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役員報酬の決め方|法人化したフリーランスが押さえたい定期同額給与と社会保険

公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト

役員報酬を法人の経費(損金)にするには、原則として事業年度の開始から3か月以内に額を決め、その事業年度は毎月同じ額を支払う「定期同額給与」にします。賞与のように特定の時期に払う場合は、事前に税務署へ届け出る「事前確定届出給与」にしないと、損金になりません。

額そのものに決まった正解はなく、会社に残る利益にかかる法人税、役員報酬にかかる個人の税金、社会保険料、会社の手元資金を合わせて試算して決めます。年の途中で変えにくいため、最初の決め方が大切です(2026年10月時点)。

損金にできる役員報酬は3つの型に限られる

国税庁の「役員に対する給与」によると、法人が役員に払う給与のうち、損金にできるのは次の3つのいずれかにあたるものです。どれにもあたらない給与は損金になりません。

型内容一人会社での使いやすさ
定期同額給与1か月以下の一定の期間ごとに、同じ額を支払う給与基本の形
事前確定届出給与決まった時期に、確定した額を支払う旨を事前に届け出た給与賞与を払う場合に使う
業績連動給与利益などの指標をもとに算定し、有価証券報告書などで開示する給与同族会社は、同族会社以外の法人との完全支配関係が必要などの要件があり、使える場面は限られる

また、3つの型にあたっても、不相当に高額な部分は損金になりません。

定期同額給与の決め方とルール

改定できるのは原則として期首から3か月以内

国税庁の案内では、定期同額給与の額を改定できるのは、原則として次の場合です。

  1. 事業年度の開始から3か月を経過する日までの改定(確定申告書の提出期限の延長の特例を受けている場合は、指定月数に2を加えた期間)
  2. 臨時改定事由による改定:役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更など、やむを得ない事情がある場合
  3. 業績悪化改定事由による改定:経営の状況が著しく悪化したことなどによる減額

業績悪化改定事由には、一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標に届かなかったことは含まれないとされています。「今年は売上が良さそうだから途中で上げる」「少し苦しいから下げる」という変更は、原則として認められません。途中で増額した場合、増額分は損金になりません。

会社法上の決め方

株式会社では、取締役の報酬は、定款で定めていなければ株主総会の決議で決めます(会社法361条)。一人会社でも、株主総会で決めた記録(議事録)を残しておくことが大切です。合同会社の場合の決め方は定款の定めによって変わるため、定款を作るときに司法書士・税理士と確かめておきましょう。

賞与を払うなら事前確定届出給与

役員に賞与を払って損金にするには、事前確定届出給与として、支給の時期と額を事前に税務署へ届け出ます。国税庁の案内では、届出の期限は原則として次のいずれか早い日です。

新設法人の場合は、設立の日以後2か月を経過する日が期限です。

届け出た額と違う額を払うと、損金にならない扱いになることがあります。業績が読めない段階で賞与を届け出ることには注意が必要です。

賞与にも社会保険料がかかる

日本年金機構の案内では、賞与にも保険料がかかります。支払った賞与の額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率をかけて計算し、上限は厚生年金保険が1か月あたり150万円、健康保険が年度の累計で573万円です。賞与を払ったら、支払日から5日以内に賞与支払届を出します。

「月々の報酬を低くして賞与を多くすれば社会保険料が下がる」という単純な話にはならない点を押さえておきましょう。

報酬の額を決めるときに考えること

税金:会社と個人のどちらに利益を置くか

役員報酬を高くすると、会社の利益は減って法人税は少なくなり、個人の所得税・住民税は多くなります。報酬を低くすると、その逆になります。

置き場所かかる主な税金補足
会社に残す利益法人税・法人住民税・法人事業税など法人税は中小法人で年800万円以下15%、超える部分23.2%
役員報酬所得税(累進課税)・住民税給与所得控除を差し引いて所得を計算する

法人税の税率は国税庁の税率表、給与所得控除は国税庁の給与所得控除の表に沿います。どこで分けると合計が小さくなるかは、所得の水準、家族の控除、住んでいる自治体などで変わります。会社に残した利益は、後から個人が受け取ろうとすると、役員報酬や配当として改めて課税される点にも注意が必要です。

社会保険料:報酬で決まる

日本年金機構の案内では、法人の事業所は事業主のみの場合を含めて健康保険・厚生年金の強制適用事業所です。役員報酬を受け取ると、原則として会社の健康保険・厚生年金に加入し、保険料は報酬をもとにした「標準報酬月額」で決まります。

標準報酬月額は、資格を取得したときの報酬で決まり、その後は毎年4〜6月の報酬をもとに見直されます(定時決定)。固定的な報酬が変わって大きな差が出た場合は、途中で改定されることもあります(随時改定)。保険料は会社と本人で半分ずつ負担しますが、一人会社ではどちらも事業から出るお金です。

報酬を低くすれば保険料は下がりますが、将来の厚生年金や、病気・けがのときの傷病手当金なども小さくなります。負担と給付の両面で考えましょう。一人会社の社会保険の注意点はマイクロ法人の記事で解説しています。

会社の資金:払える額にする

定期同額給与は、毎月払い続ける約束に近いものです。業務委託の案件では、稼働月と入金月がずれることが多く、案件の切れ目では売上が一時的に止まることもあります。報酬を払った後も、会社に数か月分の運転資金が残る額にしておくと安心です。

つまずきやすい3つの場面

国税庁の定期同額給与のルールに照らすと、次のような場面で損金にならない支払いが生じやすくなります。

  1. 期首から3か月を過ぎてから額を決めた:改定の期限を過ぎた増額は、増額分が損金にならない
  2. 月によって払う額が違う:資金に余裕がある月だけ多く払うと、定期同額給与にあたらない
  3. 届け出ずに賞与を払った:事前確定届出給与の届出がない賞与は、原則として損金にならない

どれも、決めたことを記録し、毎月同じ日に同じ額を払う運用にしておけば避けやすいものです。

役員報酬を払い始めた後の手続き

役員報酬は給与のため、会社は支払いのたびに所得税を源泉徴収して納めます。国税庁の案内では、給与の支給人員が常時10人未満の会社は、税務署に承認申請書を出すことで、源泉徴収した所得税を年2回にまとめて納める「納期の特例」を使えます。

源泉徴収した月納期の特例を使う場合の納付期限
1月〜6月7月10日
7月〜12月翌年1月20日

年末には、役員本人の分も年末調整をします。このほか、社会保険の資格取得の届出や、毎年の報酬の届出も続きます。

決め方の手順

  1. 事業年度の売上と経費の見込みを立てる:確定している契約と、更新の見込みを分けて考える
  2. 生活に必要な手取りを出す:役員報酬の下限の目安にする
  3. 報酬の案を複数作る:たとえば3つの額で、法人税・所得税・住民税・社会保険料の合計を比べる
  4. 会社の手元資金を確かめる:報酬を払っても運転資金が残るか
  5. 期首から3か月以内に決議し、記録を残す:株主総会の議事録などを作る
  6. 賞与を払うなら届出をする:事前確定届出給与の期限を確かめる

試算は税理士・社会保険労務士に依頼することをおすすめします。法人化そのものの判断材料は法人化のメリットとデメリットの記事にまとめています。

よくある質問

役員報酬は年の途中で増やせますか?

原則として、事業年度の開始から3か月を過ぎた後に増額すると、増額した分は損金になりません。役員の地位や職務の内容が大きく変わったなどの臨時改定事由がある場合は例外です。当てはまるかの判断は税理士にご相談ください。

業績が悪くなったら役員報酬を減らせますか?

国税庁の案内では、経営の状況が著しく悪化したことなどによる減額は、業績悪化改定事由として認められます。ただし、一時的な資金繰りの都合や、業績目標に届かなかったというだけでは認められません。減額を考えるときは、事前に税理士にご相談ください。

役員報酬をゼロにすることはできますか?

役員報酬を払わないこと自体はできます。その場合、会社の利益には法人税などがかかり、個人の生活費は別に用意する必要があります。社会保険の扱いも変わり、報酬を受けない役員がどうなるかは個別の判断になるため、年金事務所や社会保険労務士にご確認ください。

参考にした公的情報・資料

記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。

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