取引先から貸与PCを使うときの注意点|受け取りから返却まで確かめること
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
取引先から貸し出されるPCは、取引先の資産であり、取引先が決めたルールの範囲でだけ使うものです。私用やほかの案件に使わない、許可なくソフトを入れたり私物の機器をつないだりしない、データを自分の端末やサービスに移さない、紛失や不調はすぐに報告する、契約が終わったら指示どおりに返却する、というのが基本です。
自分のPCと貸与PCを並べて使うことになるため、取り違えや思い込みによる事故も起きやすくなります。この記事では、受け取りから返却までの流れに沿って、確かめておきたいことを整理します。自宅で作業するときのセキュリティ全般は自宅の情報セキュリティの記事で、自分で用意する道具の選び方は仕事道具の記事で扱っています。
受け取るときに確かめること
貸与PCの使い方のルールは、契約書そのものより、取引先の情報セキュリティの規程や利用のルールに書かれていることが多くあります。総務省は、情報セキュリティポリシーの内容に疑問がある場合や、しようとしていることに不安がある場合は、情報管理の担当者に相談するよう呼びかけています。受け取ったときに、次の点を確かめておきます。
| 確かめること | 例 |
|---|---|
| 利用のルールの所在 | 規程や手順書はどこにあるか。誰が説明してくれるか |
| 使ってよい場所 | 自宅のみか、コワーキングスペースや移動中も認めるか、国外への持ち出しはどうか |
| 接続してよいネットワーク | 自宅のWi-Fi、テザリング、公衆の回線のどれを使ってよいか |
| 周辺機器 | 外部モニタ、キーボード、ヘッドセット、USBメモリをつないでよいか |
| ソフトの追加 | 追加が必要なときの申請の方法 |
| 問い合わせと事故の連絡先 | 不調・紛失・不審な動きのときに、誰に、どの方法で連絡するか |
| 返却の方法 | 返却の期限、送り先、送料の負担、梱包の方法 |
届く前に決めておくこと
貸与PCは、参画の初日より前に郵送で届くこともあれば、初日に取引先の拠点で受け取ることもあります。郵送の場合は、受け取る日時と場所、受け取りの際に本人確認が要るかを確かめておきます。自宅を空けがちな人は、届く日を取引先と合わせておくと、再配達で初日の作業が遅れることを防げます。
初期設定の手順や、最初にログインするためのアカウントの情報が別の経路で届くこともあります。どの情報がいつ、どの方法で届くかを事前に聞いておくと、初日の立ち上がりがスムーズになります。アカウントの情報は、メモ帳のファイルや付箋に書き写さず、取引先の指示に沿って管理します。
受け取ったときの状態を記録する
届いたら、本体と付属品(電源アダプタ、ケースなど)がそろっているか、傷や不具合がないかを確かめ、写真を残しておくと、返却のときに状態をめぐって食い違いが起きにくくなります。不具合があれば、使い始める前に連絡します。
貸与PCでしてはいけないこと
貸与PCは、取引先の管理のもとで使うことが前提です。IPA(情報処理推進機構)は、組織の利用者が気をつける項目として、修正プログラムの適用、不審なメールへの注意、USBメモリなどの取り扱いへの注意、社内ネットワークへの機器接続ルールの遵守、ソフトウェアをインストールする際の注意、画面ロックの設定などを挙げています。貸与PCに置き換えると、次のようになります。
- 私用やほかの案件に使わない:私用のメールやSNS、ほかの取引先の資料を開かない
- 私物の機器をつながない:私物のUSBメモリや外付けの記録装置は、取引先が認めていなければ使わない
- 許可なくソフトを入れない:便利なツールでも、申請の手順に沿って取引先の許可を得る
- データを外に出さない:自分のPCや個人のクラウドストレージ、私用のメールにファイルを送らない
- 家族に使わせない:画面を見せることも含めて避ける
- 更新の指示に従う:取引先が配信する更新は後回しにせず適用する
総務省は、データを持ち出すと紛失や情報漏えい、マルウェアの感染のリスクがあり、必要がなければ機密情報や個人情報を持ち運び用の媒体に保存しないこと、私物や出どころの分からないUSBメモリを使わないことなどを挙げています。
自分のPCと並べて使うときの注意
貸与PCと自分のPCを同じ机で使うと、取り違えが起きやすくなります。
- 役割を決めておく:取引先の作業は貸与PC、自分の請求書や帳簿、ほかの案件は自分のPC、と分ける
- コピーと貼り付けをまたがせない:2台の間でテキストやファイルを移さない。画面共有の前に、映る画面を確かめる
- 会議の参加端末を決める:取引先の会議は、取引先が指定する端末とアカウントで入る
- 稼働の記録の付け方を確かめる:稼働の報告をどの端末・ツールで行うかは取引先の指定に従う
複数の案件を受けている場合は、案件ごとの貸与PCを混同しないよう、ラベルや置き場所でも分けておきます。掛け持ちのときの情報の分け方は掛け持ちの記事をご覧ください。
不調や遅さを自分で直そうとしない
動作が遅い、必要な権限がない、といった不便があっても、設定を自分で変えたり、別のツールで回避したりしないのが基本です。問い合わせの窓口に伝えて、取引先の手順で直してもらいます。作業が進まない時間が出た場合は、稼働の扱いも含めて担当者に共有しておきます。
紛失・盗難・故障のとき
紛失や盗難に気づいたら、受け取りのときに確かめた連絡先へすぐに報告します。総務省は、組織が持ち出し用の端末を用意する場合、ハードディスクの暗号化やパスワードの設定に加えて、事故時の対処方法と責任の所在を明確にしておくことを挙げています。取引先の側で、遠隔でのロックやデータの消去などの対応をとることがあるため、報告が早いほど被害を抑えやすくなります。
- 置き忘れや盗難の可能性がある場合は、取引先の指示に従い、警察への届け出も行う
- 故障した場合は、自分で分解したり修理に出したりせず、取引先の指示を待つ
- 不審な画面やメールを開いてしまった場合も、迷わず報告する
壊したりなくしたりしたときの費用の負担は、契約や取引先の規程の定めによります。故意や重い過失があると、損害の賠償を求められることもあります。契約上の責任の考え方は賠償責任保険の記事で整理しています。
契約が終わるときの返却
返却の手順は、取引先の指示に従います。一般的には次の点を確かめます。
- 返却の期限と方法:持参か郵送か。郵送の場合は送り先、梱包、送料の負担、追跡できる送り方を確かめる
- データの扱い:自分で初期化してよいか、そのまま返すか。取引先が消去を行う場合は、勝手に消さない
- 自分のメモが残っていないか:取引先のデータとは別の、自分用のメモやブラウザに保存した情報の扱いも、取引先の指示に従う
- アカウントの扱い:貸与PCとあわせて、取引先のアカウントやアクセスの権限も終了させる
- 返却の記録を残す:送り状の控えや、受け取りの連絡を保存する
返却の日が最終稼働日の当日か翌日以降かで、最後の引き継ぎ資料を作る時間が変わります。契約の終了が決まったら、引き継ぎの予定と返却の日をあわせて担当者と決めておくと、返却の直前に慌てて作業することを防げます。
秘密保持の義務は、契約が終わった後も続くことが一般的です。返却後も、取引先の情報を手元に残さないようにします。秘密保持契約の読み方はNDAの記事をご覧ください。
よくある質問
貸与PCで自分の請求書を作ってもよいですか?
取引先の業務以外に使うことになるため、避けるのが基本です。自分の請求書や帳簿、ほかの案件の作業は、自分のPCで行います。取引先の請求の仕組みを使うよう指示されている場合は、その指示に従います。
貸与PCを自宅以外で使ってもよいですか?
取引先が作業の場所をどう決めているかによります。自宅だけに限っている取引先もあれば、条件付きで外での作業を認める取引先もあります。受け取りのときに確かめ、迷う場合は使う前に担当者に聞きましょう。
貸与PCを壊してしまったら、費用を払う必要がありますか?
契約や取引先の規程の定めによります。通常の使い方での故障であれば負担を求められないこともありますが、扱いは取引先によって違います。まずはすぐに報告して指示を受け、負担の話が出た場合は契約の条項を確かめてください。
参考にした公的情報・資料
- 日常における情報セキュリティ対策(IPA 情報処理推進機構)
- データ持ち出し時の対策(総務省 国民のためのサイバーセキュリティサイト)
- 情報セキュリティポリシーの順守(総務省 国民のためのサイバーセキュリティサイト)
- テレワーク端末の保護(総務省 国民のためのサイバーセキュリティサイト)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。