家事按分の考え方|家賃・通信費・電気代を経費にする割合の決め方
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
家事按分は、自宅の家賃や電気代、通信費のように私用と業務用が混ざった支出から、業務に使った分だけを取り出して経費にする計算です。国税庁は「家賃の◯%まで」といった決まった割合を示していません。床面積や使用時間など、業務に使った分を説明できる基準で割合を決め、その根拠を記録しておくことが基本です(2026年10月時点)。
リモートで稼働するフリーランスのエンジニアやコンサルは、自宅が仕事場になることが多く、家事按分を使う場面がよくあります。この記事では、国税庁の考え方と、支出ごとの割合の決め方を整理します。
家事按分のルールは国税庁の通達に書かれている
私用と業務用が混ざった支出を、税法では「家事関連費」と呼びます。国税庁は、店舗と住宅を兼ねた建物の家賃や水道光熱費などを例に挙げ、家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などをもとに業務に直接必要だったことが明らかに区分できる部分に限られると説明しています。
判定の考え方は、所得税基本通達45-1・45-2に書かれています。
- 45-1:業務の内容、支出の内容、家族や従業員の構成、店舗を兼ねた家屋の使い方などを総合的にみて判定する
- 45-2:業務に必要な部分が支出の50%を超えるかどうかで判定する。50%以下でも、業務に必要な部分を明らかに区分できる場合は、その部分を経費にできる
つまり、「半分以上を業務に使っていないと経費にできない」わけではありません。大切なのは、業務の分を区分できることと、その区分を説明できることです。
支出ごとの按分の基準
按分の基準に法律上の決まりはありませんが、支出の性質に合った基準を使うと説明しやすくなります。よく使われる基準をまとめました。
| 支出 | 按分の基準の例 | 考え方 |
|---|---|---|
| 家賃 | 床面積 | 住まい全体の面積のうち、仕事部屋や作業スペースの面積の割合 |
| 家賃(専用部屋がない場合) | 床面積×使用時間 | リビングの一角を使う場合は、面積の割合に業務で使う時間の割合をかける |
| 電気代 | 使用時間、使用する機器 | 業務で使う時間の割合、または業務用の機器の消費電力 |
| インターネット回線 | 使用時間 | 1日のうち、業務で回線を使う時間の割合 |
| スマートフォン | 使用時間、通話の記録 | 業務の通話・通信の割合。業務専用の端末なら按分不要 |
| パソコン | 使用時間 | 私用でも使うなら、業務で使う時間の割合で減価償却費を按分 |
| 車 | 走行距離 | 業務で走った距離の割合 |
水道代やガス代は、仕事との関係を説明するのが難しく、経費にしにくい支出です。業務で使っていると説明できない支出は、無理に按分しないほうが安全です。
家賃の按分の計算方法
家賃の按分は、床面積で考えるのが一般的です。
仕事専用の部屋がある場合
業務の割合 = 仕事部屋の床面積 ÷ 住まい全体の床面積
この割合を、1年分の家賃にかけた金額を経費(地代家賃)にします。たとえば仕事部屋が住まい全体の面積の4分の1なら、家賃の25%が目安になります。
仕事専用の部屋がない場合
リビングや寝室の一角で仕事をしている場合は、面積の割合に、その場所を業務で使う時間の割合をかけて考える方法があります。私生活の時間と重なる場所は、業務の割合を高く説明しにくいため、控えめに設定するのが現実的です。
敷金のように戻ってくるお金は経費になりません。更新料や仲介手数料は、内容や金額によって扱いが変わるため、迷う場合は税理士・税務署にご相談ください。
持ち家の場合は家賃ではなく減価償却費などを按分する
持ち家の場合、自分に家賃を払うことはできません。代わりに、建物の減価償却費、固定資産税、住宅ローンの利息などのうち業務に使っている部分を経費にする考え方になります。
- 建物の減価償却費:建物の取得価額をもとに耐用年数で計算し、業務に使う床面積の割合で按分する(減価償却の仕組みは国税庁の「減価償却のあらまし」で説明されています)
- 固定資産税:業務に使っている部分は経費になる。業務以外の部分は経費にならない
- 借入金の利息:業務用資産を取得するための借入金の利息は経費になる。元本の返済は経費にならない
持ち家の按分は、住宅ローン控除などほかの制度との関係も出てくるため、個別の計算は税理士・税務署にご相談ください。減価償却の計算は減価償却の記事で解説しています。
按分の根拠は記録に残しておく
按分の割合は、自分で決めるからこそ、説明できる形で残しておくことが大切です。
- 割合の計算メモ:間取り図と仕事部屋の面積、業務で使う時間の目安など、割合を出した計算を残す
- 毎年同じ基準で計算する:年ごとに理由なく割合を変えると説明が難しくなる。働き方が変わったら、その理由も記録する
- 元の支出の証拠を保存する:賃貸借契約書、家賃の振込記録、電気代・通信費の請求書を保存する
青色申告では、帳簿と書類を原則7年間保存します(一部の書類は5年間)。按分のメモも、帳簿と同じように保存しておくと安心です。
帳簿への付け方
按分は、支払うたびに計算する方法と、年末にまとめて計算する方法があります。年末にまとめる場合は、1年分の家賃や通信費をいったん全額記録し、決算のときに私用の分を「事業主貸」に振り替えます。毎月の記帳が楽になるため、年末にまとめる方法を選ぶ人もいます。
割合を高くしすぎないための考え方
家事按分は「割合が高いほど得」と考えがちですが、実態とかけ離れた割合は税務調査で否認されることがあります。否認されると、経費が減った分の税金に加えて、加算税や延滞税がかかることもあります。
次のような点を自分で確認しておくと、説明しやすくなります。
- 仕事部屋を私生活でも使っていないか
- 業務で使う時間は、実際の稼働日数・稼働時間と合っているか
- 常駐の日が多いのに、自宅の割合を高くしていないか
- 家族と共用している回線や端末を、業務専用として扱っていないか
按分しなくてよい形に分けておく方法
按分の説明が難しいと感じるなら、そもそも私用と業務用を分けておく方法もあります。
- 業務専用の回線・端末を用意する:業務専用のスマートフォンやモバイル回線なら、利用料の全額を通信費にできる
- コワーキングスペースやレンタルオフィスを使う:業務のためだけに借りる場所の利用料は、按分せずに経費にできる
- 事業用の口座とクレジットカードを分ける:業務の支払いを1つにまとめると、帳簿付けと証拠の保存が楽になる
分けた分だけ費用は増えることもありますが、按分の計算と説明の手間は減ります。口座やカードの分け方は事業用の口座とクレジットカードの記事で解説しています。
よくある質問
家賃の按分は何%までなら認められますか?
決まった上限はありません。国税庁の通達は、業務に必要な部分を明らかに区分できればその部分を経費にできるとしており、割合ではなく区分の根拠が問われます。仕事部屋の面積や業務で使う時間など、実態に合った基準で計算してください。個別の判断は税理士・税務署にご相談ください。
白色申告でも家事按分はできますか?
できます。家事按分の考え方は、青色申告か白色申告かにかかわらず、業務に必要な部分を明らかに区分できるかどうかで判断します。白色申告でも帳簿と書類の保存は必要なため、按分の根拠を記録しておきましょう。
常駐案件とリモート案件を掛け持ちしている場合はどう按分しますか?
自宅で業務をしている時間や日数をもとに割合を考えるのが自然です。常駐の日は自宅を業務に使っていないため、その分を差し引いて考えます。案件が変わって在宅の割合が変わったら、その年の按分の割合も見直し、理由を記録しておきましょう。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。