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フリーランス新法・下請法

フリーランス新法の取引条件の明示|受け取るべき8項目と確認のしかた

公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト

フリーランス新法(第3条)では、発注者はフリーランスに業務委託をしたら直ちに、業務の内容、報酬の額、支払期日など8つの事項を、書面またはメール・チャットなどの電磁的方法で明示しなければなりません。電話や口頭で伝えるだけでは足りません。

この義務は、従業員を使う会社だけでなく、フリーランス同士の発注にもかかります。受け取った発注書やメールに何が書いてあれば十分なのかを、2026年10月時点の公正取引委員会などの資料をもとに整理します。

明示しなければならない8項目

公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省のパンフレットでは、明示事項を次の8つにまとめています。

No.明示事項中身の例
1発注者とフリーランスの名称会社名・氏名。識別できればビジネスネームでも可
2業務委託をした日業務を委託することに合意した日
3給付の内容作業内容、数量、仕様など
4給付を受領する期日・役務の提供を受ける期日納品日、作業する期間
5給付を受領する場所・役務の提供を受ける場所納品先、作業場所
6検査を完了する期日検査(検収)をする場合のみ
7報酬の額と支払期日金額または算定方法、具体的な支払日
8金銭以外で支払う場合の支払方法該当する場合のみ

6と8は、該当する取引のときだけ必要です。つまり、多くのフリーランス案件では1〜5と7がそろっていれば、形式としては足ります。

給付の内容は「何を・どこまで」まで書く

給付の内容には、品目、数量、規格、仕様などを明確に書く必要があるとされています。エンジニアやコンサルの準委任案件であれば、担当する工程や作業範囲がこれにあたります。

成果物に著作権などの知的財産権が発生し、業務の目的を超えて譲渡・許諾させる場合は、その範囲も明示事項に含まれます。パンフレットでは、譲渡・許諾があるならその対価を報酬に加える必要があるとしています。権利の扱いは成果物の著作権の記事で詳しく解説しています。

報酬は「算定方法」でもよいが、支払日は特定する

報酬の額は、具体的な金額を書くことが難しいやむを得ない事情があれば、算定方法で示すこともできます。ただし、その算定方法は、根拠となる数字が決まれば金額が自動的に決まるものでなければなりません。時間単価と稼働時間で決まる精算方式などがこれにあたります。具体的な金額が確定したら、速やかに金額を明示する必要があります。

交通費などの諸経費を発注者が負担する場合は、諸経費を含めた総額がわかるように示すことが求められています。

一方、支払期日は「○月○日」のように具体的な日を特定する必要があります。「納品後速やかに」のような書き方では足りません。支払期日の決め方は60日ルールの記事をご覧ください。

明示の方法:書面かメール・チャットか

認められる方法

明示の方法は、書面か電磁的方法のどちらかで、どちらにするかは発注者が選べます。パンフレットとQ&Aで挙げられている方法は次のとおりです。

メッセージの本文に書く方法のほか、明示事項を載せたWebページのURLを送る方法や、PDFを添付する方法も認められています。一方、ブログやWebページへの書き込みのように、相手を特定しない方法は認められません。

電話・口頭だけは不可

電話など口頭で伝えるだけでは、明示したことになりません。オンライン会議で条件を話し合った場合も、その後にメールやチャットで文字として送ってもらう必要があります。

書面がほしいときは請求できる

電磁的方法で明示を受けた後でも、フリーランスが書面の交付を求めたときは、発注者は遅滞なく書面を交付しなければなりません(第3条第2項)。ただし、次の場合は書面を交付しなくてもよいとされています。

SNSのサービス終了などで内容が確認できなくなり、フリーランスが書面を求めたときは、書面での交付が必要です。チャットで受け取った条件は、スクリーンショットやPDFで手元に保存しておくと安心です。

条件がまだ決まっていないとき(未定事項)

業務委託の時点で内容を決められない正当な理由がある事項は、その時点で明示しなくてもよいとされています(第3条第1項ただし書)。Q&Aでは、ソフトウェアの最終仕様が決まっていない場合などが例に挙げられています。

ただし、何も書かなくてよいわけではありません。当初の明示では、次の3点を示す必要があります。

  1. 未定事項以外の明示事項
  2. 未定事項の内容が決められない理由
  3. 未定事項の内容を決める予定の日

内容が決まったら、直ちに補充の明示をしなければなりません。補充の明示には「○年○月○日付け発注書の記載事項を補充するものです」のように、当初の明示との関係がわかる記載が必要です。

基本契約と共通事項の扱い

支払方法や検査期間のように、一定期間の発注に共通して使う事項(共通事項)は、あらかじめ別の書面などで明示しておけば、個々の発注のたびに書かなくてもよいとされています。その場合は、次の2点が条件です。

フリーランス案件でよくある「基本契約+個別契約(注文書)」の形は、この考え方に沿ったものです。基本契約に何が書かれ、個別契約に何が書かれるかは基本契約と個別契約の記事で整理しています。

よくある場面ごとの確認ポイント

契約を更新したとき

Q&Aでは、施行日(2024年11月1日)より前の契約が施行日以後に更新された場合は、新たに明示が必要としています。ただし、もとの契約書で明示事項がすべて足りていれば、内容に変更がない限り、新たな明示は不要とされています。

業務委託後に詳細が決まったとき

業務委託後に作業内容がより詳しく決まった場合、改めて明示し直すことは必ずしも必要ないとされています。それでも、Q&Aでは内容を伝えて明確にすることが望ましいとしています。作業範囲が広がった場合は、報酬の見直しも含めて文字で残しておきましょう。

下請法(取適法)も適用される取引

2026年1月1日から、下請法は取適法に改められています。公正取引委員会の2026年特設サイトでは、両方の法律が適用される発注について、1つの書面やメールに両法の記載事項をまとめて示してよいとしています。違いは下請法とフリーランス新法の違いの記事をご覧ください。

明示義務の違反は多い

公正取引委員会が2026年6月に公表した令和7年度(2025年度)の運用状況では、違反行為の類型のうち取引条件の明示義務違反が1,126件で、全体の41.3%を占めました。期日における報酬の支払義務違反(1,135件)とほぼ並び、2つで大半を占めています。

条件が文字で届いていないと、支払の遅れや減額があっても主張の根拠が弱くなります。届いた条件は、参画前に8項目と照らし合わせておきましょう。

よくある質問

Slackで送られてきた条件でも、明示を受けたことになりますか?

なります。チャットツールやSNSのメッセージ機能など、受信者を特定して送る方法は電磁的方法として認められています。ただし、ワークスペースから外されると見られなくなるおそれがあるため、内容をスクリーンショットやPDFで保存しておきましょう。

発注者が個人のフリーランスでも、条件を明示してもらえますか?

明示してもらえます。取引条件の明示義務は、従業員のいないフリーランス同士の取引にもかかります。一方、60日以内の支払期日や禁止行為などの義務は、従業員を使う発注者が対象です。

条件が明示されないまま作業が始まった場合はどうすればよいですか?

まずは発注者に、8項目を書面かメールで送ってほしいと依頼しましょう。それでも明示されない場合は、公正取引委員会・中小企業庁への申出や、弁護士に無料で相談できるフリーランス・トラブル110番を利用できます。相談先は相談先の記事にまとめています。

参考にした公的情報・資料

記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。

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