に18.3%を掛けた額で、事業主と被保険者が半分ずつ負担します(日本年金機構)。つまり、給与明細で引かれている厚生年金保険料と同じ額を、会社も払っています。
健康保険も同じように労使で負担します。協会けんぽの保険料率は都道府県ごとに決まっていて、令和8年度の全国平均は9.90%です。このほか、40〜64歳の人の介護保険料、令和8年4月から始まった子ども・子育て支援金、雇用保険なども関わります。
これらの会社負担分は、正社員の年収の数字には含まれません。フリーランスになると、同じ役割の保険(国民年金・国民健康保険)を自分で全額払うことになります。ただし、保険料の計算方法も受けられる給付も違うため、「会社負担分=フリーランスで増える負担」とそのまま置き換えられるわけではありません。
有給休暇
労働基準法では、6か月継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に、10日の年次有給休暇を与えることになっています(厚生労働省)。勤続年数に応じて日数は増えます。正社員は有給休暇を取っても給与が減りませんが、フリーランスは同じ日数を休むと、精算幅の下限を下回ったり、日額分が減ったりします。
雇用の継続と会社が用意するもの
正社員は、担当する仕事が終わっても次の仕事が会社から割り当てられます。パソコンやソフトウェア、研修、資格の取得費用などを会社が負担していることもあります。どこまで会社が負担しているかは会社によって違うため、自分の勤務先の制度で確かめます。
方向1:正社員の年収から「同等の月額」を逆算する
独立を考えている人が「今の年収と同じ水準を保つには、月額いくらの案件が必要か」を考える手順です。以下はすべて仮の数字で、会社負担の保険料は上限や細かな区分を省いた大まかな計算です。
前提(仮):額面年収600万円の正社員。フリーランスとして年11か月稼働できる見込み。仕事の経費は年60万円の見込み。
- 年収を書き出す:600万円
- 会社負担の社会保険料のおおよそを足す:厚生年金は 600万円 × 9.15% ≒ 約55万円。健康保険は全国平均の半分(4.95%)で計算すると約30万円。合わせて約85万円
- 経費の見込みを足す:60万円
- 合計を稼働見込みの月数で割る:(600万円 + 85万円 + 60万円)÷ 11か月 ≒ 約68万円
この例では、月額約68万円(税別)の案件に11か月参画して、ようやく「年収600万円の正社員」と同じくらいの土台に並ぶ計算です。有給休暇の分や退職金、賞与の扱いまで考えると、さらに必要な額は増えます。
稼働見込みの月数をどう置くか
稼働見込みを12か月にすると、必要な月額は低く出ます。案件の切れ目や長めの休みを考えると、12か月より少なめに置いておく方が、実際とのずれは小さくなります。稼働日数の読み方は稼働率の記事で解説しています。
方向2:フリーランスの単価を「年収相当」に直す
フリーランスから正社員への転職を考えている人や、正社員の求人と案件を見比べたい人は、逆の方向で計算します。
前提(仮):月額65万円(税別)の案件に、年11か月参画する見込み。経費は年60万円。
- 年間の売上を出す:65万円 × 11か月 = 715万円
- 経費を引く:715万円 − 60万円 = 655万円
- 正社員なら会社が負担していた保険料のおおよそを引く:方向1と同じ考え方で、年収に対して約14%を会社負担分とみなすと、655万円 ÷ 1.14 ≒ 約575万円
この例では、月額65万円の案件は、おおよそ年収570万円台の正社員と同じくらいの土台、という目安になります。正社員の有給休暇や退職金、賞与を考えると、条件の比べ方はさらに変わります。
時間あたりで比べるときの注意点
年収と単価を時間あたりで比べる場合は、働いている時間の前提もそろえます。労働基準法では、法定労働時間は原則として1日8時間・1週40時間です(厚生労働省)。正社員は、所定の時間を超えた分に残業代が出る(固定残業代の制度がある会社もある)一方、フリーランスの準委任案件は、精算幅の中で稼働時間が増えても月額が変わらないことがあります。
比べるときは、正社員側は「年収 ÷ 実際の年間労働時間(残業を含む)」、フリーランス側は「手元に残る額 ÷ 実際の年間稼働時間」で出すと、実態に近い比較になります。精算幅の考え方は精算幅の記事をご覧ください。
求人の年収と案件の条件を並べるときの確認項目
正社員の求人と業務委託の案件を見比べるときは、金額のほかに次の項目をそろえて並べると、条件の差が見えやすくなります。
| 確かめる項目 | 正社員の求人 | 業務委託の案件 |
|---|---|---|
| 金額の内訳 | 基本給・賞与・固定残業代を分けて見る | 月額・精算幅・超過と控除の計算方法 |
| 税込か税別か | 給与は消費税の対象外 | 税込か税別かをそろえる |
| 働く時間 | 所定労働時間と残業の見込み | 精算幅と稼働日数 |
| 期間 | 期間の定めがない雇用が中心 | 契約期間と更新の見込み |
| 交通費・機器 | 会社の負担の範囲 | 報酬に含むか、別に支払われるか |
案件の交通費や経費の扱いは交通費・経費の記事、税込・税別の確かめ方は税込か税別かの記事で解説しています。
換算した数字の使い道
- 独立するかどうかの判断:今の年収と同じ水準を保つのに必要な月額が分かる
- 希望金額の設定:案件に応募するときの最低ラインを決められる
- 正社員への転職:フリーランス時代の売上ではなく、年収相当の額で希望年収を考えられる
手取りでの比べ方は手取りの違いの記事、正社員に戻るときの年収の考え方は正社員に戻るときの記事で解説しています。
よくある質問
「年収÷12」の月額で案件を受けると損をしますか?
損をするとは限りませんが、会社員のときと同じ水準は保ちにくくなります。年収÷12には、会社が負担していた社会保険料や、仕事の経費、休みの分、案件の切れ目が含まれていないためです。希望の月額は、これらを足してから逆算することをおすすめします。
正社員の年収に賞与は含めて比べますか?
含めて比べます。求人の提示年収は、賞与の見込みを含めた額で示されることが多いため、何か月分の賞与を前提にしているかを確かめます。賞与は業績などで変わることもあるため、固定の給与部分と分けて見ておくと比べやすくなります。
健康保険組合に入っている会社の場合も同じ計算でよいですか?
考え方は同じですが、健康保険組合は保険料率などを組合ごとに決めているため、協会けんぽとは数字が変わります。この記事の例は協会けんぽの全国平均を使った大まかな目安です。正確な額は、勤務先の給与明細や健康保険組合の案内で確かめてください。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。