会社に退職と独立を伝えるときの順番と伝え方|上司への切り出し方と引き止めへの対応
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
会社に退職と独立を伝えるときは、就業規則で申し出の期限を確かめる → 直属の上司に口頭で伝える → 退職日を話し合って決める → 退職届を出す → 引き継ぎと社内外への周知の順番で進めるのが基本です。退職の理由は「独立して業務委託で働くため」と短く伝えれば足ります。
伝え方で気をつけたいのは、話す相手の順番と、言わなくてよいことを言わないことです。この記事では、切り出し方から最終出社日までの流れと、引き止めや「業務委託で残らないか」という打診への答え方を整理します(法令は2026年10月時点でe-Gov法令検索で確認)。独立までの全体の段取りは会社員からフリーランスになる手順の記事をご覧ください。
伝える前に決めておく3つのこと
上司に話す前に、次の3つを自分の中で決めておくと、話し合いがぶれにくくなります。
- 退職の意思が固まっているか:条件次第で残る余地があるなら、それは「相談」です。独立を決めているなら「報告」として話します
- 希望する退職日と最終出社日:有給休暇を消化するかどうかで、2つの日付は変わります
- 引き継ぎにかかる期間の見込み:担当業務を書き出し、誰に何を渡すかの案を持っておきます
あわせて、就業規則で次の点を確かめておきます。
- 退職の申し出の期限(「1か月前まで」など)
- 退職届の様式と提出先
- 退職後の競業や、顧客との取引を制限する定め
法律上の期間と、実務の期間は分けて考える
民法627条1項では、期間の定めのない雇用は、当事者がいつでも解約の申入れをでき、申入れの日から2週間がたつと終了するとされています。ただし、引き継ぎの量や就業規則の定めを考えると、2週間で辞めることを前提に話を進めるのは現実的ではない場合が多いです。法律の期間は「最終的な目安」として知っておき、実際の退職日は会社と話し合って決めます。
契約社員など、期間の定めのある雇用の場合は扱いが異なります。判断に迷う場合は、労働基準監督署などの相談窓口や専門家にご相談ください。
伝える順番:最初は直属の上司に
退職の話は、最初に直属の上司へ伝えます。同僚や他部署の人、取引先に先に話すと、上司が人づてに聞くことになり、引き継ぎの話し合いがこじれやすくなります。
| 順番 | 相手 | 伝えること |
|---|---|---|
| 1 | 直属の上司 | 退職の意思、希望の退職日、理由(短く) |
| 2 | 上司の指示で人事 | 退職日、有給休暇の残り、受け取る書類 |
| 3 | 上司と決めた範囲のチーム | 退職日と引き継ぎの担当 |
| 4 | 会社の方針に沿って取引先 | 後任と引き継ぎの時期 |
取引先へ伝える時期と内容は、会社の方針に従います。自分の判断で先に伝えると、後で「顧客を連れて行こうとした」と受け取られるおそれがあります。
切り出し方と、話す内容
時間をもらう
忙しい時間帯に立ち話で切り出すのは避けます。「ご相談したいことがあるので、30分ほどお時間をいただけますか」と、個別に話せる時間を取ってもらいます。オンライン中心の職場なら、1対1の会議を設定します。
話す時期は、繁忙期の山場や大きな締め切りの直前を避けられるなら避けます。ただ、時期を待ちすぎると退職日が後ろにずれ、引き継ぎの期間も短くなります。「区切りのよい時期」を探すより、就業規則の期限から逆算して、話す週を先に決めてしまう方が進めやすくなります。
結論から伝える
話の最初に結論を伝えます。たとえば次のような言い方です。
「◯月末で退職したいと考えています。独立して、業務委託でシステム開発の仕事をするつもりです。引き継ぎは◯週間ほどを見込んでいて、担当業務の一覧を用意しました。」
理由を長く説明する必要はありません。会社への不満や、待遇の比較を口にすると、話が引き止めの交渉に流れやすくなります。
言わなくてよいこと
- 決まっている案件の発注元の社名や報酬の額
- 今の会社の取引先と仕事をする予定があるかどうか(ある場合は、後で就業規則と誓約書を読み直してから扱いを決めます)
- 同僚を誘う話
とくに今の会社の顧客との取引は、就業規則や退職時の誓約書の定めに関わります。読み方は競業避止の条項の記事で解説しています。
引き止められたときの答え方
退職を伝えると、引き止めを受けることがあります。よくある言葉と、答え方の例です。
| 言われること | 答え方の例 |
|---|---|
| 「給与や役職を見直すから残らないか」 | 「ありがたいお話ですが、働き方を変えたいという理由なので、気持ちは変わりません」 |
| 「今は忙しいから、半年待ってほしい」 | 「引き継ぎに必要な期間は、◯週間と見込んでいます。一緒に計画を立てさせてください」 |
| 「独立はうまくいかないのでは」 | 「準備をしたうえで決めました。ご心配いただきありがとうございます」 |
退職日の目安を示したうえで、引き継ぎへの協力を具体的に申し出ると、話し合いが前に進みやすくなります。退職日が決まらないまま時間がたつと、最初の案件の開始日にも響きます。開始日の決め方は参画開始日の調整の記事をご覧ください。
「業務委託で手伝ってほしい」と言われたら
退職を伝えた場で、「辞めた後も業務委託で手伝ってほしい」と打診されることがあります。最初の取引先が見つかるという点では悪い話ではありませんが、その場で引き受けず、条件を書面で確かめてから決めます。
- 業務の範囲と報酬の決め方
- 会社員のときと同じように、時間や場所の指示を受ける働き方にならないか
- 契約期間と、ほかの案件との掛け持ちが認められるか
元の会社と業務委託で仕事をするときの注意点は退職した会社から業務委託を受けるときの記事にまとめています。
退職届を出してから最終出社日まで
退職願と退職届
一般に、退職願は「辞めたい」という申し出、退職届は「辞めます」という確定の届け出として使い分けられます。どちらを出すか、様式があるかは会社によって違うため、人事に確かめます。退職日が決まってから退職届を出すと、日付の食い違いが起きにくくなります。
引き継ぎ資料を残す
引き継ぎ資料には、担当業務、定期的な作業の手順、関係者の連絡先、進行中の課題をまとめます。後任が決まっていなくても、資料があれば上司が割り振りを決めやすくなります。
会社から受け取る書類を確かめる
源泉徴収票や、健康保険の資格喪失を証明する書類など、退職後の手続きに使う書類の受け取り方を人事に確かめておきます。労働基準法22条では、退職する労働者が使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由について証明書を請求した場合、使用者は遅滞なく交付しなければならないとされています。独立後の手続きで在籍期間の証明が必要になったときに使えます。退職後の手続きは退職後の手続きの記事にまとめています。
社内外への挨拶
最終出社日が近づいたら、上司と決めた範囲で挨拶をします。社内向けの挨拶では、感謝と後任の紹介にとどめ、独立後の連絡先を広く配ることは控えます。取引先への挨拶も、会社の方針に沿って後任と一緒に行います。
独立後に、前の職場の人から仕事の相談を受けることもあります。最後の印象がよいほど、そうした声はかかりやすくなります。
よくある質問
退職を伝えるのは何か月前がよいですか?
就業規則に申し出の期限があれば、それが最低限の目安です。そのうえで、引き継ぎにかかる期間と有給休暇の消化日数を足して逆算します。民法では期間の定めのない雇用は申入れから2週間で終了するとされていますが、引き継ぎを考えると余裕を持って伝える方が、退職後の関係も保ちやすくなります。
退職の理由に「独立」と言うと、引き止められやすくなりますか?
理由によって引き止めの有無が決まるわけではありません。ただ、待遇への不満を理由にすると、条件の見直しを提案されて話が長引きやすくなります。「働き方を変えたい」という理由は、会社側が条件で解決しにくいため、話が前に進みやすい面があります。
上司が退職を受け取ってくれない場合はどうすればよいですか?
まず、退職日の候補と引き継ぎの計画を示して、もう一度話し合いの時間をもらいます。それでも進まない場合は、人事の窓口に相談したり、退職届を書面で提出して記録を残したりする方法があります。扱いに迷うときは、労働基準監督署などの相談窓口にご確認ください。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。