コワーキングスペースを使うときの経費と注意点|勘定科目・住所・情報管理
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
コワーキングスペースの利用料は、事業のために使った分であれば必要経費にできます。月額の会費、1日単位のドロップイン、会議室の利用料など形はさまざまですが、領収書と利用の記録を残し、毎年同じ考え方で処理しておけば迷いにくくなります。
一方で、経費より気をつけたいのが情報の扱いです。共有の空間には、画面ののぞき見、周りに聞こえる会話、公衆Wi-Fiなど、自宅にはない注意点があります。この記事では、経費、住所の使い方、情報管理の3つに分けて整理します(制度は2026年10月時点)。
何のために使うかを先に決める
最初に使う目的を決めておくと、プランの選び方も、経費としての説明もしやすくなります。
| 使う目的 | 合いやすい使い方 |
|---|---|
| 自宅では集中できない、家族がいる | 平日の作業時間だけ通う月額プラン |
| 常駐の合間や外出先で作業したい | ドロップイン、複数の拠点を使えるプラン |
| オンライン会議を静かな場所でしたい | 個室ブース、会議室の時間貸し |
| 事業用の住所や郵便の受け取りが欲しい | 住所利用・郵便物受取のオプション |
| 同業者と情報交換したい | 交流の機会がある施設 |
自宅とどちらか一方に決める必要はありません。会議の多い日だけ使うなど、組み合わせることもできます。自宅の環境を整える方法は自宅を仕事場にするときの記事で解説しています。
経費にできる費用と、記録の残し方
事業のための利用料は必要経費になる
国税庁によると、事業所得の必要経費は、売上を得るために直接かかった費用や、その年の販売費・一般管理費その他業務上の費用です(令和8年4月1日現在法令等)。仕事のために使うコワーキングスペースの会費や利用料は、これに当たります。
経費にしやすいものの例は次のとおりです。
- 月額会費、ドロップインの利用料
- 会議室・個室ブースの利用料
- 住所利用・郵便物受取などのオプション料金
- 施設内の有料ロッカーやプリンターの利用料
一方、休日に私用で使った分や、家族が使った分は経費になりません。私用と仕事の両方に使っている場合は、業務に使った部分を明らかに区分できる範囲で経費にします。考え方は家事按分の記事が参考になります。経費全体の判断基準は経費にできるものの記事にまとめています。
通うための交通費
自宅からコワーキングスペースに仕事のために通う交通費も、事業のための支出として経費にできる場合があります。ただし、帰りに私用で寄り道した分や、休日の利用に合わせた移動などは除きます。交通系ICカードの履歴や、利用した日の記録と合わせて残しておくと、後から説明しやすくなります。
プランは利用の頻度で選ぶ
月額プランとドロップインのどちらが得かは、使う頻度で変わります。契約する前に、1か月に何日くらい使うかを数え、それぞれの料金で比べてみるとよいでしょう。月額プランは、最低利用期間や解約の申し出の期限、途中でプランを変えられるかなど、契約の条件も確かめておきます。案件が変わって常駐が増えると、使う日数が大きく減ることもあるためです。
勘定科目は毎年同じものを使う
コワーキングスペースの費用に、法律で決まった勘定科目の名前はありません。月額会費なら「地代家賃」や「支払手数料」、会議室の時間貸しなら「会議費」など、実態に合う科目を選び、毎年同じ扱いにしておくことが大切です。年によって科目が変わると、後から見返したときに説明しにくくなります。
領収書と利用の記録を残す
領収書や請求書に加えて、どの日に何の仕事で使ったかを簡単に残しておくと、説明を求められたときに困りません。カレンダーに案件名を入れておくだけでも記録になります。
消費税の課税事業者で、一般課税で申告する場合は、仕入税額控除を受けるために、帳簿と適格請求書(インボイス)などの保存が必要です。国税庁によると、適格請求書には発行事業者の登録番号などの記載が求められます。施設の領収書や請求書に登録番号が書かれているかを確かめておきましょう。制度の基本はインボイス制度の記事で解説しています。
住所として使うときの注意点
住所利用の範囲は利用規約で確かめる
自宅の住所を名刺やWebサイトに載せたくないとき、コワーキングスペースの住所を使う方法があります。施設によって、住所の表記だけ認めるのか、郵便物の受け取りや転送までできるのか、条件が違います。どの用途に住所を使ってよいかを、利用規約で確かめておきましょう。
所得税の納税地は原則として住所地
国税庁によると、所得税の納税地は原則として住所地です。住所のほかに事業所などがある人は、住所地に代えて事業所などの所在地を納税地にできます(令和8年4月1日現在法令等)。ただし、コワーキングスペースの利用が「事業所など」に当たるかは、使い方の実態によって変わり得ます。納税地を変えたい場合は、事前に税務署や税理士に確かめてください。開業届の書き方は開業届の記事で解説しています。
住所利用のオプションを解約すると、その住所は使えなくなります。取引先に伝えた住所や、請求書・Webサイトの表記を変える手間がかかる点も考えておきます。
共有の空間で気をつけたい情報管理
画面と会話
コワーキングスペースでは、すぐ後ろや隣を他の利用者が通ります。のぞき見防止のフィルターを使う、壁を背にした席を選ぶ、離席するときは画面をロックするなどの対策をとります。オンライン会議や電話は、取引先の名前や案件の中身が周りに聞こえないよう、個室ブースや会議室を使います。
端末と書類の置き忘れ
共有の席では、短い時間でも端末を置いたまま離れないのが基本です。お手洗いや電話で席を外すときも、ノートパソコンや紙の資料は持ち歩くか、鍵のかかるロッカーに入れます。端末を紛失したときに備えて、画面ロックとディスクの暗号化を設定し、紛失したら取引先にすぐ連絡できるよう、連絡先と手順を確かめておくと安心です。紙の資料は、そもそも持ち込まずに済むよう、案件ごとに扱いを決めておきます。
公衆Wi-Fiの使い方
施設のWi-Fiは、多くの人が同じネットワークを使います。総務省は、公衆Wi-Fiを使う人に向けて、次の3点を挙げています。
- 接続するアクセスポイントをよく確かめる
- 閲覧するWebサイトがHTTPSで通信しているかを確かめる
- パソコンの共有設定に注意する
発注者の決まりでVPNの利用が求められている場合は、それに従います。スマートフォンのテザリングを使う方法もあります。自宅も含めた対策は自宅で働くときの情報セキュリティ対策の記事で扱っています。
契約上の作業場所の制限
秘密保持契約や個別契約で、作業場所や、持ち出してよい情報が決められていることがあります。たとえば、発注者の資料を社外の共有スペースで開かないよう求められる場合です。契約の条件がコワーキングスペースでの作業を認めているかを、参画前に確かめておきます。秘密保持契約の読み方は秘密保持契約の記事をご覧ください。
よくある質問
月額会費とドロップインで、経費の扱いは変わりますか?
どちらも、事業のために使った分であれば必要経費になります。勘定科目は実態に合わせて選び、毎年同じ扱いにしておくと説明しやすくなります。私用で使った日がある場合は、その分を除いてください。
コワーキングスペースの住所で開業届を出せますか?
所得税の納税地は原則として住所地で、住所のほかに事業所などがある場合は、その所在地を納税地にできる特例があります。コワーキングスペースがこれに当たるかは利用の実態によって変わり得るため、事前に税務署や税理士にご確認ください。施設の利用規約で住所利用が認められているかも確かめておきます。
施設のWi-Fiで取引先のシステムにつないでも大丈夫ですか?
発注者の決まりを最優先にしてください。VPNの利用が求められている場合はそれに従い、決まりがない場合も、接続先のアクセスポイントとHTTPSでの通信を確かめます。不安がある場合は、スマートフォンのテザリングを使う方法もあります。
参考にした公的情報・資料
- No.2210 必要経費の知識(国税庁)
- No.6625 適格請求書等の記載事項(国税庁)
- No.2029 確定申告書の提出先(納税地)(国税庁)
- 無線LAN(Wi-Fi)の安全な利用(セキュリティ確保)について(総務省)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。