高額療養費の仕組みと手続き|国保のフリーランスの上限額と2026年8月からの変更
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
高額療養費は、1か月(1日から月末まで)に医療機関や薬局で払った自己負担が、年齢と所得で決まる上限額を超えたとき、超えた分が後から支給される制度です。国民健康保険に加入しているフリーランスも、会社員と同じように使えます。
2026年8月診療分からは、月ごとの上限額が見直され、8月から翌年7月までの1年間で負担が一定額に達するとそれ以上払わなくてよい「年間上限」が加わりました。2027年8月からは、所得区分がさらに細かく分かれる予定です。この記事では、国民健康保険に入っている70歳未満の人を中心に、上限額の調べ方と手続きを整理します(2026年10月時点)。
自己負担の上限が決まる仕組み
上限額を考えるときの基本は、次の4つです。
- 月ごとに計算する:暦月(1日〜末日)単位。月をまたぐ入院は、月ごとに分けて計算する
- 医療機関ごと・入院と外来は別:さいたま市の案内では、医療機関ごとに計算し、入院と外来は別、歯科は別の医療機関として扱う。院外処方の薬局の分は、外来と合わせて対象になることがある
- 世帯で合算できる:70歳未満の人は、1件あたり21,000円以上の自己負担を、同じ世帯の国保加入者の分まで合算できる
- 保険診療の自己負担が対象:保険が使える治療の窓口負担が対象になる
病気やけがで働けないときに使える制度の全体像は病気やけがのときの制度の記事で扱っています。ここでは、高額療養費の金額と手続きに絞ります。
2026年8月からの上限額(70歳未満・国民健康保険)
国民健康保険では、所得区分を世帯の「旧ただし書き所得」(前年の総所得金額等から基礎控除を引いた額)で判定します。厚生労働省の資料(令和8年8月〜令和9年7月)による70歳未満の上限額は次のとおりです。
| 区分 | 旧ただし書き所得 | 年収の目安 | 月の上限額 | 多数回該当 | 年間上限 |
|---|---|---|---|---|---|
| ア | 901万円超 | 約1,160万円〜 | 270,300円+(医療費−901,000円)×1% | 140,100円 | 1,680,000円 |
| イ | 600万円〜901万円 | 約770万〜約1,160万円 | 179,100円+(医療費−597,000円)×1% | 93,000円 | 1,110,000円 |
| ウ | 210万円〜600万円 | 約370万〜約770万円 | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% | 44,400円 | 530,000円 |
| エ | 210万円以下 | 〜約370万円 | 61,500円 | 44,400円 | 530,000円 |
| オ | 住民税非課税 | — | 36,900円 | 24,600円 | 290,000円 |
エの区分のうち、旧ただし書き所得が86万円以下(年収の目安で約200万円以下)と確認できた人には、年間上限41万円が適用され、2027年8月以降に払い戻される扱いです。
計算の例
ウの区分の人が、1か月に医療費100万円(窓口3割で30万円)の治療を受けた場合です。
- 月の上限額:85,800円+(1,000,000円−286,000円)×1%=92,940円
- 高額療養費として戻る額:300,000円−92,940円=207,060円
厚生労働省も、年収約370万〜約510万円の人が医療費100万円の治療を受けた場合の自己負担を約9.3万円と示しています。
多数回該当と年間上限
- 多数回該当:直近12か月に高額療養費の支給を3回以上受けた世帯は、4回目から上限額が表の「多数回該当」の額に下がります。2026年8月の見直しでも、この額は据え置かれました
- 年間上限:8月から翌年7月までの1年間の自己負担が、表の「年間上限」を超えた分が支給されます。厚生労働省は、月の上限に届かない月が続く長期療養の人の負担にも配慮するための仕組みと説明しています
世田谷区の案内では、年間上限は月ごとの高額療養費などを差し引いた後の負担で判定し、対象になる人に申請書を送るとしています。
2027年8月から区分が細かくなる
厚生労働省の資料では、2027年8月から70歳未満の所得区分を細分化する予定です。国民健康保険の旧ただし書き所得で見た区分は次のとおりです。
| 旧ただし書き所得 | 月の上限額 | 多数回該当 | 年間上限 |
|---|---|---|---|
| 1,356万円超 | 342,000円+(医療費−1,140,000円)×1% | 140,100円 | 1,680,000円 |
| 1,110万〜1,356万円 | 303,000円+(医療費−1,010,000円)×1% | 140,100円 | 1,680,000円 |
| 901万〜1,110万円 | 270,300円+(医療費−901,000円)×1% | 140,100円 | 1,680,000円 |
| 809万〜901万円 | 209,400円+(医療費−698,000円)×1% | 93,000円 | 1,110,000円 |
| 679万〜809万円 | 194,400円+(医療費−648,000円)×1% | 93,000円 | 1,110,000円 |
| 600万〜679万円 | 179,100円+(医療費−597,000円)×1% | 93,000円 | 1,110,000円 |
| 410万〜600万円 | 110,400円+(医療費−368,000円)×1% | 44,400円 | 530,000円 |
| 313万〜410万円 | 98,100円+(医療費−327,000円)×1% | 44,400円 | 530,000円 |
| 210万〜313万円 | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% | 44,400円 | 530,000円 |
| 127万〜210万円 | 69,600円 | 44,400円 | 530,000円 |
| 86万〜127万円 | 65,400円 | 44,400円 | 530,000円 |
| 86万円以下 | 61,500円 | 34,500円 | 410,000円 |
| 住民税非課税 | 36,900円 | 24,600円 | 290,000円 |
所得が高い区分ほど月の上限額が上がる一方、年収約200万円未満の区分では多数回該当の額が下がります。実施の前に、市区町村から改めて案内が出る予定です(港区)。
窓口の支払いを上限までにする方法
マイナ保険証か限度額適用認定証
高額療養費は、いったん窓口で3割を払い、後で差額が戻るのが基本です。厚生労働省によると、マイナ保険証を使うか、事前に「限度額適用認定証」を受け取って提示すれば、入院でも外来でも、月の上限額を超える分を窓口で払わずに済みます。
世田谷区の案内では、マイナ保険証を医療機関の窓口で使えば限度額が適用されます。マイナ保険証を使わない人は、区に限度額適用認定証を申請します。認定証は申請した月の1日から有効です。
保険料を滞納していると使えないことがある
世田谷区では、保険料に滞納がある人には限度額適用認定証を交付せず、マイナ保険証による限度額の適用も受けられないとしています。納付の相談が必要です。滞納したときに起きることは国民健康保険料を滞納したときの記事で扱っています。
申請と払い戻しの流れ
申請書が届いてから手続きする市区町村が多い
さいたま市では、診療を受けた月のおおむね3か月後に、支給申請書を送ります。港区も、該当する世帯に診療月から3〜4か月後に申請書を郵送するとしています。手続きの方法は市区町村によって違うため、届いた書類の案内に従います。
さいたま市の案内では、申請に次のものが必要です。
- 記入済みの支給申請書
- 該当月の医療機関の領収書(院外処方の薬局分を含む)
- 世帯主の個人番号が分かるもの
- 来庁する人の本人確認書類(代理の場合は委任状など)
申請の期限は2年
さいたま市によると、診療を受けた月の翌月1日(翌月以降に支払った場合は支払った日の翌日)から2年を過ぎると時効になり、支給を受けられません。申請書を後回しにしていると期限が過ぎることがあるため、届いたら早めに出しましょう。
払い戻しまでの資金を助ける制度
払い戻しまでには数か月かかります。さいたま市には、高額療養費の受け取りを医療機関に任せて窓口負担を減らす「受領委任払」と、支給見込み額の10分の9の範囲で貸し付ける「資金貸付」の制度があります。どちらも使う前に区役所と医療機関への相談が必要です。こうした制度の有無と内容は市区町村ごとに違うため、お住まいの国保の窓口でお確かめください。
払い戻しまでの数か月を乗り切る生活資金の考え方は生活防衛資金の記事をご覧ください。
医療費控除との関係
1年間の医療費が一定額を超えると、確定申告で医療費控除を受けられます。このとき、高額療養費として支給を受けた額は、医療費を補てんする金額として、支払った医療費から差し引いて計算します。医療費控除の計算は医療費控除の記事で解説しています。
よくある質問
月の途中から月末をまたいで入院しました。まとめて計算できますか?
高額療養費は暦月ごとに計算するため、月をまたぐ入院は月ごとに分けて上限額と比べます。月ごとの上限に届かなくても、多数回該当や年間上限の対象になる場合があります。
家族の医療費も合算できますか?
同じ世帯で国民健康保険に加入している人の分は合算できます。70歳未満の人は、1件あたり21,000円以上の自己負担が合算の対象です。家族が別の健康保険に入っている場合の扱いは、加入先にご確認ください。
自分の区分がどれか分かりません。どこで確かめられますか?
国民健康保険の区分は、世帯主と加入者の前年の所得から市区町村が判定します。お住まいの市区町村の国民健康保険の窓口で確かめられます。所得の申告をしていない加入者がいる場合は、先に申告を済ませてください。
参考にした公的情報・資料
- 高額療養費制度を利用される皆さまへ(厚生労働省)
- 高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)(厚生労働省)
- 高額療養費(さいたま市)
- さいたま市国民健康保険の高額療養費の申請(さいたま市)
- 高額療養費受領委任払制度、高額療養費資金貸付制度(さいたま市)
- 「限度額適用認定証」の交付(69歳まで)(世田谷区)
- 高額療養費の年間上限(世田谷区)
- 令和8年8月から高額療養費の自己負担限度額が変わります(東京都港区)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。