RPAエンジニアのフリーランスがつまずきやすい点と対策
公開 2026-11-04 監修:株式会社エージェントベスト
フリーランスのRPAエンジニアがつまずきやすいのは、保守の範囲があいまいなまま受けること、業務の担当者の時間が取れず聞き取りが進まないこと、想定外のデータで処理を続けて誤った登録をしてしまうこと、停止対応の稼働が精算されないことです。どれも、ロボットが「人の代わりに業務システムを操作し続ける」というRPAの性質から起きます。
対策の基本は、つまずきの種を契約と参画初期の取り決めで小さくし、ロボットは止まるものとして作り、現場では記録と早めの共有で守ることです。この記事では、契約・現場・技術・お金の順に、RPAならではの場面と対策を整理します。独立の準備として契約で気をつける点はRPAエンジニアがフリーランスになるにはで扱っているので、ここでは「参画してから実際に起きやすい場面」に絞ります。
契約でのつまずき
「保守」の範囲がどこまでも広がる
契約書には「RPAの運用保守」とだけ書かれ、現場では、操作先のシステムが改修されるたびのシナリオの修正、新しい帳票への対応、別の部署からの小さな自動化の依頼まで期待されていた、という食い違いはよく起きます。総務省の「自治体におけるRPA導入ガイドブック」(令和7年7月)も、RPAは制度改正や関連するシステムの仕様変更に応じて継続的に手直しが要るものだとしています。手直しが前提の仕事だからこそ、どこまでが契約の範囲かを決めておかないと、作業が少しずつ膨らみます。
対策:参画前に、保守の対象にするロボットの一覧、停止したときの一次対応の範囲、改修と新規の自動化の線引きを言葉で確かめておきます。範囲の外の依頼が来たときの扱いは作業範囲が広がったときの契約の扱いをご覧ください。
請負で受けて、完成の基準が決まらない
「この業務を自動化するロボットを作る」という請負の形で受けると、例外のパターンが後から次々に見つかったときに、どこで完成とするかがもめやすくなります。業務の担当者の確認が遅れると、検収も遅れます。
対策:請負で受ける場合は、対象にする処理のパターンと、対象外のパターン(人の判断に回すもの)を仕様に書き、検収の方法と期日を決めておきます。作業の遂行に対して報酬が支払われる準委任のほうが合う場合も多くあります。違いは準委任契約と請負契約の違い、検収の考え方は検収の記事で解説しています。
誤った登録の責任を問われそうになる
ロボットが誤ったデータを業務システムに登録し、後から修正の手間が生じたとき、「作った人の責任だ」と言われることがあります。契約書の損害賠償の条項によっては、負う範囲が広く読める場合もあります。
対策:署名の前に、損害賠償の上限や対象が書かれているかを読みます。気になる文言はエージェントや発注側に確かめ、判断に迷う場合は弁護士などの専門家に相談してください。条項の読み方は損害賠償の条項の記事で整理しています。
現場でのつまずき
業務の担当者の時間が取れない
RPAの開発は、業務の担当者が手順を見せ、テストの結果を確かめてくれないと進みません。ところが担当者は通常の業務で忙しく、聞き取りの時間が後回しにされがちです。その遅れの責任だけがRPAエンジニアに向くことがあります。
対策:参画の初期に、聞き取りとテストの確認に必要な時間の目安を伝え、担当者の上長を含めて予定を押さえてもらいます。聞き取りが遅れたときは、その事実と影響を週次の報告に書いて残します。
手順書と実際の作業が違う
手順書どおりにロボットを作ったら、現場では担当者が手順書にない判断をしていた、ということはRPAの案件でよく起きます。例外の多くは、こうした「書かれていない判断」に潜んでいます。
対策:手順書を読むだけで終わらせず、担当者の実際の操作を画面共有や隣の席で見せてもらい、判断の分かれ目を書き出して確かめます。
前任者が作ったロボットの中身が分からない
保守の案件では、作った人がすでにいないロボットを引き継ぐことがあります。ガイドブックは、担当者の異動や退職で内部構造が分からなくなり保守できなくなるおそれや、管理が不十分なまま放置された「野良ロボット」のリスクを挙げています。仕様書が古いまま、どのロボットがどの業務を担っているかの一覧もない、という状態から始まることも珍しくありません。
対策:最初に、動いているロボットの一覧、実行の時刻、使っているアカウント、止まったときの影響を書き出します。すべてを一度に直そうとせず、業務への影響が大きいものから順に中身を読み、分かったことを文書に残していきます。
個人のアカウントで動かすよう頼まれる
ロボット用のアカウントがなく、業務の担当者の個人のアカウントで動かすよう頼まれることがあります。その人が異動や退職をすると、ロボットが止まり、誰も原因が分からなくなります。
対策:ロボット用のアカウントの有無と、認証情報の保管場所を発注側の管理者に確かめます。用意できない場合は、その事情と影響を記録に残し、判断を発注側に仰ぎます。
本番のデータでしかテストできない
テスト用の環境やデータがないまま開発を進めると、試すたびに本番のデータを書き換えてしまうおそれがあります。ガイドブックも、作成中は実データを扱わないようテスト用のデータを用意し、実データで処理する場合は誤った登録・更新・削除をしたときの復旧手順を検討しておくことを示しています。
対策:テスト用の環境とデータを誰が用意するかを、開発の前に決めます。本番で試すしかない場合は、件数を絞り、復旧の手順を業務の担当者と確かめてから実行します。
技術でのつまずき
想定外のデータで処理を続けてしまう
ロボットはシナリオで決めたとおりに動くため、想定外の入力や、操作先のシステムが遅い・止まっているといった状況で処理を続けると、意図と違う形でデータを更新してしまうことがあります。ガイドブックは、こうした場面では自動処理を止めて職員の判断を入れるか、処理を飛ばして後から確認できるようにする安全策を、開発の時点でとっておくことがもっとも重要だとしています。
対策:処理の前に状況を確かめる手順を入れ、想定から外れたら止める、または飛ばして一覧に残す作りにします。動作のログを残し、どこまで正常に処理したかを後から追えるようにします。
画面の変化でロボットが止まる
操作先のシステムの画面や帳票の様式が変わると、シナリオに不具合がなくてもロボットは意図どおりに動けなくなります。ガイドブックは、とくにインターネット上のサービスなど外部のシステムは、事前の通告なく仕様が変わることもあると注意を促しています。
対策:画面の要素の捉え方を、変化に強い方法に寄せます。データを直接受け渡す方法や、操作先のシステムの連携の機能が使えないかも検討します。操作先のシステムの改修予定を、情報システム部門から早めに知らせてもらえるよう依頼しておくのも有効です。
文書とシナリオの版がずれる
運用中に修正を重ねるうちに、仕様書が古いまま残り、修正途中のシナリオと本番のシナリオがどれか分からなくなることがあります。ガイドブックも、見直しの内容が文書に反映されないと引き継ぎが難しくなり、複数の版を管理する必要があるとしています。
対策:修正のたびに、変更の理由と版を記録します。発注側に版の管理のルールがない場合は、簡単な形でよいので最初に提案します。
お金でのつまずき
停止対応の稼働が精算されない
夜間や早朝に動くロボットが止まり、業務の開始前に対応を求められることがあります。こうした時間外の対応が、契約上どう扱われるかを決めないまま続けると、稼働だけが増えて精算されない状態になります。
対策:停止の連絡を受ける時間帯、対応の範囲、時間外の対応の精算方法を契約前に確かめます。精算の幅の考え方は精算幅の記事で整理しています。
開発が終わると稼働が減る、または契約が終わる
開発の段階が終わり、保守に移ると、週の稼働日数が減ったり、運用を社内の担当者に引き継いで契約が終わったりすることがあります。フリーランス法では、6か月以上の業務委託を解除または更新しない場合、発注側は少なくとも30日前までに予告することになっています(2026年10月時点、公正取引委員会の案内による)。
対策:参画の時点で、開発がいつまで続き、その後の保守を誰が担う見込みかを確かめておきます。契約の区切りが見えたら、次の案件の相談を早めに始めます。契約期間の決め方は契約期間の記事をご覧ください。
よくある質問
参画してから、聞いていた作業と違うと気づきました。どうすればよいですか?
まず、契約書と、受け取った取引条件の書面に書かれた業務の内容を読み直します。そのうえで、現場で頼まれている作業との違いを具体的に書き出し、エージェントや発注側の窓口に伝えて、範囲を見直すか、追加の作業として扱うかを相談してください。黙って引き受け続けると、後から線を引き直しにくくなります。
ロボットの誤作動で業務に影響が出たら、損害賠償を求められますか?
契約の形と条項、誤作動の原因によって変わるため、一概には言えません。準委任の契約では、専門家として通常求められる注意を払って業務を行うことが約束の中身になります。条項の読み方は損害賠償の条項の記事で整理しています。個別の判断が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。
業務の担当者が自動化に協力的でないときは、どうすればよいですか?
自動化で仕事がなくなる、手順を説明する時間がない、といった不安や負担が背景にあることが多くあります。担当者の手間がどこで減るのか、例外のときは人が判断する余地を残すことを具体的に説明し、聞き取りの時間は上長を通じて確保してもらうと進めやすくなります。進め方はRPAエンジニアの参画初月にやることでも扱っています。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。