2割特例とは|対象と期限、令和9年分からの3割特例への切り替え
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
2割特例は、インボイスの登録をきっかけに免税事業者から課税事業者になった人が、納める消費税を「売上にかかる消費税額の2割」にできる制度です。2023年10月1日から2026年9月30日までの日を含む課税期間が対象で、個人事業者は令和8年(2026年)分の申告まで使えます。
令和8年度税制改正で、個人事業者には令和9年分・令和10年分に使える「3割特例」が新しくできました。法人は2割特例の終了後、3割特例を使えません(2026年10月時点)。
2割特例の仕組み
消費税は本来、売上で預かった消費税から、仕入や経費で払った消費税を差し引いて納めます(一般課税)。2割特例では、仕入や経費の金額にかかわらず、売上にかかる消費税額の8割を差し引いたものとして計算します。結果として、納める税額は売上にかかる消費税額の2割になります。
| 計算方法 | 納める消費税の考え方 |
|---|---|
| 一般課税 | 売上にかかる消費税額 − 実際に支払った仕入・経費の消費税額 |
| 簡易課税 | 売上にかかる消費税額 − 売上にかかる消費税額×みなし仕入率 |
| 2割特例 | 売上にかかる消費税額×20% |
| 3割特例 | 売上にかかる消費税額×30% |
ITエンジニアやコンサルは、仕入や外注が少なく、経費も多くはありません。そのため、一般課税で計算すると納税額が大きくなりやすく、2割特例の効果が大きく出やすい職種です。
計算の例
1年間の売上にかかる消費税額が80万円の場合で比べます。
- 2割特例:80万円×20%=16万円
- 3割特例:80万円×30%=24万円
- 簡易課税(第5種事業、みなし仕入率50%の場合):80万円−40万円=40万円
簡易課税のみなし仕入率は事業区分ごとに決まっていて、サービス業などの第5種事業は50%です。自分の業務がどの区分にあたるかは、業務の内容で判断します。
2割特例を使える人・使えない人
2割特例を使えるのは、インボイスの登録(または課税事業者選択届出書の提出)によって、本来は免税事業者だったのに課税事業者になった人です。
使えない主なケースは次のとおりです。
- 基準期間(個人は前々年)の課税売上高が1,000万円を超える
- 特定期間(個人は前年1〜6月)の課税売上高などが1,000万円を超える
- 資本金1,000万円以上の新設法人など、もともと免税事業者になれない
- 課税期間を1か月や3か月に短くする特例を使っている
つまり、登録しなくても課税事業者になる年は使えません。売上が伸びて1,000万円を超えた年の2年後は、2割特例・3割特例の対象外になる点に注意してください。
期限は令和8年分まで
2割特例の対象は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日を含む課税期間です。個人事業者の課税期間は原則として1月1日〜12月31日なので、2026年9月30日を含む令和8年分(2026年1月〜12月)が最後になります。
| 年分 | 個人事業者 | 法人(12月決算の例) |
|---|---|---|
| 令和8年分(2026年) | 2割特例 | 2割特例 |
| 令和9年分(2027年) | 3割特例 | 2割特例・3割特例とも使えない |
| 令和10年分(2028年) | 3割特例 | 使えない |
| 令和11年分(2029年)以降 | 3割特例も使えない | 使えない |
令和8年分の消費税の確定申告は2027年に行います。2026年10月以降も、令和8年分の申告では2割特例を使える点を押さえておきましょう。
令和9年分・令和10年分は3割特例
令和8年度税制改正で、個人事業者向けに「3割特例」ができました。個人事業者である適格請求書発行事業者は、令和9年分と令和10年分の消費税申告で、納める税額を売上にかかる消費税額の3割にできます。
主な条件は2割特例とほぼ同じです。
- 個人事業者であること(法人は使えない)
- 免税事業者が登録したこと、または課税事業者選択届出書を出したことで課税事業者になった課税期間であること
- 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること(令和9年分は令和7年、令和10年分は令和8年の売上で判定)
- 課税期間を短くしていないこと
- 確定申告書に3割特例を適用する旨を書くこと
2割から3割に変わると、売上にかかる消費税額が同じでも、納める税額は1.5倍になります。先ほどの例では、16万円が24万円になります。納税の資金は早めに取り分けておきましょう。
手続きは申告書に書くだけ
2割特例も3割特例も、事前の届出は要りません。消費税の確定申告書に、特例を適用する旨を書いて申告します。
一般課税や簡易課税と、どちらが有利かをその年の申告のときに選べるのも特徴です。たとえば、大きな設備投資をして仕入の消費税が多い年は、一般課税のほうが有利になることもあります。ただし、一般課税で計算するには、帳簿とインボイスの保存などの条件を満たしている必要があります。
特例を使う年に準備しておくこと
2割特例・3割特例は仕入の記録が要らない分、計算は単純です。それでも、売上の側の記録は正しくそろえておく必要があります。次の点を押さえておくと、申告の時期に慌てずに済みます。
- 売上を取引先ごとに記録する:請求書の日付・金額・税込か税別かを、月ごとに会計ソフトなどへ入れておく
- 交付したインボイスの控えを保存する:登録している以上、交付したインボイスの写しの保存は特例を使う年も必要
- 前々年と前年1〜6月の売上を確かめる:その年に特例を使えるかどうかの判定に使う
- 一般課税・簡易課税と比べる:大きな仕入や設備投資があった年は、ほかの計算方法と比べてから選ぶ
- 翌年以降の計算方法を決めておく:特例が終わる年の翌年に簡易課税へ移るかどうかを、早めに検討する
特に3の判定は見落としやすいところです。案件が増えて売上が1,000万円を超えた年があると、その2年後は特例を使えず、簡易課税の届出もしていなければ一般課税で計算することになります。売上が伸びてきた段階で、2年先の計算方法まで考えておくと安心です。
また、2割特例・3割特例は消費税の計算の話で、所得税の確定申告とは別のものです。所得税の申告では、経費の記録が引き続き必要です。所得税の申告の流れは確定申告の流れの記事をご覧ください。
特例が終わったあとの簡易課税への移り方
3割特例が終わると、令和11年分からは一般課税か簡易課税で計算します。簡易課税を使うには、原則として前の課税期間中に簡易課税制度選択届出書を出す必要があります。
ただし、2割特例や3割特例を使った課税期間の翌課税期間であれば、その翌課税期間の確定申告期限までに届出書を出すことで、その翌課税期間から簡易課税を使えます。
- 令和10年分に3割特例を使った個人事業者 → 令和12年4月1日(令和11年分の申告期限)までに届出書を出せば、令和11年分から簡易課税を使える
- 簡易課税は、選択すると原則2年間続けて使う必要がある
- 簡易課税を使えるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合
簡易課税の仕組みは簡易課税の記事で詳しく解説しています。消費税の申告の流れは消費税の納税の記事をご覧ください。
よくある質問
2026年10月以降の売上には2割特例を使えませんか?
個人事業者は、2026年9月30日を含む令和8年分(1月〜12月)が対象なので、10月〜12月の売上も含めて令和8年分の申告で2割特例を使えます。課税期間を短くしている場合などは扱いが違うため、税務署や税理士にご確認ください。
法人化した場合も3割特例を使えますか?
使えません。3割特例は個人事業者だけが対象です。法人の場合、2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間で終わり、その後は一般課税か簡易課税で計算します。法人化の時期を考えるときは、この点も含めて専門家にご相談ください。
2割特例を使った年に、簡易課税の届出を出していなかった場合はどうなりますか?
2割特例・3割特例を使った課税期間の翌課税期間であれば、その翌課税期間の確定申告期限までに簡易課税制度選択届出書を出すことで、その期間から簡易課税を使えます。期限を過ぎると原則どおりの扱いになるため、早めに準備してください。
参考にした公的情報・資料
- 2割特例の概要(国税庁)
- インボイス制度特設サイト 令和8年度税制改正特集(国税庁)
- インボイス制度に関する令和8年度税制改正について(国税庁・令和8年4月)
- 令和8年10月1日からインボイス制度に係る経過措置が変わります(国税庁・令和8年9月)
- No.6501 納税義務の免除(国税庁)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。