青色申告とは|65万円控除を受けるための条件と令和9年分からの変更
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
青色申告は、帳簿を付けて税務署の承認を受けた人が、所得税の計算で特典を受けられる制度です。最高65万円の青色申告特別控除を受けるには、複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を付けて期限内に申告したうえで、e-Taxで送信するか優良な電子帳簿を保存することが条件です(令和8年分まで。2026年10月時点)。
令和9年分(2027年分)からは控除の区分が変わり、最高75万円になります。一方で、書面で申告した場合の上限は10万円に下がります。この記事では、令和8年分の条件と令和9年分からの変更を分けて整理します。
令和8年分までの青色申告特別控除は3段階
国税庁によると、令和8年分までの青色申告特別控除は、記帳と申告の方法によって65万円・55万円・10万円の3段階です。
| 控除額 | 主な条件 |
|---|---|
| 65万円 | 55万円の条件をすべて満たし、さらに「e-Taxで申告書と決算書を送信する」か「仕訳帳と総勘定元帳を優良な電子帳簿として保存し、届出書を出す」 |
| 55万円 | 事業所得(または不動産所得)があり、正規の簿記(一般的には複式簿記)で記帳し、貸借対照表と損益計算書を付けて期限内に申告する |
| 10万円 | 上の条件に当てはまらない青色申告者(簡易な記帳など) |
55万円の条件にある「期限内」とは、翌年3月15日の確定申告期限までです。所得の合計が控除額より少ない場合は、その所得の額が控除の上限になります。また、現金主義による所得計算の特例を選んでいる人は、55万円・65万円の控除を受けられません。
フリーランスのエンジニアやコンサルは、報酬を事業所得として申告するのが一般的です。事業所得として申告していれば、上の表の条件で控除を受けられます。
令和9年分からは最高75万円、書面申告は10万円に
令和8年度税制改正で、青色申告特別控除が見直されました。国税庁のリーフレット(令和8年8月)によると、令和9年分の確定申告から次のようになります(2026年10月時点)。
| 控除額 | 令和9年分以後の主な条件 |
|---|---|
| 75万円 | 65万円の条件に加えて、「優良な電子帳簿の保存」か「デジタルシームレス保存」を行い、届出書を期限までに出す |
| 65万円 | 正規の簿記で記帳し、e-Taxで申告書と青色申告決算書(貸借対照表を含む)のデータを期限内に送信する |
| 10万円 | 上の条件に当てはまらない青色申告者。書面申告の場合の上限もこの額 |
令和8年分までは、書面で申告しても55万円の控除を受けられました。令和9年分以後は、書面申告の上限が10万円になるため、e-Taxでの申告が65万円・75万円を受ける前提になります。
もう一つの変更は、簡易な記帳の人の扱いです。簡易な記帳で事業所得があり、前々年分の事業所得の収入金額が1,000万円を超える場合は、10万円の控除も受けられなくなります。
75万円を受けるための2つの方法
国税庁のリーフレットでは、75万円の条件として次の2つが示されています。
- 優良な電子帳簿の保存:その年の最初から、仕訳帳と総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件を満たして保存し、届出書を確定申告期限までに出す。優良な電子帳簿とは、訂正・削除・追加の履歴が残ること、帳簿どうしの関連が確認できること、日付・金額・取引先で検索できることを満たすものです
- デジタルシームレス保存:デジタルインボイスや預貯金口座の決済データといった電子取引データを、国税庁長官が定める基準に合うシステムで送受信・保存し、届出書を確定申告期限までに出す
どちらも「年の途中から始める」のではなく、課税期間の最初から要件を満たす必要がある点に注意してください。令和9年分で75万円を目指すなら、2027年1月1日の時点で帳簿の付け方を整えておくことになります。すでに優良な電子帳簿の保存で65万円の控除を受けている人は、改めて届出書を出す必要はないとされています。
青色申告を始めるには承認申請が必要
青色申告は、税務署に「青色申告承認申請書」を出して承認を受けることで始められます。国税庁によると、提出期限は次のとおりです。
| 状況 | 提出期限 |
|---|---|
| すでに事業をしていて、翌年から青色申告にしたい | 青色申告をしたい年の3月15日まで |
| その年の1月16日以後に開業した | 開業日から2か月以内 |
開業届と同じタイミングで出しておくと、出し忘れを防げます。開業届の出し方は開業届の記事で解説しています。
控除以外の青色申告の特典
青色申告の特典は、特別控除だけではありません。国税庁が示している主な特典は次のとおりです。
赤字を3年間繰り越せる
事業の赤字(純損失)を、翌年以後3年間繰り越して、その後の黒字と相殺できます。前年も青色申告をしていれば、前年の所得税の還付を受ける「繰戻し」も選べます。独立1年目は、パソコンなどの初期投資で赤字になることもあるため、この特典は意味があります。
家族に払う給与を経費にできる
生計を一にする15歳以上の親族が事業に専ら従事している場合、届け出た範囲内で、適正な金額の給与を経費にできます(青色事業専従者給与)。ただし、給与を受け取った家族は、配偶者控除や扶養控除の対象から外れます。
少額の資産を一度に経費にできる
国税庁の「減価償却のあらまし」によると、一定の要件を満たす青色申告者は、取得価額10万円以上40万円未満の資産を、取得した年に全額経費にできます(令和8年3月31日までに取得したものは30万円未満。1年間の合計300万円まで)。通常、10万円以上の資産は耐用年数にわたって減価償却するため、パソコンなどを買った年に経費を大きく計上できるのは青色申告の特典です。詳しくは減価償却の記事をご覧ください。
貸倒引当金を計上できる
年末の売掛金などの貸金について、帳簿価額の合計の5.5%以下を貸倒引当金として経費に計上できます。
青色申告で必要な帳簿と保存期間
青色申告では、原則として貸借対照表と損益計算書を作れる正規の簿記(一般的には複式簿記)で記帳します。簡易な記帳(現金出納帳、売掛帳、経費帳、固定資産台帳など)も認められますが、その場合の控除は10万円です。
帳簿と書類の保存期間は、原則として7年間です。請求書・見積書・納品書などは5年間でよいとされています。電子で受け取った請求書や領収書は、電子データのまま保存するルールがあります。詳しくは電子帳簿保存法の記事で解説しています。
白色申告と比べたときの違い
白色申告でも帳簿付けと書類の保存は必要です。青色申告との主な違いは次のとおりです。
| 比べる点 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 事前の手続き | 承認申請書の提出が必要 | 不要 |
| 特別控除 | 最高65万円(令和9年分以後は最高75万円) | なし |
| 赤字の繰越し | 3年間 | 原則なし |
| 家族への給与 | 届け出た範囲の適正額を経費にできる | 決められた控除額の範囲 |
| 少額の資産の特例 | 40万円未満を一度に経費にできる(要件あり) | 10万円未満まで |
自分の場合にどの控除が受けられるか、帳簿の付け方が要件を満たしているかなど、個別の判断は税理士・税務署にご相談ください。
よくある質問
青色申告承認申請書を出し忘れたらどうなりますか?
その年は白色申告として申告することになります。青色申告の特別控除や赤字の繰越しは受けられません。翌年から青色申告にしたい場合は、翌年の3月15日までに承認申請書を出してください。
e-Taxで申告すれば、帳簿は簡易な記帳でも65万円の控除を受けられますか?
受けられません。65万円の控除は、55万円の条件である正規の簿記(一般的には複式簿記)での記帳と、貸借対照表・損益計算書の添付を満たしたうえで、e-Taxで送信するなどの条件を加えたものです。簡易な記帳の場合の控除は10万円です。
令和9年分から75万円の控除を受けるには、いつから準備が必要ですか?
優良な電子帳簿の保存やデジタルシームレス保存は、その年の最初から要件を満たして行う必要があります。令和9年分で受けるなら、2027年1月1日から要件を満たした帳簿の付け方を始められるよう、2026年中に準備しておくと安心です。届出書は令和9年分の確定申告期限までに出します。
参考にした公的情報・資料
- No.2070 青色申告制度(国税庁)
- No.2072 青色申告特別控除(国税庁)
- 75万円の青色申告特別控除を受けるためには(国税庁・令和8年8月)
- No.2100 減価償却のあらまし(国税庁)
- No.2030 還付申告(国税庁)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。