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所得がなくても国保の申告が必要な理由|簡易な所得申告の対象と出し方

公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト

国民健康保険(国保)の保険料の軽減や、高額療養費の自己負担限度額は、世帯主と加入者全員の前年の所得をもとに判定します。所得がゼロだった人も、何も申告していなければ市区町村は「所得がない」のか「所得が分からない」のかを区別できず、「所得不明」として扱われます。その結果、軽減が適用されなかったり、高額療養費が正しく計算されなかったりする場合があります。

確定申告や住民税の申告をしていれば、別に国保の申告をする必要がないことが多い一方、収入がなかった人や家族は、市区町村の簡易な所得申告書などで申告します。申告書の名前、対象になる人、出し方は市区町村ごとに違います。この記事では、2026年10月時点のいくつかの市区町村の案内をもとに、考え方と手順を整理します。お住まいの市区町村の案内も必ずご確認ください。

市区町村が所得ゼロを自動で把握できない理由

市区町村は、主に次の書類から住民の前年の所得を把握しています。

収入がまったくなかった人は、このどれにも名前が出てきません。市区町村から見ると、「申告がない人」は「所得がゼロの人」とは限らないため、判定に使える所得が決まりません。そのため、所得がないことも申告で示す必要があります。

なお、国保の負担は、市区町村によって「国民健康保険料」と「国民健康保険税」のどちらかの名前で集められています(たとえば広島市は保険料、さいたま市・相模原市は保険税)。どちらでも、所得の申告が判定に使われる点は同じです。

申告しないと起きること

各市区町村の案内では、所得の申告がない場合に次のことが起こりうるとされています。

起こりうること内容
保険料(税)の軽減が適用されない7割・5割・2割の軽減は世帯の所得で判定するため、1人でも所得不明の人がいると判定できない(相模原市など)
高額療養費が正しく計算されない自己負担限度額の区分を判定できず、実際より高い区分とみなされて、払いすぎた分が正しく戻らない場合がある(港区など)
入院時の食事代の負担が正しく計算されない食事代の自己負担額の判定にも所得が使われる(さいたま市、広島市)
医療機関で正しい区分が表示されない所得不明のままマイナ保険証で受診すると、正しい適用区分が表示されない場合がある(広島市)

軽減の基準や割合は国民健康保険料の軽減と減免の記事で解説しています。この記事では、その前提になる「申告」のほうを扱います。

申告が必要な人・不要な人

対象は市区町村ごとに定められています。広島市とさいたま市の案内を例にすると、おおむね次のように分かれます。

区分例
国保の申告が不要なことが多い人所得税の確定申告や住民税の申告をした人、給与のみで勤務先から給与支払報告書が出ている人、公的年金のみで支払報告書が出ている人
申告が必要な人前年に収入がなかった人、非課税の収入(遺族年金・障害年金など)のみの人、確定申告も住民税の申告もしていない人

広島市では、1月1日時点で16歳未満の人を対象から除いています。このような年齢などの条件も市区町村で違うため、届いた案内を確かめてください。

フリーランスの世帯で、申告が漏れやすいのは次のような場面です。

  1. 独立した年の売上がほぼなかった:所得税がかからないからと確定申告をしないでいると、本人の所得が不明になる
  2. 無収入の家族が国保に入っている:配偶者や子どもで収入がない人の申告が漏れる
  3. 世帯主が国保に入っていない:軽減の判定には、国保に入っていない世帯主の所得も含まれる(相模原市など)。世帯主の申告がないと判定できない場合がある

申告の方法は3つ

所得を申告する方法は、主に次の3つです。

方法出す先向いている人控除の申告
所得税の確定申告税務署事業の売上があった人(赤字を含む)できる
住民税の申告その年の1月1日に住民登録していた市区町村確定申告の必要がない人、収入がなかった人できる
国保の簡易な所得申告書市区町村の国保の担当窓口収入がなかった人、届いた申告書で済ませたい人できない場合がある

簡易な所得申告書の名前は市区町村によって違い、たとえば広島市は「国民健康保険所得(無所得)申立書」、さいたま市は「国民健康保険税に係る所得申告書」です。さいたま市は、この申告書では控除の申告はできず、控除を受けるには住民税の申告が必要だと案内しています。

フリーランスはどれを選ぶか

確定申告の流れは確定申告の流れの記事、住民税の申告の考え方は住民税の記事で解説しています。

申告書の出し方と時期

市区町村によっては、所得の申告がない加入者や世帯主に、申告書を送ってきます。さいたま市では、毎年6月と11月に一斉に送るほか、随時送ることもあるとしています。届いたら、次の点を確かめて出します。

  1. どの年度の申告か:国保は「年度」で保険料を決め、その判定に「前年の所得」を使います。広島市は、複数の年度の申立書があるため、どの年度分かを間違えないよう注意を呼びかけています
  2. 添える書類:さいたま市の例では、源泉徴収票または確定申告書の控えの写し、マイナンバーが確認できる書類の写し、本人確認書類の写しを添えます
  3. 出し方:窓口への持参や郵送のほか、オンラインで受け付ける市区町村もあります。広島市は、無収入の人などについて、世帯主がマイナポータルから申請できるとしています。港区は、令和8年度の申告分から住民税の申告を電子申告(eLTAX)でも受け付けています

申告が反映されたかを確かめる

申告を出した後は、市区町村から届く保険料(税)の通知書で、軽減が反映されているかを確かめます。通知書の見方が分からない場合や、申告したのに軽減の記載が見当たらない場合は、通知書を手元に置いて国保の担当窓口に問い合わせると、話が早く進みます。高額療養費を申請する予定がある場合も、所得区分が「未申告」の扱いになっていないかを確認しておくと安心です。

引っ越した年の注意

住民税の申告は、その年の1月1日に住民登録していた市区町村に出します。年の途中で引っ越した場合、国保の窓口と住民税の申告先が別の市区町村になることがあります。どこに何を出せばよいかは、今住んでいる市区町村の国保の担当窓口に確かめます。引っ越しの手続き全体は引っ越したときの国保と年金の手続きの記事をご覧ください。

よくある質問

前年は会社員で、今年独立しました。国保の所得の申告は必要ですか?

前年の所得が給与だけで、勤務先から給与支払報告書が市区町村に出ていれば、改めて申告しなくてよいとする市区町村が多くあります(さいたま市など)。ただし、前年の途中で退職して年末調整を受けていない場合などは扱いが変わることがあるため、届いた案内か市区町村の国保の担当窓口でご確認ください。

赤字だったので所得税はかかりません。それでも確定申告をしたほうがよいですか?

所得税の申告が義務かどうかとは別に、確定申告をしておくと、その所得が住民税や国保の判定に使われます。申告がないと所得不明として扱われ、軽減が受けられない場合があります。青色申告なら、赤字を翌年以降に繰り越すためにも申告が必要です。個別の判断は税理士・税務署にご相談ください。

家族の分の申告も必要ですか?

必要になる場合があります。港区は、所得がない場合でも世帯全員の申告が必要だと案内しています。対象になる年齢などの条件は市区町村によって違うため、届いた案内をご確認ください。家族を扶養に入れるかどうかの考え方は扶養の記事で解説しています。

参考にした公的情報・資料

記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。

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