面談で課題の提出を求められたとき|選考の範囲と無償作業の線引き
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
面談で課題の提出を求められたら、まず「力を確かめるための課題か」「実際の業務の一部か」を見分けます。短時間で取り組める課題で、提出物を業務に使わないものなら、選考の範囲として受けてよいことが多いでしょう。
反対に、発注側の実際のシステムや資料に手を入れさせる、提出物をそのまま業務で使う、何日もかかる分量を求める、といった課題は、選考を超えた無償作業のおそれがあります。受ける前に、目的・分量・提出物の扱いを確かめることが大切です(2026年10月時点の情報です)。
選考の課題として出されるもの
業務委託の選考では、スキルシートと面談に加えて、課題を出されることがあります。よくあるのは次のような形です。
| 課題の形 | 中身の例 | 確かめたいこと |
|---|---|---|
| コーディングテスト | 決められた時間内に問題を解く | 基本的な実装の力 |
| 小さな実装課題 | 架空の仕様で小さな機能を作る | 設計の考え方、コードの書き方 |
| 設計・考え方の記述 | 架空の要件に対して、構成や進め方を書く | 判断の筋道、説明の力 |
| 過去の成果の説明 | 守秘義務の範囲で、過去の成果物の構成を説明する | 経験の深さ |
| 面談中の口頭の問い | 「この状況ならどう進めるか」 | その場での整理の力 |
技術面談やコーディングテストの準備の仕方は技術面談・コーディングテストの記事で扱います。この記事では、課題が「選考」の範囲に収まっているかの見分け方に絞ります。
選考と無償作業を分ける4つの目安
選考の課題と、業務の先取りにあたる作業は、次の4つの点で見分けられます。
| 目安 | 選考の範囲に収まりやすい | 選考を超えているおそれ |
|---|---|---|
| 題材 | 架空の仕様、一般的な問題 | 発注側の実際のシステム・データ・資料 |
| 分量 | 数時間程度で終わる | 何日もかかる。仕様が広い |
| 提出物の使い道 | 評価のためだけに使う | そのまま業務に組み込む、社内資料として使う |
| 求める水準 | 考え方が分かればよい | 本番で使える完成度まで求める |
一つでも右側に当てはまれば、すぐに断る必要はありませんが、受ける前に理由を確かめます。特に題材が実際の業務で、提出物の使い道が決まっていない場合は注意が必要です。
よくある「グレー」な依頼
- 「現状のシステム構成を見て、改善案を資料にまとめてほしい」
- 「このデータを分析して、結果を報告してほしい」
- 「既存のコードのこの不具合を直してみてほしい」
- 「次の会議で使う提案書のたたき台を作ってほしい」
どれも、選考のつもりで出されている場合もあれば、実際の業務の前倒しになっている場合もあります。課題の文面だけでは判断できないため、次の項目を確かめます。
課題を受ける前に確かめること
- 目的:何を評価するための課題か
- 想定の所要時間:どのくらいの時間で取り組む前提か
- 題材:架空のものか、実際の業務のものか
- 提出物の扱い:評価のあと、利用・保管・削除をどうするか
- 報酬の有無:業務に近い分量なら、有償の作業として扱えないか
- 締め切り:他の選考や今の案件と両立できるか
聞き方は、相手を疑っている印象にならないように、事実を尋ねる形にします。
課題の件、承知しました。取り組む前に確認させてください。想定されている作業時間はどのくらいでしょうか。また、提出した資料は選考の評価のみに使われるという理解でよろしいでしょうか。
フリーランス新法との関係
法律のルールは「業務委託をしたとき」から
フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、発注者がフリーランスに業務委託をした場合のルールを定めています。業務委託をしたときは、直ちに給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面またはメールなどで明示しなければなりません(第3条)。この明示の義務は、従業員を使わない発注者も含め、業務委託をするすべての事業者にかかります。
選考のための課題は、まだ業務委託をしていない段階で行われるものなので、通常はこのルールの外にあります。
実質が業務なら問題になり得る
一方、公正取引委員会のQ&Aでは、正式な発注の前に見込みで作られたものについて、まだ業務委託をしていない段階なら受け取りを拒んでも直ちに問題にはならないとしつつ、実際には口頭で業務委託をしていたのに明示をせずに作らせた場合は、明示義務の違反や受領拒否として問題になるおそれがあるとしています。
選考の課題がこれにあたるかは、課題の中身や指示の仕方などの事情によります。名目が「選考」でも、実際の業務を指示して作らせ、その成果を使っているなら、業務委託の実態があると見られる余地があります。判断に迷うときは、取引トラブルの相談先の記事にある窓口や弁護士にご相談ください。
参画後の「無償の作業」は禁止行為の問題
参画したあとに、契約にない作業を無償で求められる場合は、別の問題になります。従業員を使う発注者が1か月以上の業務委託をしている場合、自己のために金銭や役務などを提供させてフリーランスの利益を不当に害することは禁止されています(第5条第2項第1号)。詳しくはフリーランス新法の禁止行為の記事で整理しています。
分量が多いときの返し方
確かめた結果、選考の範囲を超えていると感じたら、いきなり断るより、形を変える提案から入ります。
| 返し方 | 向いている場面 | 伝え方の例 |
|---|---|---|
| 範囲を絞る | 課題の一部だけでも評価できそう | 「全体ではなく、構成案と主要な部分の考え方に絞って提出してもよいでしょうか」 |
| 口頭の説明に変える | 考え方を見たいだけの課題 | 「資料の作成ではなく、面談の場で進め方をご説明する形でもよいでしょうか」 |
| 過去の成果で代える | 似た経験がある | 「近い課題に取り組んだ経験があるので、守秘義務の範囲でその進め方をご説明できます」 |
| 有償の作業にする | 実際の業務の一部を求められている | 「実際の業務に近い内容のため、短期の契約として作業させていただく形は可能でしょうか」 |
| 辞退する | 条件が変わらない | 「今回は、作業の分量を考え、選考を辞退させていただきます」 |
有償の作業にする場合は、作業の内容・報酬・支払期日を、取りかかる前に書面やメールで受け取ります。口頭で始めてしまうと、あとから「選考の一部だった」と扱われるおそれがあります。
提出物の扱いを決めておく
課題で作ったコードや資料の扱いは、提出の前に確かめておきます。
- 評価のためだけに使い、業務には使わないこと
- 選考が終わったら削除するか、保管するか
- 自分のポートフォリオとして使ってよいか
提出物の権利の扱いは、成果物の著作権の考え方とつながります。業務委託での扱いは成果物の著作権の記事で解説しています。自分の課題をポートフォリオに載せる場合は、題材が発注側の情報を含まないことを確かめてから載せます。ポートフォリオの考え方はポートフォリオやGitHubの記事をご覧ください。
選考の時間を見込んでおく
課題を出す案件では、面談の前後に課題の期間が入るため、参画が決まるまでの時間が長くなります。今の案件の終了日や、他の選考との重なりを見て、締め切りに無理がないかを先に確かめておきます。選考全体の流れは面談の流れの記事、面談の前に確かめておきたい項目は面談前の確認の記事にまとめています。
よくある質問
課題を断ると、選考で不利になりますか?
分量や目的を確かめたうえで、範囲を絞る提案をする分には、不利になるとは限りません。ただし、発注側が課題を評価の中心にしている場合は、課題なしでは選考が進まないこともあります。条件が合わないときは、辞退も選択肢の一つです。
課題の提出物が、のちに業務で使われていると分かりました。どうすればよいですか?
まず、課題を出されたときのやり取りと、提出物の扱いについての取り決めを確かめます。業務に使うなら報酬を払ってほしいと、記録に残る形で相談します。解決しない場合は、取引トラブルの相談窓口や弁護士にご相談ください。
課題に取り組んだ時間の報酬を請求できますか?
選考の課題は、事前に報酬の取り決めがないのが一般的で、あとから請求するのは難しいことが多くあります。実際の業務に近い課題だと感じたら、取りかかる前に有償の作業として扱えないかを相談しておくことが大切です。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。