60代のフリーランス|シニアが業務委託で働く方法と、年金との組み合わせ方
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
60代が業務委託で働くときは、年金をいつから受け取るかと、どんな関わり方の案件を選ぶかをセットで考えるのが基本です。老齢年金は原則65歳から受け取れ、60〜75歳の間で受け取り始める時期を選べます。働いて得る報酬と年金をどう組み合わせるかで、受け取り始める時期の考え方が変わります。
案件の面では、60代は週数日の支援や、引き継ぎ・レビューを中心にした関わり方など、稼働を調整しながら経験を生かす形が選びやすくなります。この記事では、2026年10月時点の制度をもとに、年金との組み合わせ方と案件の選び方を整理します。
60代の働き方は大きく3つに分かれる
60歳以降の働き方は、会社との関係で大きく3つに分けられます。
| 働き方 | 内容 | 年金・社会保険で確かめること |
|---|---|---|
| 継続雇用(再雇用など) | 定年後も元の会社に雇用されて働く | 厚生年金に加入する場合、在職老齢年金の対象になる |
| 元の会社と業務委託 | 会社の就業確保措置などにより、業務委託契約で仕事を受ける | 個人事業主として、国民年金・国民健康保険などを自分で手続きする |
| フリーランスとして独立 | 複数の取引先から案件を受ける | 同上。案件ごとに契約条件を確かめる |
会社には、65歳までの雇用確保措置(定年制の廃止、65歳までの定年の引き上げ、希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入のいずれか)を講じることが求められています。さらに2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法で、70歳までの就業機会の確保が事業主の努力義務になりました。その措置の一つに「70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入」があります(厚生労働省)。元の会社から業務委託での関わり方を提示されることもあるため、その場合は雇用のときと何が変わるのかを確かめることが大切です。
年金をいつから受け取るか
老齢基礎年金は、保険料を納めた期間と免除期間などを合わせた受給資格期間が10年以上ある場合に、原則として65歳から受け取れます。受け取り始める時期は、60歳から75歳までの間で選べます(日本年金機構、2026年10月時点)。
| 受け取り方 | 時期 | 年金額への影響 |
|---|---|---|
| 繰上げ受給 | 60歳〜65歳になるまで | 1か月あたり0.4%減額(昭和37年4月1日以前生まれは0.5%)。減額は生涯続く |
| 65歳から受給 | 65歳 | 増減なし |
| 繰下げ受給 | 66歳〜75歳 | 1か月あたり0.7%増額(最大84%)。増額は生涯続く |
参考までに、老齢基礎年金の満額は令和8年4月分から年額847,300円(昭和31年4月2日以後生まれの方)です。
繰上げを選ぶ前に確かめたいこと
繰上げ受給は、一度請求すると取り消しができません。また、繰上げ請求をすると国民年金の任意加入や保険料の追納ができなくなるなど、いくつかの制約があります。60代前半も業務委託で収入がある場合は、繰上げで受け取る必要があるかを、収支の見込みとあわせて考えます。
繰下げを考えるときのポイント
60代後半も業務委託の報酬で生活できる見込みがあれば、繰下げ受給で年金額を増やす選択肢があります。老齢基礎年金と老齢厚生年金は、別々に繰り下げることもできます。ただし、受け取り始める時期を遅らせるほど、受け取る期間の見通しや健康状態など、個人の事情によって向き不向きが分かれます。判断に迷う場合は、年金事務所やファイナンシャルプランナーなどの専門家にご相談ください。
在職老齢年金の対象になるのは厚生年金に加入して働く場合
在職老齢年金は、70歳未満で会社に勤めて厚生年金保険に加入している人や、70歳以上で厚生年金の適用事業所に勤めている人が、老齢厚生年金を受け取るときの仕組みです。老齢厚生年金の額と、給与・賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全部が支給停止になる場合があります(日本年金機構)。
2026年4月から、支給停止の基準となる額(支給停止調整額)は65万円に引き上げられました(厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」)。基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円以下なら全額が支給され、超える場合は、超えた額の2分の1が支給停止されます。この基準額は、毎年度、賃金の変動に応じて改定されます。
総報酬月額相当額は、厚生年金の標準報酬月額と、直近1年間の標準賞与額の合計の12分の1を足した額です。個人事業主として業務委託で受け取る報酬は、厚生年金の標準報酬月額にはあたりません。そのため、厚生年金に加入せずにフリーランスとして働く場合は、在職老齢年金の計算の対象にはならないと考えられます。
一方で、法人を作って自分に役員報酬を支払う場合や、業務委託と並行して会社に雇用されて厚生年金に加入する場合は、在職老齢年金の対象になることがあります。働き方を変える前に、年金事務所に確認しておくと安心です。
60歳以降も国民年金に任意加入できる場合がある
国民年金の保険料を納める義務があるのは、原則として60歳までです。ただし、20歳以上60歳未満の保険料納付月数が480月(40年)に満たない場合、次の条件をすべて満たせば、60歳以上65歳未満の間、任意加入して年金額を増やせます(日本年金機構「任意加入制度」)。
- 日本国内に住所がある60歳以上65歳未満の方
- 老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない方
- 20歳以上60歳未満の保険料納付月数が480月未満の方
- 厚生年金保険、共済組合等に加入していない方
任意加入は、申し出た月からの加入で、さかのぼって加入することはできません。60歳を迎える前に、ねんきん定期便などで納付月数を確かめておきましょう。国民年金の基本は国民年金の記事で解説しています。
稼働の上限と健康を契約前に決めておく
60代の業務委託では、報酬の額より、無理なく続けられる稼働の量を先に決めておくことが大切です。業務委託は、会社員のような休暇の制度や、休んだときの給与の補償がありません。体調を崩して稼働できない期間があると、その間の報酬はなくなります。
契約の前に、次の点を自分の中で決めておくと、案件を選ぶときに迷いにくくなります。
- 週に何日まで、1日に何時間まで稼働するか
- 出社が必要な場合、通勤にかけられる時間はどの程度か
- 年に何回か、まとまった休みを取りたい時期があるか
これらは面談の段階で伝えておくと、参画後に条件のずれが生まれにくくなります。病気やけがで働けない期間への備えは所得補償保険の記事で解説しています。
60代が選びやすい案件の形
60代の方の経験が生かしやすいのは、長い経験そのものより、その経験が今のプロジェクトのどこで役に立つかがはっきりしている案件です。
- 引き継ぎ・ナレッジの整理:長く運用されてきたシステムや業務の知識を、資料や後任の育成に落とし込む
- 品質・レビューの支援:設計書や成果物のレビュー、テスト計画の確認
- 発注側の相談役:ベンダーの提案や見積もりの妥当性を見る、定例会議で論点を整理する
- 週数日のPMO支援:進捗・課題の管理を、稼働日数を抑えて担う
どの形でも、面談では「この案件で何を引き受けるか」と「どの程度の稼働で関わるか」をはっきり伝えることが大切です。週数日の働き方は週3日案件の記事をご覧ください。
よくある質問
60代からフリーランスとして働き始めることはできますか?
できます。長く関わった業務や技術の知識を、引き継ぎ・レビュー・PMO支援などの役割で生かしている方がいます。稼働日数を抑えた案件もあるため、年金の受け取り方とあわせて、無理のない関わり方を決めておくことが大切です。
フリーランスとして働くと、年金は減らされますか?
在職老齢年金は、厚生年金保険に加入して働く人が老齢厚生年金を受け取るときの仕組みです。厚生年金に加入せず、個人事業主として業務委託の報酬を受け取る場合は、この仕組みによる支給停止の対象にはならないと考えられます。法人の役員として報酬を受け取る場合などは対象になることがあるため、年金事務所でご確認ください。
元の会社から業務委託での契約を提案されました。何を確かめればよいですか?
業務の範囲、報酬、支払期日、契約期間、指示の受け方を契約書で確かめます。雇用から業務委託に変わると、社会保険や税金の手続きを自分で行うことになり、給与ではなく報酬として受け取ります。雇用のときとの違いを理解したうえで判断してください。
参考にした公的情報・資料
- 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額(日本年金機構)
- 年金の繰上げ受給(日本年金機構)
- 年金の繰下げ受給(日本年金機構)
- 在職老齢年金制度(日本年金機構)
- 在職老齢年金の計算方法(日本年金機構)
- 在職老齢年金制度の見直しについて(厚生労働省)
- 任意加入制度(日本年金機構)
- 高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~(厚生労働省)
- 高年齢者雇用安定法の改正~「継続雇用制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みの廃止~(厚生労働省)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。