SCMコンサルタントのフリーランス案件の仕事内容|案件の種類と働き方
公開 2026-11-04 監修:株式会社エージェントベスト
フリーランスのSCMコンサルタントの仕事は、販売・生産・調達・物流の間でずれている数字を集め、計画や在庫の決め方を変える案をつくり、関係する部門に受け入れてもらうことです。ただ、需給計画の仕組みをつくるのか、在庫の持ち方を直すのか、システム導入の業務側に立つのかで、1日の時間の使い方も、向き合う相手も、残る成果物も大きく変わります。
この記事では、SCMコンサルの案件を5つの種類に分け、それぞれの1日と1か月の流れ、関わる相手、成果物を整理します。求められる知識はSCMコンサルタントのスキルの記事、報酬の決まり方はSCMコンサルタントの報酬の記事で扱っているので、ここでは「参画したら実際に何をしているか」に絞ります。
仕事の中身は「領域」と「局面」で決まる
SCMの案件は、同じ「SCM改革支援」の募集でも中身がかなり違います。違いを生むのは次の2つです。
- 領域:需要予測・S&OP、在庫、調達・購買、物流のどこを中心に扱うか
- 局面:構想(何を変えるかを決める)、業務とシステムの設計、導入と定着のどこにいるか
この2つを組み合わせると、フリーランスのSCM案件はおおむね次の5種類に分けられます。
| 案件の種類 | 主な相手 | 時間を多く使う仕事 |
|---|---|---|
| 需給計画・S&OPの仕組みづくり | 営業企画、生産管理、経営企画、経営層 | 会議体の設計、数字の出し方と決める人の整理 |
| 在庫の持ち方・補充ルールの見直し | 需給担当、物流、購買、経理 | 品目の分類、在庫の試算、ルールの合意 |
| 計画系・ERPシステム導入の業務側 | 業務部門のキーユーザー、システムベンダー、情報システム部門 | 要件の整理、テストの計画、移行の段取り |
| 調達・物流の改革 | 購買、物流部門、物流会社、仕入先 | 現状の調査、拠点や発注の見直し案、費用の試算 |
| 計画運用の定着支援 | 需給担当、会議の参加者 | 月次の計画サイクルの伴走、振り返り |
以下では、それぞれの流れを典型的な例として紹介します。時間の配分は案件ごとに違うため、目安として読んでください。
需給計画・S&OPの仕組みづくり
1日の流れ(例)
午前は、営業の販売見込みと工場の生産計画、在庫の実績を突き合わせ、どこで数字が食い違っているかを整理します。午後は営業企画や生産管理の担当者に聞き取りをして、数字をいつ、誰が、どの単位で出しているかを確かめます。夕方は、聞き取りの結果をもとに、会議で出す数字と決める内容の案を書き直します。
一日の多くは、数字の定義をそろえる作業と、その前提を関係者に確かめる会話です。会議の進行役に見えても、仕事の中心は「意見が割れたときに何を基準に決めるか」を先に決めておくことにあります。
1か月の流れ(例)
- 月初:前月の計画と実績の差を集計し、差の理由を部門ごとに確かめる
- 月の前半:需要の見通しを確かめる会議、供給の制約を確かめる会議の試行を支える
- 月の後半:部門をまたぐすり合わせの会議と、経営層が判断する会議の資料をまとめる
- 月末:会議の運び方と数字の出し方を振り返り、次の月に変える点を決める
成果物
会議体の設計書(会議ごとの目的・参加者・入力する数字・決めること)、指標の定義書、計画の手順書、試行した月の振り返り資料などです。読み手が経営層を含むため、数量の計画を金額に置き換えた資料を求められることもあります。
在庫の持ち方・補充ルールの見直し
1日・1か月の流れ(例)
前半の数週間は、在庫と出荷、発注の実績データを集め、品目を売れ方や重要度で分類する作業が中心です。分類ができると、分類ごとの在庫の持ち方と補充のルールを試算し、需給担当や物流、購買と案を確かめる打ち合わせが増えます。
月の単位では、試算→関係部門との確認→一部の品目での試行→結果の確認、という流れを回します。在庫は欠品と隣り合わせのため、営業から「この品目は減らされると困る」といった声が出やすく、例外の扱いを決める話し合いに時間を使います。
成果物
品目の分類表、在庫の持ち方と補充ルールの案、試算の前提と結果、例外の扱いの決まり、試行の結果報告などです。経理が関わる場合は、在庫の金額の推移の見込みも求められます。
計画系・ERPシステム導入の業務側
需給計画や在庫補充のシステム、ERPの導入と同時に、業務の流れを作り直す案件です。SCMコンサルは、業務部門とシステムベンダーの間に立ち、決めた計画の流れをシステムのどの機能で実現し、どこが手作業で残るかを詰めていきます。
1日の流れ(例)
午前は業務部門のキーユーザーと、計画の手順やマスタの持ち方を確かめる打ち合わせ。午後はベンダーとの定例会議に出て、要件の確認事項や課題を整理します。夕方は課題管理表を更新し、業務部門が判断すべき事項をまとめます。テストの時期になると、テストの観点づくりや結果の確認に時間が移ります。
1か月の流れ(例)
設計の時期は、業務の要件の確認会と課題の整理が毎週続きます。テストの時期は、業務部門と一緒にシナリオを回し、計画の結果が想定どおりかを確かめます。移行が近づくと、マスタの整備、切り替えの手順、棚卸や月次の締めとの重なりの確認が増えます。
成果物
業務の流れ図、業務の要件の一覧、マスタの定義(品目・拠点・仕入先・リードタイムなど)、テストのシナリオと結果、移行の手順と判定の資料などです。システムの設定そのものはベンダーや製品ごとのコンサルが担うことが多く、その役割はSAP SD/MMコンサルの仕事内容が近い内容です。
調達・物流の改革
1日・1か月の流れ(例)
立ち上がりの時期は、工場や倉庫、物流拠点を訪ねて作業の流れや置き場を見たり、物流会社や購買の担当者に話を聞いたりする日が入ります。その後は、物流費や発注の実績を集計し、拠点の役割の見直し、輸送の頻度の見直し、発注の手順の標準化などの案と、その費用の試算をまとめます。
月の単位では、調査→案と試算→関係部門・取引先との確認、を繰り返します。物流の改革では、荷主として物流の効率化に取り組むことを求める法改正の動きもあり、納品の時間や単位の見直しが議題に上がることがあります。制度の動きは物流業界の規制の記事で整理しています。
成果物
現状調査の報告、物流費や調達の実績の見える化資料、拠点や発注の見直し案、費用と効果の試算、仕入先や物流会社と話し合うための資料などです。
計画運用の定着支援
仕組みができた後、月次の計画サイクルが回るように伴走する案件です。毎月決まった日程の会議があり、その前の数字の集計、資料の作成、会議後の決定事項の記録と振り返りが中心になります。
この型は日程が決まっているため働き方を組み立てやすい一方、資料と議事録だけを担う役割に細りやすい面もあります。決める内容に意見を出せる立場かどうかで、次の案件で話せる経験が変わります。
どの案件にも共通する仕事
種類が違っても、次の仕事はほぼすべてのSCM案件にあります。
- 数字の定義をそろえる:「在庫」に輸送中の品を含めるか、「欠品」をいつの時点で数えるかを決め、記録に残す
- 前提を明らかにする:試算や予測の前提を一か所にまとめ、誰が見ても同じ数字が出るようにする
- 困る部門の声を聞く:決め方を変えると不利になる部門を先に見つけ、案に反映する
- 決める人をはっきりさせる:部門の意見が割れたときに、誰がどの会議で決めるかを示す
フリーランスならではの仕事として、自分の稼働の記録もあります。会議の前後や月末に作業が集中しやすいため、精算の幅と合わせて日々記録しておきます。精算の仕組みは精算幅の記事をご覧ください。
働く場所と移動
データの分析や試算、会議の資料づくりはリモートで進めやすい一方、工場や倉庫の調査、部門をまたぐ合意の場、本番の切り替えでは現地が求められやすくなります。案件の種類で見ると、需給計画や定着支援はリモートの割合が高く、調達・物流の改革やシステム導入の移行期は出張や出社が増えやすい傾向があります。詳しくはSCMコンサルタントのリモート案件の記事をご覧ください。
よくある質問
SCMコンサルは分析ばかりの毎日になりますか?
構想や在庫の見直しの初期は、データの集計と分析の時間が長くなります。ただ、局面が進むと、分析の結果をもとに関係部門と案を確かめる打ち合わせや、例外の扱いを決める話し合いの割合が増えます。分析だけで終わる役割か、決め方の合意まで担う役割かは、参画前に確かめておくと安心です。
システムの設定作業を任されることはありますか?
業務側の役割で参画する場合、設定そのものはベンダーや製品ごとのコンサルが担うことが一般的です。ただ、小さな体制の案件では、マスタの整備やテストの実施まで手を動かすことがあります。どこまで担う想定かを面談で確かめておくと、稼働の見込みとのずれを防げます。
参画して最初の1か月は何をすることが多いですか?
関係する部門と会議体の把握、使える実績データの確認、数字の定義の食い違いの洗い出しから始めるのが一般的です。初月の進め方はSCMコンサルタントの参画初月にやることで詳しく解説します。