検収とは|請負で報酬が確定するタイミングと、契約書で確かめる検査の条件
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
検収とは、発注者が納品された成果物を検査し、契約の内容に合っていると認めて受け入れることです。民法の請負では、報酬は成果物の引渡しと同時に支払うのが原則ですが、実際の契約では「検収完了」を支払いの条件や請求の起点にしていることがよくあります。
そのため請負や成果物のある契約では、いつまでに検査するのか、何を基準に合否を決めるのか、期限までに連絡がないときはどうなるのかを、署名前に確かめておくことが大切です。以下、2026年10月時点の民法とフリーランス新法の資料に沿って見ていきます。
「納品」「検収」「支払」は別々の時点
検収にまつわるトラブルの多くは、似た言葉の時点を混同することから起きます。まず、成果物を渡してから報酬を受け取るまでの流れを分けて見ておきましょう。
| 時点 | 何が起きるか | 契約書で見る場所の例 |
|---|---|---|
| 納品(納入) | 成果物を発注者に渡す | 納期、納入方法、納入場所 |
| 検査 | 発注者が仕様や検査項目に沿って確かめる | 検査期間、検査仕様、検査の方法 |
| 検収完了 | 検査に合格し、受け入れが確定する | 検査合格の通知、検収書 |
| 請求 | 報酬の請求書を出す | 締め日、請求の条件 |
| 支払 | 報酬が振り込まれる | 支払期日、支払方法 |
納品した日と検収が終わった日の間に数週間あくこともあります。支払期日が「検収月の翌月末」のように検収を起点に決まっている場合、検査が長引くほど入金も遅れます。
民法の原則:請負の報酬は「引渡しと同時」
民法第632条は、請負を「仕事を完成すること」と「その結果に対して報酬を支払うこと」を約束する契約としています。報酬の支払時期は、第633条で「仕事の目的物の引渡しと同時」とされています。
「検収」という言葉は、民法の条文には出てきません。検査の期間や合否の決め方は、当事者が契約で決める事柄です。だからこそ、契約書に書かれた検収の条項が、報酬を受け取れる時期を左右します。
準委任でも、成果に対して報酬を払う「成果完成型」の場合は、成果の引渡しと同時に報酬を支払うとされています(民法第648条の2)。月額で稼働する準委任の案件でも、報告書などの成果物に検収の手続きがつくことがあります。契約の型の違いは準委任と請負の記事で解説しています。
モデル契約に見る検収条項の組み立て
情報処理推進機構(IPA)が公開している「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」のソフトウェア開発委託の基本契約では、検収は次のような流れで定められています。
- 発注者が受注者と協議して、テスト項目・テストデータ・テスト方法などを定めた検査仕様書を作る
- 発注者は、個別契約で定める検査期間内に、検査仕様書に基づいて検査する
- 合格なら検査合格書を交付する。不合格なら、具体的な理由を書いた書面を交付して修正を求める
- 不合格の理由が認められるときは、受注者が期限内に修正して納入し、必要な範囲で再検査する
- 検査期間内に発注者が書面で具体的な理由を示して異議を述べなければ、合格したものとみなす
- 検査合格をもって検収完了とする
フリーランスが受ける契約はもっと簡単な形が多いものの、確かめるべき点は同じです。特に「期間内に連絡がなければ合格とみなす」という定めがあるかどうかで、検査が止まったときの扱いが大きく変わります。
また、このモデル契約では、契約不適合責任(検収後に見つかった不具合への責任)の期間を「検収完了後◯か月」のように検収を起点に数える形も示されています。検収の日付は、報酬だけでなく責任の期間にも関わります。責任の中身は契約不適合責任の記事で詳しく扱います。
フリーランス新法で検収はどう扱われるか
検査をするなら「検査完了の期日」を明示する
フリーランス新法第3条により、発注者は業務委託をしたら直ちに取引条件を明示する義務があります。公正取引委員会・厚生労働省の「考え方」では、給付の内容を検査する場合は、その検査を完了する期日を明示する必要があるとされています。
受け取った発注書やメールに検査の有無と完了期日が書かれていなければ、確認を求めてかまいません。明示事項の全体は取引条件の明示の記事にまとめています。
支払期日は「検査をするかどうかを問わず」受領日から数える
従業員を使う発注者(特定業務委託事業者)の場合、報酬の支払期日は、検査をするかどうかを問わず、給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で定めなければなりません(第4条)。検収が終わっていないことは、60日を超えて支払いを遅らせる理由になりません。
「受領した日」は業務の種類で考え方が違います。考え方では次のように整理されています。
- プログラムや資料などの情報成果物:記録媒体を受け取った日のほか、通信回線を通じて発注者のコンピュータに記録された日も受領日になる
- 情報成果物の例外:作成途中の内容確認などのために一時的に預かる場合、一定の水準を満たすと確認した時点で受領とする合意があれば、預かった日を起算日にしない扱いが認められている。ただし、明示した納期に発注者の手元にあれば、確認が終わっていなくても納期に受領したものとして扱う
- 役務の提供:個々の役務の提供を受けた日。日数を要する場合は一連の役務が終わった日。一定の要件を満たす連続した役務は、月単位の締切日を起算日にできる
なお、フリーランスの責めに帰すべき事由があり、支払前にやり直しをさせた場合は、やり直し後の給付を受領した日が起算日になります。支払期日の決まり方は60日ルールの記事で詳しく解説しています。
検査を理由にした受領拒否・やり直しの制限
1か月以上の業務委託をする特定業務委託事業者には、受領拒否や不当なやり直しなどの禁止行為が定められています(第5条)。考え方では、業務委託後に検査基準を恣意的に厳しくして不適合とすることなどは、費用を負担しないままやり直しをさせてはならない場合の例として挙げられています。禁止行為の全体は7つの禁止行為の記事をご覧ください。
検収でもめやすい場面と対処
検査結果の連絡が来ない
納品後、何の連絡もないまま時間が過ぎることがあります。まず契約に検査期間と「みなし合格」の定めがあるかを確認し、期間が過ぎていれば、その旨をメールで伝えて検収完了の確認を求めます。定めがない場合も、検査の予定日を文字で聞いておくと、入金の見通しが立ちます。
不合格の理由があいまい
「イメージと違う」「品質が足りない」だけでは、何を直せばよいかわかりません。どの検査項目に合わなかったのかを具体的に示してもらいましょう。仕様書や検査項目にない要望であれば、それは修正ではなく追加の依頼にあたる可能性があります。
検収のタイミングで追加の要望が出る
検査の場で「ついでにこの機能も」と頼まれることがあります。仕様にない作業を検収の条件にされると、報酬が確定しないまま作業だけが増えます。範囲の外かどうかを切り分け、追加なら報酬と納期を決め直します。進め方は作業範囲が広がったときの記事で解説しています。
契約前に確認したい検収の6項目
- 検査の有無:成果物に検査があるか。ない場合は何をもって受け入れとするか
- 検査期間:納品から何日以内に検査を終えるか。検査完了の期日が明示されているか
- 合格の基準:仕様書、検査項目、受入テストのどれで判断するか。誰が基準を作るか
- 連絡がないときの扱い:期間内に異議がなければ合格とみなす定めがあるか
- 不合格のときの手続き:理由を書面で示すか。修正の期限と再検査の範囲
- 支払との関係:支払期日が納品日と検収日のどちらを起点にしているか。分割納品なら部分ごとに検収するか
判断に迷う条項や、検収をめぐって支払いが止まっている場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。取引のトラブル全般の相談先は相談先の記事にまとめています。
よくある質問
準委任の案件でも検収はありますか?
あります。準委任は業務を行うこと自体に報酬が出る契約ですが、報告書や設計書などの成果物を納めることを支払いの条件にしている場合は、その成果物に検収の手続きがつくことがあります。月額の準委任で毎月「作業報告書の承認」を求められる形も見られます。契約書で、何を誰が承認すれば請求できるのかを確認してください。
検収書や検査合格の通知をもらえません。請求してよいですか?
契約に検査期間とみなし合格の定めがあり、その期間が過ぎていれば、検収が完了したものとして扱える可能性があります。まずは契約の条項を確認し、検査の結果をメールで問い合わせましょう。定めがない場合でも、従業員を使う発注者との取引なら、支払期日は受領日から60日以内に定める決まりです。個別の判断は専門家にご相談ください。
検収が終わった後に不具合が見つかったら、どうなりますか?
検収は、その時点で契約どおりと認めて受け入れる手続きです。ただし、検収後に見つかった不具合でも、契約不適合責任として修正などを求められることがあります。期間や範囲は民法と契約の定めによって決まるため、契約不適合責任の記事で確認してください。
参考にした公的情報・資料
- 民法(e-Gov法令検索)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方(公正取引委員会・厚生労働省)
- フリーランス法に関するQ&A(公正取引委員会)
- 情報システム・モデル取引・契約書 第二版(情報処理推進機構)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。