消費税の納税義務はいつから?基準期間と特定期間で判定する手順
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
個人のフリーランスが消費税を納める義務は、その年の前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えたときに生じます。売上が1,000万円を超えた「その年」からではなく、2年後の年から課税事業者になるのが原則です。
ただし、前々年が1,000万円以下でも、前年1月1日〜6月30日(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超えると、その年から課税事業者になります。この特定期間の判定は、売上の代わりに給与等の支払額で行うこともできます。インボイスの登録をしている人は、売上の額にかかわらず課税事業者です(国税庁の案内は令和8年4月1日現在の法令による。この記事は2026年10月時点の情報です)。
判定の基本は「前々年」と「前年の上半期」
国税庁のタックスアンサー(No.6501)では、個人事業者の納税義務を次の順で判定します。
| 確かめる期間 | 個人の場合 | 1,000万円を超えたら |
|---|---|---|
| 基準期間 | その年の前々年(1〜12月) | その年は課税事業者 |
| 特定期間 | その年の前年の1月1日〜6月30日 | その年は課税事業者(給与等支払額での判定も可) |
たとえば2027年分の納税義務は、2025年の1年分と、2026年1〜6月の半年分で判定します。2027年の売上がいくらになるかは、2027年分の判定に関係しません。
このほか、次の場合も免税にはなりません。
- インボイス(適格請求書発行事業者)の登録を受けている
- 消費税課税事業者選択届出書を出している
- 相続で事業を引き継ぎ、亡くなった人の基準期間の売上などが基準を超えている
なお、ちょうど1,000万円の場合は「1,000万円以下」なので、超えたことにはなりません。
基準期間の課税売上高の数え方
課税売上高に入るもの
課税売上高は、消費税がかかる売上の合計です。ITの業務委託の報酬は、通常この課税売上にあたります。会社員として受け取った給与は、事業として行う取引ではないため、課税売上高には入りません。
免税事業者だった年は税抜きにしない
国税庁のQ&Aでは、基準期間に免税事業者だった場合、その期間の売上には消費税が課されていないため、税抜きの計算をせずに、受け取った金額のまま数えるとしています。
| 基準期間の立場 | 数え方 | 例:受け取った報酬が1,050万円 |
|---|---|---|
| 免税事業者だった | 受け取った額のまま | 1,050万円 → 1,000万円を超える |
| 課税事業者だった | 税抜きの金額 | 税込1,050万円なら税抜約954万円 → 超えない |
免税事業者のフリーランスが「税込で1,050万円だから、税抜にすれば1,000万円以下」と考えるのは誤りです。報酬を税込で受け取っている免税事業者は、受け取った金額そのものが1,000万円を超えるかどうかで判断します。
年の途中で開業しても12か月分に直さない
個人の場合、前々年の途中で事業を始めていても、基準期間の課税売上高を1年分に換算する必要はありません。4月に開業した年の売上が4〜12月の9か月で800万円なら、800万円のまま判定します。
法人化すると、個人と法人は別々に判定する
年の途中で法人化した場合、個人事業者のときの売上は、法人の基準期間や特定期間の売上にはなりません。個人と法人は、それぞれ別の事業者として判定します。法人化のタイミングの考え方は法人化のタイミングの記事で扱っています。
特定期間の判定と給与等支払額
前年1〜6月だけで判定する
特定期間は、前年の1月1日から6月30日までの半年です。この半年の課税売上高が1,000万円を超えると、その年は課税事業者になります。半年で1,000万円なので、月の報酬が大きい人や、前年に複数の案件を掛け持ちした人は注意が必要です。
売上の代わりに給与等支払額で判定できる
国税庁によると、特定期間の1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額で行うこともでき、どちらで判定するかは納税者の任意です。
給与等支払額の範囲は次のとおりです。
- 含むもの:従業員への給与・賞与、役員報酬
- 含まないもの:所得税が非課税の通勤手当・旅費など
- 未払いの給与・賞与は含まない(実際に払ったときに含める)
従業員を雇っていないフリーランスは、給与等支払額がほとんどありません。そのため、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えても、給与等支払額で判定すれば基準を超えないことになります。ただし、基準期間(前々年)の判定には、この選択はありません。国外事業者(非居住者の個人事業者など)は、給与等支払額で判定できません。
課税事業者になったときの届出書(基準期間用・特定期間用)の出し方は、消費税の届出書の記事にまとめています。
独立してからの年ごとの判定例
会社員を辞めて2025年4月に開業した人の例で、年ごとの判定を見てみます(仮の数字。インボイスの登録はしていない前提)。
| 年 | その年の売上 | 基準期間(前々年) | 特定期間(前年1〜6月) | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年 | 4〜12月で900万円 | 2023年:事業なし | 2024年:事業なし | 免税 |
| 2026年 | 1,300万円(1〜6月で650万円) | 2024年:事業なし | 2025年1〜6月:4〜6月の300万円 | 免税 |
| 2027年 | 1,300万円 | 2025年:900万円 | 2026年1〜6月:650万円 | 免税 |
| 2028年 | ― | 2026年:1,300万円 | ― | 課税 |
2026年は売上が1,300万円ありますが、2026年に課税されるわけではありません。2026年の売上が1,000万円を超えたことで、2年後の2028年に課税事業者になります。2026年は免税事業者なので、1,300万円は税抜きにせずそのまま数えます。
もし2027年の特定期間(2026年1〜6月)の売上が1,000万円を超えていたら、課税売上高で判定すると2027年から課税事業者です。その場合でも、従業員がいなければ給与等支払額で判定する選択肢があります。
このように、売上が伸びた年と、実際に消費税を納め始める年には2年のずれがあります。売上が伸びた年に、2年後の納税資金と計算方法を考えておくことが大切です。
判定のために毎年やっておくこと
判定のもとになる数字は、日々の帳簿から出します。次の3つを習慣にしておくと、2年先の扱いを早めに見通せます。
- 月ごとの売上を記録する:請求書の日付と金額を、取引先ごとに会計ソフトなどへ入れておく
- 7月に上半期の合計を出す:その年の1〜6月の課税売上高は、翌年の特定期間の判定に使う
- 年が明けたら1年分の合計を出す:前年の課税売上高は、翌々年の基準期間の判定に使う
あわせて、報酬が税込か税別かを契約ごとに記録しておくと、免税事業者の間は受け取った額のまま、課税事業者になってからは税抜きで、と数え方を切り替えるときに迷いません。消費税の申告の流れは消費税の納税の記事をご覧ください。
インボイスの登録をしている人の判定
インボイスの登録をしている人は、売上が1,000万円以下でも課税事業者です。それでも、基準期間の判定が不要になるわけではありません。
- 2割特例・3割特例を使えるか:基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることが条件
- 簡易課税を使えるか:基準期間の課税売上高が5,000万円以下であることが条件
- 登録をやめたあとに免税事業者に戻れるか:基準期間と特定期間で判定する
特例の対象と期限は2割特例の記事、簡易課税は簡易課税の記事をご覧ください。
よくある質問
独立した1年目と2年目は、消費税を払わなくてよいですか?
インボイスの登録をしていなければ、1年目と2年目は基準期間に事業の売上がないため、原則として免税事業者です。ただし2年目は、1年目の1〜6月(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります(給与等支払額で判定することもできます)。
会社員時代の給与は、基準期間の売上に含まれますか?
含まれません。消費税の課税売上高は、事業として行った取引の売上です。会社員として受け取った給与は、事業の売上ではありません。副業で業務委託の報酬を受け取っていた場合は、その報酬が課税売上高に入ります。
売上が1,000万円を超えた年に、すぐ何か手続きが必要ですか?
その年に納税する必要はありませんが、2年後に課税事業者になります。基準期間の売上が確定したら「消費税課税事業者届出書(基準期間用)」を速やかに出します。簡易課税を使いたい場合は、課税事業者になる年の前年12月31日までに届出が必要です。個別の判定は税務署や税理士にご相談ください。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。