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フリーランス新法・下請法

フリーランスの労災保険特別加入|ITエンジニアの対象と手続き・保険料

公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト

フリーランスは、労災保険に「特別加入」することで、仕事中や通勤中のケガ・病気・死亡に対して補償を受けられます。システムの設計・開発などに携わるITエンジニアは、2021年9月に設けられた「ITフリーランス」の区分で、それ以外の業務は2024年11月に設けられた「特定フリーランス事業」の区分で加入します。

加入は、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体を通じて行います。保険料は、選んだ給付基礎日額の365日分に保険料率3/1,000を掛けた額です。2026年10月時点の厚生労働省の資料をもとに、対象と手続きを整理します。

特別加入制度のしくみ

労災保険は、本来は会社などに雇われている労働者のための制度です。ただし、労働者以外でも、業務の実情や災害の発生状況から労働者に準じて保護するのが適当な人には、任意で加入することが認められています。これが特別加入制度です。

フリーランスは会社に雇われていないため、何もしなければ労災保険の補償はありません。業務中のケガや病気の治療費、働けない間の収入は、自分で備える必要があります。特別加入は、その備えの1つです。

なお、業務委託契約を結んでいても、実態として労働者と認められる場合は、特別加入しなくても労災保険が適用されます(偽装請負の記事)。

ITエンジニアはどの区分で加入するか

特別加入は、事業や作業の種類ごとに区分があり、それぞれ該当する特別加入団体を通じて加入します。フリーランスに関係が深いのは次の2つです。

区分対象対象になった時期
ITフリーランス情報処理システムやソフトウェア、Webページの設計・開発(プロジェクト管理を含む)・管理・監査・セキュリティ管理・デザイン・一体的な企画など、情報処理に係る作業2021年9月1日
特定フリーランス事業フリーランスが企業などから業務委託を受けて行う事業(ほかの特別加入の区分にあたるものを除く)2024年11月1日

ITフリーランスの区分

厚生労働省の「特別加入制度のしおり(特定作業従事者用)」では、ITフリーランスにあたる職種として、ITコンサルタント、プロジェクトマネージャー、システムエンジニア、プログラマ、サーバー・ネットワーク・データベース・セキュリティの各エンジニア、運用保守エンジニア、テストエンジニア、データサイエンティスト、Webデザイナー、Webディレクターなどを例示しています。例示であり、職種を限定するものではないとされています。

特定フリーランス事業の区分

特定フリーランス事業は、フリーランス新法の特定受託事業者(従業員を使用しない人)が、企業などから業務委託を受けて行う事業です。企業から受けている業務と同じ種類の仕事を消費者から受けた場合のケガなども補償の対象になります。一方、消費者からだけ仕事を受けている場合は対象になりません(企業から受ける見込みがある場合を除く)。

区分を間違えると補償されない

ITフリーランスなど、ほかの特別加入の区分にあたる業務をしている人は、特定フリーランス事業ではなく、その区分で加入する必要があります。厚生労働省のしおりでは、同じシステム設計者でも次のように分かれる例を示しています。

業務区分
ネットワークシステムの開発作業に従事するITフリーランス
企業向け研修のIT講師を行う特定フリーランス事業

特定フリーランス事業に加入していても、ほかの区分にあたる業務で被災した場合、その区分に加入していなければ保険給付は受けられません。両方の業務で補償を受けたい場合は、それぞれに特別加入する必要があります。実際には個別の業務内容で判断されるため、迷う場合は労働局や労働基準監督署に確認しましょう。

加入の手続き

  1. 特別加入団体を選んで申し込む:自分の業務の区分(ITフリーランスまたは特定フリーランス事業)の特別加入団体に申し込みます。申込方法は各団体の方法に従います。厚生労働省のサイトに特別加入団体の一覧表が掲載されています
  2. 団体が申請する:団体が、特別加入申請書を所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出します
  3. 労働局長が承認する:承認されると、特別加入者として補償の対象になります

特定フリーランス事業の団体は、加入を希望する人の事業者との取引実績や取引の見込みを確認したうえで申請するとされています。申請書の「業務又は作業の具体的内容」は、災害のときに補償の対象かどうかを判断する重要な項目なので、実際に行う業務を具体的に書きましょう。

給付基礎日額と保険料

給付基礎日額を選ぶ

給付基礎日額は、保険料と給付額の計算のもとになる額です。1日あたりの収入を目安に、3,500円から25,000円までの16段階から選び、労働局長が承認した額になります。

保険料の計算

年間保険料は「給付基礎日額×365日×保険料率」です。特別加入保険料率表(2024年11月1日施行)では、特定フリーランス事業も、ITフリーランス(情報処理システムの設計等の情報処理に係る作業従事者)も、保険料率は3/1,000です。

給付基礎日額保険料算定基礎額(×365日)年間保険料(×3/1,000)
5,000円1,825,000円5,475円
10,000円3,650,000円10,950円
12,000円4,380,000円13,140円
20,000円7,300,000円21,900円
25,000円9,125,000円27,375円

年度の途中で加入した場合は、加入した月数に応じた額で計算されます。

給付基礎日額の変更

給付基礎日額を変えたいときは、3月2日〜3月31日に変更申請書を出すと、翌年度から変更できます。労働保険の年度更新の期間中にも、その年度の額を変更できます。ただし、災害が起きる前に申請していることが前提です。

受けられる主な給付

給付内容
療養(補償)等給付労災病院や労災指定医療機関などで、必要な治療を無料で受けられる
休業(補償)等給付休業4日目から、1日につき給付基礎日額の60%。特別支給金20%と合わせて80%
障害(補償)等給付障害等級に応じて年金または一時金
遺族(補償)等給付遺族の人数などに応じて年金または一時金
葬祭料等葬祭を行う人に支給

補償されるのは、契約に基づいて報酬が支払われる業務と、それに直接附帯する行為、業務に必要な移動などです。通勤災害も、一般の労働者と同じように扱われます。被災したときは、請求書を特別加入団体の所在地を管轄する労働基準監督署に提出します。

加入を考えるときのポイント

保険料や給付の詳細は、都道府県労働局または最寄りの労働基準監督署にご確認ください。

よくある質問

フルリモートのITエンジニアでも特別加入できますか?

加入できます。ITフリーランスの区分は、情報処理に係る作業という業務の内容で定められていて、厚生労働省のしおりに働く場所の限定は書かれていません。補償の対象になるのは、契約に基づく業務とそれに直接附帯する行為などで、個別の状況で判断されます。

会社員の副業で業務委託を受けていても特別加入できますか?

特定フリーランス事業は、フリーランス新法の特定受託事業者が行う事業が対象です。フリーランス新法では、会社員が副業で業務委託を受ける場合、その副業についてはフリーランスにあたるとされています。加入できるかどうかや区分は、加入を希望する特別加入団体や労働局にご確認ください。

労働者を雇っていても特別加入できますか?

一人親方等の特別加入では、労働者を使わずに事業を行うことが原則です。厚生労働省のしおりでは、労働者を使う日の合計が1年間に100日に満たない場合は、一人親方等として特別加入できるとしています。特定フリーランス事業はフリーランス新法の特定受託事業者(従業員を使用しない人)が前提のため、人を雇う場合は事前に労働局へご確認ください。

参考にした公的情報・資料

記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。

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