介護と仕事の両立|フリーランスが使える制度と使えない制度
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
フリーランスが家族の介護と仕事を両立するときは、会社員向けの介護休業や介護休業給付は使えない一方で、家族が受ける介護保険のサービスは働き方に関係なく使える、という線引きを最初に押さえます。仕事を休む仕組みがない分、介護保険のサービスで支えられる部分を早めに固め、残った時間で稼働の条件を組み直すことが両立の基本になります。
あわせて、フリーランス法には、発注者に介護への配慮を求める決まりがあります。この記事では、使える制度と使えない制度、介護が始まったときの動き方、案件の続け方を順に整理します(2026年10月時点)。
使える制度・使えない制度の一覧
| 制度 | フリーランス本人 | ポイント |
|---|---|---|
| 介護休業・介護休暇 | 使えない | 会社などに雇われている労働者の制度 |
| 介護休業給付 | 使えない | 雇用保険の被保険者が対象の給付 |
| 介護保険のサービス | 介護を受ける家族が使う | 本人の働き方は関係しない。要介護認定が必要 |
| 地域包括支援センターへの相談 | 使える | 介護の始め方の相談先 |
| フリーランス法の配慮の申出 | 使える | 従業員を使う発注者に、両立への配慮を求められる |
介護休業給付は雇用保険の制度
ハローワークの案内では、介護休業給付は、家族を介護するために休業した雇用保険の被保険者が対象で、支給額は原則として「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」、対象家族1人につき93日を限度に3回まで支給されます。雇用保険に入っていないフリーランスは、この給付を受けられません。
会社員と兼業していて、勤め先で雇用保険に入っている場合は、その勤め先での休業について対象になり得ます。要件の細かな当てはめは、ハローワークにご確認ください。
収入が止まったときの備えは自分で用意する
休業の給付がないため、介護で稼働を減らした期間の収入の落ち込みは、貯蓄や民間の保険で備えることになります。生活費の何か月分を手元に置くかの考え方は収入が途切れたときに備える貯蓄の記事、働けなくなったときの保険は所得補償保険の記事で整理しています。
介護が始まったときの動き方
最初の相談先は地域包括支援センター
親などの介護が必要になりそうだと感じたら、介護を受ける人が住んでいる市区町村の窓口か、地域包括支援センターに相談します。離れて暮らしている場合も、相談先は介護を受ける人の住所地です。
介護保険のサービスを使うまでの流れ
厚生労働省の介護サービス情報公表システムの案内をもとに、流れを整理すると次のとおりです。
- 要介護認定の申請:介護を受ける人の住所地の市区町村の窓口に申請する。介護保険被保険者証が必要で、40〜64歳の第2号被保険者は医療保険の保険証が必要
- 認定調査と主治医意見書:市区町村の調査員が自宅などを訪問して心身の状態を確かめ、市区町村が主治医に意見書の作成を依頼する。主治医がいない場合は、市区町村の指定医の診察が必要
- 認定の通知:申請から認定の通知までは原則30日以内
- ケアプランの作成:要介護1以上で在宅のサービスを使う場合は居宅介護支援事業者のケアマネジャー、要支援1・2は地域包括支援センターに依頼する
- サービスの利用開始:ケアプランにそってサービスを使う
申請してから認定が出るまで時間がかかるため、仕事の調整は「認定が出るまでの期間」と「サービスが動き始めてから」の2段階で考えます。
ケアマネジャーに仕事の時間を伝える
ケアプランは、介護を受ける人の状態だけでなく、家族が支えられる時間も踏まえて組まれます。打ち合わせでは、仕事の稼働日と時間帯、対応できない時間を具体的に伝えておくと、デイサービスの時間帯などを仕事の予定と合わせやすくなります。在宅で働いていると「家にいるから対応できる」と受け取られやすいため、在宅でも稼働中は対応できない時間があることをはっきり伝えます。
案件を続けながら両立するための調整
稼働の形を見直す
介護の負担が大きい時期は、次のような形に切り替えることを考えます。
| 見直しの方法 | 向いている場面 |
|---|---|
| 週の稼働日数を減らす | 決まった曜日に付き添いや見守りが必要 |
| 在宅の日を増やす | 日中に短時間抜ける必要がある |
| 成果物と期日で区切る仕事に寄せる | 時間帯を自分で動かしたい |
| 契約期間を短く区切る | 介護の見通しが立たない |
稼働日数を減らす場合は、月の稼働時間の幅(精算幅)の下限も一緒に見直します。下限が元のままだと、減らした稼働では届かず、報酬が差し引かれることがあります。仕組みは精算幅の記事で解説しています。週3〜4日の働き方は週3日の業務委託案件の記事をご覧ください。
フリーランス法の配慮を申し出る
フリーランス法第13条では、従業員を使う発注者に対し、フリーランスからの申出に応じて、介護などと両立しながら業務に従事できるよう、必要な配慮をすることを定めています。政令で定める期間(6か月)以上の継続的な業務委託では義務、それより短い業務委託では努力義務です。
厚生労働省の指針では、ここでいう「介護」を、負傷・疾病・障害で2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にある家族の介護や世話としています。家族には、配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫が含まれます。指針には、介護のために特定の曜日はオンラインで働きたいという申出に対し、一部の業務をオンラインに切り替えられるよう調整する、という配慮の例が挙がっています。
申出の準備や、配慮を理由にした不利益な扱いについては育児・介護とフリーランス新法の記事で詳しく扱っています。ここでは、介護ならではの伝え方の注意を挙げます。
- 家族の病名や状態の詳細まで伝える必要はない。「付き添いで火曜の午前は対応できない」のように、仕事への影響を中心に伝える
- 介護は先の見通しが立ちにくい。「まず3か月この形で試し、その後に見直したい」と期間を区切って申し出る
- 介護の状態が変わったら、そのつど条件を見直す前提で話す
自分の介護保険料も確かめておく
フリーランス本人が40歳から64歳の場合、介護保険料は国民健康保険料に含めて納めます。介護の場面では、家族の介護保険のことに意識が向きやすいものの、自分の保険料の負担も家計に影響します。仕組みは40歳からの介護保険料の記事をご覧ください。
長く続ける前提で考えること
介護は、育児と違って終わりの時期が見えにくく、年単位で続くことがあります。そのため、短期間だけ無理をして乗り切るより、次の点を長く続けられる形に整えるほうが、仕事も家庭も崩れにくくなります。
- 介護保険のサービスや、家族・親族との分担で、自分が担う時間を固定する
- 稼働の条件を、その時間を前提に組み直す
- 半年ごとなど時期を決めて、分担と稼働の条件を見直す
親の介護が始まりやすい年代の案件の傾向は50代のフリーランスの記事でも扱っています。
よくある質問
フリーランスでも介護休業を取れますか?
法律で定められた介護休業は、雇われて働く労働者の制度のため、フリーランスにはありません。休む期間を作るには、契約の期間や更新の時期を調整するか、発注者と稼働の条件を話し合うことになります。従業員を使う発注者には、フリーランス法で介護への配慮が求められています。
遠方に住む親の介護が始まりそうな場合、どこに相談すればよいですか?
親が住んでいる市区町村の窓口か、地域包括支援センターに相談します。要介護認定の申請も、介護を受ける人の住所地の市区町村で行います。家族が代わりに相談することもできるため、電話で状況を伝えるところから始めると進めやすくなります。
介護で稼働を減らすと、報酬はどうなりますか?
準委任の契約では、稼働時間に応じて報酬が決まることが多く、稼働を減らせばその分は下がります。厚生労働省の指針では、減った業務量に見合う報酬の調整は不利益な扱いにあたらない例とされる一方、それを超える減額は不利益な扱いにあたり得るとされています。新しい条件は記録に残る形で取り決めてください。
参考にした公的情報・資料
- 介護休業給付について(ハローワークインターネットサービス)
- サービス利用までの流れ(介護サービス情報公表システム・厚生労働省)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)
- 特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針(厚生労働省)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。