電子インボイス(デジタルインボイス)とは|PDFとの違いとPeppolの仕組み
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
電子インボイスとは、紙の適格請求書の代わりに電子データで提供する適格請求書のことです。国税庁は、メールで送るPDFも、Webサイトを通じて渡すデータも、記載事項がそろっていれば電子インボイスとして扱います。
一方で、デジタル庁が「デジタルインボイス」として広めているのは、JP PINTという日本の標準仕様に沿ったデータを、Peppol(ペポル)という国際的なネットワークで送受信するものです。フリーランスがPeppolを使う義務はありません。取引先が受け取り方法として指定してきたときに、対応するかを考えれば足ります(2026年10月時点)。
「電子インボイス」と「デジタルインボイス」の違い
似た言葉が並ぶため、まず範囲を分けておきます。
| 呼び方 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 電子インボイス(国税庁の用語) | 適格請求書の記載事項を記録した電子データ全般 | メール添付のPDF、取引先のWebシステムへの登録、EDIでのデータ送信 |
| デジタルインボイス(デジタル庁が普及を進めるもの) | 標準仕様(JP PINT)に沿った構造化データを、Peppolで送受信するもの | Peppol対応の請求書作成サービスから送るデータ |
国税庁のリーフレット「インボイス制度の理解のために」は、適格請求書を書面の代わりに電磁的記録(電子データ)で提供できるとしています。記録する事項は、紙で出す場合と同じです。提供の方法の例には、受発注のオンラインシステム(いわゆるEDI取引)、電子メール、インターネット上のサイト、記録用の媒体が挙げられています。
つまり、いまPDFの請求書をメールで送っているフリーランスは、すでに電子インボイスを出していることになります。デジタルインボイスは、その中でも形式とやり取りの経路を国際的にそろえたもの、と考えると分かりやすくなります。
記載事項そのもの(登録番号、税率ごとの消費税額など)は適格請求書の書き方の記事で解説しています。電子でも紙でも、6つの記載事項がそろっていなければ適格請求書になりません。
Peppolの仕組み
認定サービスプロバイダーを通じてつながる
Peppolは、OpenPeppolというベルギー法にもとづく非営利の国際団体が管理している、電子文書をやり取りするための枠組みです。OpenPeppolの説明では、Peppolの中心には「4コーナーモデル」があり、送る側と受け取る側はそれぞれ自分が選んだ認定サービスプロバイダーを通じて文書を送受信します。いったんつながれば、Peppolに対応しているほかの組織と、相手の使っているサービスに関係なくやり取りできる仕組みです。
フリーランスの立場に置き換えると、次のような流れです。
- 自分が使う請求書作成サービスや会計ソフトが、Peppolの認定サービスプロバイダーに対応している
- そのサービスで請求書を作って送信する
- 取引先が使う別のサービス(これもPeppol対応)にデータが届く
- 取引先は、自社のシステムで請求データとして受け取る
送る側と受け取る側が同じサービスを使っている必要はありません。電話会社が違っても電話がつながるのと同じように、どの認定サービスプロバイダーを選んでも相手に届くことが、Peppolの考え方です。
日本ではデジタル庁が管理している
デジタル庁は日本のPeppol Authority(管理局)として、Peppolをもとにした日本のデジタルインボイスの標準仕様「JP PINT」を管理しています。デジタル庁は2021年9月からOpenPeppolのメンバーとして活動しています。日本でPeppolのサービスを提供する事業者は、OpenPeppolのメンバーシップを申請したうえで、日本固有の要件を守ることが求められます。デジタル庁のサイトには、日本の認定サービスプロバイダーの一覧が載っています。
JP PINTには3つの仕様がある
デジタル庁の公表・更新情報(2026年6月8日時点)によると、JP PINTの仕様は次の3つで、いずれも2026年6月8日にVer.1.1.3へ更新されています。
| 仕様 | 使う場面 |
|---|---|
| Peppol BIS Standard Invoice JP PINT | 適格請求書発行事業者が出す標準の請求書 |
| JP BIS Self Billing Invoice | 買手が作って売手の確認を受ける請求書(仕入明細書などにあたる使い方) |
| JP BIS Invoice for Non-tax Registered Businesses | 適格請求書発行事業者ではない事業者が出す請求書 |
フリーランスにとって押さえたい点は2つです。
- インボイス登録をしていなくても、Peppolで請求書を送る仕様がある。登録していない事業者向けの仕様が別に用意されています。ただし、適格請求書にはならないことは紙の場合と変わりません
- 取引先が作る支払明細書の形もある。買手が作成した明細書を売手が確認する方式は、Peppolでも想定されています。確認の考え方は適格請求書の書き方の記事の支払明細書の項をご覧ください
以前の仕様(Peppol BIS Billing JP)はJP PINTに置き換わっています。古い解説記事を読むときは、どの仕様の話かを確かめてください。
フリーランスが使うと何が変わるか
送る側の手間
Peppolで送る場合、請求書を作るところまでは今と同じで、送る経路がメールからPeppolに変わるイメージです。使っているサービスがPeppolに対応しているか、送信に追加の料金や設定が要るかは、サービスごとに違います。各サービスの案内で確かめてください。
受け取る側(取引先)の利点
Peppolで届く請求書は、決まった項目のデータです。仕組みの上では、取引先は請求書をPDFから読み取って入力し直す必要がなく、自社の会計や支払いのシステムで扱いやすくなります。取引先の経理部門がPeppolでの受け取りを進めている場合、フリーランスにも対応を求めてくることがあります。
政府も受け取りを進めています。デジタル庁のサイトでは、政府調達でデジタルインボイスを受け取る取組として、デジタル庁・出入国在留管理庁・財務省・国税庁の例が紹介されています。
送った・受け取った電子インボイスの保存
送った側は「送ったデータのまま」保存できる
適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書の写しを保存する必要があります。保存期間は、交付した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間です。国税庁のリーフレットによると、電子インボイスを提供した場合は、提供した電子データのまま保存することもできます。
Peppolで送った請求書は、送信に使ったサービスの中に履歴が残ることが多いものの、サービスを解約するとデータが見られなくなる場合があります。送ったデータを自分の保存場所にも残しておくと安心です。
受け取った電子データは電子取引として保存する
取引先から電子データで受け取った請求書・支払明細書・領収書は、電子帳簿保存法の「電子取引データ」にあたり、データのまま保存します。保存のルール(改ざん防止、検索の要件など)は電子帳簿保存法の記事で解説しています。Peppolで受け取ったデータも、メールで受け取ったPDFも、この扱いは同じです。
導入を考えるときの判断の目安
フリーランスがデジタルインボイスに切り替えるかどうかは、次の順で考えると迷いにくくなります。
- 取引先が指定しているか:Peppolでの受け取りを求められていれば対応を検討する。指定がなければ、今の送り方(PDFなど)で適格請求書の要件は満たせる
- 使っている請求書作成サービスや会計ソフトが対応しているか:対応していれば、設定だけで送れることもある
- 取引先の数:取引先が1〜2社で毎月同じ請求なら、切り替えの手間に見合うかを考える
- 保存の方法:送ったデータを自分でも保存できるか
インボイス登録をするかどうかの判断は、デジタルインボイスとは別の話です。インボイス登録の判断の記事をご覧ください。
よくある質問
PDFの請求書をメールで送るのは、今後できなくなりますか?
2026年10月時点で、Peppolでの送付を義務づける制度はありません。国税庁は、電子メールでの送信を電子インボイスの提供方法の例に挙げています。ただし、取引先が自社の受け取り方法を決めている場合は、その方法に合わせる必要があります。
インボイス登録をしていない免税事業者でも、Peppolで請求書を送れますか?
JP PINTには、適格請求書発行事業者ではない事業者向けの仕様があります。送ることはできますが、適格請求書にはなりません。取引先が仕入税額控除をどう扱うかは、紙の請求書の場合と同じです。
Peppolを使うには何が必要ですか?
Peppolの認定サービスプロバイダーに対応した請求書作成サービスや会計ソフトを使います。利用者が自分でPeppolの認定を受ける必要はありません。対応の有無や料金は、各サービスの案内でご確認ください。消費税の扱いで迷う点があれば、税理士にご相談ください。
参考にした公的情報・資料
- インボイス制度の理解のために(国税庁・令和8年4月)
- JP PINT(デジタル庁)
- JP PINT 公表・更新情報(デジタル庁・2026年6月8日時点)
- Peppol BIS Standard Invoice JP PINT(OpenPeppol)
- About Peppol(OpenPeppol)
- No.6625 適格請求書等の保存(国税庁)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。