商流とは|エンド直・元請・二次請の違いとフリーランスへの影響
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
商流とは、案件を発注した会社(エンド)から、実際に業務を行うフリーランスまで、契約が何社を経てつながっているかを表す言葉です。エンドと直接契約する「エンド直」から、元請・一次請・二次請と間に入る会社が増えるほど、商流は「深い」と表現されます。
商流が深くなると、それぞれの会社の取り分が差し引かれて報酬が下がりやすくなるほか、条件や評価の伝わり方、誰から指示を受けるかにも影響が出やすくなります。この記事では、商流の構造と、フリーランスが確かめておきたい点を一般論として整理します。
商流の基本的な構造
IT業界の案件では、次のような段階で契約がつながることがあります。
| 立場 | 主な役割 |
|---|---|
| エンド(発注元) | システムやサービスを必要とし、予算を持って発注する会社 |
| 元請(プライム) | エンドから直接受注し、プロジェクト全体の責任を負う会社 |
| 一次請 | 元請から業務の一部を受ける会社 |
| 二次請・三次請 | 一次請・二次請からさらに業務を受ける会社 |
| フリーランス | いずれかの会社と業務委託契約を結び、業務を行う |
フリーランスは、この構造のどこかの会社と業務委託契約を結びます。エンドと直接契約することもあれば、元請や一次請、フリーランスエージェントなど、いくつかの会社を経て契約することもあります。
「エンド直」「元請直」という言い方
案件情報では、「エンド直」(エンドと直接契約している会社からの案件)、「元請直」(元請と直接契約している会社からの案件)のような言い方をすることがあります。いずれも、案件を紹介している会社が、商流のどの位置にいるかを示しています。
フリーランスから見ると、自分の契約相手の上に何社あるかが、商流の深さです。
なぜ多重の構造になるのか
大きなシステム開発では、元請だけで必要な人数や専門性をそろえることが難しい場合があります。そこで、業務の一部を他の会社に任せ、さらにその会社が別の会社や個人に任せる、という形で構造が深くなります。
また、案件を探している会社と、人を探している会社が、別の会社を通じてつながることもあります。必要な人を早くそろえられる一方で、間に入る会社が増えるほど、次に述べるような影響が出やすくなります。
商流が深いと起こりやすいこと
1. 報酬:間に入る会社の取り分が重なる
エンドが払う金額は、間に入るそれぞれの会社の取り分が差し引かれながら、フリーランスに届きます。各社の取り分の大きさは会社や案件によって違いますが、間に入る会社が多いほど、フリーランスが受け取る金額は下がりやすくなります。
同じ役割・同じ稼働条件の案件でも、商流によって条件が変わるのはこのためです。単価が決まる仕組みは単価の仕組みの記事、フリーランスエージェントを経由する場合の内訳の考え方はエージェントのマージンの記事で整理しています。
2. 情報:条件や評価の伝わり方がずれる
商流が深いと、案件の情報は何社かを経て伝わります。その途中で、次のようなずれが起こることがあります。
- 業務内容や必要なスキルが、伝わるうちに大まかになる
- リモートの可否や稼働日数などの条件が、最新の情報になっていない
- 面談の結果や、参画後の評価がフリーランスに届くまで時間がかかる
- 契約の更新や終了の連絡が遅れる
参画してから「聞いていた業務内容と違う」と感じるケースの一部は、この情報のずれから起こります。
3. 指示系統:誰から指示を受けるかがあいまいになる
業務委託契約では、業務を受けた側が自分の判断で業務を進めるのが前提です。厚生労働省は、労働者派遣と請負(業務委託)の区分について、契約の形式ではなく実態に即して判断するという考え方を示しています(「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」)。
商流が深い案件では、実際に一緒に働くのはエンドや元請の担当者なのに、契約はもっと下の会社と結んでいる、ということが起こります。このとき、現場の担当者から勤務時間の管理や細かな作業の指示を直接受ける形になると、契約の形と実態が合わなくなるおそれがあります。考え方は偽装請負の記事で解説しています。
4. 面談と参画までの時間
商流が深い案件では、間に入る会社ごとに面談や確認が入り、参画が決まるまでに時間がかかることがあります。また、ある会社では「個人事業主の参画は不可」「この会社の所属の人まで」のように、商流や契約形態に制限を設けている案件もあります。
支払期日と再委託のルール
2024年11月に施行されたフリーランス法では、発注事業者は報酬の支払期日を、給付を受け取った日から60日以内のできるだけ短い期間で定め、その期日までに支払うこととされています。
一方、発注事業者が元の委託者から受けた業務をフリーランスに再委託する場合は、一定の条件を満たせば、元の委託の支払期日から30日以内に支払期日を定めることができる例外があります(公正取引委員会の案内)。商流の中で再委託として契約する場合、支払期日の決まり方が変わることがあるため、契約書で支払期日を確認しておきましょう。詳しくは報酬の支払期日の記事で解説しています。
商流を確かめる方法
商流は、案件情報だけでは分からないことも多いため、面談や条件のすり合わせの段階で確認します。次のような質問が役に立ちます。
- 契約の相手はどの会社か:自分は誰と業務委託契約を結ぶのか
- エンドはどんな会社・業界か:社名が明かせない場合でも、業界や規模は聞けることが多い
- 現場での窓口は誰か:日々の業務の依頼や相談は、どの会社の誰とするのか
- チームの構成:同じプロジェクトに、どの会社の人が何人くらいいるのか
- 評価や更新の連絡の流れ:契約の更新の判断は、いつ・誰から伝えられるのか
すべてを細かく聞き出す必要はありませんが、「誰と契約し、誰から依頼を受け、誰に報告するのか」が分かれば、参画後の動き方をイメージしやすくなります。面談前の確認項目は面談前のチェックリスト、面談で聞く質問は逆質問の記事にまとめています。
商流が深い案件を受けるときの注意点
商流が深い案件が、すべて条件の悪い案件というわけではありません。大規模なプロジェクトに参加でき、経験を積みやすい案件もあります。受けるときは、次の点に気をつけると、トラブルを防ぎやすくなります。
- 契約書の業務範囲を確かめる:伝わってきた業務内容と、契約書に書かれた業務範囲が合っているか
- 指示を受ける相手を決めておく:現場で困ったときに、誰に相談するかを参画前に確認する
- 再委託の可否を確かめる:自分がさらに別の人に業務を任せてよいかは、契約で決まっていることが多い(再委託の記事)
- 更新の判断の時期を聞いておく:更新の連絡が遅れないよう、いつ頃判断されるかを確認する
よくある質問
エンド直の案件の方が有利ですか?
間に入る会社が少ない分、報酬や情報の伝わり方の面では有利になりやすい傾向があります。ただし、エンドと直接契約する場合は、契約交渉や請求、トラブルの対応を自分で行う必要があります。直接契約とエージェント経由の違いは直接契約とエージェント経由の記事で整理しています。
商流を聞くと、面談で印象が悪くなりませんか?
契約の相手や現場の窓口を確認するのは、業務を正しく進めるために必要なことです。「参画後の報告や相談の流れを確認したい」という目的を添えて聞けば、不自然な質問ではありません。ただし、間に入る会社の取り分など、相手が答えにくい内容を細かく聞くのは避けた方がよいでしょう。
契約書に「再委託禁止」と書かれているのはなぜですか?
発注側が、業務を誰が行うのかを把握し、情報の管理や品質を保つためです。商流が深くなりすぎることを防ぐ目的もあります。再委託禁止の条項がある場合、自分の業務を他の人に任せることはできません。詳しくは再委託の記事をご覧ください。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。