フリーランスの健康診断|受け方と費用、特定健診・がん検診の使い方
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
フリーランスには、会社員のような勤務先の定期健康診断がありません。自分で健診の機会を探して受ける必要があります。厚生労働省の「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」は、個人事業者も1年に1回健康診断を受けることを求めています。
使いやすいのは、40歳から74歳なら加入している国民健康保険などが行う特定健診、がんについては市区町村のがん検診です。39歳以下や、より詳しく調べたい人は、医療機関の健診や人間ドックを自費で受けることになります。費用は原則として医療費控除の対象になりません(2026年10月時点)。
会社員とフリーランスで何が違うか
会社員は、労働安全衛生法にもとづいて、事業者が実施する一般健康診断を受けます。費用は会社が負担し、勤務時間中に受けられることが多い仕組みです。
フリーランスは業務委託で働くため、この健康診断の対象ではありません。ガイドラインは、個人事業者等も、会社員が受ける一般健康診断を参考に年1回受診し、異常があれば精密検査や受診、仕事のペースの見直しをすることが重要だとしています。
一般健康診断の項目が目安になる
ガイドラインでは、会社員の一般健康診断の項目として次のものが挙げられています。自分で健診を選ぶときの目安になります。
- 既往歴・業務歴の調査、自覚症状・他覚症状の検査
- 身長・体重・腹囲・視力・聴力
- 胸部エックス線検査・喀痰検査
- 血圧
- 貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査
- 尿検査、心電図検査
40〜74歳は特定健診を使える
特定健診(特定健康診査)は、医療保険者が40歳から74歳の加入者に行う健診です。メタボリックシンドロームに着目した内容で、結果に応じて特定保健指導(積極的支援・動機付け支援・情報提供)が行われます。
| 加入している健康保険 | 特定健診の実施者 | 主な案内の届き方 |
|---|---|---|
| 国民健康保険 | 市区町村(または国民健康保険組合) | 市区町村から受診券などが届くことが多い |
| 家族の健康保険の扶養 | 家族が加入する協会けんぽ・健康保険組合 | 家族の勤務先や保険者から案内される |
| 任意継続中の健康保険 | 加入している協会けんぽ・健康保険組合 | 保険者から案内される |
自己負担の額や受けられる医療機関、受診できる期間は、保険者ごとに決まっています。国民健康保険の人は、お住まいの市区町村の案内で確かめてください。扶養に入っている場合の扱いは扶養の記事、国民健康保険の仕組みは国民健康保険の記事をご覧ください。
がん検診は市区町村の検診を使う
市区町村は、厚生労働省の指針にもとづいてがん検診を行っています。令和8年10月7日に一部改正された指針では、対象と回数が次のように定められています。
| がん検診 | 対象 | 回数(原則) |
|---|---|---|
| 胃がん | 50歳以上(胃部エックス線検査は当分の間40歳以上も可) | 2年に1回(エックス線は年1回も可) |
| 大腸がん | 40歳以上 | 年1回 |
| 肺がん | 40歳以上 | 年1回 |
| 乳がん | 40歳以上の女性 | 2年に1回 |
| 子宮頸がん(細胞診) | 20歳以上の女性 | 2年に1回 |
| 子宮頸がん(HPV検査単独法) | 30歳以上の女性 | 5年に1回 |
指針では、特に受診を勧める年齢も示されています(多くは69歳以下)。実際に何を、いくらで受けられるかは市区町村ごとに違うため、お住まいの市区町村の案内で確かめてください。
国民健康保険の特定健診と、市区町村のがん検診を同じ日に受けられる地域もあります。年に一度、誕生月などに「健診の日」を決めておくと、受け忘れを防げます。
結果を受け取ったあとにすること
ガイドラインは、健診で異常の所見があった場合は精密検査や医療機関の受診をすること、医療保険者が行う特定保健指導を積極的に使うことが重要だとしています。結果の紙やデータは、翌年の結果と比べられるよう、年ごとにまとめて保管しておきましょう。「要再検査」のまま放置しないことが、健診を受ける意味を保つ一番の方法です。
39歳以下や詳しく調べたい場合
39歳以下の人は特定健診の対象ではありません。がん検診以外の健診は、次のような方法で受けます。
- 医療機関や健診機関の一般健診を自費で受ける
- 人間ドックを自費で受ける
- 市区町村や国民健康保険組合に、若い年代向けの健診や人間ドックの助成がないか確かめる
自費で健診を選ぶときは、前の章で挙げた一般健康診断の項目が入っているかを目安にすると、会社員時代の健診と結果を比べやすくなります。オプションの検査を増やすほど費用も上がるため、年齢や気になる症状に合わせて選びましょう。
助成の有無や金額は、自治体・保険者によって大きく違います。「市区町村名 健康診査」「市区町村名 人間ドック 助成」などで調べると見つけやすくなります。
取引先に健診の配慮を求められる場合もある
ガイドラインは、仕事を発注する側(注文者)にも、個人事業者が健康診断を受けられるよう配慮することを求めています。たとえば次のような内容です。
- 健康診断に関する情報の提供や、受診の時間を確保するといった配慮
- 契約期間がおおむね1年以上(更新で通算1年以上を含む)で、作業時間が平均して週40時間程度になる見込みの場合、一般健康診断と同様の検査の費用を注文者が負担することが望ましい
ただし、40歳から74歳の個人事業者は特定健診を受けられるため、この場合は注文者が費用を負担する必要はないとされています。また、ガイドラインは健診の結果を注文者に出させるものではなく、結果をふまえた健康管理は個人事業者が自ら行うものと明記しています。
ITの業務委託では、有害業務にあたる特殊健康診断の対象になることは多くありません。一方で、ガイドラインはパソコン作業(情報機器作業)について、作業環境や作業時間の調整、情報機器作業に関する健康診断の受診などに取り組むことが重要だとしています。
健診の費用と税金の扱い
医療費控除は原則として対象外
国税庁の案内では、健康診断や人間ドックの費用は、原則として医療費控除の対象になりません。ただし、次の場合は対象になります。
- 人間ドックなどで重大な病気が見つかり、引き続きその治療を受けた場合の健診費用
- 特定健診の結果、病気と診断され、医師の指示にもとづく特定保健指導を受けた場合の、特定健診の自己負担額
特定保健指導(一定の積極的支援によるもの)の自己負担金も、条件を満たせば医療費控除の対象です。
事業の経費になるかは慎重に
フリーランス本人の健康診断の費用を事業の経費にできるかどうかは、業務との関係などで判断が分かれます。一般的な健康管理のための健診は、経費として認められにくいと考えておくのが無難です。経費の考え方は経費の記事を参考にし、判断に迷う場合は税理士・税務署にご相談ください。
長時間の稼働を見直す目安
ガイドラインは、長時間の就業が脳や心臓の病気のリスクを高めることを理解し、自分の就業時間を把握して長くなりすぎないようにすることが重要だとしています。その際、会社員に適用される時間外労働の上限規制を参考にするのが望ましいとしています。
複数の案件を掛け持ちすると、1つ1つは週2〜3日でも、合計の稼働時間が長くなりがちです。掛け持ちの考え方は掛け持ちの記事で解説しています。万一、病気やけがで働けなくなったときの備えは所得補償保険の記事をご覧ください。
よくある質問
国民健康保険に入っていれば、健康診断は無料ですか?
40歳から74歳の人は、国民健康保険の特定健診を受けられます。自己負担の額は市区町村などの保険者ごとに決まっていて、無料のところもあれば、一部負担があるところもあります。39歳以下の人は特定健診の対象外のため、市区町村独自の健診や自費の健診を確かめてください。
取引先に健診の結果を出す必要はありますか?
厚生労働省のガイドラインは、個人事業者の健診結果を注文者が取得することを求めるものではないと明記しています。健診の結果をふまえた健康管理は、個人事業者が自ら行うものとされています。
人間ドックの費用は確定申告で控除できますか?
原則として医療費控除の対象になりません。ただし、人間ドックで重大な病気が見つかり、引き続きその治療を受けた場合は、人間ドックの費用も医療費控除の対象になります。領収書は治療費の領収書とあわせて保管しておきましょう。
参考にした公的情報・資料
- 個人事業者等の健康管理に関するガイドライン(厚生労働省)
- 特定健診・特定保健指導について(厚生労働省)
- がん検診(厚生労働省)
- がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(厚生労働省・令和8年10月7日一部改正)
- No.1122 医療費控除の対象となる医療費(国税庁)
- 人間ドックや特定健康診査の費用の医療費控除(国税庁)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。