消費税の届出書の種類|課税事業者になるとき・やめるときに出す書類と期限
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
消費税の届出書は、売上の金額によって自動的に決まる立場を「知らせる」ものと、自分で制度を「選ぶ・やめる」ものの2種類に分かれます。前々年の課税売上高が1,000万円を超えて課税事業者になったら「消費税課税事業者届出書」を、1,000万円以下に戻ったら「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」を、どちらも速やかに税務署へ出します。
簡易課税や課税事業者を自分で選ぶ届出は、適用したい年の前年12月31日までが原則です。インボイスの登録をやめたいときは、やめたい年の初日から15日前の日までに登録取消しの届出書を出します(国税庁の案内は令和8年4月1日現在の法令による。この記事は2026年10月時点の情報です)。
届出書は「知らせるもの」と「選ぶもの」に分かれる
国税庁のタックスアンサー(No.6629)に載っている主な届出書のうち、個人のフリーランスに関係するものを整理すると次のとおりです。
| 届出書 | 出す場面 | 期限 |
|---|---|---|
| 消費税課税事業者届出書(基準期間用) | 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた | 事由が生じたら速やかに |
| 消費税課税事業者届出書(特定期間用) | 特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた | 事由が生じたら速やかに |
| 消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書 | 基準期間の課税売上高が1,000万円以下になった | 事由が生じたら速やかに |
| 消費税課税事業者選択届出書 | 免税事業者が自分から課税事業者を選ぶ | 選ぶ年の初日の前日まで |
| 消費税課税事業者選択不適用届出書 | 選択をやめて免税事業者に戻る | やめる年の初日の前日まで |
| 消費税簡易課税制度選択届出書 | 簡易課税を選ぶ | 使う年の初日の前日まで |
| 消費税簡易課税制度選択不適用届出書 | 簡易課税をやめる | やめる年の初日の前日まで |
| 適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書 | インボイスの登録をやめる | やめる年の初日から起算して15日前の日まで |
個人事業者の課税期間は1月1日から12月31日なので、「初日の前日」は前年の12月31日です。
上の3つは、売上の数字によって決まった事実を税務署に知らせる届出です。下の5つは、本人が制度を選んだりやめたりするための届出で、期限を過ぎるとその年は希望どおりになりません。この違いを押さえておくと、どれを急ぐべきかが分かりやすくなります。
課税事業者になるときに出す届出書
前々年の売上で課税になるとき(基準期間用)
個人の基準期間は前々年です。たとえば2025年の課税売上高が1,000万円を超えた人は、2027年が課税事業者になる年です。2025年の売上が確定した段階で、「消費税課税事業者届出書(基準期間用)」を所轄の税務署に出します。
前年1〜6月の売上で課税になるとき(特定期間用)
前々年が1,000万円以下でも、前年の1月1日〜6月30日(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超えると、その年は課税事業者になります。この場合は「消費税課税事業者届出書(特定期間用)」を出します。
特定期間の判定は、課税売上高の代わりに給与等の支払額で行うこともできます。どちらで判定するか、基準期間の課税売上高をどう数えるかは、納税義務の判定の記事で詳しく扱っています。
免税事業者に戻るときの届出書
売上が1,000万円以下に戻ったとき
課税事業者だった人の基準期間の課税売上高が1,000万円以下になったら、「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」を速やかに出します。ただし、その年の特定期間の課税売上高などが1,000万円を超えていれば、引き続き課税事業者です。
インボイスの登録をしている人は、登録の取消しが先
インボイス(適格請求書発行事業者)の登録をしている人は、売上が1,000万円以下でも免税事業者になりません。免税事業者に戻るには、まず登録をやめる必要があります。
国税庁のパンフレットによると、取消しの手続きは次のとおりです。
- 「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を出す
- 登録の効力は、提出した年の翌年1月1日に失われる
- 翌年の初日から起算して15日前の日を過ぎて出すと、効力がなくなるのは翌々年の1月1日になる
国税庁の例では、翌年1月1日から登録をやめたい個人は、12月17日までに出す必要があります。12月18日から31日の間に出すと、1年遅れることになります。
また、登録の経過措置を使って免税事業者から登録した人は、原則として登録開始日から2年を経過する日を含む課税期間までは、登録をやめても免税事業者になれません。令和5年10月1日を含む課税期間中に登録した人は、この制限の対象外です。
登録の前に「消費税課税事業者選択届出書」も出していた人は、免税事業者に戻る年の前年12月31日までに「消費税課税事業者選択不適用届出書」も必要です。登録をやめるかどうかの考え方はインボイス登録はすべきかの記事をご覧ください。
自分で選ぶ届出書と期限
課税事業者選択届出書
免税事業者が、あえて課税事業者になるための届出です。一般課税で申告すると、売上の消費税より経費の消費税が多い年は還付を受けられることがあるため、大きな設備投資をする場合などに使われてきました。
注意したいのは、選択するとすぐにはやめられない点です。原則として、適用を始めた年の初日から2年を経過する日を含む年の初日以後でなければ、不適用届出書を出せません。一定の場合は3年になります。
簡易課税制度選択届出書・不適用届出書
簡易課税は、売上の消費税額にみなし仕入率を掛けて納税額を出す方法です。仕組みとITの業務の事業区分は簡易課税の記事で解説しています。
選択届出書の期限は、原則として使いたい年の前年12月31日までです。ただし、次の場合は例外があります。
- 事業を始めた年から選ぶ場合:その年の12月31日までに出せば、その年から使える
- 免税事業者がインボイスの登録で、登録日から課税事業者になった年:その年中に出せば、その年から使える(令和11年9月30日までの日を含む課税期間)
- 2割特例・3割特例を使った年の翌年:翌年分の確定申告期限までに出せば、翌年分から使える
やめるときは、やめたい年の前年12月31日までに不適用届出書を出します。簡易課税も、原則として2年間は続けて使う必要があります。
期限を過ぎたときの扱い
「初日の前日まで」とされる届出は、その日が日曜日や祝日でも期限は延びません。郵送した場合は、郵便の通信日付印の日に出したものとみなされます。
やむを得ない事情で間に合わなかった場合は、事情がやんだ日から2か月以内に申請書を出し、税務署長の承認を受けると、期限内に出したものとみなされる仕組みがあります(課税事業者選択届出書・簡易課税制度選択届出書など)。承認されるかどうかは事情によるため、期限前に出しておくことが基本です。
ケース別:どの届出書を出すか
フリーランスによくある場面ごとに、出す書類をまとめます。
| 場面 | 出す書類 |
|---|---|
| 前々年の課税売上高が1,000万円を超えた | 課税事業者届出書(基準期間用) |
| 前年1〜6月の課税売上高が1,000万円を超えた | 課税事業者届出書(特定期間用)※給与等支払額で判定する場合は除く |
| 課税事業者だったが、前々年が1,000万円以下になった(未登録) | 納税義務者でなくなった旨の届出書 |
| インボイスの登録をやめて免税事業者に戻りたい | 登録取消届出書(+選択届出をしていれば選択不適用届出書) |
| 独立した年から簡易課税を使いたい | 簡易課税制度選択届出書(その年の12月31日まで) |
| 2割特例・3割特例のあと簡易課税に移りたい | 簡易課税制度選択届出書(翌年分の申告期限まで) |
| 簡易課税をやめて一般課税に戻したい | 簡易課税制度選択不適用届出書(前年12月31日まで) |
インボイスの登録の申請そのものは、インボイス登録の手続きの記事で扱います。
届出書の出し方
届出書は、国税庁のホームページにある様式を使い、納税地の所轄税務署に出します。
出す前に、次の点をそろえておくと書きやすくなります。
- 判定に使う期間の課税売上高:基準期間(前々年)と特定期間(前年1〜6月)の金額
- 適用を始める年:何年分から課税事業者になるか、簡易課税を使うか
- 事業の内容:簡易課税なら事業区分の判断に使う
- 登録番号:インボイスの登録をしている場合
控えを1部手元に残しておくと、あとで「いつ、何を出したか」を確かめやすくなります。消費税の申告と納付の流れは消費税の納税の記事をご覧ください。
よくある質問
課税事業者届出書を出し忘れていました。どうすればよいですか?
課税事業者かどうかは売上の数字で決まるため、届出書を出していなくても申告と納税が必要な場合があります。気づいた時点で届出書を出し、申告期限を過ぎている年があれば、税務署や税理士に早めにご相談ください。
年の途中でインボイスの登録をやめることはできますか?
登録の効力がなくなるのは、届出書を出した年の翌年1月1日(15日前の期限を過ぎた場合は翌々年1月1日)です。年の途中でやめることはできません。事業を廃止した場合などは別の扱いになるため、税務署にご確認ください。
簡易課税の届出を出すと、2割特例や3割特例は使えなくなりますか?
国税庁の資料では、簡易課税を選んでいる事業者でも、条件を満たせば2割特例・3割特例で申告できるとされています。申告のときにどちらで計算するかを選べます。個別の判断は税務署や税理士にご相談ください。
参考にした公的情報・資料
- No.6629 消費税の各種届出書(国税庁)
- No.6501 納税義務の免除(国税庁)
- No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)(国税庁)
- インボイス発行事業者の登録をやめようとするとき(国税庁 消費税の届出書パンフレット)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。