合同会社と株式会社の違い|フリーランスの法人化で選ぶときの比べ方
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
フリーランスが一人で法人化する場合、合同会社は設立費用を抑えやすく、運営のルールも簡単です。株式会社は定款の認証が必要なぶん設立費用が高くなりますが、出資する人と経営する人を分けやすく、将来に人や出資を増やす前提の形です。
一方、法人税の税率や社会保険の扱いは、合同会社でも株式会社でも同じです。どちらを選ぶかは、税金の有利・不利ではなく、設立と運営の費用・手間、将来の事業の広げ方で考えるのが基本です(2026年10月時点)。
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会社法と、国税庁・日本公証人連合会の案内をもとに、主な違いをまとめます。
| 項目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 出資者の責任 | 社員全員が有限責任(会社法576条4項) | 株主は引き受けた株式の価額が限度(同104条) |
| 定款の公証人認証 | 不要 | 必要(同30条) |
| 設立登記の登録免許税 | 資本金×1,000分の7(最低6万円) | 資本金×1,000分の7(最低15万円) |
| 経営する人 | 原則として出資した社員が業務を執行(同590条) | 株主総会で選ぶ取締役(1人以上・同326条) |
| 代表者 | 業務執行社員(代表社員を定められる・同599条) | 取締役(代表取締役を定められる・同349条) |
| 役員の任期 | 会社法上の任期の定めはない | 取締役は原則2年。公開会社でなければ定款で10年まで伸ばせる(同332条) |
| 決算公告 | 義務の規定はない | 貸借対照表などの公告が必要(同440条) |
| 利益の分け方 | 定款で出資の割合と違う割合を決められる(同622条) | 配当は株式の数に応じて割り当てる(同454条3項) |
| 法人税・社会保険 | 同じ | 同じ |
設立費用の違い
設立費用の差が一番分かりやすい違いです。
登録免許税
国税庁の登録免許税の税額表(令和8年4月1日現在法令等)では、設立登記の登録免許税は次のとおりです。
- 株式会社:資本金の額×1,000分の7。15万円に満たないときは15万円
- 合同会社:資本金の額×1,000分の7。6万円に満たないときは6万円
資本金が小さい一人会社では、どちらも最低額になることが多く、その差は9万円です。
定款認証の手数料(株式会社のみ)
株式会社の定款は、公証人の認証を受けなければ効力を生じません(会社法30条)。日本公証人連合会の案内では、持分会社である合同会社の定款は認証が不要です。
株式会社の定款認証の手数料は、令和4年1月から資本金の額などに応じて3区分になっています。
| 資本金の額など | 認証手数料 |
|---|---|
| 100万円未満 | 3万円 |
| 100万円以上300万円未満 | 4万円 |
| 上記以外 | 5万円 |
さらに、令和6年12月1日からは、資本金100万円未満で、次の3つの要件をすべて満たす場合は1万5,000円になりました。
- 発起人が全員自然人で、3人以下であること
- 発起人が設立時に発行する株式の全部を引き受ける旨が定款にあること
- 取締役会を置く旨が定款にないこと
このほか、登記申請に使う定款の謄本の手数料(1枚250円)がかかります。
定款の印紙税
国税庁の印紙税額の一覧表では、株式会社・合同会社などの設立のときに作る定款の原本には、4万円の印紙税がかかります。日本公証人連合会の案内では、株式会社の定款を電子定款で作る場合は収入印紙を貼る必要がないとされています。合同会社の定款を電子で作る場合の扱いを含め、作り方は依頼する司法書士などに確かめてください。
| 費用 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 最低6万円 | 最低15万円 |
| 定款認証の手数料 | なし | 1万5,000円〜5万円 |
| 定款の印紙税(紙の定款) | 4万円 | 4万円(電子定款なら不要) |
設立の流れの違い
設立までの手順も、定款認証の有無で変わります。おおまかな流れは次のとおりです。
| 手順 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 1 | 定款を作る(社員になる人全員が署名・記名押印、または電子署名) | 定款を作る(発起人が署名・記名押印、または電子署名) |
| 2 | 出資を払い込む | 公証役場で定款の認証を受ける |
| 3 | 設立登記を申請する | 出資を払い込み、設立時取締役が調査する |
| 4 | — | 設立登記を申請する |
株式会社の設立登記は、会社法911条で、設立時取締役の調査が終わった日と発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内にすることとされています。公証役場とのやり取りがない分、合同会社のほうが手順は少なくなります。会社が成立するのは設立登記をした日で、契約名義の切り替えや口座の開設はその後になります。
運営のルールの違い
役員の任期と変更登記
株式会社の取締役の任期は、会社法332条で原則2年です。株式の譲渡に会社の承認が必要な「公開会社でない株式会社」なら、定款で10年まで伸ばせます。任期が来たら、同じ人が続ける場合でも選び直して役員変更の登記をします。国税庁の税額表では、資本金1億円以下の会社の役員変更登記の登録免許税は1件1万円です。
合同会社の業務執行社員には、取締役のような任期の定めがありません。一人で長く続ける前提なら、この手間がない点は合同会社の利点です。
決算公告
株式会社は、定時株主総会の後に、貸借対照表(大会社は損益計算書も)を公告しなければなりません(会社法440条)。公告方法を官報などにしている会社は、要旨の公告で足ります。合同会社には、この決算公告を求める規定はありません。
意思決定の仕組み
株式会社では、定時株主総会を毎事業年度の終了後に招集します(会社法296条)。一人会社でも、役員報酬などは株主総会の決議として記録を残すのが基本です。合同会社では、定款に別段の定めがなければ、社員が業務を執行し、社員が2人以上なら過半数で決めます(同590条)。一人なら意思決定はシンプルです。
税金と社会保険は同じ
法人税の税率は、国税庁の税率表で「資本金1億円以下の普通法人」などの区分で決まっており、合同会社か株式会社かで分かれていません。所得のうち年800万円以下の部分が15%、超える部分が23.2%です。
社会保険も、日本年金機構の案内では、株式会社などの法人の事業所は事業主のみの場合を含めて強制適用事業所です。合同会社も法人のため、役員報酬を受け取れば、原則として健康保険・厚生年金に加入します。
役員報酬を損金にするための条件(定期同額給与など)も、会社の形によって変わりません。決め方は役員報酬の記事で解説しています。
フリーランスの法人化で選ぶときの考え方
次のような場合は、合同会社が合いやすいと考えられます。
- 自分一人(または家族だけ)で運営し、外から出資を受ける予定がない
- 設立費用と、役員の変更登記・決算公告の手間を抑えたい
- 業務委託の案件を受けるための器として会社を持ちたい
次のような場合は、株式会社を検討する理由があります。
- 将来、外部から出資を受けたり、株式を使って人を巻き込んだりする予定がある
- 出資する人と経営する人を分けたい
- 取引先や採用の場面で、株式会社であることを求められる見込みがある
会社法743条では、会社は組織変更ができるとされており、合同会社から株式会社に変えることもできます。ただし、組織変更には手続きと費用がかかります。最初から迷う場合は、数年先の事業の姿を思い描いて選ぶとよいでしょう。
よくある質問
一人で合同会社を作れますか?
作れます。会社法では、合同会社は社員になろうとする人が定款を作って設立し(575条)、社員が1人もいなくなると解散する(641条)と定めており、社員1人の会社を前提にした仕組みになっています。社員は全員が有限責任社員で、定款に別段の定めがなければ、出資した社員が業務を執行し、会社を代表します。具体的な手続きは司法書士にご相談ください。
合同会社だと案件を受けにくいことはありますか?
業務委託の契約では、会社の形よりも、業務を行う人のスキルや契約の条件が重視されることが一般的です。ただし、取引先によっては社内の規程で取引先の条件を決めている場合があります。気になる案件がある場合は、契約の前に確認しておくと安心です。
資本金はいくらにすればよいですか?
会社法上は少額でも設立できますが、資本金の額は、定款認証の手数料、消費税の納税義務の判定、取引先からの見え方などに関わります。たとえば国税庁の案内では、期首の資本金が1,000万円以上の新設法人は、設立1期目から消費税の納税義務が免除されません。事業の資金計画と合わせて、税理士・司法書士にご相談ください。
参考にした公的情報・資料
- 会社法(e-Gov法令検索)
- No.7191 登録免許税の税額表(国税庁)
- No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで(国税庁)
- 定款認証(日本公証人連合会)
- 会社の定款認証手数料の改定(日本公証人連合会)
- No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例(国税庁)
- No.5759 法人税の税率(国税庁)
- 適用事業所と被保険者(日本年金機構)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。