フリーランスのふるさと納税|上限の考え方と確定申告での控除の受け方
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
フリーランスがふるさと納税をした場合、控除は確定申告で受けます。会社員がよく使う「ワンストップ特例」は、確定申告が不要な給与所得者などで寄附先が5団体以内の人のための制度なので、確定申告をするフリーランスは使えません。申請していても、確定申告をすると無効になります。
自己負担2,000円で収まる寄附額の上限は、住民税からの控除(特例分)が住民税の所得割の2割に収まるかどうかで決まります。フリーランスは所得が年によって変わるため、その年の売上から経費や控除を引いた所得で見積もり、余裕を持たせて寄附するのが基本です。この記事では、国税庁と総務省の説明をもとに整理します(2026年10月時点)。
ふるさと納税の控除は3つに分かれる
ふるさと納税は、自治体への寄附です。寄附額のうち2,000円を超える部分が、所得税と住民税から控除されます。総務省の説明では、控除は次の3つの合計です。
| 控除の種類 | 計算式 | 上限 |
|---|---|---|
| 所得税からの控除 | (寄附額−2,000円)×所得税の税率 | 控除対象の寄附額は総所得金額等の40%まで |
| 住民税からの控除(基本分) | (寄附額−2,000円)×10% | 控除対象の寄附額は総所得金額等の30%まで |
| 住民税からの控除(特例分) | (寄附額−2,000円)×(100%−10%−所得税の税率) | 住民税の所得割の20%まで |
所得税の税率は、課税所得に応じて5%から45%です(速算表は所得税の計算の記事にあります)。国税庁によると、平成25年分から令和29年分までは、所得税率が0%の場合を除き、復興特別所得税を加えた率で計算します。
3つの控除がうまく収まれば、合計は「寄附額−2,000円」と同じになります。つまり、自己負担は2,000円です。
自己負担が2,000円を超える「上限」の仕組み
上の表の特例分には、「住民税の所得割の20%まで」という上限があります。寄附額が大きくなって特例分がこの上限に当たると、3つの控除を合わせても「寄附額−2,000円」の全額は控除されず、自己負担が2,000円を超えます。一般に「ふるさと納税の上限」と呼ばれているのは、この境目のことです。
境目を決める要素は次の2つです。
- 住民税の所得割の額:所得が多いほど大きく、上限も上がる
- 所得税の税率:特例分の計算式に入るため、税率によって境目が変わる
総務省は、具体的な計算は住んでいる市区町村に問い合わせるよう案内しています。ただし、自治体によっては上限額を答えられない場合があるともしています。
フリーランスが上限を見積もるときの注意
会社員は源泉徴収票の金額から目安を出せますが、フリーランスは次の点で見積もりがずれやすくなります。
- 所得は売上ではない:経費と青色申告特別控除を引いた事業所得がもとになる
- 所得控除が人によって大きく違う:国民健康保険料・国民年金保険料は全額が社会保険料控除になり、iDeCoや小規模企業共済の掛金も控除される。控除が多いほど所得割は小さくなる
- 年末まで所得が確定しない:12月の稼働分や経費の計上で、所得が変わる
- ほかの控除で所得割が変わる:医療費控除などを受けると、住民税の所得割も下がり、上限も下がる
住民税の所得割は、所得から住民税の所得控除を引いた課税所得をもとに計算します。住民税の所得控除の額は所得税と違うものがあるため、所得税の課税所得をそのまま使うと見積もりがずれます。住民税の計算の仕組みは住民税の記事で解説しています。
上限を見積もる手順
フリーランスが自分で目安を出すときは、次の順番で考えると、見落としを減らせます。
- 年間の売上の見込みを出す:12月の稼働分まで含めて、その年の売上を見積もる
- 経費と青色申告特別控除を引く:これが事業所得の見込みになる
- 所得控除を引く:社会保険料、iDeCo・小規模企業共済の掛金、医療費控除などを差し引く
- 住民税の所得割と所得税率を出す:住民税と所得税で控除の額が違う点に注意する
- 特例分が所得割の20%に収まる寄附額を求め、余裕を持たせる
市販の計算ツールの多くは、給与の年収を入力する前提で作られています。フリーランスが使う場合は、売上ではなく所得や控除の額を入力できるかを確かめましょう。
iDeCo・小規模企業共済と組み合わせる場合
iDeCoや小規模企業共済の掛金は、全額が所得控除になります。掛金を増やすと所得税も住民税も下がる一方で、住民税の所得割が小さくなるため、ふるさと納税の上限も下がります。同じ年に掛金を増やすなら、増やした後の所得で上限を見積もり直してください。共済の仕組みはiDeCoの記事と小規模企業共済の記事で解説しています。
ワンストップ特例が使えない理由と注意点
国税庁と総務省によると、ワンストップ特例は、確定申告が不要な給与所得者などで、その年の寄附先が5団体以内の場合に限り、寄附先の自治体に申請すれば確定申告をしなくても控除を受けられる制度です。
フリーランスは事業所得の確定申告をするため、ワンストップ特例の対象になりません。国税庁は、確定申告をする人はワンストップ特例の申請が無効になるため、申請した分も含めて寄附金控除を計算するよう案内しています。
会社員の時期に寄附してワンストップ特例を申請し、その年の途中で独立した場合も、その年は確定申告をするため、会社員時代の寄附も含めて申告に入れます。入れ忘れると、その分は控除されません。
ワンストップ特例を使った場合は、所得税からの控除はなく、その分も含めて翌年度の住民税から控除されます。確定申告をした場合は、所得税からの控除(還付や納税額の減少)と、翌年度の住民税からの控除に分かれます。どちらでも、控除の合計の考え方は同じです。
確定申告での控除の受け方
必要な書類
寄附金控除を受けるには、寄附した自治体から届く寄附金の受領証を申告書に添付するか、提出の際に提示します。国税庁によると、令和3年分の確定申告からは、受領証の代わりに、国税庁長官が指定した特定事業者が発行する年間寄附金額を記載した「寄附金控除に関する証明書」も使えます。
申告書の書き方
確定申告書第二表では、次の2か所に記載します。
- 「寄附金控除に関する事項」:寄附先の自治体名と寄附額
- 「住民税に関する事項」の「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」:ふるさと納税の寄附額
所得税の確定申告書は、住民税の申告書も兼ねています。国税庁は、2の欄を書き忘れると住民税の計算で控除されないことがあると注意を促しています。確定申告書等作成コーナーで入力すれば、両方に反映されます。e-Taxでの提出はe-Taxの記事で解説しています。
所得税の控除の計算
所得税では、寄附金控除は所得控除として扱われます。国税庁の計算式は次のとおりです。
寄附金控除額 =(その年の寄附額の合計 と 総所得金額等の40% のうち低いほう)− 2,000円
この控除額に所得税率を掛けた分だけ所得税が減ります。課税所得がなく所得税がかからない年は、所得税からの控除の効果はありません。
独立した年・所得が少ない年の考え方
所得が大きく下がる年は、住民税の所得割も下がり、上限も下がります。独立した年に会社員時代の感覚で寄附すると、自己負担が増えることがあります。
また、ふるさと納税で控除されるのは、その年の所得税と翌年度の住民税です。寄附した時点で一度お金を払い、税金が減るのは確定申告の後と翌年6月以降の住民税です。独立直後で手元資金に余裕がない年は、寄附額を抑えるのも一つの考え方です。
自分の上限額や、ほかの控除との組み合わせは個別の計算が必要です。迷う場合は、住んでいる市区町村や税理士・税務署にご相談ください。
よくある質問
寄附金の受領証をなくした場合はどうすればよいですか?
寄附した自治体に再発行を依頼できるか問い合わせてください。寄附を仲介するサイトによっては、国税庁長官が指定した特定事業者として、年間の寄附額をまとめた「寄附金控除に関する証明書」を発行している場合があり、受領証の代わりに使えます。
ふるさと納税の返礼品は所得になりますか?
国税庁の質疑応答事例では、ふるさと納税の謝礼として受け取った特産品の経済的利益は、一時所得にあたるとされています。一時所得の計算には最高50万円の特別控除があり、事例では、その年にほかの一時所得がなければ課税関係は生じないと回答しています。返礼品が多い年や、ほかに一時所得がある年は、税務署にご確認ください。
ふるさと納税をすると、翌年の住民税はいつ減りますか?
確定申告をした場合、住民税からの控除分は翌年度の住民税から差し引かれます。フリーランスの住民税は、6月ごろに届く納税通知書で納めるため、その通知書の税額に控除が反映されます。
参考にした公的情報・資料
- No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)(国税庁)
- No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)(国税庁)
- ふるさと納税のしくみ 税金の控除について(総務省)
- よくわかる!ふるさと納税(総務省)
- 「ふるさと納税」を支出した者が地方公共団体から謝礼を受けた場合の課税関係(国税庁 質疑応答事例)
- No.2260 所得税の税率(国税庁)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。