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定款の事業目的の決め方|ITフリーランスが法人化するときの書き方と例

公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト

定款の事業目的は、いま実際に受けている仕事と、数年のうちに始めたい事業を、第三者が読んで分かる言葉で並べ、最後に「前各号に附帯する一切の事業」を置くのが基本の決め方です。ITフリーランスなら、システム開発の受託やITコンサルティングなど、業務委託契約に書かれている業務がそのまま入る書き方にします。

事業目的は登記され、誰でも登記事項証明書で見られます。取引先や金融機関が会社の事業内容を確かめるときにも使われます。後から変えるには定款の変更と登記が必要で、登録免許税もかかるため、設立の前に決めておくと手間が省けます(2026年10月時点)。

事業目的が使われる場面

会社法第27条は、株式会社の定款に記載しなければならない事項の最初に「目的」を挙げています。合同会社などの持分会社も同じです(第576条)。株式会社の設立登記では、目的は登記しなければならない事項の1つです(第911条第3項)。

書いた目的は、次のような場面で見られます。

場面見る人何を確かめるか
設立・変更の登記法務局(登記官)登記できる書き方か
新規取引の開始取引先依頼する業務と会社の事業が合っているか
法人口座の開設金融機関事業の内容(定款や登記事項証明書で確認)
許認可の申請所管の官公庁許認可の対象の事業が目的に入っているか

警察庁の「犯罪収益移転防止法の概要」では、国内の法人の事業の内容は、登記事項証明書や定款などの書類で確認する方法とされています。法人口座の開設で何が確かめられるかは法人口座の開設の記事で解説しています。

書くときの4つの考え方

1. 今の仕事が入っているか

最初に、いま受けている業務委託契約の業務内容を書き出します。契約書の「業務の内容」の欄に書かれた言葉は、目的を考える材料になります。

たとえば、契約上の業務が「基幹システムの開発支援」「PMO支援」「業務改善のコンサルティング」なら、目的には「ソフトウェアの設計・開発」「情報システムの導入・運用に関するコンサルティング」「プロジェクト管理の支援」といった、業務を包む言葉を入れます。

2. 数年のうちに始めたい事業を足す

研修講師、技術書の執筆、自社サービスの開発・運営など、近いうちに始めたい事業があれば加えておきます。後から足すと変更の手続きが要るためです。ただし、予定のない事業を並べすぎると、何をする会社なのかが伝わりにくくなります。

3. 第三者が読んで分かる言葉にする

法務局の定款の記載例には、次の注意書きがあります。

IT分野は略語やカタカナ語が多いため、特に気をつけたい点です。流行の言葉を使うより、「ソフトウェア」「情報システム」「インターネットを利用した各種情報提供サービス」のように、意味が広く通じる言葉で書くほうが無難です。

4. 最後に附帯事業の一文を置く

法務局の記載例では、目的の最後に「前各号に附帯する一切の事業」と書いています。主な事業に付随して発生する仕事も含めておくための一文です。

ITフリーランスの記載例

次は、ITエンジニア・ITコンサルタントが一人で会社を作る場合の書き方の一例です。実際の事業に合わせて取捨選択してください。

  1. ソフトウェア及び情報システムの企画、設計、開発、運用、保守及び受託
  2. 情報システムの導入及び活用に関するコンサルティング
  3. 企業の業務改善及び経営に関するコンサルティング
  4. プロジェクト管理に関する支援業務
  5. インターネットを利用した各種情報提供サービス
  6. 情報処理技術に関する教育、研修及びセミナーの企画、運営
  7. 書籍、記事その他の著作物の企画、執筆及び販売
  8. 前各号に附帯する一切の事業

PMやPMOとして参画するなら4、業務コンサルなら3、技術研修の講師を始めたいなら6、といったように、自分の仕事に当てはまる行を残します。合同会社でも株式会社でも、目的の書き方の考え方は同じです。会社の形の選び方は合同会社と株式会社の違いの記事をご覧ください。

迷いやすい言葉の言い換え

IT分野でよく使う言葉を、登記事項証明書を読む人に伝わる形に直す例です。どれも一例で、受理されるかどうかを保証するものではありません。

使いがちな言葉言い換えの例気をつける点
DX支援情報技術を活用した企業の業務改革に関するコンサルティング略語をそのまま書かない
AI開発人工知能(AI)を活用したソフトウェアの開発ローマ字には括弧書きで説明を付ける
Webサービス運営インターネットを利用した各種情報提供サービスの企画及び運営何を提供するかが分かる言葉にする
IT関連事業全般ソフトウェアの開発、情報システムに関するコンサルティング など範囲が広すぎる言葉だけで済ませない

個人事業のときに開業届に書いた職業や、名刺・Webサイトで説明している仕事の内容とも、大きくずれないようにしておくと、取引先に説明しやすくなります。

設立の前に確かめること

目的を決めたら、定款を作る前に次の点を確かめます。

  1. 業務委託契約の業務内容と合っているか:取引先から見て、依頼する業務がこの会社の事業だと分かるか
  2. 略語やカタカナ語に説明が付いているか:法務局の注意書きに沿っているか
  3. 許認可が必要な事業が入っていないか:入っているなら所管の官公庁に事前に確認したか
  4. 数が多すぎないか:事業の中心が読み取れるか

定款の作成から登記までの流れは法人設立の流れの記事で解説しています。株式会社は定款を公証人に認証してもらうため、認証の前に目的を固めておく必要があります。

後から目的を変えるとき

社内の決定

会社の形必要な決定根拠
株式会社株主総会の特別決議(定款に別段の定めがなければ、議決権の過半数を持つ株主が出席し、その議決権の3分の2以上の賛成)会社法第466条、第309条第2項
合同会社など定款に別段の定めがなければ、総社員の同意会社法第637条

一人会社なら、株主または社員は自分だけなので、決定そのものは自分一人で行えます。ただし、株主総会の議事録や総社員の同意書など、登記の申請に添える書類は作ります。

変更の登記と費用

目的に変更が生じたら、2週間以内に本店の所在地で変更の登記をします(会社法第915条)。国税庁の登録免許税の税額表では、登記事項の変更は申請1件につき3万円です。書類の作成を司法書士に依頼すれば、その報酬も別にかかります。

変更の登記が終わると、登記事項証明書の目的の欄も新しい内容に変わります。取引先から最新の登記事項証明書を求められることがあるほか、金融機関から事業内容の確認の書類が届くこともあります。事業の内容が変わったときは、口座のある金融機関の手続きも確かめておきましょう。

新しい事業を始めるたびに目的を足していくと、そのたびに登録免許税と手間がかかります。設立のときに、数年先までを見通して決めておく意味はここにあります。

よくある質問

目的は何個まで書けますか?

数を増やすより、事業の中心が読み取れるかを優先してください。今の仕事と近い将来の事業に絞り、最後に附帯事業の一文を置く形にすると、取引先や金融機関にも伝わりやすくなります。

目的に書いていない仕事を受けてしまったら、どうなりますか?

目的の範囲をどう考えるかは、個別の事情によって判断が分かれます。継続して受けるなら、目的に加える変更登記を検討してください。判断に迷う場合は司法書士にご相談ください。

「DX支援」や「SaaS」のような言葉は使えますか?

法務局は、ローマ字の用語や専門用語は、広く社会的に認知されているものでないと登記の申請が受理されない場合があるとしています。使う場合は括弧書きで説明を付けるか、意味が通じる日本語に言い換えてください。登記できる書き方か迷う場合は、管轄の法務局や司法書士にご確認ください。

参考にした公的情報・資料

記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。

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