フリーランスの会計ソフトの選び方と帳簿の付け方|毎月の記帳の流れ
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
フリーランスの会計ソフトは、受けたい青色申告特別控除に必要な機能があるかで選びます。最高65万円の控除なら複式簿記での記帳・決算書の作成・e-Taxでの送信、令和9年分(2027年分)以降の最高75万円の控除なら、それに加えて優良な電子帳簿の要件を満たせるかが判断の軸です(2026年10月時点)。
帳簿は、事業用の口座とカードの明細をもとに、月に1回まとめて付けるのが続けやすい方法です。この記事では、ソフトの種類と選ぶときの確認点、毎月の記帳の流れを整理します。控除の条件そのものは青色申告の記事で詳しく解説しています。
必要な機能は「どの控除を受けるか」で決まる
国税庁によると、青色申告で最高の控除を受けるには、正規の簿記(一般的には複式簿記)で記帳し、貸借対照表と損益計算書を作る必要があります。会計ソフトに求める機能は、目指す控除によって変わります。
| 目指す控除 | 会計ソフトに必要な主な機能 |
|---|---|
| 青色申告 10万円 | 簡易な帳簿(現金出納帳・経費帳など)の記録 |
| 青色申告 65万円 | 複式簿記の仕訳、貸借対照表・損益計算書の作成、e-Taxで送れるデータの作成 |
| 青色申告 75万円(令和9年分以降) | 65万円の機能に加え、優良な電子帳簿の要件(または電子取引のデジタルシームレス保存の要件)を満たす |
国税庁のリーフレット(令和8年8月)によると、令和9年分以降は、正規の簿記で記帳してe-Taxで期限内に送信すると65万円、さらに優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存の要件を満たすと最高75万円になります。書面で申告した場合の上限は10万円です。
優良な電子帳簿の3つの要件
同じリーフレットでは、優良な電子帳簿を、システムの説明書やモニターの備え付けなどの基本の要件に加えて、次の3つをすべて満たす電子帳簿と説明しています。
- 訂正・削除・追加などの履歴が残ること
- 帳簿の間で相互に関連が確かめられること
- 取引の日付・金額・相手方で検索できること
75万円の控除を受けるには、仕訳帳と総勘定元帳をその年の最初からこの要件で保存し、確定申告期限までに届出書を出す必要があります。年の途中でソフトを替えると要件を満たしにくくなるため、令和9年分から75万円を目指すなら、2026年中にソフトを決めておくと安心です。リーフレットでは、要件を満たすソフトを探す手がかりとして、JIIMA認証の情報リストも案内されています。
会計ソフトの種類と向いている人
| 種類 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| クラウド型 | ブラウザで使う。口座やカードの明細を取り込みやすい。月額・年額の利用料がかかる | 明細の取り込みで入力を減らしたい人、複数の端末で使いたい人 |
| インストール型 | パソコンに入れて使う。買い切りのものが多い。明細の取り込みは製品による | 一台のパソコンで完結させたい人 |
| 表計算ソフト | 自分で表を作る。費用はかからない | 簿記の知識があり、簡易な帳簿で足りる人 |
表計算ソフトでも複式簿記の帳簿は作れますが、貸借対照表まで正しく作るには簿記の知識と手間が要ります。65万円以上の控除を目指すなら、会計ソフトを使う方が現実的です。
選ぶときに確かめたい6つの点
- 複式簿記と決算書:仕訳から貸借対照表・損益計算書・青色申告決算書まで作れるか
- e-Taxへの対応:申告書と決算書のデータをe-Taxで送れる形で作れるか
- 優良な電子帳簿の要件:令和9年分以降の75万円を目指すなら、訂正・削除の履歴、帳簿間の関連、検索の要件を満たすか
- 明細の取り込み:事業用の口座・カードの明細を取り込めるか、ファイルの読み込みで対応できるか
- 請求書の作成:請求書を作る機能があるか。インボイス登録をしている場合は、記載事項に対応しているか
- データの書き出し:解約したり乗り換えたりするときに、仕訳や帳簿のデータを取り出せるか
6つ目は見落とされがちです。帳簿と書類は原則7年間の保存が必要なため(国税庁 No.2070)、ソフトをやめたあとも過去のデータを見られるかを確かめておきます。
毎月の記帳の流れ
帳簿は、取引のたびに付けるより、月に1回まとめて付ける方が続けやすくなります。
- 請求書を発行したら売上を記録する:月末締めで請求するなら、その月の売上として「売掛金/売上高」で記録します
- 入金を確かめる:事業用口座に報酬が入ったら「普通預金/売掛金」で消し込みます。源泉徴収されている場合は、差し引かれた額も記録します
- 口座とカードの明細を取り込む:経費の支払いを、勘定科目に振り分けます
- 領収書や請求書と照らし合わせる:電子で受け取った書類はデータのまま保存します
- 私用と事業のお金の移動を記録する:生活費の移し替えは事業主貸、個人のお金で払った経費は事業主借で記録します
- 残高を確かめる:帳簿の預金残高と実際の口座残高が一致するかを見ます
売上と経費は「いつの取引か」で記録する
国税庁のタックスアンサー(No.2210)では、必要経費はその年に債務が確定したものを計上するとされています。支払った日ではなく、その年に費用として確定しているかで判断します。報酬も同じように、入金の日ではなく、業務を行って請求できるようになった時点で売上として記録するのが基本です。12月に働いた分の報酬が翌年1月に入金される場合は、12月の売上になります。
よく使う勘定科目
| 勘定科目 | フリーランスのエンジニア・コンサルでの例 |
|---|---|
| 売上高 | 業務委託の報酬 |
| 売掛金 | 請求したがまだ入金されていない報酬 |
| 通信費 | インターネット回線、携帯電話(業務分) |
| 旅費交通費 | 打ち合わせや出社の交通費 |
| 消耗品費 | 周辺機器、少額の備品 |
| 新聞図書費 | 技術書、有料の技術情報サービス |
| 支払手数料 | 振込手数料、各種サービスの利用料 |
| 地代家賃 | 自宅を仕事場にしている場合の家賃(業務分) |
| 減価償却費 | 高額なパソコンなど |
| 事業主貸・事業主借 | 事業と個人の間のお金の移動 |
科目の名前はソフトによって少し違います。どの支出が経費になるかは経費にできるものの記事、パソコンの扱いは減価償却の記事で整理しています。
年に一度の決算でやること
月々の記帳ができていれば、年末の作業は次の程度です。
- 12月分の売上(売掛金)と未払いの経費を記録する
- 家賃や通信費などを業務の割合で按分する
- パソコンなどの減価償却費を計上する
- 帳簿の残高と口座・カードの残高を確かめる
- 決算書を作り、確定申告書とあわせてe-Taxで送る
確定申告の手順は確定申告の流れの記事、e-Taxの準備はe-Taxの記事で解説しています。
税務の個別の判断は、税理士・税務署にご相談ください。
よくある質問
簿記の知識がなくても会計ソフトで複式簿記の帳簿は付けられますか?
多くの会計ソフトは、取引の内容を選んで金額を入れると仕訳を作る仕組みになっています。最低限、売上・売掛金・経費・事業主貸・事業主借の意味を知っておけば、日々の記帳は進められます。決算や減価償却で迷う場合は、税理士にご相談ください。
年の途中から会計ソフトを使い始めても大丈夫ですか?
使い始めることはできます。開業日やその年の1月1日からの取引を、さかのぼって入力します。ただし、令和9年分以降の75万円の控除は、その年の最初から優良な電子帳簿の要件で保存していることが条件のため、年の途中から始めると、その年は75万円の対象にならない点に注意してください。
税理士に頼む場合も会計ソフトは必要ですか?
依頼する範囲によります。記帳から任せる場合と、自分で記帳して申告だけを頼む場合があります。自分で記帳するなら、税理士とデータをやり取りしやすいソフトを選ぶと手間が減ります。依頼前に、どの形式でデータを渡せばよいかを確認しておきましょう。
参考にした公的情報・資料
- No.2070 青色申告制度(国税庁)
- 優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存により75万円の青色申告特別控除を適用しましょう(国税庁・令和8年8月)
- 個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等保存について(国税庁)
- No.2210 必要経費の知識(国税庁)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。