フリーランスエンジニアが経費にできるもの|判断の基準と一覧
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
フリーランスエンジニアが経費にできるのは、事業の収入を得るために直接必要だった支出です。パソコンや周辺機器、開発に使うソフトウェアやクラウドの利用料、通信費、技術書、業務のための交通費などが代表例です。一方、所得税・住民税、国民健康保険料や国民年金の保険料は経費になりません(保険料は所得控除として別に差し引きます)。
判断に迷う支出は、「業務のために使ったと説明できるか」「私用の分と分けられるか」で考えます。この記事では、国税庁の説明をもとに、経費にできるもの・できないものを整理します(2026年10月時点)。
経費にできるかどうかの基準
国税庁は、事業所得の必要経費を「収入を得るために直接要した費用」と「その年に生じた販売費・一般管理費その他業務上の費用」と説明しています。フリーランスのエンジニアやコンサルの場合、売上原価のような費用は少なく、ほとんどが後者の業務上の費用です。
経費にする時期も決まっています。必要経費になるのは、その年の12月31日までに債務が確定した金額です。具体的には、次の3つをすべて満たしたときです。
- 12月31日までに、支払う義務が成立している
- 12月31日までに、その支払いの原因になる事実(商品の受け取り、サービスの利用など)が発生している
- 12月31日までに、金額を合理的に計算できる
たとえば12月に使ったクラウドの利用料を翌年1月に支払う場合も、その年の経費になります。逆に、翌年分の利用料を12月にまとめて払った場合は、原則として翌年分は翌年の経費です。
フリーランスエンジニアが経費にしやすいもの一覧
業務との関係が説明しやすい支出を、勘定科目ごとにまとめました。科目名は一例で、帳簿の付け方によって変わります。
| 科目の例 | 経費になりやすいもの | 注意点 |
|---|---|---|
| 消耗品費 | 10万円未満のパソコン周辺機器、キーボード、モニター、ケーブル、文房具 | 10万円以上の機器は原則として減価償却 |
| 減価償却費 | 10万円以上のパソコン、サーバー機器 | 耐用年数に分けて経費にする |
| 通信費 | インターネット回線、スマートフォンの通信料、ドメイン・サーバーの費用 | 私用と共用なら按分 |
| 支払手数料・外注費 | 振込手数料、作業の一部を外部に頼んだ費用 | 外注先との契約書や請求書を残す |
| 新聞図書費 | 技術書、電子書籍、技術系の有料記事 | 業務の分野と関係があるもの |
| 研修費 | 技術セミナー、勉強会の参加費、資格試験の受験料 | 業務との関係を説明できるもの |
| 旅費交通費 | 打ち合わせや常駐先への交通費、出張の宿泊費 | 取引先が負担する場合は二重計上しない |
| 地代家賃 | 自宅の家賃のうち仕事部屋の分、レンタルオフィス・コワーキングの利用料 | 自宅は按分が必要 |
| 水道光熱費 | 自宅の電気代のうち業務の分 | 按分が必要 |
| 会議費・接待交際費 | 打ち合わせの飲食代、取引先との会食 | 相手と目的を記録する |
| 租税公課 | 個人事業税、事業用の印紙代、業務用部分の固定資産税 | 所得税・住民税は対象外 |
| 損害保険料 | 業務の賠償責任保険の保険料 | 生命保険料は経費ではなく所得控除 |
| 諸会費 | 業務に関係する団体の会費 | 業務との関係が必要 |
| 支払利息 | 事業用の借入金の利息 | 元本の返済は経費にならない |
個人事業税は全額が経費になります。国税庁も、事業税は必要経費になると明記しています。事業税の仕組みは個人事業税の記事で解説しています。
パソコンなど高額な機器は減価償却で経費にする
国税庁の「減価償却のあらまし」によると、取得価額が10万円未満のもの、または使える期間が1年未満のものは、使い始めた年に全額を経費にできます。10万円以上の資産は、原則として耐用年数にわたって少しずつ経費にします(減価償却)。
ただし、次の扱いもあります。
- 一括償却資産:取得価額10万円以上20万円未満の資産は、合計額の3分の1ずつを3年間で経費にできる
- 青色申告者の少額減価償却資産の特例:一定の要件を満たす青色申告者は、10万円以上40万円未満の資産を取得した年に全額経費にできる(令和8年3月31日までの取得分は30万円未満。年間合計300万円まで。令和11年3月31日までの取得分が対象)
開発用の高性能なパソコンは、この特例を使えるかどうかで、その年の経費が大きく変わります。計算方法は減価償却の記事で詳しく解説しています。
経費にならないもの
国税庁が必要経費にならないものとして挙げているのは、次のような支出です。
- 家事上の費用(生活費)
- 所得税と住民税
- 罰金、科料、過料
- 生計を一にする親族に払う家賃や給与(青色事業専従者給与などを除く)
- 固定資産税のうち業務に使っていない部分
フリーランスが間違えやすいのは、社会保険料の扱いです。国民健康保険料、国民年金の保険料、国民年金基金の掛金は経費ではなく、社会保険料控除として所得から差し引きます。支払った全額が控除の対象になるため、損をするわけではありませんが、帳簿の経費に入れると決算書の数字が合わなくなります。
借入金の元本の返済、事業用口座から生活費に移したお金も経費ではありません。事業用口座から私用の支払いをした場合は、帳簿上は「事業主貸」として処理します。
判断に迷いやすい支出の考え方
自宅の家賃・電気代・通信費
自宅で仕事をしている場合、家賃や電気代、通信費は私用と業務用が混ざった支出(家事関連費)です。国税庁の通達では、業務に必要な部分が50%を超えるかどうかで判定し、50%以下でも業務の部分を明らかに区分できればその分を経費にできるとしています。割合の決め方は家事按分の記事で解説しています。
スマートフォン・パソコンを私用でも使う場合
1台を仕事と私用の両方で使っているなら、使う時間などを基準に按分します。業務専用の端末や回線を分けておくと、按分の説明がいらなくなります。
飲食代
取引先との打ち合わせや会食で、業務の話をした飲食代は経費にできます。1人での食事や、業務と関係のない友人との食事は経費になりません。日付・相手・目的を領収書の裏や帳簿の摘要に書いておくと、後から説明しやすくなります。
スーツ・眼鏡・ジムの会費
私生活でも使えるものは、業務のためだけに使っていると説明するのが難しく、経費にしにくい支出です。判断に迷う場合は、税理士・税務署にご相談ください。
経費の証拠を残す方法
経費は、帳簿に記録するだけでなく、支払ったことと業務に使ったことを示す書類を残しておく必要があります。青色申告では帳簿と書類を原則7年間保存します(請求書・見積書など一部は5年間)。
- 紙のレシート・領収書:月ごとに封筒やファイルに分けて保管する
- オンラインの購入・利用料:注文確認メールや請求書のデータを保存する
- クレジットカード:事業用のカードを分け、明細を保存する
- 交通費:日付・区間・金額・目的を記録する(交通系ICカードの履歴も役に立つ)
電子で受け取った請求書や領収書は、電子データのまま保存するルールがあります。電子帳簿保存法の記事もあわせてご覧ください。
よくある質問
独立前に買ったパソコンは経費にできますか?
独立前から持っていたパソコンを事業で使い始めた場合は、事業に使い始めた時点の価値をもとに減価償却して経費にする考え方があります。取得した時期・金額・使い始めた日によって計算が変わるため、詳しくは税理士・税務署にご相談ください。
領収書をなくした場合は経費にできませんか?
支払ったことと業務に使ったことを説明できれば、領収書がなくても経費にできる場合があります。クレジットカードの明細や振込の記録、支払先・日付・金額・目的を書いた出金伝票などで記録を残しておきましょう。ただし、証拠が弱いと説明が難しくなるため、領収書の保存が基本です。
経費が多すぎると税務調査に入られやすいですか?
経費の額だけで調査が決まるわけではありません。大切なのは、業務との関係を説明できる支出だけを経費にし、帳簿と書類を残しておくことです。売上に比べて経費の割合が高い年は、その理由を説明できるようにしておくと安心です。
参考にした公的情報・資料
- No.2210 必要経費の知識(国税庁)
- 所得税基本通達45-1・45-2 家事関連費(国税庁)
- No.2100 減価償却のあらまし(国税庁)
- No.1130 社会保険料控除(国税庁)
- No.2070 青色申告制度(国税庁)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。