報酬が支払われないときの対処|確認・督促・相談・法的手続の順番
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
報酬が支払期日に入金されないときは、①自分側の誤りがないかを確かめる → ②記録が残る形で問い合わせる → ③書面で督促する → ④相談窓口を使う → ⑤法的手続を検討する、の順に進めます。多くは①②の段階で、事務の行き違いとして解決します。解決しない場合に備えて、早い段階から契約書・稼働報告・請求書・やり取りの記録をそろえておくことが大切です。
この記事では、段階ごとにやることと、使える制度を整理します(2026年10月時点の情報です)。
まず「本当に未払いか」を確かめる
入金がないと気づいたら、相手に連絡する前に、次の点を確かめます。自分側に原因があることも少なくありません。
| 確かめること | 見るもの |
|---|---|
| 支払期日 | 個別契約や発注書に書かれた支払期日。土日祝日にあたる場合の扱い |
| 請求の状況 | 請求書を期限までに送ったか。送付先や宛名に誤りがないか |
| 口座の情報 | 伝えた口座番号や名義に誤りがないか。口座を変えたのに登録を直していないか |
| 入金の名義 | 発注元ではなくエージェントや別の名義で入っていないか |
| 金額の差 | 一部だけ入金されていないか(源泉徴収や手数料の差し引きなど) |
フリーランス法第4条第5項では、従業員を使う発注者は、定めた支払期日までに報酬を支払わなければならないとされています。一方で、フリーランスの責めに帰すべき事由で支払えなかったときは、その事由がなくなった日から60日(再委託の場合は30日)以内に支払えばよいとされています。公正取引委員会のQ&Aでは、誤った口座番号を伝えた場合がその例として挙げられており、請求書を出していないことは、支払期日を過ぎてよい理由にあたらないとされています。
段階1:記録が残る形で問い合わせる
確認して自分側に問題がなければ、相手に問い合わせます。最初の連絡は、責める調子ではなく、事実の確認として送るのが無難です。電話で話した場合も、内容をメールで送り直しておきます。
◯月分の報酬(請求書番号◯◯、金額◯◯円)について、支払期日の◯月◯日時点で入金を確認できておりません。お手数ですが、お支払の状況と入金予定日をご確認いただけますでしょうか。行き違いでしたらご容赦ください。
ポイントは、対象月・請求書番号・金額・支払期日を具体的に書くことです。担当者が経理部門に確認しやすくなり、そのまま記録にもなります。
一部だけ入金されたとき
入金はあったものの、請求額より少ない場合は、差額の内訳を確かめます。源泉徴収のように差し引かれるのが正しいものもあれば、精算の計算違いや、合意していない差し引きのこともあります。問い合わせるときは、「請求額」「入金額」「差額」を並べて書き、差額の理由を聞く形にすると、相手も経理の記録と照らし合わせやすくなります。
エージェント経由の場合
エージェント経由の案件では、報酬を支払う契約の相手はエージェントです。発注元の会社に直接問い合わせるのではなく、まずエージェントの担当者に連絡します。発注元からエージェントへの支払が遅れている場合でも、エージェントとフリーランスの間で決めた支払期日は、その契約の条件として扱われます。
段階2:書面で督促する
問い合わせても返事がない、入金予定日を示されたのに守られない、という場合は、改めて書面(メールやPDF、郵送)で支払を求めます。このとき、次の内容を入れます。
- 契約の内容(契約日、業務の内容、報酬の額、支払期日)
- 未払いの金額と対象月
- これまでの連絡の経緯(いつ、誰に、何を伝えたか)
- 支払を求める期限
- 期限までに支払われない場合に検討する対応(相談窓口への相談、法的手続など)
送った記録を残すことが目的なので、送信日や送付日が分かる方法で送ります。郵送の場合は、内容と送付日を証明できる方法もあります。
遅延損害金について
フリーランス法には、支払が遅れた場合の遅延利息を定めた規定はありません。民法では、金銭の支払が遅れた場合の損害賠償の額は、遅れた時点の法定利率によって定めるとされ(民法419条)、契約で法定利率を超える利率を決めていればその利率によります。法定利率は民法404条で定められ、3年ごとに見直される仕組みです。
実際に遅延損害金を求めるかは、金額や相手との関係で判断が分かれます。請求を考える場合は、弁護士などの専門家に相談してください。
段階3:相談窓口を使う
督促しても解決しない場合は、外部の窓口に相談します。主な相談先は次のとおりです。
| 相談先 | できること |
|---|---|
| フリーランス・トラブル110番(厚生労働省の委託事業) | 弁護士に無料で相談できる。電話・メール・ビデオ通話。話し合いでの解決を目指す和解あっせん(無料)もある |
| 公正取引委員会・中小企業庁(フリーランス法違反の申出) | 支払期日を守らないなどの違反について申し出て、適切な措置を求められる。オンラインまたは郵送で申し出る |
フリーランス法第6条第3項では、申出をしたことを理由に、取引の数量を減らしたり、取引を停止したりするなどの不利益な扱いをすることが禁止されています。
ただし、行政への申出は、発注者に法律を守らせるための手続です。未払いの報酬を代わりに回収してくれるものではありません。窓口ごとの違いと使い分けは取引トラブルの相談先の記事で詳しく整理しています。
相談の前にそろえる資料
- 契約書・個別契約・発注書(報酬の額と支払期日が分かるもの)
- 稼働報告書や納品物の受領が分かる記録
- 請求書と、送った日が分かる記録
- 問い合わせ・督促のメールや、やり取りの記録
- 入金の記録(一部入金がある場合)
稼働報告の控えの残し方は稼働報告書の記事で、請求の記録の残し方は請求書の出し方の記事で説明しています。
段階4:裁判所の手続を検討する
話し合いや相談で解決しない場合は、裁判所の手続も選択肢になります。代表的なのは次の2つです。
| 手続 | 概要(裁判所の案内より) | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 支払督促 | 相手の住所地を管轄する簡易裁判所の書記官に申し立てる。書類審査のみで、裁判所に出向く必要はない。相手が受け取ってから2週間以内に異議を出すと、通常の訴訟に移る | 金額や契約に争いがなく、相手が支払わないだけの場合 |
| 少額訴訟 | 60万円以下の金銭の支払を求める訴え。原則1回の審理で解決を目指し、同じ裁判所での利用は1人年10回まで。証拠はその場で調べられるものに限られる | 金額が小さく、契約書やメールなど証拠がそろっている場合 |
少額訴訟の判決には控訴できず、異議の申立てができる仕組みです。どちらの手続も、相手が争ってくると通常の訴訟に移ることがあります。手続の選び方や見通しは事案ごとに違うため、弁護士や裁判所の窓口に相談してから進めてください。
未払いが続く間の仕事の続け方
翌月以降も稼働が続く案件で未払いが起きた場合、仕事を続けるかどうかも考えなければなりません。未払いが続くのに稼働を続けると、未払いの額が膨らむおそれがあります。
一方で、自分から一方的に仕事を止めると、契約の内容によっては、契約違反を主張されるおそれもあります。契約の解約条項や予告期間を確かめ、続けるか止めるかを決める前に専門家に相談するのが安全です。解約の考え方は中途解約の記事で整理しています。
よくある質問
入金が数日遅れただけでも、問い合わせてよいですか?
問い合わせてかまいません。事務の行き違いであれば、早く気づく方が双方にとって手間が少なく済みます。最初の連絡は、事実の確認として丁寧に送り、入金予定日を聞く形にすると角が立ちにくくなります。
発注者が「元請けからの入金が遅れているので払えない」と言っています。待つしかありませんか?
フリーランス法では、従業員を使う発注者は、自分が定めた支払期日までに報酬を支払う義務があります。再委託の場合に元委託者の支払期日を基準にできるのは、再委託である旨などを事前に明示した場合に限られます。契約時に示された条件を確かめ、納得できない場合は相談窓口にご相談ください。
相手の会社と連絡が取れなくなりました。どうすればよいですか?
まず、契約書に書かれた所在地あてに、書面で督促を送ります。それでも反応がない場合は、フリーランス・トラブル110番などで弁護士に相談し、裁判所の手続を含めて対応を検討します。相手が倒産手続に入っている場合は、別の手続が必要になることがあるため、専門家に相談してください。
参考にした公的情報・資料
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)
- 民法(e-Gov法令検索)
- フリーランス法に関するQ&A(公正取引委員会)
- フリーランス・トラブル110番(厚生労働省委託事業)
- フリーランス法違反の申出窓口(公正取引委員会)
- 支払督促(裁判所)
- 少額訴訟(裁判所)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。