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建設業界の案件で気をつけたい規制とセキュリティのルール|建設業法・上限規制・CCUS・電子契約

公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト

建設業の案件で押さえておきたいルールは、建設業法の契約と下請の決まり、2024年4月から建設業に適用された時間外労働の上限規制、建設キャリアアップシステム(CCUS)、建設工事の電子契約の要件、国土交通省のBIM/CIM原則適用の5つです。どれも取引先である建設会社に向けたルールで、フリーランスのIT担当者に直接義務を課すものではありませんが、システムの要件や作業のルールとして表れます。

大事なのは、条文を覚えることより、取引先のシステムが「なぜその項目を持ち、なぜその手順を踏むのか」を知ることです。この記事では、2026年10月時点で国土交通省・厚生労働省・e-Gov法令検索で確認できた内容をもとに整理します。個別の判断が必要な場合は、取引先の担当部門や専門家にご相談ください。

建設業法:契約と下請の決まり

法律の目的と許可

建設業法第1条は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化などを図ることで、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進することを目的に掲げています。建設業を営もうとする者は、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負う場合を除き、国土交通大臣または都道府県知事の許可を受ける必要があり(第3条)、許可には一般建設業と特定建設業の区分があります。

契約書面に書く事項

第19条は、建設工事の請負契約を結ぶとき、工事内容、請負代金の額、工事着手と完成の時期、前金払や出来形部分の支払の定め、設計変更や工事の中止があったときの変更の定め、価格等の変動に基づく変更の定め、検査と引渡しの時期、完成後の支払の時期と方法、契約に関する紛争の解決方法などを書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付することを求めています。内容を変更するときも、変更の内容を書面で交付します。

契約管理や原価管理のシステムに関わるなら、これらの項目と変更の履歴をどう持つかが要件の土台になります。

下請との取引の決まり

建設業法には、元請と下請の取引に関する決まりもあります。2026年10月時点のe-Gov法令検索の条文で確認できる主なものは次のとおりです。

条文中身(要旨)
第19条の3注文者が取引上の地位を不当に利用して、通常必要と認められる原価に満たない金額で契約することの禁止。建設業者の側にも、正当な理由がある場合を除き、原価に満たない金額で請け負うことを禁じる規定がある
第19条の5通常必要と認められる期間に比べて著しく短い工期での契約の禁止(注文者・建設業者の双方)
第20条材料費・労務費などの内訳と、工程ごとの作業と準備に必要な日数を記載した見積書の作成の努力義務など
第24条の3元請負人が出来形部分などの支払を受けたとき、下請負人に相応する下請代金を、支払を受けた日から1か月以内で、かつできる限り短い期間内に支払うこと
第24条の8一定の場合に、特定建設業者が施工体制台帳と施工体系図を作成すること

2024年の改正と段階的な施行

国土交通省の2024年(令和6年)7月26日の発表によると、建設業の担い手確保のため、建設業法と公共工事入札契約適正化法が改正されました。その一部として、中央建設業審議会が建設工事の適正な「労務費の基準」を作成・勧告できるようにする規定(第34条)と、国土交通大臣が請負契約の締結状況を調査・公表できるようにする規定(第40条の4)が、令和6年9月1日から施行されています。同じ発表では、価格転嫁の協議の円滑化や監理技術者等の配置の合理化、通常必要な労務費の額を著しく下回る見積や契約の禁止、工期ダンピング対策の強化などは、その後に段階的に施行すると案内されていました。

改正は段階的に進んでいるため、案件で関わるときは、取引先がどの時点の条文を前提に業務を組み立てているかを確かめます。見積や契約、原価のシステムの改修案件は、こうした改正をきっかけに生まれることがあります。

フリーランス自身の契約との関係

建設業法の「建設工事」は、土木建築に関する工事で別表第一に掲げるものを指します(第2条)。建設会社から受けるシステム開発やITの支援の業務委託は、通常はこれにあたらないと考えられ、取引のルールはフリーランス新法など別の法律が中心になります。両者の違いは下請法とフリーランス新法の違いの記事で整理しています。個別の契約がどの法律の対象になるかの判断は、専門家にご相談ください。

時間外労働の上限規制:2024年4月から建設業にも適用

厚生労働省によると、工作物の建設の事業には時間外労働の上限規制の適用が5年間猶予されていましたが、2024年(令和6年)4月から適用されています。上限の内容は次のとおりです。

区分上限
原則月45時間・年360時間以内(限度時間)。限度時間を超えられるのは年6か月まで
臨時的な特別の事情がある場合年720時間以内。単月は休日労働を含めて100時間未満、2〜6か月の平均は休日労働を含めて80時間以内
災害時の復旧・復興の事業時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内とする規制は適用されない

この規制は、建設会社に雇われて働く労働者に向けたものです。IT案件では、次のような形で関わります。

業務委託で参画するフリーランスは、原則として労働基準法の労働者としての扱いを受けません。ただし、実態として指揮命令を受けて働いている場合は、労働者にあたると判断されることがあります。考え方は労働者性の記事と偽装請負の記事で整理しています。

建設キャリアアップシステム(CCUS)

国土交通省は、CCUSを、技能者が技能・経験に応じて適切に処遇される建設業を目指して、技能者の資格や現場での就業履歴などを登録・蓄積し、能力評価につなげる仕組みと説明しています。国土交通省と建設業団体が連携して普及と利用促進に取り組んでおり、運営する建設業振興基金のサイトでは、事業者と技能者の登録や現場での運用の案内、就業履歴データの標準APIなどが掲載されています。

IT案件では、自社の入退場管理や労務のシステムとCCUSのデータをどう連携するかが論点になることがあります。扱うのは技能者の資格や就業の記録など、個人に関する情報です。開発やテストで本物のデータを使ってよいか、どこに保存してよいかは、取引先のルールに従い、迷ったら作業を進める前に確かめます。

電子契約の要件

建設業法第19条第3項は、相手方の承諾を得て、国土交通省令で定める情報通信の技術を利用する方法によって、書面の交付に代えることができると定めています。国土交通省の「電磁的措置による建設工事の請負契約の締結に係るガイドライン」(令和7年9月30日施行)は、その要件を次のように整理しています。

  1. 事前の承諾:使う措置の種類と内容(サービスの名称を示すことが望ましいとされる)、ファイルへの記録の方式を示したうえで、書面または電磁的方法で相手方の承諾を得る
  2. 見読性:相手方がファイルの記録を出力して書面を作成できること
  3. 原本性:記録された契約事項について、改変が行われていないかを確認できる措置を講じていること
  4. 本人性:相手方が本人であることを確認できる措置を講じていること

ガイドラインは、原本性について電子署名やタイムスタンプなどを使う必要があるとし、本人性については、事業者署名型のサービスを使う場合に2要素認証などを利用することが望ましいとしています。また、このガイドラインの施行にあわせて、平成13年3月30日付けの「技術的基準」に係るガイドラインは廃止されています。

建設会社の電子契約や契約管理の案件では、一般の電子契約の要件に加えて、こうした建設業法上の要件を満たす設計が求められます。フリーランス自身が業務委託契約を電子契約で結ぶときの注意点は電子契約の記事で扱っています。

BIM/CIMの原則適用とデータの扱い

国土交通白書2025によると、国土交通省は令和5年度から、すべての直轄土木業務・工事(小規模なもの等は除く)にBIM/CIMを原則適用しています。官庁営繕の事業でも、令和5年度から原則としてすべての新築の設計業務と工事にEIR(発注者情報要件)を適用していると説明されています。国土交通省は2024年4月に「i-Construction 2.0」を策定し、データ連携のオートメーション化などを掲げています。

IT案件にとっての意味は、発注者が求めるデータの形式や納め方が、システムの要件になることです。取引先が国の工事を受けている場合、3次元モデルや関連するデータは、発注者の要領に沿って作り、納める必要があります。

図面やモデルのセキュリティ

図面や3次元モデル、現場の写真には、建物や構造物の構造、施主の情報など、秘密として扱われる情報が含まれます。参画したら次の点を確かめます。

取引先の規程に従う必要があるかの考え方は取引先の規程の記事、秘密の範囲は秘密保持契約の記事で整理しています。

よくある質問

建設会社の案件に入ると、フリーランスも建設業法の対象になりますか?

建設業法は建設工事の請負や建設業を営む者に向けた法律で、建設会社から受けるシステム開発などの業務委託は、通常はその対象の「建設工事」にはあたらないと考えられます。ただし、契約の中身によって判断が変わる可能性もあるため、個別の契約については専門家にご相談ください。

時間外労働の上限規制は、業務委託のフリーランスにも適用されますか?

上限規制は、労働基準法上の労働者に向けたものです。業務委託のフリーランスは原則として対象になりませんが、実態として指揮命令を受けて働いている場合は労働者と判断されることがあります。働き方に不安がある場合は、契約の内容と実態を見直し、労働基準監督署などの窓口や専門家にご相談ください。

建設業の電子契約のシステムは、一般の電子契約サービスと何が違いますか?

建設工事の請負契約を電子で結ぶ場合は、建設業法とその施行規則、国土交通省のガイドラインが定める要件(事前の承諾、見読性・原本性・本人性)を満たす必要があります。一般のサービスを使う場合でも、これらの要件を満たすかを取引先が確かめたうえで採用するのが基本です。

参考にした公的情報・資料

記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。

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